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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 鉱山に行こう
95/345

94.

 20分くらい歩いただろうか。

 スミレのガイドに従って坑道の三叉路を右や左に折れながら進むと、ようやく目的の場所と思しき少し広めの空間にやってきた。

 『今夜はここで野営ですね』

 「これも、やえい?」

 『そうですよ。宿に泊まらずに宿泊施設ではない場所で泊まる事は全て野営です』

 なんかちょっと強引な説明だが、大まか間違っていないので訂正しない。

 それよりももういつもに比べると野営の食事を作る時間を思うと随分と遅い時間だ。

 とっとと晩飯を作りたい。

 「スミレ、結界張ったのか?」

 『はい、ここに入ったと同時に張りました』

 「んじゃ、ミリー、晩飯作るぞ」

 「わかった」

 俺は広間の隅っこにバックパックを下ろすと、魔石コンロを取り出した。

 「そういやここで煮炊きしても大丈夫か?」

 『大丈夫ですよ。特に燃え移るようなものもありませんし、それなりに空気も動いていますから酸欠になる事もないと思います』

 「おっけ、ミリー、何食べたい?」

 「ごはん」

 「いや、だからさ、晩御飯に何を食べたいのかなって聞いてるんだけどさ」

 「ん〜・・・お肉?」

 そういやそうだった、ミリーはいつだって肉って言ってたなぁ。

 「じゃあ、昨日ミリーが仕留めたチンパラ焼くか?」

 「うん」

 チンパラっていうのは小型の鹿みたいな動物だ。

 昨日ここに来る途中で群れを見つけた時に、見事ミリーが弓で仕留めたんだ。

 「ん〜、チンパラはソテーにするか。じゃあ、ミリーはソテー作ってくれよ。俺はスープを作る」

 「わかった、がんばる」

 ミリーは背負っていたリュックサックを俺のバックパックの隣に下ろすと、トコトコと半分駆け足でやってきた。

 俺はテーブルも出すか、とポーチから料理をする時にいつも使うテーブルを出してから、ミリー用のまな板を彼女の前において自分の前にもひとまわり大きめのまな板を置いた。

 「スミレは周囲の探索をしておいてくれるかな? そこそこ広めの範囲を探索して、もし今夜ここを鉱夫と一緒に使う事になるかどうか知りたい」

 「だれか、来るの?」

 「それが知りたいなって思ってスミレに頼んだんだよ。ここは旧坑道だけど、もしかしたら近くに鉱夫がいてその人がここで野営をするかもしれないだろ?」

 別に誰かと一緒になるのがいやだ、っていうんじゃないんだ。

 ただ俺たち以外の人間がいると俺のスキルを使ってものを作れないからさ。

 だから、誰かが来そうだって判っていたら、スキルを使ってものを作っている途中で入られないように最初からものを作らないようにするだけだ。

 『探索範囲2キロ以内には鉱夫は2人もいません。一番近い位置にいる鉱夫のグループは直線でここから1.5キロほどですが坑道を通って来ようとすると3キロ近く歩く事になりますので、ここまで足を伸ばす事はないでしょう。それに既に彼らはここのような広間に集まって休んでいるようです』

 「オッケー、ありがとう。だったら今夜はゆっくりとものが作れるな」

 「なに作るの?」

 「今日採取した闇纏苔やみまといごけを使って魔力回復ポーションを作ろうかな、って思ってる」

 「ポーション? でもコータ、ポーション、作った事あるよ?」

 「うん。でもいつも作ってるのは体力回復ポーションなんだよ。今日採取したコケをつかうと違うポーションを作る事ができるんだ」

 「ちがうもの? すごいね」

 ミリーは俺からチンパラの肉を受け取りながら、ワクワクした目を向ける。

 「凄いかどうかは判らないけどな」

 『凄いですよ。コータ様にとっては馴染みのないものでしょうけど、この世界で魔力回復ポーションを作れるというのは凄い事なんです。ほんの一部の薬師しか作れませんからね。それに彼らが作れるのは初級魔力回復ポーションです。コータ様は中級魔力回復ポーションを作れますよ』

 「えっ、そうなんだ?」

 『魔力回復量も初級ポーションでは20パーセントの魔力を回復できますが、中級となると50パーセントの魔力を回復できるんです。この差は大きいですよ』

 ふむ、2.5倍の回復量って事か。 

 確かにそれだったら凄いのか?

 「じゃあさ、もしかしたらそのうち上級も作れるようになるかな?」

 『材料次第では作れるようになるかもしれないですね。もしかしたらその上の特級も作れるようになるかもしれませんよ』

 「そんなに色々あるのか?」

 『色々というか、回復量の違いです。上級は75パーセントの魔力回復、そして特級は100パーセントの魔力回復となります』

 100パーセントかよ、それは凄いな。

 「なあ、体力回復ポーションと魔力回復ポーションの他にもポーションってあったっけ?」

 『はい、傷病回復ポーションというのがありますね』

 「それは作れないのか?」

 『材料が手に入らないので今はまだ無理ですね。もちろんコータ様の魔力を使えば作れない事はありませんが、必要魔力量は半端じゃありませんから材料を見つけてから手をつけるのが一番だと思います』

 なんかガッカリだ。

 もしかしたら何種類ものポーションを作れるのかと思ってたのにさ。

 『ただですね、運が良ければですが、もしかしたら解毒ポーションを作れるかもしれませんよ』

 「えっ、何それ。解毒って毒消しって事だろ? もしかして俺、材料持ってる?」

 『いいえ、今の所持ってませんね』

 「じゃあ無理じゃん」

 『解毒ポーションの材料は数種類あるんですが、そのうちの1つは今日採取した闇纏苔やみまといごけから取れる事があるんです。ですから運が良ければそれを手に入れているかもしれませんね』

 今日取った苔から取れる事がある?

 でも運が良ければって言ってたよな?

 どういう意味だ?

 「スミレ、俺は材料を採取できたのかできてないのか、どっちなんだ?」

 今の話じゃさっぱり判らないぞ。

 『今日採取した闇纏苔やみまといごけは小さなお米のような形の蕾をつけるんです。その花の蕾が解毒ポーションの材料となります。ただいつでも花をつけている訳ではありませんから、運が良ければ蕾を採取する事ができるかもしれない、という事ですよ』

 俺とミリーが採取した苔は全部で10個だ。

 その中にもしかしたら蕾をつけたのがあるかもしれない。

 「でもさ、ふたを開けると闇が広がるから花がついているかどうか判らないぞ?」

 『そうですね。でもコータ様、私のスキルを忘れてませんか?』

 「スミレのスキル? プリンターだろ?」

 多次元って付くけどさ。

 『そうです。コータ様がプログラムするものを作る機能があります。でもそれだけじゃないですよ。同時に対象のものをスキャンする事ができるんです、お忘れですか?』

 「あっ」

 そうだよ、スミレ、いつだってスキャンしてくれてたじゃん。

 「あれ、でもその場でスキャンしてくれなかったじゃん」

 『あのですね。さすがにあのような特殊な植物をその場でスキャンできるほど簡単じゃないんですよ。闇を作る苔ですから手間も時間もかかります。陣の上に置いて、ゆっくりとスキャンする必要があるんです』

 「じゃあさ、あとでスキャンして蕾がついているかどうか調べてくれるのか?」

 『絶対にできると断言はできませんが、おそらく9割がたできると思っています』

 「やるなあ、スミレ」

 ポーチから出した人参っぽい野菜をまな板の上に置いて、キャベツもどきを取り出す。どっちも色が人参やキャベツらしくないが、味はそのままなのでもどきと呼んでいるんだよな。

 「コータ、何ができるの?」

 「ん? スミレが今日採取した苔を調べてくれるってさ。もしかしたら花の蕾がついているかもしれないぞ」

 「花? 咲かすの?」

 「い〜や。その花を使えばまた違うポーションが作れるんだってさ」

 「もっと作れる? 凄いね、スミレ」

 「へっ?」

 「スミレ、なんでも作れる、凄いね」

 いや、ミリー。スキルを持ってるのは俺だぞ?

 そりゃスミレがスキャンして調べるし、ポーションも作れるだろうけどさ。

 「あのな、ミリー、俺だってできるぞ」

 「うん、コータも、すごいね」

 キラキラした目を向けられると、それだけで鼻の下がでろんと伸びてしまった。

 慌てて咳をして顔を元に戻すがスミレにはバッチリ見られたみたいで、飛びながら口を押さえて笑わないようにしているのが見えた。

 「スミレ、何か言いたい事があるのかな?」

 『いいえ、特にありませんよ』

 ふんっ。

 「コータ、肉、切れたよ」

 「おっ、そうか? じゃあ味付けだな。チンパラは鹿みたいなもんだから・・・香辛料をまぶした方が臭みが気にならないか?」

 「くさく、ないよ?」

 「そ、そうか。じゃあ、ミリーに任せるか?」

 「でもわたし、よくわからない・・・」

 『コータ様、ミリーちゃんに無理言っちゃ駄目じゃないですか。子供が香辛料の事なんか知ってる訳ないですよ』

 「そ、そうか、すまん」

 そりゃそうだ。

 俺は慌ててポーチの中からあるだけの香辛料を取り出した。

 「じゃあ、これを使うかな?」

 「それ、どんな味?」

 「えっとカレーみたいな味なんだけど、スミレ、カレーってあるのか?」

 『少なくともこの辺りにはないです。わたしのデータバンクにも入ってません』

 どこかまだ冷たい口調のスミレにおたおたしながら取り出した香辛料の入った入れ物のふたを開ける。

 「わっ、凄い匂い」

 「うん。でも食べた事あるだろ?」

 「うん。ブガラ鳥の味付け、だったね?」

 「そうだな。で、これで味つけるっていうのはどうかな?」

 カレー味なら臭みも気にならないだろう。

 「コータ、この味好き?」

 「うん? おう、好きだぞ」

 「じゃあ、これでいい、よ」

 「俺の好みなんか気にしなくていいんだぞ?」

 「ううん、いいの。コータが、好きなら、これでいい」

 「ミリー。お前、良い子だなぁ」

 思わず手に持っていたスパイスをテーブルに置いて、俺は向かい側に立っているミリーのところに行くとそのまま彼女をぎゅうぎゅうと抱きしめる。

 「コータ、つぶれる」

 「い〜や、俺は潰さないぞ〜。ミリーは可愛いからな〜、潰す訳ないだろ〜」

 語尾を伸ばしながらデレデレする顔を戻せない。

 俺はそのままミリーの身体ごと自分の身体を左右に揺らしながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめ続けたのだった。





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 02/25/2017 @ 00:10  読者様のご指摘により、誤字訂正しました。

 薬師鹿 → 薬師しか 鹿ってwww ありがとうございました。

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