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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
大都市アリアナ オークション、そして3つの依頼
205/345

204.

 とりあえずの脅威は去っていった、という事で俺たちは先に進む事にした。

 と言ってもそれから10分ほど進んだところの少しへこんだところに、ぽっかりと空いた穴がすぐに見つかったんだけどさ。

 「あそこに入るのか?」

 「はい、あれが入り口ですね」

 「でもあれ、洞窟っていうより穴なんだけどさ」

 「大丈夫ですよ。もう少し近づけば下りていくための斜面も見つかりますから」

 「あっそ」

 本当かなぁと思いつつ、俺はアラネアをゆっくりと進める。

 うしろの2人はベルトがあるから立ち上がる事もできないまま、とりあえずできるだけ背伸びして進行方向を見ようとしている。

 地面のへこみは直径が30メートルくらい?

 その中心にある穴は直径が10メートルくらいか、いや、もう少し小さいかもしれないな。

 でもまぁ穴のサイズだけを考えればアラネアでも十分入る事はできるか。

 「スミレ、すぐに穴の中には入らないんだろ?」

 「穴の中に入ってすぐの辺りには何もいない事は私の探索で判っていますが、それでも見えないと不安なんですよね?」

 うん、不安に決まってる。ジェットコースターじゃないんだから、行き先はちゃんと見たいよ。

 「では、コータ様。偵察を出してモニターで見ましょう」

 「・・・・・はっ?」

 偵察? モニター? なんだそりゃ?

 俺の頭の中はハテナマークで一杯だよ。

 そんな俺を気にもとめず、スミレは自分の前のダッシュボードの辺りにある、それまで全く気づかなかったボタンに手を伸ばした。

 「そんなボタン、あったっけ?」

 「私が付け足しておきました。オプションですね」

 「おい、そんなオプション、聞いてないぞ」

 「そりゃそうですよ。言ってませんでしたから」

 にっこりと笑みを浮かべたままスミレはボタンを押した。

 それと同時にアラネアのボンネットの運転席近くが丸く開いたかと思うと、そこから直径が15センチくらいの丸い球体が出てきた。

 そしてそれに気を取られているうちに、スミレの前のダッシュボードの上からモニタースクリーンがせり上がってくる。

 モニターは出てくると同時に電源が入ったかのようにぽうっと青い光を放ち、すぐにいくつかの項目が現れる。

 スミレは探索スフィア射出ボタンを押して、行き先を洞窟内に設定してから、移動についての選択肢としてあった手動のボタンを押した。

 すると彼女の前にハンドル? っていうのか飛行機の操縦桿みたいなのが出てきた。

 両手でそれを握ったスミレが左手で何もないフロントガラスを指差すと、それだけでフロントガラス全体がスクリーンになって、探索スフィアが映し出しているのだろう映像が現れた。

 「わっわっ、なに?」

 「すっげえ、あれ、なんだよ」

 「あれは先ほど飛ばした探索スフィアが見ている映像ですよ。あれを見ればこの先がどうなっているか判りますからね」

 ドヤ顔でミリーとジャックに説明するスミレだけど、俺、本当に何にも聞いてないんだけどな。

 まぁそれでもこれならこれから進む先に何があるか判るから、それだけでもありがたいっちゃありがたいんだけどさ。

 探索スフィアはゆっくりと地面から2メートルほどの位置を飛びながら、そのまま穴の中にゆっくりと降りていく。

 穴の中はさっきスミレが言っていたみたいに一気に底に向かって伸びていくんじゃなくって、斜め下へと穴は広がっていってるのが判る。

 これなら確かにスミレがいうように現アラネアに乗ったまま中に入る事はできそうだ。

 「どこまで先行させるんだ?」

 「1キラメッチ(キロメートル)先までなら大丈夫ですよ」

 「う〜ん、そこまで先に行くのはなぁ。これ、真っ直ぐ1本の道が伸びてるのか」

 「いいえ、それなりに側道もありますし、真下におちる穴も何箇所かある筈です」

 「そっか、側道とかがあるんだったら100メートルほど先行させるだけの方がよくないか?」

 あんまり距離が離れすぎると、探索スフィアが通り過ぎた後で俺たちの行く手に何かが出てくる事もあるかもしれないからなぁ。

 そんな俺の考えを読み取ったのか、スミレは頷いて俺に同意する。

 「それからさ、フロントガラスに映像があると俺には運転できないんだけど?」

 「それは失礼しました。それでは前部座席はモニターを使用し、後部座席にもモニターを1つ出してミリーちゃんとジャックも見る事ができるようにしますね」

 「おっけ」

 スミレが先ほどのように左手を差し出すとフロントガラスの映像が消え、代わりにモニターに同じものが映った。

 後ろを振り返ると俺の左肩の辺りにモニターが出てきているのが見える。おそらくそこに同じ映像が映っているんだろう、ミリーとジャックが食い入るように見ている。

 「じゃあ、そろそろ行こうか」

 「判りました」

 「サポートよろしく」

 「もちろんです」

 スミレのサポートがあれば大丈夫だな。

 俺はゆっくりとアラネアを前進させるのだった。







 時々大きめの石が飛び出しているのか、アラネアが前後左右に大きく揺れる。

 その度に小さな悲鳴や歓声が後部座席から聞こえる。

 なんか楽しそうだな、おい。

 「マッピングはしてるのか?」

 「もちろんです。必要であれば今までの経路を3Dホログラムで展開する事もできますよ?」

 「いや、今はまだいいや。野営する時にでも頼むよ」

 「判りました」

 以前訪れた鉱山は歩きだったけど、狭い坑道がどこまでも続いているように見得たのを覚えている。

 でもここはなんかトンネルって感じだよな。

 地面は石が飛び出していたりしてデコボコしてるけど、それでもアラネアで移動できないほどじゃない。

 薄暗い中をヘッドライトで行く手を照らして、時々飛んでいるコウモリに驚き、天井から落ちてくる水滴や他の何かが車の屋根に当たる度に、後ろの2人はアトラクションに驚く子どものような反応を示している。

 俺もこんな時じゃなかったらもっと楽しめるんだけど、なにぶんここには魔物がいる訳だからあんまり気を緩める事もできないだよな。

 「思ったよりずっと広いな」

 「そうですね。おそらくこのくらいの広さの道がもう暫く続く筈です」

 俺は探索スフィアがモニターに映し出す画像を横目でみて、スミレの言う通りだという事を確認する。

 「で、どの辺まで降りれば鉱物が手に入るんだ?」

 「2時間ほどで目的の地層に到達すると思うんですけどね」

 「2時間? そんなに深くないのか?」

 「ギルドからの指名依頼であるアキシアライトという鉱物は、特定の地層にはないんですよ。場所によって発見される地層が違ってきます」

 「鉱物と地層ってすごく大きな関係があるんじゃないのか?」

 「ありますね。普通の鉱物であれば、です。このアキシアライトは地殻変動の時に発生した熱と摩擦の影響により生成される鉱物なんです」

 「へっ、そんな事あり得るのか?」

 「あるからこそアキシアライトという鉱物があるんですよ」

 はい、その通りです。ここは俺がいた元の世界じゃないんだよな、あっちの常識で考えたら負けだ。

 バカな事を聞いたよ、俺。

 「で、アキシアライトってなんに使うんだ?」

 「鍛治師が金属の錬成をする時に使います」

 金属の錬成、ってあれか? 刀とかを作る時の光景が頭に浮かぶ。

 「アキシアライトを使うと魔力と合わせやすくなるようですね」

 「魔力と合わせる・・・って?」

 「例えば火魔法が得意な剣士が使う剣を作る時に使うとその剣士の魔力に応じて、火魔法の効果が上がりやすくなるんです。流し込まれる魔力の最大限の威力を発揮できるようにする事ができる、とでも言えば判りやすいでしょうか?」

 「あ〜・・・つまり、持ち手の魔力との融合性が高い、って事か?」

 「その通りです」

 コンバーター、って事か? 流される電力に合わせてくれる、っていうかさ。

 「でもそれアキシアライト以外にもそんな鉱物なかったっけか?」

 「ありますよ。ですが、この辺りで採掘できる鉱物はアキシアライトだけです」

 「ああ、だからアキシアライトを取ってこい、って事か」

 なるほどねぇ。

 でもまぁそういう性質を持っているんだったら、俺たちだって使えないか?

 「んじゃ、余分に採掘して俺たちの分もって事かな?」

 「いいえ、私たちはそれとはまた違う鉱物を採掘できれば、と思っています。ただ、そちらは希少鉱物なのでもしかしたら採掘できないかもしれないので、一応余分にアキシアライトも採掘しますけどね」

 「別の鉱物? 何を狙ってるんだ?」

 希少鉱物、例えばオリハルコン、とかそういったファンタジー鉱物なんだろうか?!?

 俺は少し期待しながらスミレの返事を待つ。

 「ライクリファイドという液体金属ですね」

 「ライク・・なんだって?」

 「ライクリファイドです。これは鉱石の中に液体溜まりとして生成される液体金属なんです」

 なんだ、そりゃ。

 液体金属って・・・水銀とかってやつか?

 「それってさ、水銀と同じ、って事?」

 「似ている金属、と言えると思いますが、性質は全く違います。ライクリファイドは自然の中でしか生成されませんが、今のところ生成条件は全く判っていません。ですのでライクリファイドは見つける事ができればラッキー、と鉱夫たちの間では言われています。アキシアライト以上に超希少金属なので高額で取引されますからね」

 「なんだよ、それ。一攫千金を狙ってるのか? っていうかさ、そんな珍しいもの見つけられるのかよ?」

 「そのつもりですよ」

 ああ、はいはい。スミレが見つける、って言い切るって事はさ、その分俺に負担がかかるって事だよな・・・はぁ。

 「でもさ、何に使うんだよ」

 「これは仕上げに使うんです。これを使って仕上げる事で、作り上げたものに自己修復機能をつける事ができます」

 「自己修復って・・それって魔法でできないのか?」

 「できますけど、その都度膨大な魔力が必要になります。けれどライクリファイドを使えば魔力を込める事なく修復するんです。これは魔力をあまり持たない獣人の武器にはとても有効ですね」

 ああ、なるほど。

 ここまで説明してもらってやっと判ったよ。

 つまり、スミレはライクリファイドをミリーとジャックのために欲しい訳だ。

 きっとこれを使って2人の武器を作り直す、またはちょっと手を加えるつもりなんだろうな。

 「ふぅん、判った。まぁ超希少って事だから見つかるか判らないけど、頑張って探そうな」

 「見つけますよ」

 「スミレなら見つけられるかもな。でもそのために俺たちを瀕死に追いやるなよ?」

 揶揄うような俺の口調に、スミレはじろり、と冷たい視線を向けたけど、ち〜っとも堪えないよ?

 だって、スミレはいつだって俺たちの事を考えてるんだもんな〜。








 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


06/17/2017 @ 18:28CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

見つける事ができればラッキーと、と → 見つける事ができればラッキー、と

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