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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
大都市アリアナ オークション、そして3つの依頼
201/345

200.

 できあがったフィギュアは我ながら上出来だと思う。

 それにスミレがミリーとジャックの匂いがこもったブランケットを掛ける事で、本物の2人に見せる事ができそうだ。

 とはいえ、どうやってブランケットに2人の匂いがこめたのか、は聞かなかったけどさ。

 フィギュアを作り終えた頃、丁度晩御飯にいい時間になったって事で早速食事を作る。

 もちろん約束通り肉の串焼き付きだ。今回の肉は最後の1羽となったブガラ鳥だ。これを俺が1口大に切って、ミリーとジャックが串に刺していく。

 それを簡易のバーベキュー台に並べて2人が火を通していく。その横にパンも置かせてもらったので、串焼きができる頃にはパンも焼きたてって感じに仕上がるだろう。

 それを見ながら俺はスープを作る。といってもいつも通りの刻んだ野菜にベーコンだけどさ。

 スープも串焼きも仕上がったところで、俺たちはテーブルについて食事を始める。

 と言っても、スミレはテーブルの端っこに置かれた小箱の上に座って俺たちが食べるのをみているだけなんだけどさ。

 「な〜んか、準備は全部終わっちゃったなぁ。スミレの方は?」

 「私の方も済みました」

 「で、明日はどうするんだ? ヴァイパーは洞窟の中にいるんだったっけ?」

 明日行くのは岩の塔の中にぽっかり空いている洞窟の中に入って、そこでボンガラ解体に必要な水を手に入れて、ついでに鉱物も採取してしまう事、なんだよな。

 もちろん、そのための障害であるヴァイパーも仕留めるつもりだ。

 もともとヴァイパーが持っている3連の魔石が欲しいんだしさ。

 「明日はここにパンジーちゃんと引き車を置いて徒歩で出かけます」

 「ここからだと500メッチ(メートル)くらい歩くって事か?」

 「ここから岩の塔が立ち並んでいる場所まではそうですけど、そこから更に奥へ入ってから洞窟の入り口から中に入りますので、移動距離は結構ありそうですね」

 「ありそうって、スミレ、どうせ探索で下調べしたんだろ?」

 答えが判ってるくせに白々しいぞ、スミレは。

 「一応探索はしましたが、洞窟の中ははっきりと調べる事ができませんでしたから、推測しかお答えできません」

 「ああ、そっか。で、ヴァイパーは洞窟の中にいるんだったっけ?」

 「洞窟か岩の塔か、そのどちらかですね。今は反応が感じられませんので洞窟の方にいるかもしれませんが、探索にかからない可能性も否めないのではっきりと答えられません」

 「マジかよ・・・じゃあ、明日いきなり襲われる、なんて事もあるかもしれないってか?」

 「はい、可能性としてはあります」

 俺は暗くなってきた空にぼんやりと浮かぶ岩の塔に視線を向けた。

 「あんなところで不意打ちを食らったらマズイぞ」

 「そうですねぇ」

 「スミレ、なんか返事が呑気なんだけど?」

 ジロリ、と睨むとスミレは軽く肩を竦めてみせる。

 「私の結界がある事をお忘れですか? ヴァイパーだろうとなんだろうと、なにものも寄せ付けません」

 キッパリと胸を張って言うスミレ。

 あ〜、うん、まぁ、そうなんだろうけどさ。

 でもやっぱり精神的な恐怖って言うのは感じると思うんだよな、うん。

 だから、その点はなんとかしたい、って思う。

 さて、でもどうすればいい?

 俺は串焼きの肉を頬張りながら、斜め上を見ながら考える。

 この中で一番足が遅いのは・・・・・俺だな。

 ミリーやジャックの方が背は低いけど、俺よりも走るの早いんだよ。

 当然スミレは空を飛べる訳で・・・そう考えるやっぱり俺がみんなの足を引っ張る事になる。

 でもパンジーはここに置いていかないと不安だ。

 スミレと一緒に引き車用の結界魔法具を作ったから、ちょっとやそっとの魔物ではパンジーに近づく事すらできないだろう。

 とはいえ、あんな洞窟の入り口まで引き車が通れるかどうかなんて判らないから、中途半端なところに停める事を思えばここに置いていくのがベストだろう。

 あれ? じゃあ、代わりの乗り物を作ればいんじゃね?

 「スミレ、俺のポーチって入れるものの大きさ制限あったっけ?」

 「なんでも入れられますよ。なんだったらコテージでも作って入れますか?」

 「いやいや、そんなもんいらねえよ。パンジーの引き車があるんだからさ、それで十分だって」

 「ですよね」

 ふふふっと笑うスミレを見て、からかわれたんだと思ったけど、まあそれはいい。

 冗談でもコテージくらいの大きさのものなら入れられるって事だよな、うん。

 じゃあ、いっか。

 「判った。じゃあ、あとで明日使うものを作るよ」

 「明日、ですか? 何か忘れてましたっけ?」

 「ん? いや、別に忘れてないと思うよ。でもまぁ移動に使えるものを作るかな、って思ってさ。パンジーがいるから長距離の移動は大丈夫だけど、それ以外で徒歩よりはマシな乗り物があれば便利かなってさ」

 「ああ、なるほど」

 うん、と頷くスミレ。

 つまり、反対じゃないって事か。

 じゃあ、一発作らせていただきましょう、ふっふっふ。






 焚き火の爆ぜる音を聞きながら、俺は焚き火のそばに置いた椅子に座ってスクリーンを展開する。

 丁度ミリーは風呂から出てきたばかりで、今はジャックが入っているところだ。

 俺はポチポチとスクリーンに指先で触れながら、さて、どんなのを作ろうか、と考える。

 「なあ、洞窟の中って、足元はでこぼこしてるのかな? ちゃんと歩けると思う?」

 「そうですねぇ。探索ではそこまでは判りませんが、鉱山の坑道よりは歩きにくい事は確かでしょう。広さも人が通れるかどうかというところもあると思いますよ。それに大きな亀裂が入った場所もあるかもしれませんから、一概にどうかと聞かれても判りかねます」

 う〜ん、そっかぁ。そう言われたらそうだよなぁ。

 俺は昔見たファンタジー冒険映画を思い出す。

 さすがにマグマが流れている横を歩くような事はないだろうけど、もしかしたら切り立った崖っぽいところはあるかもしれないもんな。

 それにスミレが言うように立って歩けないようなところもあるかもしれない。

 んじゃあ、車を作ろうか、っていう案は無しか・・・・ちぇっっ。

 でも広い場所だってあるかもしれない。

 「あっっ、でもさ、ヴァイパーが洞窟の中にいるんだったらそれなりに広いんじゃないのか?」

 「そういうところもあると思いますよ。ただ、ヴァイパーは外にもいるかもしれません」

 「ああ、俺、てっきり洞窟の中にいるんだって思ってたけど、あの岩のタワーが密集したところにいるかもしれないんだ」

 「ヴァイパーは洞窟のような湿度の高いところを好みますが、あのような擬態しやすい周囲が岩で囲まれたところも好みますからね」

 そういや、そんな事言ってたっけ。

 どこから来るのか判らない、っていうのがちょっとネックだよなぁ。

 「じゃあさ、どこにフィギュアを置いてヴァイパーに罠を仕掛けるんだ?」

 「洞窟の入り口あたりにしようか、と思ってます」

 「ああ、なるほどね。確かにそこだったら中からでも外からでも対応できるか」

 でもなぁ、と俺は風呂に入っているだろうジャックと引き車に入ったミリーに視線を向ける。

 あの2人に危害がないようにしたいんだよな。

 そりゃスミレの結界はあるけど、あれ、見えないからさ。

 なんか小さな場所でもいいから入っていれば少しは感じる恐怖感も少ないんじゃないかな、と思う訳だ、うん。

 俺はデータ・バンクから一番小さい軽自動車を呼び出してみてから、それを更に10パーセントほどサイズを縮小させる。ただし車高はそのままだ。

 う〜ん、それでも運転席がむっちゃ狭いんだけど。たった10パーセント、されど10パーセントってか。

 それからその後ろの荷台部分まで後部座席を下げて、それからベンチシートにした前部座席を下げる、と。

 運転席部分を前部の3分の2の広さにして、横の狭い部分は荷物置きにすればいい。っと、スミレの席だな、うん。もちろん、ハンドルもその分中心に移動させる、と。

 車体自身は色をガンメタにして、天井には防弾ガラスも真っ青っていうような丈夫なガラスにする事で上部の事も判るようにした。当たり前だけど車の窓ガラスは全部同じ丈夫なガラスだぞ。

 いや、ガラスと言ったら語弊があるか。これ、スミレの結界と同じような仕組みを使ってあるんだよ。

 だから、いざとなれば中から矢を放てば外に飛んでいくけど、外からの攻撃は中に通さないようになってる。

 とりあえずそこまで手を加えたところでセーブする事は忘れない。

 それから今度は某映画で有名な足の長い箱型の乗り物を呼び出してみる。スター・⚪︎ォーズだな、うん。

 この映画、古いけど好きだったんだよな。

 ここで俺が使うのはその足の部分だ。といってもあんなに頑丈なものじゃないし、歩くだけじゃないんだよ。

 俺がセーブしたちんまりとした軽自動車のタイヤ部分から足が生えるようにしてある。長い足は潜水艇のアームのように折りたたみができるようにして、足を伸ばしていない時は車の下に折り畳んでタイヤの部分に足先が来るようにする。もちろん足先はタイヤだ。

 このタイヤは滑りやすいところや急峻な坂道とかでは、形を変えて滑りにくい足になって歩けるようにする。そのための長い足をつけたんだもんな。

 そうそう、ついでに武器もつけてみるか。

 って事で、今度呼び出したのは某スパイ映画の車だよ。

 前からも後ろからもロケットランチャーでぶっ飛ばせるようにして、と。弾はもちろんスミレ謹製電撃弾や炸裂弾、それに火炎弾なんかもいろいろと取り揃えるようにして、と。

 そうそう、オイルがたっぷりと詰まった弾もいるかな。

 他にも捕獲弾とか粘着弾とか、各種取り揃えた方が何かあった時に安心だな。





 そこまで考えてから、ふと思い出した。

 「あれ、スミレ。解体に必要な水って、無理に取りに行かなくてもいいんじゃね?」

 だってさ、確かに飲み水を使うのはあまりいいアイデアじゃないけど、今までも水がいる時にやってた方法があるじゃん。

 「気がついちゃいましたか?」

 「気がついたか、ってさぁ」 

 「口実です」

 いたずらっぽく笑うスミレを俺はじとっとした目で見てしまった。

 「いいじゃないですか、どうせ鉱物も取りに行かなくちゃいけないんですから」

 「そりゃそうだけどさぁ・・・・」

 「ミリーちゃんやジャックだって文句はないんですよね?」

 「ないみたいだけどさぁ・・・」

 なんか、騙された! って思うのは俺だけか?

 「ほらほら、早く仕上げないとのんびりお風呂に入れませんよ」

 「それはヤダ」

 俺は慌てて視線をスクリーンに戻して、それからまた顔を上げてスミレを睨んでみる。

 「スミレ、ごまかすの、上手くないか?」

 「別にごまかしていませんよ?」

 「はぁ・・・まあいいけどさ」

 シレッと言うスミレにこれ以上言っても勝てっこない事は判ってる。

 でも悔しいからわざとらしい大きな溜め息を吐いて、俺はまた明日に向けての準備にとりかかるのだった。




 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


06/11/2017 @ 18:42CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

俺は滝日のそばに置いた椅子 → 俺は焚き火のそばに置いた椅子

なんかは小型のものの中に入っていれば → なんか小さな場所でもいいから入っていれば

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