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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
ハリソン村 ー 見つけたものは?
58/345

57.

        Merry Christmas and A Happy Holiday Season!!


 ミリーが『ま』を発音できないという設定にしていたのに、『ま』が言えるようになっていたので、51、51話にあった『ま』を『みゃ』に訂正しました。申し訳ありませんでした。

 どのくらい時間を空けて戻ればいいのか。

 俺には全く見当がつかなかったから、とにかく辺りが薄暗くなるまで俺は休憩所のそばの茂みで手当たり次第に目につくものを袋に詰めていった。

 いくつかの薬草は見知ったものだったからそれは小分けにして袋に詰めていったけど、それ以外のものは初見のものが多かった。

 ジャンダ村を出てから距離にしてどのくらいだろう?

 それでも十分植物生態が変わるだけの距離だって事だ。

 俺は恐る恐る茂みをかき分けて今夜の野営地に戻る。

 パンジーは軛から離れて休憩所の中に生えている草を食べている。

 そのそばには引き車があり、その向こうから声が聞こえるのでスミレを呼んでみる。

 「スミレー」

 『コータ様?』

 「もう終わったのか?」

 『はい、測量は終わりましたよ』

 「ちゃんとミリーは服を着てるんだな?」

 『はい』

 よし、ミリーはスッポンポンじゃない。

 それは絶対に確認したかったんだよ。

 なんせあのスミレの事だ、もしかしたらミリーをスッポンポンのままそこに立たせてたかもしれないからな。

 俺は引き車を回るように移動してから、先ほどスミレが陣を展開したところに行く。

 そこにいたのは、先ほどまでと同じ服を着たミリーだった。

 「あれ? 服を作ったんじゃなかったのか?」

 『いいえ、材料が足りなかったのでとりあえず下着だけいくつか作りました』

 「コータ、スミレ、すごいよ」

 服が同じ理由を説明するスミレと、座っていた地面から飛び上がって俺のところに走ってきたミリー。

 俺はミリーの頭を撫でてから、ポーチに手を伸ばしていくつもの袋を取り出してから陣があった場所に置く。

 「ほい、中身は確認してから使ってくれよ?」

 『はい、ありがとうございます』

 「んじゃ、俺は竃を出して晩御飯を作るよ」

 俺は取り出した袋を今は消えてない陣があった辺りに置く。

 「ミリー、何か食いたいものあるか?」

 「食べたい、もの?」

 「うん。なんでもいい・・・とは言えないけど、とりあえずリクエストをくれたら、そこから考えるよ」

 「お肉?」

 「うん、まぁ、そうだな。スープに入れて煮込むか? それとも焼く?」

 「ん・・・焼く?」

 「いや、まあ、俺が聞いてんだけどなぁ。んじゃ、昨日みたいに焼くか」

 「ん」

 でも肉を焼くだけっていうのはなぁ。

 「じゃあ、肉を焼いてスープを作るぞ。ついでにジャンダ村で買ったパンをつけるか」

 「うん」

 俺は陣と引き車がある場所のそばの茂みのそばにポーチから取り出した竃を設置して、同じくポーチからさっき拾ってきた薪や乾燥した落ち葉に枝を取り出して火を熾す。

 竃の火が安定するまでの時間を利用して鍋を取り出してお湯を沸かす。

 「スミレ、俺が採ってきたものの中に、なんか食えそうなものあるか?」

 あればスープの具にしたい。

 『ちょっと待ってくださいね・・・』

 スミレは俺に返事をしながら、早速袋の中身をスキャンしている。

 『このキノコは大丈夫ですね。それからこっちの菜っ葉も大丈夫です』

 「おっけー、んじゃそれを入れてスープを作るよ。肉はブガラ鳥でいいよな」

 昨日は焼き鳥にしたから、今日はなんにしようか?

 めんどくさいからまた焼き鳥でいいかな?

 「ミリー、昨日と同じでいいか?」

 「何が?」

 「肉。今あるのがブガラ鳥だけなんだよ。だからさ、昨日みたいな焼き鳥で構わないか?」

 「うん。お肉なら、大丈夫」

 肉だったらどんな調理法でもオッケーてか?

 ミリーは猫系獣人だから、やっぱり肉食って事かな?

 いや、でもさ、それにしてはちゃんと火が通ってる方が好きそうだしなぁ。

 「んじゃそうするな。スミレはこれからミリーの服を作るのか?」

 『そうですね・・・私ではコータ様の夕食作りの手伝いはできませんから、今のうちにミリーちゃんの服を作った方がいいですね。食後にポーションを作りましょう』

 「オッケー」

 「ポーション?」

 ミリーがポーション、と呟くのが聞こえた俺は、彼女の方をみる。

 「なんだ、ミリー?」

 「ポーション、スミレが作るの?」

 「ん? おう、スミレが作ってくれるぞ。その材料はさっき採ってきたからな、それを使ってポーションを作るんだ。そういや今日はパンジーとミリーにポーションあげてないなぁ」

 いつもなら野営地についたらパンジーにポーションをあげるんだけど、そういや今日はすっかり忘れてたな。

 俺はここについてからの出来事を思い出し、忘れても仕方ないと自分に言う。

 「わたしも?」

 「ミリーはまだ回復してないからな。昨日飲んだだろ? あれは体力回復ポーションだよ」

 「あんまり美味しくない・・・」

 「そりゃ薬みたいなもんだからな。でもスミレの話だと、あれでも味はマシな方らしいぞ?」

 「うぇ・・・」

 苦虫を噛み潰したように口元を歪めるミリーを見て、俺は吹き出しそうになるのを必死に止める。

 ここで笑ったらミリーの機嫌を損ねるのは言わずもがなだもんな。

 「体力を取り戻すまでは、美味くなくても毎日1本ポーションを飲もうな」

 「・・・・うん」

 仕方ない、と言わんばかりに露骨にがっかりした顔になるミリー。

 「ほら、こっちは俺1人で大丈夫だから、ミリーはスミレの作業を見ておいで。これからミリーの服を作るって言ってたぞ?」

 「服? わたしの?」

 「そうだよ。ほら、見に行け」

 「うんっ」

 嬉しそうにミリーは尻尾を少し揺らしてから、ほんの数歩のところにいるスミレのところに走っていく。

 俺はそれを見送ってから、スープを作り始めた。

 





 夕飯の肉に齧りつきながらも、ミリーは少しだけ不満そうだ。

 俺はそれを見ながら、俺とミリーの間に木箱を置いてその上に座っているスミレに視線を向ける。

 スミレはそんな俺の視線に気づいて、苦笑いを浮かべる。

 『さっき、できたばかりの服を着たいって言ったんですよ。でもこれから夕食だから新しい服は明日、って言ったんです』

 どうやらスミレは俺にだけ聞こえるようにしているみたいで、ミリーはスミレの方を振り返る事もない。

 「ミリー、肉ばっかり食ってないで、ちゃんとスープも食べるんだぞ」

 「わかった」

 慌ててスープの入ったカップに手を伸ばすミリー。

 「そうだ、スミレ。パンジーの車の中には布団は1つしかないだろ? ついでだから、今夜のうちに例の羽毛布団を作ろう」

 『そういえばそのためにブガラ鳥を仕留めたんでしたっけ』

 「そうそう。昨日は宿に泊まったからいらなかったけど、さすがに今夜は2人分はいるだろ?」

 『でもパンジーちゃんの引き車に布団2つは並びませんよ?』

 「判ってるって。俺は外で寝るから大丈夫だよ。まぁテントは出さないけど、シートを敷いとけば大丈夫だろ?」

 どうせスミレが結界を張ってくれるんだしな。

 『まあそうですね。寒い訳ではありませんから、大丈夫でしょうね』

 「うん、だからミリーには車の中で寝てもらうよ」

 「コータ」

 「ん、なんだミリー?」

 俺とスミレが話していると、ミリーが声をかけてきた。

 「わたし、外でいいよ?」

 「ミリーは車の中で寝ればいいよ。俺は男だからね、外でも大丈夫」

 「でも・・・」

 「気にしなくていいって。今のミリーはしっかり寝て元気になるのが仕事だからな」

 「うん・・・」

 そう言われてもやっぱり気になるみたいで、ミリーは少しションボリしている。

 どうやら俺たちに引け目を感じているみたいだ。

 行くあてのない自分を受け入れてくれたのに役に立たないとでも思っているんだろう。

 「それより、早く食わないとスミレがポーションを作るのを見せないぞ?」

 「だめっ」

 「ならちゃんと食べような」

 「うん」

 「スミレ、何を出せばいいのか教えてくれ」

 慌ててスープを飲むミリーを見ながら、俺はスミレにポーション作りに必要なものを聞く。

 『薬草と水ですね。薬草もあるだけの種類全部出してくださいね。それを見てからどんなポーションを作るか決めますから。あとはブガラ鳥の羽の入った袋も出してくだされば羽毛布団を作りますね』

 「雑草は足りてるのか?」

 『はい、先ほどミリーちゃんの服をいくつか作りましたが、全部使ってませんのでそれを使います』

 「あれ? 全部使わなかったのか?」

 『もう少し木の実を集めてから作れば、可愛い色の服が作れますから』

 「あ〜、判った。じゃあ明日はもう少し木の実を探してみるよ」

 『お願いしますね』

 ニッコリと笑みを浮かべるスミレを見ていると、探さないとは言えなかった俺だった。

 俺は立ち上がると先ほどまで陣が展開されていた辺りまで行くと、ポーチから羽が入った袋を取り出した。

 一応大きめの袋3つ分あるんだよ、羽。

 全部使っても多分足りないと思うけど、その辺は多分俺の魔力で補填するつもりなんだろうな。

 「終わった」

 ツンツンとシャツの裾を引っ張られ、横を見るとミリーが待っている。

 「ちゃんと全部食べたのか?」

 「うん」

 「スープも?」

 「うん」

 「よし、じゃあ一緒にスミレの作業を見るか」

 「うんっ」

 「じゃあ、スクリーン・オープン」

 俺は苦笑を浮かべながら目の前にスクリーンを呼び出す。

 『スクリーン・オープン』

 その横で、スミレも同じように小さめのスクリーンを呼び出した。

 「あれ? 俺のスクリーンのサイズ、デカくね?」

 『レベルアップしましたから』

 「そうなんだ。じゃあ、もう1回レベルアップしたら、スミレのスクリーンも俺のと同じサイズになるって事?」

 『はい、それに必要であればもう1つスクリーンを出す事もできるようになりますよ』

 ウキウキと擬音が入りそうなほど嬉しそうに報告してくるスミレ。

 「じゃあ、スミレはポーションを作ってくれるか? 俺は・・っと、スミレ、もう1つ陣を展開できないのかな?」

 『できますよ〜。ついにレベル4ですからね〜。もう1つ陣が展開できるようになりました〜〜』

 歌うように語尾を伸ばしながら教えてくれるスミレを見ているだけで、どれだけ嬉しいのかがよく伝わってくる。

 「オッケー、じゃあスミレはポーションだな。俺は羽毛布団を作るよ」

 『1人で大丈夫ですか?』

 「うん。判らなくなったら聞くよ」

 『判りました』

 「という事だ。ミリーは俺でもスミレでも見たい方を見ればいいよ」

 「う〜ん?」

 「ただ、さっきも言ったけど、誰にも言わないようにな?」

 「うんっ」

 ここには俺たちしかいないけど、とりあえず確認のためにミリーには言い聞かせる事にした。

 それにすぐに頷いたミリーの視線は既にポーションを作り始めたスミレの陣に向いている。

 俺はそんなミリーを横目で見ながら、羽毛布団を作るべく、スクリーンに触れるのだった。





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。b(^O^)d


Edited 05/05/2017 @ 15:36  誤字のご指摘をいただいたので訂正します。

どうせスミレが結界を張ってくれるだしな → どうせスミレが結界を張ってくれるんだしな

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