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22.

16、20、21話で大都市アリアナまでの旅程の訂正しました。申し訳ありません。

ストーリーの変更はありません。

 翌朝、朝ごはんを食べてから、森に行く前に早速ヒッポリアを見に行く事にした。

 ケィリーンさんが教えてくれたヒッポリアを売っている場所は、村の南東のあたりに位置する塀のすぐそばにある牧場みたいなところだった。

 っていうか、おそらくここは牧場なんだと思う。

 だってさ、敷地に足を踏み入れると俺の足元を鶏っぽいのが走って行ったし、なんとなく豚っぽいブヒブヒという鳴き声が聞こえてくるんだもんな。

 俺は思わず踏みそうになった鶏っぽいのを避けながら目の前にある家に向かう。

 その家はボン爺の家の2倍ほどの大きさで、屋根裏部屋があるみたいだ。

 「すみませーん」

 「はぁい」

 ドアが開けっ放しになっていたので、そこから頭だけ中に入れて声をかけると、奥から女性の声が聞こえた。

 パタパタと足音がしてすぐに返事をしたと思しき女性が出てきた。

 「何かご用でしょうか?」

 「あっ、はい。あの、ギルドのケィリーンさんの紹介で、ヒッポリアを見せていただきたいと思って来たんですけど」

 「あら? ケィリーンのところ? じゃあ、ハンターさんかしら?」

 「はい。といってもなりたてですけどね」

 頭を掻きながらそう言う俺の目の前の女性は人族のようだ。

 「なりたて? じゃあ、お金はあるのかしら?」

 「あ〜、多分。ケィリーンさんと相談したので、大丈夫だと思います」

 どうやらなりたてと言う俺の言葉で、資金があるのか気になったようだ。確かにヒッポリアは安い買い物じゃないからな、商売としてお金にならない相手に時間を無駄にしたくないって事だろう。

 「そぉ? まぁ、ケィリーンの紹介なら大丈夫ね。私の名前はサランよ。夫のヴァンスと一緒にこの牧場を経営しているわ、よろしくね」

 「あ、はい。俺は幸太と言います。よろしくお願いします」

 「コータね。じゃあ、案内するわ」

 彼女は俺の横をすり抜けて、スタスタと少し離れた建物に向かって歩いていく。

 俺は置いて行かれないように慌てて彼女の後を追いかけた。

 そして連れて行かれたのは細長い建物だった。多分長さは20メートルくらいはありそうだ。それに反して奥行きは3メートルほどしかない平家の建物で、ガラっと勢いよく開けられたドアの中はずらっと並んだ馬房のような感じになっているのが見える。

 「うちには今5頭しかヒッポリアはいないのよね。馬なら10頭くらいいるんだけど、ヒッポリアの方がいいの?」

 「あっ、はい。俺、馬には乗った事がないんです。全くの素人だったらヒッポリアの方が扱いが楽だろうって勧められたんです」

 「ああ、そうね。1週間くらい馬に乗る練習をすればそれなりに乗れるようになるだろうけど、あなたはどう見ても採取系のハンターだから運動神経はあんまり良くなさそうだからヒッポリアの方がいいかもね」

 「あ、はははは・・・・」

 うぐっっ。結構きつい事をはっきり言う人だな、この人。今の一発は効いたよ。

 「まぁ馬よりは足は遅いけど荷物をたくさん運んでくれるから、採取系のハンターには丁度いい気がするわ。ほら、こっちよ」

 手招きに従って中に入ると、意外にこざっぱりと片付いている。てっきりもっと糞が転がってるとか乾草が散らかっているとかしてるのかと思ったのにな。

 「じゃあ手前から順番に見ていきましょうか。まずはこの子、2歳のメスよ。次は3歳のメス、それから3歳のオス、3歳のオス、最後が2歳のメス」

 俺は通路に立ってサランさんが指差す順に馬房の中を見る。

 見るが・・・・

 う〜ん、すごい色だなぁ、とヒッポリアよりもその体毛に見とれてしまった。

 いや〜、派手だ。俺の正面右からショッキングピンク、オレンジ、グリーン、薄ピンク、そしてクリーム色、と並んでいる。

 これがウサギとかならアニメに出てきそうな雰囲気で可愛いんだが、なんせヒッポリアは顔の長いカバの顔なのだ。しかもどう考えても馬より2回りほどデカイのだ。

 むっちゃ似合わねーーーーっっ!

 「どう? うちの子たちは健康そうでしょ?」

 「えぇっと・・・はぁ」

 「何よ、なんか気になるところがあるのかしら?」

 うちの子に文句があるわけ、と言わんばかりに腰に手を当てて俺を見上げてくるサランさんには悪いが、俺にヒッポリアを見立てる事ができる筈がない。

 というか、それよりももっと気になる事がある。

 「あの・・これって普通の色なんですか?」

 「色? ああ、ヒッポリアの体毛の事かしら? あなた、ヒッポリアを見た事がないの?」

 「ありません、図鑑では見た事があるんですけど、あれは白黒だったので色まではよく判らなくって」

 「ヒッポリアっていうのはこんなものよ。うちにはいないけど真っ赤とか紫色だっているのよ。ほら、そこの柱に貼ってある紙に色が塗ってあるでしょ? その色がヒッポリアの体毛の色の種類よ」

 サランさんが指差した柱には縦に長い紙が貼ってあり、12色の色が横線で何本も並んでいる。

 上からクリーム、真っ黄色、オレンジ、薄ピンク、ショッキングピンク、赤、スミレ色、紫、空色、青、黄緑、緑、の12色だ。

 ケィリーンさんが見せてくれた図鑑の絵は白黒の馬とカバの合いの子みたいだったから、その体毛はグレーかブラウンだと思い込んでいたんだよ。

 まさかこんなにカラフルだとは夢にも思わなかった。ちょっとやられたって気がしている。

 っていうか、カバみたいなもんだと思っていたから、毛が生えているっていうだけでもうびっくりだよ。

 「あの・・・性別で色が違うんですか?」

 「ううん、種別っていうのかしら? 一応種類別の名前もあるんだけど、めんどくさいから大抵の人は色で区別をつけているわね」

 「つまり、色で性能っていうか、そういうのが違うって事ですか?」

 「そうそう。たとえばピンクの子はちょっとクリーム色の子に比べると気性は荒いけど、その分足が早いから移動時間が気になる人には向いているわね。それからそこのオレンジとグリーンの子は物を引く力は強いんだけどちょっと体力がないから、その分短距離での行商には向いているの」

 サランさんはなんにも知らない俺のために、どの色の子がどんな能力なのかを説明してくれる。

 サランさん曰く、長距離移動をするヤツにはピンクのヒッポリアがいいみたいだ。

 けど、さすがにピンクのヒッポリアに乗って移動する勇気はない。

 そりゃそれが当たり前だって言うんなら、乗っていても何か言ってくるヤツはいないだろうとは思うよ。

 でもさ、俺の矜持に関わるよ。

 って事でピンクは却下だ。色が濃かろうが薄かろうがピンクはピンクだからな。

 そしてオレンジとグリーンも短距離用って事だから却下。

 そうなるとクリーム色しか残らない事になるなぁ。

 色的にはグリーンがかっこいいんだけどな。まぁカバ面だけどさ。

 でも短距離って言われると、色が気に入ったからっていって買っても役に立たないと意味がない。

 ちぇっ、仕方ないな。

 俺はゆっくりと厩舎の柵の向こう側にいるヒッポリアに近づいてみる。

 いくら柵があるとはいえ、近くに行くとヒッポリアの背中が俺の身長と同じくらいだった。

 頭はそれよりもかなり上だ。多分2メートル半くらいの高さだろうか?

 近くで見ると牛のような少し短めの毛がびっしりと生え揃っている。そっと手を伸ばして触ってみると思ったよりも柔らかい手触りだった。

 顔はカバみたいでひょうきんだが、つぶらな目を向けてじっと触られるままのヒッポリアはなかなか可愛い気がしてきた。

 そうだな、この中で買うとしたら今触っているクリーム色だろうな。

 「このクリーム色のヒッポリアはいくらでしょう?」

 「あら? ハンターさんが移動に使うんだったら、そこのピンクの子の方がいいわよ?」

 サランさんは頭を傾げながら俺に一番右端にいるピンクのヒッポリアを指差す。

 「そ、そうですね。でも、その・・性格が穏やかだって言っていたじゃないですか。俺は本当に初心者なので、気が荒いのはちょっとね」

 「気が荒いって言ってもヒッポリアだからしれているわよ?」

 なんでそんなにピンクを押すんだよっっ。

 俺がピンクは嫌なんだよっ。

 サランさんにハッキリとピンク色は嫌だと言うと、ヒッポリアの事を悪く言うな、と蹴り飛ばされそうな気がしてとてもじゃないが言えない。

 「と、とにかく性格が穏やかなのが一番です。全くの素人である俺でも扱えるためにも性格を重視したいんです」

 「そぉ? まぁ、好みもあるからね。あの子は14万ドランよ。グリーンの子たちよりは少し高いんだけど、ピンクの子よりは安いわね。でもその分足が遅いから移動には時間がかかるわよ」

 「遅いってどのくらい違うものなんですか?」

 「そうね・・・ピンクの子なら6日で行けるところを7日かかるって感じかしら?」

 「なるほど・・・」

 「ちなみにグリーンやオレンジの子だったら5日ね。でもその分着いてから最低でも3日は休ませないと途中で立ち往生する事になるわね。だから行商とかで町や村に立ち寄ってそこでそのまま数日商売するって言うんだったらいいけど、どんどん移動していくんだったらやめたほうがいいわ。長距離移動に一番いいのは紫の子なんだけどあいにく今うちにはいないわ」

 すごく残念そうなサランさんには申し訳ないが、紫のヒッポリアに乗ろうとは思わないぞ。だって柱の色見表の紫ってすっごいどぎつい夜のお姉さんが着るようなドレスの紫色なんだぞ、絶ーっ対に嫌だ。

 「いえいえ、クリーム色の子は初心者にぴったりだという気がしますので、その子に決めたいと思います」

 「まぁ、性格はすっごく温厚だから、確かに初心者にはいいかもしれないわね。でも、すぐに物足りなくなるかもしれないわよ?」

 「大丈夫ですよ。のんびりと旅をしたいと思っていますから」

 「そぉ?」

 何が何でもピンクを勧めたいサランさんだがそれだけは断固拒否るぞ。

 俺はそう決意して彼女に頷いた。

 「ああ、それでですね。ちいさな荷車を売っている店、知ってますか?」

 「荷車って、その子に引かせるの?」

 「はい。俺はそれほど荷物は持ってませんが、採集が仕事ですので荷が増えた時のために荷車を用意しておこうと思っているんです」

 「だったらヴァンス--私のダンナなんだけどね--に聞いてみればいいわ。牧場の仕事のかたわら、動物のための荷車や動物用具を作ってるの。彼、今は作業室にいるから行ってみましょう」

 サランさんはそう言いながらもさっさと厩舎を出て行く。

 俺が着いてくるものと思っているようだ。


 ・・・・まぁその通りなんだけどさ。

 




 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 04/10/2017 04:38 JT

生格を重視 → 性格を重視

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