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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
大都市アリアナ 空洞空間
218/345

217.

 朝兼昼ご飯を食べた俺たちは、とりあえず片道3時間という事でアキシアライトを探すために出かけた。

 運良く、かどうか判らないけど、ギルドの依頼と同じくらいの量が採掘できたのでスミレは満足そうだった。

 そして晩飯を食べ終えた俺たちは、アラネアのボンネットに座るスミレの前に集合している。

 「それでは、これから空洞空間の調査、及び空洞空間内の採掘を始めます」

 あっさり簡単に言うスミレだけど、そんなに簡単にはいかないと思ってるのは俺だけか?

 現にミリーとジャックはワクワクといった感じでスミレの話を聞いている。

 「採掘、といっても私たちが直接中に入る訳ではありません。遠隔操作による採掘です」

 「スミレ、えんか、く・・なんとかって、何?」

 「ミリーちゃん、遠隔操作というのは、私たちの代わりに採掘をしてくれる魔法具だけをあそこに送り込んで、私たちはここからそれを操って採掘をする、という事ですよ」

 「そんな事、できんのか?」

 「ジャック、できるから言っているんですよ。できない事は言いません」

 茶化すつもりはなかったんだろうけど、ジャックの質問はバッサリとスミレによって切り捨てられた。

 「スミレ、遠隔操作なんて言われたってよく判らなくても仕方ないだろ? 多分ここはそこまで科学が進んでないんだからさ」

 「それもそうですね。ジャック、あなたにも手伝ってもらいますからね、頑張ってください」

 「お、おう」

 スミレの笑みを見て、少しビビっているジャックだけど、うん、俺にもその気持ちは判る。

 今のスミレの笑みはどう見たって黒いもんな。

 「それでは、ミリーちゃんとジャックの前にスクリーンを出しますね。そこに手形が出てくるので、その上に自分の手を合わせてください」

 「手・・これ?」

 「はい、スクリーンにそっと触れる感じで合わせてください」

 ミリーが自分の手を見ながら呟き、ジャックは自分の猫の手を見下ろした。

 そして2人の前に現れたスクリーンには、それぞれ人の手と猫の手が浮かび上がっている。

 「ミリーちゃん、手を伸ばして・・そう、そのままゆっくりとスクリーンに触れてください」

 「ジャック、手を上げて・・違うって、反対の手だよ。うん、そう、そのままスクリーンに触ったままじっとしてればいいからな」

 スミレはミリー、俺はジャックの横で2人がスクリーンに触れる手助けをする。

 俺? 俺の魔力はとっくにスミレのデータに入っているから今更する必要はない、って言われたから今回は手伝だけだ。

 「はい、それでいいですよ」

 「なに、これ?」

 「今回の魔法具にはアキシアライトを使ってあります。今のはアキシアライトに2人の魔力を教えるための行為ですね」

 「魔力・・?」

 「はい、これから2人に操作していただく魔法具に2人の魔力を覚えさせました。これで無駄なく2人の魔力を使う事ができますよ」

 「スミレ、2人の魔力を搾り取るつもりじゃないだろうな?」

 「まさか。そんな事したら2人とも死んじゃいますからね」

 俺とスミレの会話を聞いて、思わず後ろにずり下がったミリーとジャック。

 「大丈夫ですよ、2人とも。もし魔力が足りなくなったらコータ様の魔力を補充しますからね」

 「おいっ」

 「コータ様の心配はしなくていいですよ。なんてったって魔力だけはたくさん持ってますからね」

 「スミレ・・・」

 なんか俺の扱い、酷くないか?

 多分緊張してしまった2人の気持ちを解すためにそう言ったんだろうけどさ。ってか、そのためにそう言ったって思いたいだけかもしれないけどさ。

 「それでは、こういった道具を使う事は初めてであろう2人には、ちゃんとアームを操作するためのコントローラーも用意しましたからね〜」

 「あーむ?」

 「こんと、ろら?」

 聞いた事もない言葉に、頭を同じ方向に傾げる2人。

 なんか可愛くて思わず口元が緩んでしまった。

 スミレも同じだったのか口元に笑みが浮かんでいる。

 「はい、出しますからね、じっとしていてくださいね」

 スミレがそう言うとミリーの前に出ているスクリーンが倒れて少し前に移動すると、空いたスペースに金属のコードとその先についた5つの輪が現れた。

 ジャックの前も同じようだけど、5つの輪の形が少し違う。

 「その輪っかをそれぞれの指に嵌めてくださいね。端から順番に、ですよ。ジャックはコータ様に手伝ってもらって、同じように端から順に指にに嵌めていってくださいね」

 スミレが用意したものを手に取り、輪っかの大きさで5個並んだ輪っかのどっちから親指に合わせるのか判るけど、差し出されたジャックの猫の手を見てどうやって嵌めようかと考える。

 でものんびり考えている時間はないから、俺はジャックの手を取り、最初に1つを親指に嵌める。

 さすがに猫の手用に作られている小さな輪っかは、親指に嵌ると同時に抜け落ちないように大きさを変えた。

 おっ、これなら簡単かな?

 俺はまずジャックの右手を終えてから、左手も同じように輪っかを嵌めていく。

 「できましたか?」

 「うん、これでいいと思う」

 スミレに見えるようにジャックが手をあげると、同じようにミリーも手をあげて見せてくれる。

 ミリーの場合は全ての指に指輪が嵌った成金のおばさんの手って感じだけど、ジャックの場合は毛が生えてるからその毛に埋もれて輪っかはよく見えないから、なんていうか変てこりんって感じだ。

 「それでは今度はコードをまとめます。こちらのリストバンドを使ってください」

 スミレが俺に寄こしたのは10センチほどの長さのリストバンドで、まずそれを腕に嵌めてから、5本のコードをまとめてリストバンドの上に乗せてから付いていたマジックテープで止める。それからリストバンドについている差し込み口にコードを差し込んだ。

 「なんか変だ」

 「あれ、きついか?」

 「そうじゃないけど、変な感じがする」

 「まあそのくらいは我慢しろよ」

 「判ってる」

 コードをまとめたリストバンドを動かしながらジャックが頭を傾げている。

 「このリストバンドが魔法具ですからね。ぶつけないように気をつけてくださいよ」

 「これ、まほうぐ?」

 「そうですよ。それを使って採掘のお仕事を手伝ってくださいね」

 「みゃかせる」

 手首を動かしながらコードの伸び具合を確かめていたミリーは、スミレの言葉に大きく頷いた。

 「コータ様も準備してくださいね」

 「えっ? 俺も?」

 「当たり前です」

 「あはは・・・」

 笑ってごまかそうとしたら、俺の前に輪っかが5つ付いたコードが現れた。

 仕方ない、と諦めて俺も指に輪っかを嵌めて、手首にリストバンドをつけて、コードをマジックテープで止める。それからコード差し込み口に入れてから、指と手首を動かしてみる。

 「ああ、この感覚が変な感じってヤツか」

 「変だろ?」

 「う〜ん、変、とは言わないけど、不思議な感じだな」

 指や手首を動かすと、少しだけ重力がかかるというか、あまり重さを感じない輪っかの割に重さがかかってきている気がするのだ。

 超分厚い手袋を嵌めた手を動かしている、っていう感じといえばいいんだろうか。

 それでも痛いって訳でもないから、気になるっていう程度の違和感なんだけどさ。

 「準備できましたか」

 「うん、多分な」

 「多分じゃ駄目ですよ。ちゃんとしてください」

 「はいはい」

 「コータ様?」

 「準備おっけだって」

 適当に返事をしたら、スミレに睨まれた。

 やべっっ。

 でもそれ以上スミレは俺に文句をいう事もなく、ミリーとジャックの方に顔を向ける。

 「では、本番の前に少しだけここで練習しましょうね」

 「れんしゅう? なんの?」

 「その魔法具の使い方の練習ですよ」

 「ああ、そっか」

 判った、と頷くミリーを見て、スミレも満足そうに頷いた。

 「空洞空間内の安全は保証できません。ですから、それを使って作業をします」

 「これ?」

 「はい、それは空洞空間内に送り込むアームのコントローラーです。今目の前にスクリーンがありますね」

 「うん。でも倒れてるよ?」

 「いいんですよ。それはそのまま3Dサーチング・ボードとなりますから」

 おお、なるほど。

 俺の前にもスクリーンがあってそれも天井を向いてて、なんでなのかなって思ってたところだよ。

 「それはサーチング・スフィアと連動していて、それが映し出す映像を元に3D映像になっています。それでは練習を始めましょう」

 スミレが手を動かすと、俺たち3人の前に倒れたままになっているスクリーンが俺たちから1メートルほど前に移動して、その上に石ころっぽいものが投写された。

 「それはあちらに飛んでいるサーチング・スフィアが映し出している映像です」

 「・・あれ?」

 「はい、その前に石が転がっているのが見えるでしょう? あの石が今皆さんのスクリーンに映っている石です」

 ミリーが顔を向けた方を見ると、3つのサーチング・スフィアが浮かんでいるのが見え、スミレのいう通りそれぞれのサーチング・スフィアの前には石が転がっている。

 そしてそのサーチング・スフィアの前には腕が2本にょっきりと生えた板が置かれている。

 思わずギョッとしてみたけど、もしかしてあれがアームなのか?

 なんかすごいアームを作ったなぁ、と感心している間もスミレの説明は続いている。

 「それでは手を前に伸ばしてみてください」

 「んっと・・こう?」

 「はい、それでいいですよ。3Dスクリーンが近づいたのが判りますか?」

 「うん、近くなった?」

 「その通りです」

 ジャックと俺はミリーが腕を伸ばすのを見て、同じように伸ばしてみる。

 すると3Dの石が近づいた感じがするぞ。

 「手で触れられるほどの距離になったら肘を少しだけ曲げてください。その動きで前進が止まります」

 「こ、こうか? あれ?」

 ジャックが肘を曲げているが、あまり止まった感じには見えない。ってか、そのまま近づいてくる。

 「ああ、手を下ろしてください」

 「わ、わかった」

 手を体の左右におろすと、画面が消えた。

 そのまま固まっているジャックのところにスミレは飛んでいくと、そのまま彼のリストバンドに触れて何かしている。

 「はい、調整終わりました。これで試してみてください」

 「わかった」

 今度は肘を曲げるとちゃんと止まって、ジャックがほっと息をこぼす。

 「前進は肘を曲げる事で止まります。そして左右に移動したいときは動きたい方向にある手だけを動かしてください。まずは右手だけ動かして・・そう、今度は左手だけを動かして石の正面に来たら止めて・・はい、上手ですね。両手のひらを上に向けて直角に肘を曲げてみてください・・・はい、後退したのが判りましたか?」

 スミレの指示通り、前に伸ばした右手だけお動かすと3Dスクリーンの映像が右に移動して、右手を戻して左手だけを動かすと今度は画面が石のところに戻っていく。それから両手のひらを天井に向けてから肘を曲げるとゆっくりと後退するの判る。

 おぉぉっ、なんか面白いぞ。

 「はい、それでは今度は掴む動きをしてみましょう。手を開いてみてください。はい、それでいいですよ。それではまた両手を前に伸ばして画面の石が手に届くところで止めてください。ジャック、まだちょっと遠いですよ」

 スミレのチェックを受けながら、ミリーとジャックは両手を動かして、スミレの指示通りにスクリーンを動かそうと頑張っている。

 俺も2人と同じように手を動かしながら、なんとか自分の手を伸ばせば石を掴める位置にスクリーンを移動させた。

 「はい、それでも3Dの石を掴んでみてください」

 言われるまま3Dの石に手を伸ばして掴んでみる。

 「おぉっ、掴めるじゃん」

 「とれた」

 「よしっ」

 まるで本物の石を掴んでいるような感触が手のひらから伝わってくるのがなんとも変な感じだ。

 そのまま視線をサーチング・スフィアの方に向けると、俺が掴んだ石がサーチング・スフィアの前にあるアームによって掴まれているのが見えた。

 なるほど、こうやってライクリファイドを集めるつもりか。

 それは判った。これなら中に入らなくても大丈夫だろう。

 でも、クリカラマイマイがいるんだぞ? 大丈夫なのか?

 「みなさん、ちゃんと石がつかめましたね? それではもう少しその練習を続けてくださいね。その間に私は準備を済ませますから」

 「わかった」

 「だいじょぶ」

 頷いた2人は石を地面に落としてから、もう一度最初からアームを動かす練習をしている。

 「コータ様も練習していてくださいね。私はこれから魔力封じの魔法具を中に入れますから」

 ふわっと飛び上がったスミレは俺の返事を聞く前に穴に向かって飛んで行った。







 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 07/02/2017 @ 19:19CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。

スミレのチャックを受けながら → スミレのチェックを受けながら

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