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第1話  ある日の地球で

怠惰な賢者の異世界記録を1人称になおしたものです。

今回のユータのテンションは酒に酔っているからです。

次話からは落ち着くと思います。

 俺たちが大学に入学してからもう4年目になる。

 今日はゼミの新メンバーの新歓だ。それで居酒屋に来ている。

 去年は俺が歓迎される側だったのに、もう歓迎する側にいるのだ。

 時間の流れが年々加速しているように感じる。

 様々な事情で大学を離れていったやつもいた。かくいう俺も去年は「パソコンが止まった!? 動いてくれぇ!」「せめて保存だけでも!」「もう間に合わねぇ!」「ふてねしよ」などと騒いでいたものだ。我ながらよく単位が取れたと思う。

 まあ、今だけは今日が無事に迎えられたことを祝おう。


「じゃあ乾杯すっか、ユータ頼むわ」

 院生からのご指名だ。ではさっそく音頭をとることにしよう。

「我らがゼミの後輩諸君! 日本語はわかるな? はいすと書いて乾杯だ! それでは!」

「「「かんぱーい!!!」」」


「あー、酒が美味い!」

「やっぱりこいつがないとなぁ」

「構内でバーベキューも良いが、やっぱり酒がないと盛り上がらんよな!」

 ――ああ、その通りだ。大学構内での健全ノンアルコールな新歓など俺たちには前座でしかない。

 有志でおこなうこの新歓こそが俺たちの新歓だ。もちろん飲めないやつには自己申告してもらい無理やり飲ませることなどはしない。アルハラはご法度だ。

 俺は飲めるがあまり強いほうではないだろう。酒は大好きなんだけどな……。

 それにこの雰囲気、酒場の雰囲気も好きだ。

 普段感情を押し殺し働いている人たちも、ここでは泣き、怒り、そして笑っている。実に人間らしい場所ではないだろうか。

 ――ただ、いくらなんでも

「吐きそう……」

「トイレ行け!? トイレ!」

「無理、間に合わ……おろろろろ」

「靴にかかったあぁぁ!」

「Oh my God……」

「ぎゃはははは!」

 こんな光景まで好きになるのは無理があるが……。笑ってるお前、お前もさっき吐いただろうが! 机で!

 あいつらは毎回吐いているが……学習しないのか? まあ俺も人の事は言えないか。

 俺もそろそろ限界が近いだろう。少し寒くなってきた。

 てかこれ何杯目だっけ? 駄目だ、思考がまとまらん。


「からあげお待たせいたしました!」

 ――おっ、やっと来たか俺の大好物! 揚げたてのからあげは最高だよな!

「いただき!」

 美味い! カリッと揚げられて中はジューシー! こいつは最高だ! 

 俺がからあげを食べていると横から声をかけてくるやつがいる。肩をたたくな、聞こえてるよ。まったく人が楽しんでいるのに無粋な奴だ。お前も粗相そそうにしてやろうか?


「ユータ、目の前」

「ん?」

 グラスが倒れている? そういえばさっき手に何かあたったような?

「俺がこぼした?」

「ああ」

 ジーザス! 粗相そそうをしたのは俺だった! 俺が酒を無駄にするとは! 一生の不覚だ! 

 ――まあ、いつも吐いてますが。家に帰るころには胃の中からっぽですが、なにか?

 まあそれよりも、それよりも、だ。グラスを倒して酒を溢したという事は……。


「こ・れ・は?」

「「「粗相だぁあああ!」」」

「「「イヤッハー!!!」」」

 ファ〇ク! 始まりやがった。人の不幸を喜ぶGESUゲスどもめ!

 そもそも誰が粗相なんて制度を作りやがったんだ? そいつに日本中の粗相を償わせたい。粗相の償い方はイッキ飲みだ。酒が飲めないやつはコーラをイッキ飲みだ。 ジョッキでな。


「「「粗相! 粗相! SOSOエスオーエスオー粗相!!!」」」

 あー、やってしもうた。

 こうなったらこいつらを止めるなど誰にも不可能だ。俺が飲むまでこいつらは止まらない。飲むしかないのだ、飲むしか。


「すみませーん、ビー「待て!」ルを」

 仕方がないのでビールを注文しようとしたとき、待ったがかかる。

「後輩が見ている前でビールでいいのか?」

 衝動的に「うるせぇ」と言いたくなったがグッとこらえる。自分の自制心を褒めてやらねば。 ――まるで鋼のようではないか!


 人の不幸を喜ぶGESUゲスどものことだ「うるせぇ!」となど言えば「へー、そんなこと言っちゃうんだー。ふーん」と言われ、より酷いことになるのは目に見えている。

 言えば言うだけ状況が悪化するのでさっさと飲んで終わらせたほうがいい。

 だが、あいつが粗相したときだけは、同じことをしてやろう。目には目を、というやつだ。楽しみだな。

 あれ? 俺も十分GESUなのか? まあいい。


「いやっしゃあぁぁぁぁぁ! ウイスキー! いやスピリタスをお願いします!」

 こうなったらやけくそだ。少しでも場を盛り上げてやる。どうせ居酒屋にスピリタスなど置いてないだろ?


「「「おおお!」」」

 場は盛り上がったのでよしとする。幾人かは少し引いた眼でこちらを見ているがそれは気にしない。気にしてはいけないのだ。この状況で冷静になるとSAN値がガリガリと削られる。それに彼らはGESUではないようだ。あとで家に帰ることをお勧めしよう。GESUとつるめば常識人ほど損をする。主に後始末という面で。


「かしこまりました!」

 え、あるの? スピリタスが!? いやちょっと待ってくれ! それは本気じゃないんだよ! 店員さん、カーンバーック! 

 

 俺の目の前に一つグラスが置いてあります。これは一見水のように見えますが、火が点きます。危ないのでやめてくださいね。火傷してもしりませんよ?


 現・実・逃・避! してる場合じゃねぇ! どうすんだこれ? 度数95? バカなの? 死ぬの? ポーランド人はこれ作る技術あるなら戦車作れよ。こんなん作ってるからドイツにボコボコにされんだよ。――くそったれ!

 あっでもピエロギだけは褒めてやろう。あれは美味い。


 疲れた! もういい飲もう。てか早く飲まんとやばい。

 下手に時間をかけ気温でアルコールが蒸発したとしよう。あのGESUゲスどもの事だ。嬉々としてもう一杯注文するだろう。

 なぜわかるかって? 俺もそうするからだよ? あいつらの考えならわかるさ! 俺たちみんなGESUだもんなぁあああああああ!


 やばいやばい。思考がダークサイドに落ちかけてた。落ち着け。

 なんか酔ってても突然酔いが醒めるときってありますよね。今そんな感じ。


「では、飲みまーす」


 精神統一をして、味覚を遮断。痛覚も遮断。

 俺は何も感じない。俺は何も感じない。

 自己暗示でもかけねばこんなもの飲んでなんかいられない。

 イッキコールを含めた居酒屋の喧騒がどこか遠くに感じる。


「うおぉぉぉ!」

 ぎゃぁああああああ! 痛い! 熱い! 冷たい! ふわっと来る! なんだこれは! こんなもの飲み物じゃない! 

 だが何とか飲み切ったぞ。俺は悪魔に勝った!


「「「おお~」」」

あー乗り切ったこれで安心だ。

「あれ? 俺のタバコは?」

 タバコがない。どっか落としたか?

「やめとけ、スピリタス飲んだ後にタバコ吸うと火が点くらしいぞ? 体内で」

「やめとくわ」

 タバコが吸いたかったが、火が点くなら吸えないな。

 ――もうこれ酒じゃねぇわ。兵器だ。ポーランドが生み出した最強兵器だ。でも絶対パンジャンドラムと同類だろこれ!


 あれ、なんか気持ち悪い。吐かないとヤバそう。トイレ……。

 痛いっ! なんでこんなところに壁が? あ、これ床か! なるほど。

 床!? 俺倒れてんのか。

「ユータ大丈夫か!?」

 なんだって? よく聞こえないよ。なんか耳に膜が張ってる感じ? てか寒い。そして眠い。 もういいや寝てしまおう。

「やばい! 救急車!」

「息してないぞ!」

 うるさいやつらだ、ゆっくり寝かしてくれよ。まあいいや。


 ――おやすみ。


 こうして俺の意識は落ちていった。


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