229.
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銀色の球体はそのままスミレの背後に浮かんで待機している。
「それ、サーチング・スフィアだよな? そんなもんで何するつもりなんだ?」
「攻撃ですよ」
「攻撃? でもサーチング・スフィアじゃあ攻撃できないって言ってなかったっけ?」
「いいものをコータ様の記憶データ・バンクから見つけたので、その機能を付け足しておきました」
う〜む、俺の記憶から見つけた機能、っていうのがちょっと不安だぞ。
「アームド・スフィアはどうしたんだ?」
「あれは、もうありませんよ。クリカラマイマイを倒すのに使ったじゃないですか」
ああ、そういやそうだったっけ。アームド・スフィアを自爆させたんだったな。
「アームド・スフィアは1つしか作れませんでしたから、サーチング・スフィアを改造したんです。今回は数が多いですからね、3人だけでやるとなるとちょっと大変だろうと思いまして」
「ホントか? 他に理由があるんじゃないのかな?」
「いいえ、そんな事はありませんよ」
うん、そんな事はないと言いながらすっと目を逸らしたな。
ホントは自分が攻撃したいだけ、なんじゃね?
クリカラマイマイの件で思ったんだけど、実は以前から俺たちの狩りにも参加したかったんじゃないんだろうか?
そのくらいスミレの作戦は緻密だったし攻撃は容赦なかった。
「まぁさ、俺たちの負担を減らしてくれるっていうんだったらいいよ」
「では参加させていただきますね」
「で、どんな機能をつけたんだ?」
俺の記憶って言ったよな? 一体何を参考にしたんだ?
「それは見てのお楽しみですよ。ああ、そうそう、そのためのエネルギーが必要なので、コータ様の魔力をもうちょっとだけもらいますね」
「えっ・・・既に結構俺から7割もとったじゃん」
「いえいえ、あれは私たちの安全のためですから完璧な光学迷彩結界を仕上げるために必要だったんです。これらに必要なのは攻撃に使うエネルギーですが、省エネ・モードに仕上げたのでそれほどいりません」
本当か? スミレの省エネ・モード、ちょっと言葉通りじゃない気がするのは、俺だけか?!?
「スミレ、さっき俺から70パーセントの魔力をとったばかりだろ? ちょっとは遠慮っていうのはないのかなぁ?」
「大丈夫ですってば。それに既にコータ様の魔力は60パーセントまで回復してますから」
「えっ、ホントに? そんなに簡単に魔力って回復するものなのか?」
「普通の人だったらそんな事ないですよ。大体1時間で10パーセントの魔力回復ですね」
1時間で10パーセントって事は、3時間経たないと30パーセントの魔力は回復しない筈だぞ?
「今までコータ様を観察してきたところ、3分で10パーセント回復、といったところだと思いますよ」
「それ、おかしくないか?」
「おかしいですね。でもきっと神様がそうしてくれたんですよ」
俺、もしかして魔力に関してはチート能力を持ってたのか?
でもさ、魔法が使えないんだからあんまり意味のないチートな気がするぞ。
俺はじーっとスミレを見る。
スミレもじーっと俺を見る。
俺たちはお互いをじーっと見つけあって・・・・・・・結局俺が最初に目を逸らした。
うん、俺がスミレに勝てる訳ないよな・・・はぁ。
「判った」
「コータ様」
「判ったよ。俺の魔力は使ってもいい」
「ありがとうございます」
ガックリと肩を落とす俺と満面の笑みを浮かべるスミレ。
うん、対照的だな。
「でも手加減してくれよ。俺だってみんなと一緒にやりたいんだからさ」
「そうですか?」
「・・・そうだよ。だから、魔力切れで疲れて動けない、なんて事だけは勘弁してくれ」
疑わしい目で俺を見ないでくれ。
思わず目をそらしたくなったじゃないか。
うん、本当は参加したくないよ。だってでっかい蜘蛛だぞ、相手は。
攻撃した時にいろいろなものが飛び散るんだろうなぁ、って考えるとそれだけで俺の闘争本能はどんどん萎えていくんだよ。
でも、だ。ミリーとジャックの手前、そんな情けない姿は見せたくないんだよ!
「それではコータ様。魔力をいただきます」
「・・・おっけ」
「その前にあちらに移動しませんか? その方がすぐに攻撃に移れますよ」
スミレは今回の作戦のために、俺たちのポジションのところに足つきの縁のついたお盆を設置してくれている。
これは相手の数が多いだろう事を考慮して、俺たちがいちいちポーチやリュックサックに手を突っ込んで弾や矢を取り出さなくてもいいように、という事だ。
だけど、俺の配置場所には椅子も1つ置かれている。
どうやらあそこに座っていろ、って言いたいんだな。
って事は、最初から俺の魔力を狙っていたって訳だ。
最初から企んでいたんだろ、と気持ちを込めてじとっとした目をスミレに向けるけど、華麗にスルーされる。
駄目だ、俺がスミレに勝てる訳がない。
俺はトボトボとスミレが用意してくれた椅子に向かう。
ま、これならカッコ悪く倒れる、って事だけはないもんな。
何もしてないのに、全力疾走をしたような脱力感に襲われる。
でも今回はさっきほどの量を取らなかったんだろう、まだすぐに動く事はできそうだ。
とはいえすぐに動く気にもなれずに、座ったままミリーやジャックの様子を見る。2人とも準備は万端だ。でもスミレがサーチング・スフィアを従えて前に出てきたので、その事に興味津々だな。
「スミレ、それ?」
「サーチング・スフィアですよ」
「それで様子を見るの?」
「いえ、今回はこれで参加させていただきます」
「スミレ、参加?」
「はい、3人の力になれるといいんですけど、狩りに参加した事ないですからね。慣れてないですから、ちょっとだけお手伝いですね」
スミレが参加すると聞いて、嬉しそうな声をあげるミリー。
騙されるなよ、ミリー。スミレは殺る気満々だぞ。
「でもそれ、調べる玉、だよね?」
「はい、そうですね。でもちゃんと攻撃手段を付け加えましたから、ちょっとはミリーちゃんたちの援護ができると思いますよ」
「そっか、すごいねぇ、スミレ」
「いえいえ、足手纏いにならないように頑張らせてもらおうと思ってます」
うん、きっとそれも口だけだな。
クリカラマイマイを攻撃した時のスミレを思い浮かべれば、足手纏いどころか主力戦力になりかねない。
「どうやるの?」
「それは見てのお楽しみですよ」
「見てるヒマなんて、ないよ?」
「そうですか?」
「うん、だってたくさん仕留めなきゃ」
「それもそうですね。私も頑張って仕留めるつもりです。もし判らなかったら、後でお見せしますね」
「うん、やくそく、ね」
ワクワクしたミリーといたずらを思いついたような笑みを浮かべるスミレ。
2人を見ているだけなら微笑ましいと思えない事もないんだけど、内容がなぁ・・・・なんせ2人とも殺るつもりでヒマがないって事だろ?
「コータ、どうしたの?」
「やる前から疲れてんのかよ?」
「あ〜・・俺の事は気にしなくていいよ。すぐに元気になる、うん、多分な」
背もたれに身体を預けてへばっている俺を見て、2人は頭を傾げている。
そんな2人にスミレが申し訳なさそうな顔で言い訳をした。
「お2人とも、コータ様は私に魔力をくださったので、それで疲れているんです。遠慮したんですけど、魔力は必要だろうと言ってたくさんくださいましたから」
嘘つけっ! っと言いたいけどスミレの目が怖くて言えないぞ。
まぁカッコイイ言い訳だから、俺は手をひらひらと振る事でスルーする。
「コータ、無理しないでね」
「うん、大丈夫だよ、ミリー。すぐに戻るから」
「魔力、回復難しいって聞いたよ?」
「そうだね。でも俺は大丈夫だよ」
トコトコと俺の前にやってきて、心配そうな顔で俺を覗き込んでくるミリー。
「それより、ミリーは準備できたのか? もうそろそろ出番だと思うぞ」
俺は顎をしゃくってヴァイパーの屍体が転がっている方を指した。
そこにはいつの間にか3匹ほどのボンガラが集っている。
体長1メートルほどで、8本の腕は広げると3メートルちかくなるだろう。
見た目は背赤後家蜘蛛そっくりに尻が丸々としていてでかい。きっとあそこに粘着液袋があるんだろう。顔の大きさはそれほどでもないんだけど、顔とほぼ同じくらいの大きさの牙が見える。
スミレの話だとあの牙と群れる事から、仕留める事が難しいとされているんだそうだ。ま、もちろんそれに加えて粘着糸を飛ばしてくる、って事もあるんだろう。
色は真っ黒で背赤後家蜘蛛と違うのは赤が緑って事だろうか? もちろんサイズも断然違うけどなっ!
そして更に10以上のボンガラがやってくるのがヴァイパーの屍体の向こうに見える。
「あら、もうやってきていたんですね。ではみなさん、準備はいいですか?」
「できてる」
「おうよっ」
力強く頷くお子ちゃまたち。
君たちも殺る気満々だね、うん。
「みんな定位置につけよ。向こうからは見えない筈だけど、何があるか判らないからな」
「みゃかせる」
「判ってるって」
「判りました」
力強く頷く3人を見ながら、俺も上体を起こしてパチンコを構える。
よっし、始めますか。




