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277.  

 気を取り直した俺は、今度は青玉を取り出した。

 「よし、次はこれだな」

 「青いの?」

 「青だな、おっし」

 「これは当たった瞬間に水を放出してからの電撃攻撃だ」

 「かみなり?」

 「そうそう、ミリーはよく知ってるなぁ」

 「お、俺だって知ってるぞ」

 「うんうん、ジャックもよく知ってるから話しやすくていいよ」

 ミリーと競い合うように言うジャックも褒めてやると、途端に嬉しそうに尻尾を揺らす。

 でも本人は顔を顰めているんだけどね。

 俺は的である【ひとしくん】を振り返る。

 なんか焼けて黒ずんでいるけど、まぁ十分的にはなるだろう。

 「スミレ、もう1つ【ひとしくん】はあるのか?」

 『【ひとしくん】はそれ1体だけです』

 「そっか・・・んじゃあ」

 『でも【ひとみちゃん】がありますので出しますね』

 「・・・・・は?」

 【ひとしくん】の次は【ひとみちゃん】ってか?

 いそいそとスミレがストレージから取り出したのは【ひとしくん】の女バージョンだった。

 違うのは髪の毛の色が空色で身長も約160センチって事くらいだろうか?

 「あ〜、スミレ。あの、さ、ほかにもまとになるようなもの、持ってるのか?」

 『はい。人形ひとがたはこの2体ですけど、動物型があります』

 「あぁ、そう」

 『出しますか?』

 「あ〜、あとでいいよ。今はこの2体があればいいや」

 『そうですか、判りました』

 少し残念そうなスミレは置いといて、だ。

 俺は青玉を持って準備万端な2人を見下ろした。

 「じゃあ、ミリーは【ひとしくん】、ジャックは【ひとみちゃん】を狙って投げてみようか」

 「わかった」

 「おう」

 【ひとしくん】は既に髪も全部焼けてボロボロになっているからいかにもただのターゲットにしか見えないんだけど、【ひとみちゃん】はまだまだ人っぽいからさ、ミリーに狙わせたくなかったんだよ。

 まぁ2人ともその辺は全く気にしていないみたいだけどさ。

 20メートルほど先に立っているターゲットはそれほど遠くないから、ミリーは【ひとしくん】の右肩に当てた。

 途端に水が弾けてバチバチっという音と閃光みたいなのが見えた。

 これ、夜だったらなかなか人目を引く攻撃になるかもしれないな。

 ジャックの方はというと、今回はちゃんとターゲットである【ひとみちゃん】に当てる事ができたようで、当たったのと同時に水が弾けて閃光が光ったのは同じだったけど、そのあとの【ひとみちゃん】はアフロヘアになっていた。

 その姿があまりにも無残で可哀そうだった。

 「これは酷い・・・」

 「コータ?」

 「いや、なんでもないよ。次の緑玉を試すぞ」

 「わかった」

 俺の呟きを聞いて声をかけてきたミリーに、俺は頭を振ってから次の玉の指示を出す。

 緑玉は当たった目標を蔦で絡め取って拘束する事ができる。

 ミリーとジャックはお互いに同じターゲットを狙う事にしたようで、今度は2人で掛け声を合わせて投げるようだ。

 「「1、2、3、えいっっ」」

 ヒュンっと飛んだ緑玉、ミリーの緑玉は【ひとしくん】の右腿に、ジャックの緑玉は【ひとみちゃん】の左肩に当たり、2つの人形ひとがたはあっという間に緑色の蔦でぐるぐる巻きになっていた。

 「これ、おもしろい、よ」

 「うんっ、あっという間に巻き付いちまったぜ」

 嬉しそうな顔で振り返って感想を教えてくれる2人に、俺は曖昧な笑顔を返した。

 いや、だってさ、グルグル巻きになった【ひとしくん】たちが可哀そうにしか見えなかったんだよ。

 「最後は黄玉だな、同じターゲットを使うか?」

 『新しいのを出しますよ?』

 「いや、もったいないだろ?」

 『使わないと意味ないですよ。それに獣型も練習した方がいいんじゃないんですか?』

 うっ、正論だ。

 でもなぁ、どんな獣なのか俺には想像もつかないんだけどさ。

 「新しい、なに?」

 『動物の形をしたターゲットがあるので、それを使いますかって聞いていたんです』

 「つかう」

 「おう」

 目をキラキラさせて俺を振り返る2人の要望を却下できる訳ないじゃん。

 それが判ってて言ったんだな、スミレのやつ。

 「いいよ。スミレに出してもらいな。スミレもすぐに準備できるんだろ?」

 『はい、では【ひとしくん】たちの両隣に設置してきますね』

 ウキウキしながらスミレは【ひとしくん】たちのところに飛んでいくと、ストレージから大きなターゲットを取り出した。

 でも、それは動物じゃない、と俺は思うぞ。

 「スミレ、それのどこが動物なんだ?」

 『えっ? 違いましたか?』

 「それは怪獣だ」

 スミレが出してきたのはどう見たって、かの有名な怪獣であるゴ⚪︎ラだ。

 高さ3メートルほどありそうなそれはなかなかカッコイイ。

 でも、だ。それを動物と呼ぶのはどうか、と思うぞ。

 でも気にせずに設置してから、スミレは反対側に移動して次を取り出した。

 「スミレ・・・それも動物とは言わない、と思うな」

 『あら? でもまぁ生き物ですよね?』

 「うん、まぁな・・・でもさ、それ、魔獣って言った方がいいんじゃないのか? いや、魔物か?」

 『そうですか? でもどちらも魔力を持ってませんよ?』

 「うん、持ってないと思うな。でも見た目は魔獣か魔物だよ、それ」

 自信満々にスミレが次に取り出してきたのはどう見たってエイ⚪︎アンだぞ、おい。

 しかも口からヨダレを出していていかにも本物っぽいのがスミレの凝り性なところが伺える。

 こっちも3メートルほどの高さで、どちらも尻尾があるせいか、つっかえ棒は要らないようだ。

 両手を体の前で構えている姿はとても凶悪で、もしかしたらビビっているかもしれない、とふと気付いた俺が両隣に立っている2人を見下ろすとキラキラした目で見つめている。

 あれ?

 「ミリーもジャックも怖くないのか?」

 「ないよ?」

 「なんでだ?」

 「あ〜、うん。いいよ、別に」

 うちのお子ちゃまたちは平気みたいだな、うん。

 心配した俺が馬鹿だったよ。

 「ま、まぁ、それじゃあ2人ともあれを狙って黄玉を投げようか」

 「うんっ」

 「おうっ」

 嬉しそうに頷いた2人はそのまま大きく振りかぶってから、黄玉をゴ⚪︎ラとエイ⚪︎アンめがけて投げた。

 ヒュンっと飛んで行った黄玉はターゲットが大きかったせいか、ミリーもジャックも見事お腹に当てる事ができた。

 途端にターゲットの周りに竜巻が起き、そのままターゲットが吹き飛ばされてしまった。

 そして可哀そうに【ひとしくん】たちも巻き添えを食って、一緒になって飛ばされてしまった。

 「・・・これはもう少し威力を弱くした方がいいみたいだな」

 『そうですか?』

 「そうだよ。あれじゃあ危なくって使えねえよ」

 『あのくらいの威力があった方が武器らしくていいと思いますけどね』

 何が気に入らないのだ、と言わんばかりのスミレをジロリと睨む。

 「俺は人殺しにはなりたくないんだよ」

 『でも襲撃されたらどうしますか? そんな事言ってられませんよ?』

 「そりゃ・・・まぁそうだけどさ。それでもできるだけ人殺しはしないように心がけたいんだ」

 『そのせいで反撃されるかもしれませんよ?』

 「うん、そうかもしれないな。いつか後悔するかもしれない。でも俺には人殺しは無理だよ」

 平和な日本で生きてきた俺としては、例え自衛のためだとしても人殺しはできないような気がする。

 『はぁ・・・仕方ないですね。あとで全部の黄玉を回収して、威力を3割抑えて作り直します』

 「すまん」

 『いいですよ。そういうところもコータ様らしいって思いますから』

 う〜む、これは褒められているのか? それとも呆れられているんだろうか?

 まぁどっちにしても、だ。できないものはできないってはっきり言っておかないと、あとで後悔するのは嫌だからな。

 『ほかに改良点はありましたか?』

 「あ〜・・・どうだろ? 別に大丈夫だと思うけどさ。ただいちいち手で投げるのは大変だなって思ったかな?」

 『そうですね、確かに使い勝手はあまり良くないかもしれませんね』

 「だよなぁ・・・でも結構大きいから撃つっていう手段は難しい気が--」

 言いかけて、いいアイデアを思いついた。

 「なぁ、信号弾って知ってるか?」

 『信号弾、ですか?』

 「うん、俺の記憶データ・バンクにあると思うぞ。あれ、結構大きな玉を撃ち出すための装置だから、それを改良すれば十分対応できるんじゃないかな?」

 『信号弾を検索します・・・・・検索終了しました。なるほど、確かにあれならいいかもしれませんね』

 「だろ? でもまぁミリーたちの意見も聞いてみた方がいいだろうけどさ」  

 『そうですね。では移動中にでもミリーちゃんたちに尋ねてみる事にします』

 「うん、頼むな。なんなら試しに1つだけ作って2人に持ってもらってもいいからさ」

 話だけだとどんなものか想像がつかないかもしれないからな。それならスミレに実物を見せてもらう方が判りやすいだろう。

 『もし使えそうだというのであれば、玉の形を変えてもいいですね』

 「あ〜、なるほどな。そういう事もできるのか。じゃあその辺もスミレに任せるよ」

 『判りました』

 信号弾用の装置を使うんだったら、直径3センチのまん丸の玉よりは銃弾の形の方が使いやすいだろうな。

 「じゃあその辺は移動しながら話せばいいな」

 『はい』

 「もうちょっとしたら夕方だし、そろそろ出発しようか」

 『そうですね。少しでも離れた方がいいでしょう。ミリーちゃんたちも少しでもトラ族の村から離れた場所の方が落ち着いて眠れるでしょうからね』

 相変わらずスミレはきっついなぁ。

 でもまぁそう言いたくなるのも判るから文句は言わないけどさ。

 なんせ昨夜の事があるからな。

 ここも昨日の野営の場所よりは離れているけど、それでもまだまだ安心できない距離かもしれないしな。

 「よっし、ミリー、ジャック。お試しはこれで終わりだ。とっとと片付けて出かけるぞ」

 「わかった」

 「おう」

 俺たちの話を聞いていたからか2人は文句も言わずに頷いて、素直にポーチの蓋をしてからサイドキックに乗り込んだ。

 俺もテーブルを片付ければすぐにでも出発できる。

 一応周囲を見回して何も忘れてない事を確認してから、俺もサイドキックに乗り込んだ。

 さて、今日はどこまで移動できるかな。







 読んでくださって、ありがとうございました。


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