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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
長すぎるけど、プロローグ
4/345

3.

 カー⚪︎ル・サンダースの真顔というのは、あんまり似合わないような気がする 。

 フライドチキンの店の前に立っている姿はいつだってニコニコと笑っているからだろうか?

 そんな事を考えながらも、俺は目の前の自称神様(カー⚪︎ルおじさん)をジッと見つめていた。

 「あの・・・?」

 黙って見ているだけの俺に、自称神様(カー⚪︎ルおじさん)はまた頭を少し傾げている。

 「ああ、すまん。その、なんだ。思いがけない事を言われた気がしたんで、頭の中で整理していた」

 「そうですか?」

 「ああ、なんか人生をやり直してみないか、って聞かれた気がしてな。どこをどう聞き間違えたのか、と考えていたんだ」

 「いいえ、聞き間違いではありませんよ? 私はあなたに人生のやり直しを提案しました」

 ふむ、どうやら聞き間違いではなかったようだ。

 だが、そんな事できない筈じゃなかったのか?

 「でもあんた、生き返らせる事はできないって言ってなかったか?」

 「はい、言いました。他の神の世界に干渉する事は禁止されていますから、たとえそれが私のミスであってもあなたを生き返らせる事はできないんです。その事に関しては本当に申し訳なく思っています。」

 「じゃあ、どうやって人生やり直すんだよ」

 「私があなたを生き返らせる事ができないのは、あなたがもともと住んでいた世界での話です。ですがそれが私の管轄である世界となれば話は別です。ですから私の世界で 人生のやり直しをしませんか、と提案したんです」

 「・・・つまり、異世界、って事か?」

 「そうですね。その認識であっています」

 「なるほど・・・・」

 何がなるほどかよく判っていないが、俺はそう言いながら頷いた。

 「もちろん、無理にとは申しません。ですが私のせいで中途半端に生を終わらせる事になった責任は取らせていただきたいと思って、私にできる唯一の提案が私の世界での人生やり直しです」

 「それって、さ。もしかして新しい両親ができるとか? まさか赤ちゃんからやり直し?」

 俺はふと頭に浮かんだ疑問を口にした。

 そういえば以前読んだラノベの展開がそんなだったな、と思い出したからだ。

 「いいえ、生まれてからのやり直しとなると大変だと思いますから、今の年齢か10代後半くらいの年齢からのやり直しの方が精神的にもいいか、と」

 「そりゃそうだなぁ。今更赤ん坊やれって言われても、なぁ」

 生まれてすぐに転生したって判るっていうのはどうだろう、と俺も思う。

 思い通りに体を動かせるようになるまで10年以上待たなくちゃいけないんだよな。なんかそれって我慢できない気がする。

 「できれば今の年のままでいいかなぁ。下手に若くなると思考の齟齬が出てくる気がする」

 「判りました。では北村さんの今の年齢である25歳で設定します」

 「そうしてくれると楽だな、たすかるよ。ところで、さ。なんで俺の名前知ってるんだ?」

 「もちろん、私が神だからです」

 「あ〜、はいはい」

 そりゃ違う世界で人生やり直しをさせる事ができるって事は神様かもしんないけどさ、この神様(カー⚪︎ルおじさん)、まったく威厳がないから全然言葉にありがたみがない。

 「真面目に聞いてください」

 「うん、聞いているよ。じゃあ、俺はこのまま行くって事?」

 「はぁ・・・いいえ、少しだけここで眠ってもらう事になりますね。あなたを私の世界に送る前にあなたの魂が入るための肉体を作らなければなりませんから」

 「なるほど・・そっか、そういやそれぞれの世界に適応した体がいるって言ってたよな」

 「それもありますが、北村さんの肉体は既にありませんから」

 「へっ・・・?」

 「電車の事故で撥ねられたんですよ。そりゃあもうバラッバラのグッチャグチャでしたから、とてもではありませんがあれを再生するよりは新しく作り直す方が楽です」

 「・・・・おぅ」

 そういや、俺、電車に轢かれたんだったな、と神様(カー⚪︎ルおじさん)の言葉で改めて思い出した。

 「じゃあさ、少しだけ身体能力高めにできんの?」

 「もちろんです。それだけでいいんですか?」

 「へっ?」

 「これから新しい身体を作り上げるんですから、もし他に要望があればその通りにしますよ。それに元々通常よりも頑丈な身体にするつもりでしたから」

 「おぉっっっ」

 すっごい!

 まさかのラノベ展開が来たーーーーーー!

 俺はウッキウキで、それならと気になった事も聞いてみる。

 「じゃ、じゃあさ、スキル、とかも貰える?」

 「1つだけ差し上げる予定です」

 「1つだけって、もっと貰えないの?」

 「無理ですよ。身体は1つなんですから、その身体に馴染むスキルも1つだけです」

 1つだけ、か。ショボいな。

 そうは思うものの、それでも貰えるのなら貰いたい。

 「その前にまずは身体を作ってしまいましょう。こちらの方は少し時間がかかりますからね。設定だけでも決めてしまわないと、いつまで経っても私の世界に行けませんよ。それで、身長とか希望はありますか?」

 「身長・・・? いや、それは今と同じでいいかな。体重も同じくらいでいいや。ってか、その世界の平均的な身体基準って事にしてくれないかな。デカすぎても小さすぎても目立つようなのは嫌だからさ」

 「普通の人族であれば、今の北村さんは標準体型ですね。中肉中背・・・そして、よくあるサイズです」

 「・・・・・なんか、引っかかる」

 「いえいえ、そんな事ないですよ。まぁ、それでは今の体型を基準にして身体を作っていきます」

 神様(カー⚪︎ルおじさん)の視線が俺の全身を上から下へと動き、それから股間に戻ってきた事になんとなく悪意を感じた気がするが、きっとそれは俺の被害妄想だろう、うん。

 神様(カー⚪︎ルおじさん)は俺と話をしている間も、目の前で正座をしたまま中空を睨みながら器用に指を動かしている。

 まるでそこには見えないスクリーンとキーボードがあるようだ。

 「髪の色は?」

 「おっ、そんなのも選べるのか?」

 「はい、1から身体を作ってますからね」

 「じゃあーー・・・・っと、目立ちたくなかったら、その辺も普通にありふれた色がいいのか。どんな色がある?」

 「どんな色と言われても・・・ああ、そういえば北村さんの世界ではあまり色の種類がありませんでしたね。私の世界では何色でもあり、です」

 「そうなんだ? じゃあ・・・まあ馴染んだ黒で? 目の色はおまかせで」

 昔遊んだRPGゲームのキャラクターを思い出しながら、俺はよく判らないから髪の色は今のまま、でもそれじゃ面白くないから目の色はおまかせにする。

 あのキャラクターは剣士だったけど、これから行く世界はどんな世界なんだろう?

 「そういや、あんたの世界って、俺がいた世界とは違うのか?」

 「私の世界と北村さんの世界はかなり違うと思います。そうですね・・・ゲームの世界のような感じ、でしょうか? 冒険と魔法の世界、といったところでしょう」

 「おぉっっ。じゃあ、魔法なんていうのも使えるようになるのか?」

 「それをスキルにしますか?」

 「えっ? 魔法って個人能力じゃないのか?」

 「そうですよ。私の世界の人間は1つのスキルを持って生まれてきます。もちろん生まれた時にスキルを持っていない人も少数ではありますがいますけど、その人たちも成長するにつれてスキルを身につけます。そしてそういうスキルのうちの1つが魔法を使う能力スキルです。人口の1割くらいはなんらかの魔法を使うスキルを持っています」

 なんだ、おまけで魔法も使えるのかと思ったけど、そう話は上手くいかないらしい。

 そうなるとどんなスキルを貰うのかちゃんと考えておかないと、人生やり直しと同時に負け組になってしまうかもしれないって事か。

 俺の欲しい能力、ねぇ・・・・

 今まで読んだ事のあるラノベの主人公の持っていた能力を色々と思い出してみるが、どれもピンとこないものばかりだ。

 というか、俺の読んだラノベの主人公って能力をたくさん持っていた。

 なのに俺が貰えるのは1つだけか。

 なんとなく気分がやさぐれてきたが、それでもそういう特別な力を持てるというだけでやり直す価値はあるのかもしれない。

 今、俺が一番欲しい能力、ねぇ・・・

 「そういや、さ。スキルってどんなものがあるんだ?」

 「どんなもの、ですか? それは色々ありますよ。剣士の才、魔術師の才、使役、召喚、他にも色々とありますね。でもまぁ、大抵は子供の両親のスキルが原型となってその子供に受け継がれる事が多いんですが、たまに周囲の人間の影響を受けて両親とは全く違ったスキルを持って生まれてくる子供もいますね」

 「そういうのが普通なんだ?」

 「そうですね。一般的です。でももし北村さんが望むのであれば、勇者のスキルもありますよ」

 「えぇ、いらないな、そんなもん」

 「そうですか? 有名になれますよ、ヒーローになりたいと思わないんですか?」

 「思わない。俺はできればのんびりと趣味を楽しみながら暮らしたいよ」

 社畜と化してまだ3年だが、それでも十分働いた気がする。

 知らない場所で新しい人生を始めることができるんだったら、できればのんびりと趣味を楽しむことができる、そんな生活をしたいんだ。

 今までは仕事仕事で忙しくって、なかなか趣味を作ることすらできなかったんだからな。

 だからボーナスと100円玉貯金を叩いてまでも、俺は何か楽しめる事を始めようと考えたんだ。

 って、あれ・・・? できんじゃね? 

 俺はふと思いついて、目の前で忙しく指を操作している神様(カー⚪︎ルおじさん)を見た。

 「ふぅん・・・じゃあさ、俺が望むものをスキルにしてもらう事もできるって事?」

 「できますね」

 「できるんだな」

 「はい」

 俺の目の前で正座している神様(カー⚪︎ルおじさん)は、俺の身体を作るために何かを操作する事が忙しくてどこか上の空で返事をした。

 そっか、できるんだな。ってか、ちゃんと言質はとったぞ。

 できると言い切ったんだ。

 できないとは言わせない。

 俺はニンマリと笑みを浮かべながら、神様(カー⚪︎ルおじさん)が作業を終えるのを黙って待った。






読んでくださって、ありがとうございました。


Edited 01/24/2017 @ 17:39 主人公の髪と目の色の設定を今後の話の方に合わせて変更しました。指摘があるまで気づかなくて申し訳ありませんでした。

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