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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 到着
64/345

63.

 今年最後の投稿となります。


 まさか風邪のひき納めをするとは思っていませんでしたが・・・予約投稿をしていて良かったです。でもそのかわりに書き溜め分がすっからかん・・・orz

 週末はお休みなのでなんとかそれまでに体調を取り戻してなんとか毎日投稿できるように頑張ります!

 地図を見終わった俺たちは、それから少しだけ役所の中を見て回った。

 どうやらここではこの都市での行政機関を担っているようで、たくさんの人が働いているようだ。

 ミリーは地図があった玄関ホールから3階に上がって、そこにあるバルコニーから外壁の方を見る。

 とはいえ外壁の方が高いから、ミリーが見る事ができたのは外壁までの町並みだけだったけどな。

 「壁の外がよく見えない」

 「まあ高さが壁と同じくらいだから仕方ないよ」

 「残念」

 本当にがっかりしたと言わんばかりのミリーに苦笑いを向けてから、俺はバルコニーのドアを振り返った。

 ドアは木でできておりかなり頑丈な作りだが、なんと窓ガラスもどきが嵌められていてドアを閉めた状態でも外を見る事ができるようになっていた。

 この世界に来て初めて見る窓ガラスだが、元の世界のガラスではない事は一目瞭然だった。

 なんせ透明なところは同じでもまるで葉っぱにある葉脈のような線がいくつも入っているんだからさ。

 それでも木の窓やドアと違って外を見る事ができるのはありがたい。

 あとで誰かになんでできているかを聞いて、少しだけ買ってみよう。

 サンプルがあればスミレも簡単に作れるからな。

 本当は普通のガラスがいいんだけど、さすがにスミレにこの世界にはまだないと言われるとパンジーの車に堂々と付ける訳にはいかなかったのだ。

 それからもう少しだけ中を見て回ってから先ほどラバン車を降りた通りに戻ると、帰りのラバン車がやってくるのを待ってそれに乗り込む。

 今度は天井に付いている紐を引っ張って降車を知らせるベルを鳴らせた事が嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべたミリーは足取りも軽く蒼のダリア亭に戻っていった。







 蒼のダリア亭は1階が食堂になっていて、ここのご飯も美味しかった。

 スープによく判らない肉のステーキ、それにパンが1つついていた。飲み物はお茶やジュースなら無料で付いてくるが、お酒は別料金だそうだ。

 この世界の酒というものを俺は2−3回しか飲んだ事がない。

 飲んだ相手はもちろんボン爺だ。

 とはいえなんていうかドブロクのような白く濁った酒で、これがまた超キツい。

 俺は木のコップ半分で酔っ払った自覚を持ったのでそれ以上飲まなかったが、それでも翌朝少し頭が痛かったのだ。

 そんなキツい酒を飲んで前後不覚に陥っても困るので、ボン爺の家を出て以来1度も酒を飲んでいない。

 なので今夜も夕飯の時に飲んだのはお茶だった。





 「ただいま、スミレ」

 「ただいみゃ」

 『おかえりなさい、コータ様、ミリーちゃん』

 そうして食事を終わらせて俺とミリーが部屋に戻ると、スミレが忙しそうに物を作っていた。

 レベルが4に上がってからスミレは更にパワーアップしており、俺から50メートルほど離れても存在し続ける事ができるようになったのだ。

 「何作ってんだ?」

 『マッチですよ。あとはライターの改良版です』

 「改良版?」

 前にライターは作った事があるけど、改良しなくちゃいけない事ってあったか?

 『以前作った物は大きめの魔石が必要でしたが、今回のライターは小さな魔石で使えるようになりました。それに燃費も考えましたので、魔石のサイズが小さくなっても性能自体は同程度のままなんです』

 「へぇ、じゃあ、明日は魔石を買ってみるか。俺が今持ってる魔石ってでっかいのが1つだけだからさ。でかいのでもいいけどせっかくスミレが省エネバージョンを作ってくれたんだから、どのくらい小さな魔石で動くのか調べたいだろ?」

 俺の持っている魔石は以前偶然仕留めたライティンディアーのものだけだ。

 『またテストはしてませんけど、性能は既に判ってますよ?』

 「そうなのか? でもさ、一応その辺で売ってる魔石を買っておこうよ。それを入れたライターの方が説明が楽な気がするよ」

 『説明、ですか?』

 「うん。だってさ、それを持って生産ギルドに行くんだろ? その時にどんな魔石を使うのか、って話になった時に見せるためにも手元にいくつかあった方がいいと思うんだ」

 都市ケートンにいる間に生産ギルドにメンバー登録して、その時にいくつかの商品を登録しておくつもりだ。

 『そういえばついでにマッチも商品登録されるんですか?』

 「うん、ついでにね。まぁこの世界ではまだ火薬はないみたいだから真似ができる人はいないと思うけどね。でもまぁ1つでも多く商品登録しておいた方がいいかなって思ってさ」

 「1つ2つだとギルドが認識しないからですよね」

 「うん、まあな。ちょっと名前が売れるような商品を登録しておきたいんだよ」

 やっぱさ、どこに行ってもネームバリューっていうのは大事だと思うんだよ、うん。

 「んじゃマッチとライターはスミレに任せるよ。好きなだけ作ってくれたらいいから。俺はこっちでバタフライナイフを作ってみる」

 『バタフライナイフ、ですか?』

 「うん。折りたたみ式のナイフはないって言ってただろ? あれって結構便利だからさ、作れば売れると思うんだ。それにバタフライナイフだったら商品登録と一緒に作成方法を登録しておけば、俺じゃない人も作れるだろ?」

 それで1つにつき何パーセントか売り上げを貰うんだよ。

 働かず作らずで収入が確保できる、良い事だよなあ〜。

 「他にも色々と作ってみたい物はあるけど、まぁそれはおいおいだな」

 『ここでは場所が狭すぎますか?』

 「うん、まあな。それにどこかで野営した時に作る方が気にせず試せるだろ?」

 休憩所なら他に人がいなかったらやりたい放題できるじゃん。

 という事で、俺は早速スミレのすぐそばに腰を下ろしてスクリーンを展開する。

 「そういやスミレは陣無しでやってるけど、それでも大丈夫なのか?」

 『もちろんですよ。六芒星陣を使っていたのはどこで物を作っているのかを見せるためですから』

 「なんだよ、それ。って事は見かけだけ?」

 『そうとも言えますね』

 俺と目を合わさないままスミレはしらっと言う。

 そんなスミレを俺はじーっと見つめてみるが、俺の視線に気づいているくせにこっちを見ない。

 ちくしょう。

 仕方ねえな、俺は軽く肩を竦めてからバタフライナイフのデータを探すためにスクリーンに触ろうとしたところで、いつの間にか隣に座っていたミリーが俺の袖をツンと引っ張った。

 「コータ、何作るの?」

 「ん? ああ、ナイフを作ってみようかなって思ってさ」

 「ナイフ?」

 ナイフと聞いてミリーの目がキラッと光る。

 「なんだ。ミリーもナイフが欲しいのか?」

 「うん、解体用? のナイフが欲しい」

 「あれ、ミリー。解体できるんだ?」

 「おとうさんが教えてくれた」

 弓を使う事もできて解体もできる。

 ミリーってもしかして俺よりなんでもできる?

 う〜む。これはちょっとマズイのか?

 いくら何でもこんな小さな子どもよりも出来が悪いというのはマズイぞ。

 「じゃあミリーの手にあった物を作ってあげるよ。その代わり俺にも解体を教えてくれるかな?」

 「いいよ」

 『コータ様? 解体でしたら私がしますよ?』

 「いやいや、スミレが解体もどきの事ができるって事はブガラ鳥を仕留めた時に知っているけどさ、それってどう考えても人前じゃあできない手段な訳だろ? それにミリーにできる事を俺ができないのは駄目だ。という事で、ミリー、よろしくな」

 「うんっ!」

 俺が頭を下げて頼むと、ミリーがすごく嬉しそうに頷いた。

 きっと俺に頼られた事が嬉しいんだろうな、うん。

 「よし、じゃあまずはミリーの解体用ナイフを作るか。どんな形がいいか教えてくれるか?」

 「どんな形?  う〜んと・・・これくらいの長さ?」

 「10センチくらいか」

 「10せんち?」

 「おっと、なんていうだったっけ?」

 『セッチですよ』

 頭を傾げているとすかさずスミレが教えてくれる。

 「そうそう、セッチだったな。ミリーは10セッチくらいの長さのナイフがいいのか? そんな短いので解体なんてできるのか?」

 「大きなナイフだと綺麗に皮を剥げないよ?」

 「そ、そうなのか」

 解体なんてした事ないから知らねえよ。

 「それでね、先っちょだけは両方ともに刃があるのがいいの」

 「なるほど・・・」

 先っちょだけ刃?

 さっぱり判らん。

 という事で、俺はスクリーンにナイフのデータを呼び出した。 

 5秒ほど小さな点が点滅しながらスクリーンを移動して検索中となっていたが、すぐに検索結果が出てきた。

 「って、なんでこんなにナイフの種類があるんだよっっ」

 ナイフでヒットしたのは5894件。俺、こんなにたくさんのナイフを見た事があるんだろうか?

 『ギルドで本から得た情報もそこに入っていますからね』

 「いつの間に? って、そうか、そういやスミレはジャンダ村で図鑑とかスキャンしたんだったっけ」

 仕方ないな。だったらナイフだけじゃなくて、解体って単語も入れてみるか。

 すると今度は一気に数が減って712件となる。

 まあこのくらいなら見ていってもいっか。

 「ミリー、これからここにナイフの写真・・・あ〜っと、ナイフの絵が出てくるからその中で気になったのがあったら言えよ?」

 「絵?」

 スクリーン自体はスミレが使っていたから既に慣れたようだが、絵、と言われて頭を傾げているミリーを横目に俺は早速1つずつ見ていく。

 スクリーンにはネットで買い物をする時に写真と説明書きが出てくるみたいに、写真が左にあって右に少し商品説明が書かれているものをスクロールしていく。

 「んん・・・これは出刃包丁みたいだなぁ・・・こっちはなんか変に曲がって見えるなぁ・・・」

 解体ナイフで検索した結果、見た目は柄の部分と刃の部分の長さが同じようなものが多いんだが、刃が妙な曲線を持っていたり出刃包丁みたいに太めだったりしている。もちろん普通のナイフっぽいのもあるんだが、何が解体用ナイフの特徴なのかおれにはさっぱりだ。

 「コータ、それ」

 「おっ? なんかいいのがあったのか?」

 俺はスクロールを止めてミリーが指さすのを待つ。

 「コータ、見えなくなった」

 「見えなくなった? ああ、ミリーがストップかける前に俺がスクロールしすぎちゃったのか。じゃあ、ちょっと待ってな」

 「あっ、それっ」

 どれどれ、とミリーが指さす写真をみると、パッと見は果物ナイフみたいなナイフがある。

 「これか? これって果物用じゃないのか?」

 「違う。それ、おとうさんが持ってた解体用ナイフそっくりなの」

 「そっか、じゃあ、ちょっと見てみるか」

 久しぶりにスクリーンの横に呼び出した小さな陣の上に投影すると、ミリーは驚いたように陣の上に浮いているナイフを覗き込んでいた。

 「こんな感じでいいのか?」

 「うん。でもね、先っちょが尖ってないの」

 「先っちょを尖らせるのか?」

 「うん、先っちょだけ両刃にできる?」

 「ん? 多分な。ちょっと待ってろ。えっと、これをこうして・・・それからこっちのボタンを押して・・これを選択すればいいのか? うん、まあこんなもんだな」

 俺がスクリーンの選択肢の中から1つずつミリーの要望に合うものを選んでいくと、確定ボタンを押す度に少しずつナイフは形を変えていく。

 「よっしゃ、こんなもんかな? ミリー、どうだ?」

 「う〜ん・・いいかな?」

 「じゃあ、この柄の部分を握るように手を当ててみてくれるかな?」

 「でも触れないよ?」

 「うん、そうだな。だからさ、触ってる気になって手を当ててみてくれ」

 「んん? 判った」

 ホログラムだからミリーの手は陣の上に浮かんでいるナイフを通り過ぎてしまうが、俺が手を添えて彼女が柄の部分を握るような形で指の位置を固定すると、俺はそのまま動かさないようにして型をとる。

 「よし、いいぞ。じゃあ作ってみるか」

 「いいの?」

 「手伝ってくれてありがとうな」

 「ん、どういたしみゃして」

 ぺたん、と音がするように俺の隣に座ると、ミリーは俺のデータ入力をじっと見つめる。

 でもな、スクリーンに出てくるのは日本語だから、きっとミリーには俺がどんなデータを入力しているのかなんてさっぱり判らないだろうな。

 それでも真剣な表情でスクリーンを見つめるミリーは可愛い。

 俺はにやけそうになるのを必死に我慢しながら、ミリーの為の解体ナイフのデータを入力するのだった。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。b(^O^)d

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