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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 到着
65/345

64.

 あけましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。

 という訳で、ミリーのナイフができた。

 「ちょっと握って見て確認してくれ」

 「いいの?」

 「ミリーのナイフだぞ? 他の誰が確認するんだ?」

 「判ったっ」

 揶揄うように言うと、慌てて立ち上がってナイフを取りに行く。

 ミリーはナイフを陣から拾うと、柄の部分をにぎにぎしながら帰って来る。

 「どうだ?」

 「ちょうどいいみたい」

 「そっか。じゃあ特に手直しはいらないな」

 「うん」

 ミリーのナイフは元のデザインは柄の部分はプラスチックだったんだが、さすがにプラスチックはこの世界にはない。

 だから柄を角の材質で作り上げる事で、この世界でも十分通用するようにしてある。

 角なんて言うものは持っていなかったので、同じカルシウムって事でブガラ鳥の骨が材料だ。

 「ほんじゃ、鞘を作るか」

 「さや・・・?」

 「ナイフの刃をむき出しにすると危ないだろ?」

 「布みゃけばいいよ?」

 あっさりと布を巻けばいいというミリーだが、さすがにそれは俺が嫌だ。

 「あのな、ミリー。布だといざという時に素早く出せないかもしれないだろ? それは解体ナイフだけど、同時に護身用としても使えるだろうからちゃんとした鞘を作って腰に差しておけばいい」

 「そうなの?」

 「うん、ミリーは弓を使うけどさ、もしかしたらいきなり襲われるなんて事があるかもしれないだろ? そういう時にすぐに身を守れるようにナイフを腰に差しておくといいぞ」

 「・・そうだね、判った」

 父親が亡くなってから1人であの林を彷徨っていた間にいろいろとあったんだろう。

 ミリーは俺の言葉に素直に頷いた。

 「よし、じゃあ早速作ろうか。素材は皮が無難か。でもミリー用だからちょっと色をつけるかな」

 「赤?」

 「赤がいいのか? じゃあそうするな。ついでに模様も入れてみる?」

 「お花?」

 「どんな花がいい?」

 やっぱりミリーは女のコだ。

 「ダリア?」

 「ああ、この宿の看板の花だな」

 それなら検索も簡単だ。

 俺はダリアの花をモチーフにしたイラストを検索してみる。

 検索内容のほぼ8割が俺の記憶を使ったデータなんだけど、結構花のイラストってあるもんだなぁ。

 「何色の花がいい?」

 「ん〜・・・オレンジ色?」

 パステルカラーのオレンジ色を指差しながら俺の顔を見上げる。

 「オッケー。じゃあ、それを鞘に並べるか・・・ん〜、4つくらいでいいかな?」

 「うん」

 スクリーンには赤い鞘に4つのダリアの花が並んでいるデザインが表示されていて、それを見てからミリーは納得したというように返事をする。

 「よし、じゃあポチっとな」

 この鞘は俺の魔力を元に作られているので、デザイン以外はレベルアップの足しにならないのが残念だ。

 「そうだ。ミリーの弓矢を作っとくか?」

 「わたしの?」

 「うん。ミリーが弓を使えるって事は判ってるけど持ってないだろ? だったら今夜のうちに作っとけばいつでもハンターの仕事依頼を受けられるだろ?」

 俺もだけどミリーだって依頼を受けなかったらハンターのレベルアップができないんだよな。

 「明日ハンターズ・ギルドに行って依頼を見てみるかな? もしいいのがあれば依頼を受けよう」

 「じゃあ、明日はハンターのお仕事?」

 「いいや、明日は依頼だけ受けてあとは依頼のための買い物や準備をしよう。ここも今夜と明日の分の宿をとってるから、出かけるのは明後日でいいだろ?」

 「判った」

 ミリーは自分のギルド・カードを取り出して星をそっと指で触る。

 今はまだ1つしか星はないけど、それが2つ3つと増えていくのを楽しみにしているみたいだ。

 「おっ、鞘ができたみたいだぞ?」

 「えっ? 取ってくるっ」

 立ち上がるとたたたっと走って鞘を拾い、すぐに左手に持ったままだったナイフを鞘に差し入れている。

 「どうかな? サイズはちょうどいい筈だけど?」

 「うん、ぴったり。コータ、ありがと」

 「どういたしまして。んじゃ、今度は弓を作るか?」

 弓は木製がいいかな?

 それとも部分的に金属を使った方が強度があがるか?

 いや、あまり強すぎるとミリーには引けないかもしれないか?

 この辺はスミレに聞いた方がいいだろう、とスミレの方を見ると彼女はまだマッチを作っているところだ。

 「スミレ、邪魔していいかな?」

 『何でしょう、コータ様?』

 「ミリーに弓矢を作ってやろうと思ってるんだけどさ、どんなのがいいか判らないんだ」

 『ミリーちゃんにどんなのがいいか聞きましたか?』

 「あ〜・・聞いてない」

 『じゃあ、ミリーちゃん、どんな弓矢が欲しいですか?』

 呆れた、と言わんばかりの顔で俺を見てから、スミレは笑顔でミリーに尋ねる。

 けどスミレのいうとおりなので文句も言えない俺は、ふん、と鼻を鳴らした。

 「どんな弓って?」

 『そうですね・・ミリーちゃんが使った事のある弓はどんなのでした?』

 「ん〜・・・木?」

 『部分的に金属とか使ってませんでした?』

 「・・よくわかんない」

 まあ子供に金属とかの部分的な事を聞いてもそこまでちゃんと見ている筈もないか。

 『長さは?』

 「う〜んと・・このくらい?」

 両手を大きく広げて弓の長さをスミレの教えようとしているけど、両手は広げられるだけ広げているから本当にそれが長さなのかもっと長いのか判らないなぁ。

 スミレもそう思ったようで苦笑いを浮かべている。

 『コータ様、ミリーちゃんの前で彼女と同じ幅に手を広げてください』

 「オッケー」

 『ではミリーちゃん、弓の長さはそれであってますか? それとももっと長い? 長いようだったらコータ様の手を動かして長さを変えていいですよ』

 スミレに言われたミリーは真剣な顔で俺の広げた両手を見てから、右手をもう少し外側に動かしてから2メートルほど下がって頷いた。

 『115セッチですね。でもちょっとミリーちゃんには大きいかもしれません』

 「そうだなあ・・・んじゃあとりあえず今は1メートル、っと1メッチくらいの長さの弓を作るか。それでミリーが大きくなったら親父さんが使っていたって言う長さの弓を作ればいっか」

 『それが無難でしょうね。大きすぎて使いこなせなかったらいざという時に危険ですからね』

 「って事だ。ミリー、それでいいか?」

 「うん」

 俺はスクリーンに弓のデータを呼び出す・・・と、あれ?

 「スミレ、なんか弓の種類が多いんだけど?」

 『それは私がギルドの倉庫に行った時にその場にあった弓や他の武器を全てスキャンしておいたからですね』

 「ああ、あの時かぁ」

 ミリーがハリソン村でハンター登録した時の事だな。

 「だったらあの時ミリーが使った弓を作ればいっか?」

 『そうですね、あの弓でしたらミリーちゃんも使えてましたからね』

 「ミリー、ハンター登録した時の事、弓を使ったの覚えてるか?」

 「裏庭で的を狙った事? うん」

 「あの弓だったら問題なく使いこなせてたみたいだから、あれにするか?」

 「いいよ」

 あっさりと決まってしまった。

 ま、これから弓を使う機会はどんどん増えていくだろうから、その時に改良点を聞いておいてミリー用に調整した改良版を作ればいっか。

 「だったらあっという間にできるよ」

 俺はスミレの手助けでミリーが使った弓を選んで、それをそのまま作る。

 「スミレの方はまだ時間がかかるのか?」

 『私の方は今すぐじゃなくても大丈夫ですよ。コータ様が眠っている間に作れますから』

 まあな、材料と俺の魔力さえあれば眠る必要がないスミレは一晩中でも物を作り続ける事ができるんだよな。

 「じゃあ悪いんだけどさ、俺がミリーの弓と矢を作り終えたらミリーを風呂に連れて行ってくれないかな?」

 『そういえばお風呂がまだでしたね。でしたらすぐに入れましょうか?』

 「ん〜・・いや、いいよ。ミリーも自分の弓と矢ができるのを見たいだろうしな。それに俺はミリーが風呂に入っている間に宿にある大風呂に行ってくるから」

 俺が部屋にいるとミリーも落ち着いて風呂に入れないだろう。

 彼女は風呂に入った事がないからサポートにスミレをつけるつもりだけど、すっぽんぽんで風呂場から出てこられても俺が困るしな。

 どうやらミリーには羞恥心というのがないらしい。

 初めて会った時も平気で俺の前ですっぽんぽんになろうとしたし、それ以降も何度か俺の前ですっぽんぽんになって服を着替えようとした事もある。

 俺と出会うまでは早くに母親が亡くなった事で村を出るまで、いや出てからも全て父親の手を借りてしていたからだと思うんだ。それにまだ小さかったから、じゃないかな。

 一番困ったのは休憩の時に俺のすぐそばで用を足そうとした事だった。

 あれはマジでやばかった。

 すぐに飛んできたスミレがミリーを茂みに連れて行き、俺は後をスミレに任せて採取に行くと言ってそばを離れたんだけどさ。

 きっと父親と2人でいた時に彼女の安全のために父親がそうしていたからだろうと頭では判っちゃいるんだが、それでもすっごく心臓に悪い出来事だったよ、うん。

 「コータ、お風呂?」

 「うん、ミリーは入った事ないから入り方が判らないだろ? だから、この部屋に付いているお風呂でスミレに入り方を教えてもらおうな。その間に俺は宿にある風呂に入ってくるよ」

 「コータ、1人で行くの?」

 「おう。男専用の風呂だからな、ミリーは一緒に入れないぞ」

 一緒に行きたいと言いたそうな顔をしていたから言われる前に先制攻撃を仕掛けると、ミリーはガッカリした顔をしてスミレを見る。

 「スミレ、助けてくれる?」

 『もちろんですよ、ミリーちゃん』

 「ありがと」

 スミレが助けると確約したのでホッとしたようだ。

 いや、まぁ初めてだからさ、不安なのは判るけど。

 ただの風呂だぞ?

 それとも猫系獣人は風呂に入らないのか?

 でもよく考えたら普通の宿には風呂はないなぁ。もしかしたら上流階級では当たり前だけど、一般家庭では普及していないって事かもしれないな。

 「んじゃ、とっととミリーの弓と矢を作るぞ」

 『矢は多めに作っておいてくださいね。魔法マジックポーチに入れておけば大丈夫でしょう?』

 「うん、そうだな。いざという時に矢が足りなかった、なんて事になっても困るからな」

 備えあれば憂いなし、っていうもんな。

 俺は少しでも早く風呂場に行くために、すぐにスクリーン操作を始めたのだった。





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。b(^O^)d

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