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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 草原に行こう
76/345

75.

 ずるずるとゴンドランドを最初のゴンドランドの所まで引っ張っていると、ミリーが自分の獲物の前で俺たちを待っていた。

 「スミレ、手伝って」

 『判りました。でもミリーちゃん1人では無理ですよ。コータ様に手伝ってもらいましょう』

 「わかった」

 俺抜きで俺の手助けの算段をしている2人に、俺は仕方ないと言わんばかりに軽く肩を竦めてみせる。

 「これ置いたら手伝うよ」

 「コータ、ありがと」

 おっ、俺の仕留めたゴンドランドの方がミリーの最初の獲物よりでかいぞ。

 後で自慢してやろう。

 ニヤニヤしながら俺はそのままミリーの獲物のところまで近寄ると、そのまま足を止めてしまった。

 「で、でけえ・・」

 どう見たって、たった今ミリーが仕留めたゴンドランドの方がデカいぞ。

 つい今しがたまで顔に浮かべていたニヤニヤ笑いはあっという間に消えてしまった、ちくしょう。

 それでも悔しいからなんでもないような顔をして、スミレが開けた穴から外に出るとそのまま羽を握って中に引き込む。

 ミリーも反対側の羽を掴んで引っ張ってくれるので、さっき1人で引きずっていた時よりは軽く動かせる。

 「スミレ、もうエサ、いらないね」

 『そうですね。2匹で十分でしたが、こうして3匹取れたのであればもうこれ以上呼び寄せる必要はないですね』

 そう言うとスミレは結界の内側に立っていた棒を消滅させた。

 すると、肉がころっと転がる。

 おそらくスミレが結界の角度を変えたんだろう、そのままエサだった肉は結界の向こうに転がっていってしまった。

 エサを刺していた棒は今朝ミリーがスミレに頼んでスキルで作り出したものだから、こうやって消滅させる事ができたんだろう。

 俺は肉の行方を目で追って、視界から消えたのを確認してから足元の3匹のゴンドランドを見下ろした。

 「あれ?」

 羽の色が変わった?

 「ついさっきまでどれも透明の羽をしてなかったっけ?」

 一番最初に仕留めたゴンドランドの羽は透明のままだったが、俺が仕留めたゴンドランドの羽はうっすらとオレンジ色をしている。

 そしてミリーが2度目に仕留めたゴンドランドの羽はうっすらと緑色をしている。

 「スミレ、羽の色が違うけど、種類が違うって事か?」

 『いいえ、同じ種類ですよ』

 「でもさ、3匹とも羽の色が違うよな?」

 『ゴンドランドの羽の色は死の間際に決定します。普段は透明ですが、周囲の色に合わせて多少色を変える事ができるんです。ですので、1発で即死に至るダメージを与える事ができれば透明の羽を得る事ができます。しかし即死に至るダメージを与える事ができなかった場合、ゴンドランドが最後に見た印象深いものの色が羽に残る事になります』

 「わたしのゴンドランドの、羽は緑。多分、最後に見たのは草、だから?」

 『コータ様のゴンドランドはじっとコータ様を見つめていましたから、おそらく瞳の色が羽に残ったんだと思います』

 これ、俺の目の色?

 『もちろん、そのものの色ではありません。それに近い薄い色となるんです』

 ふぅん、さすが魔物、ってか?

 「本当は、透明が欲しかった。ざんねん」

 「なんで?」

 「透明、値段が良い。色がつくと、少し値段が下がる」

 「そうなんだ?」

 『透明だと1撃即死の証明ですからね。高速で空を飛んでやってくるゴンドランドを1撃で仕留めるのは、それだけ大変だって事ですね。ですので3匹のうちの1匹が透明の羽、というのはなかなかという事ですよ』

 「へぇ〜、ミリーは凄いなあ」

 それだけミリーの弓の腕が良いって事か。

 「ちがう。コータと、スミレのおかげ」

 『いえいえ、いくら私たちが手伝ったとしても、ミリーちゃんの弓の技術がなかったらとてもではありませんが透明の羽を手に入れる事ができなかったと思いますよ』

 「そうだぞ、ミリー。ミリーが頑張ったからなんだからさ、もっと自信を持って良いんだぞ」

 くしゃっと頭を撫で回すと、くすぐったそうに頭を捩るミリー。

 照れくさそうな顔をしているのを見て、俺は更にくしゃっと撫で回してやった。

 「コータ」

 「いいだろ、これくらい」

 「ダメ。これから解体」

 「はいはい」

 これ以上やったら怒られるな、ってところで俺は素直に手を離してやる。

 「解体ってどうするんだ?」

 『ゴンドランドの場合は簡単ですよ。羽を切り取るだけです』

 「体は?」

 『普通はその場に捨て置きますね』

 役に立たないのか? まあ喰おうとは思わないけどさ、なんかに使えそうな気はするけどな。

 「これ、使えないのか?」

 『きちんと処理をすれば使えますよ。ですので持っていきます』

 「んじゃ、スミレのストレージに入れとくか?」

 『コータ様・・・』

 「いや、だってさ、でっかいトンボの胴体なんて俺のポーチに入れたく・・ごほん、入らない、よ?」

 視線を逸らしながらだから、きっとスミレにはバレバレだな、うん。

 『判りました。では2人で羽を回収したら、そのまま引き車の一番上の棚に片付けておいてください。その間に私がこれ(・・)の処理をします』

 「・・お願いします」

 『ただ、足だけはコータ様のポーチに入れてくださいね』

 「・・・・判ったよ」

 全く仕方ない、と言わんばかりの態度だが、文句を言える立場でもない俺は素直にお願いした。

 ゴンドランドの羽は俺のポーチに入れてもいいんだけど、出し忘れて人前でポーチを使う羽目になっても困るので、それを見越したスミレの指示に従う。

 でも、あれ、どうするんだろうな?

 俺は横目で処理をすれば使えるようになる、というゴンドランドの胴体を見ながらミリーと手分けして羽を切り取っていく。

 さっきは引き摺ってここまで運んでも平気に見えた羽は、ゴンドランドが死んで時間が経ったせいか少し柔らかくなった気がする。

 「ミリー、終わったか?」

 「うん。コータは?」

 「俺はあと1枚」

 「わかった」

 自分の背丈より長い羽を器用に9枚重ねて持つミリーは、俺の横で俺が最後の1枚を切り終わるのを待ってから2人並んで引き車に戻る。

 「スミレ、本当に、あれ、使うの?」

 「ちゃんと処理すれば使えるって言ってたぞ?」

 「ふぅん・・・でもわたし、羽以外を使う人、見た事ないよ?」

 「そ、そうなのか?」

 「だから、なんに使えるのか、わからない」

 そうだよなぁ。ただの黒い胴体、なんに使うんだろうな?

 俺とミリーはお互い顔を見合わせて頭を傾げるが、考えたところで何ができるのか思いつく訳でもない。

 「これからご飯?」

 「いや、どうだろうな。スミレが今日中に移動するって言ってたから、その行き先次第では携帯食かもしれないな」

 「う〜・・・わたし、あれ、嫌い」

 「好きっていうやつの方が少ないだろうなぁ」

 味のまずさを思い出したのか、ミリーが眉間に皺を寄せて心底嫌そうな顔をする。

 「俺のポーチにもうちょいマシな食いもんが入ってるから、もし携帯食だって言われたらそれ食おうな」

 「ホント?」

 「ああ、残りもんだけど、携帯食よりマシだろ?」

 「うん」

 あれは嫌だ、と全身で訴えるミリーを苦笑いしながら見下ろす。

 俺は引き車の後ろの観音扉を開きながら、ふと思いついた。

 「ミリー、これ全部売るのか?」

 「依頼は、12枚だよ。だから6枚残る。ギルドの受付の人は、多くても買い取るって言ってたけど、でも無理に売る、必要ないよ。それに依頼に出すのは、色がついたの。透明なのは、別に売れば、高く売れるよ」

 「俺が貰ってもいいかな?」

 「コータに? なんに使うの?」

 ミリーが受けてきた依頼だがら、全部売りたいって言えばそれでもいいって思ったんだけどさ、俺にとって丁度いい材料でもあるんだよな。

 「パンジーの引き車の窓に使おうかなって」

 「いいよ」

 「ホントか?」

 「うん、何色がいい?」

 あっさりと頷いたミリーは俺と自分が持つ羽の色を見比べている。

 「ミリーは何色の窓がいい?」

 「わたし?」

 「うん。別に1色じゃなくったって、3色全部使ってもいいんだぞ?」

 ミリーに言いながら、それもいいアイデアだな、と思う。

 「そうだよな、3色全部使ってステンドグラスみたいにデザインを入れてもいいんだよな」

 「すてん、どぐらす・・・?」

 ミリーはステンドグラスなんて聞いた事も見た事もないんだろう、不思議そうに俺を見上げてきた。

 「羽の色を組み合わせて絵を作るんだよ。それを窓に嵌め込むんだ、どう思う?」

 「綺麗・・・かな?」

 「うん、そうだな。もしかしたらスミレがこの3色以外にも色を作ってくれるかもしれないな」

 「スミレ、作れる?」

 「判らないけどさ、スミレならできそうな気がしないか?」

 「うん、スミレ、すごい」

 「だよな」

 俺のスキルの能力なんだけど、そうとは思えないくらいスミレはハイスペックなんだよ。

 いつだって俺は聞いてばかりだ。

 「ミリーはどんなデザインがいい?」

 「どんな・・って?」

 「だから、窓の絵を入れるとしたら、どんなのがいい?」

 「う〜・・とね。物を作る時の、地面の絵、がいい、かな?」

 「地面の絵?」

 「うん。地面にね、丸が出てくるでしょ? その中にね、出てくるキラキラした絵」

 なんの事だ?

 頭を捻ってみてから、ミリーの言っている絵の事が判った。

 「もしかして、六芒星陣の事か?」

 「ろく・・? 判んないよ・・でも、昨日ね、スミレが箱を作る時に、地面に出てきたの」

 「うん、それの事だよ。そっか、ミリーはあれがいいのか・・・まあ、確かにあれなら今ある3色もあれば十分だしな。それにシンプルでいっか・・・」

 あれならスミレだってデザインを起こしやすいだろうしな。

 「判った、スミレにも相談して、それでいいって言ったらそうしような」

 「うんっ」

 俺は羽を収納するためにそこで話を止めて車の中に乗り込んだのだった。








 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。b(^O^)d


Edited 05/05/2017 @ 16:17  誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

どう見たって、たったミリーが仕留めた → どう見たって、たった今ミリーが仕留めた

デザインを起こしやすいだろう品 → デザインを起こしやすいだろうしな

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