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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
大都市アリアナ オークション、そして3つの依頼
198/345

197.

 まず最初にする事は、おはぎ岩を砕いて中から水晶もどきを取り出す事なんだけど、どうやるかなぁ。

 デタラメな性能の俺のポーチに入れてから引き車のすぐそばに取り出したおはぎ岩。

 取り出したそのそばで見上げる俺のそばで、スミレが早速スクリーンを展開している。

 「これ、どうすんだ?」

 「まずは輪切りにしますね」

 「どうやって?」

 「もちろん、スキルを使うに決まってるじゃないですか」

 「・・・はっ?」

 そんな事もできるのか?

 「では下に陣を展開します・・・展開しました。それでは厚さ50センチに切断していきます」

 切断、という単語に俺は思わず後ろに下がる。

 いやだってさ、もしかしたら、って事、あるかもしれないじゃん。

 陣が下からぼんやりと光りだしたかと思うと、今度は岩の背後に水平に現れた細長い光が岩の真上をゆっくりと通り過ぎていく。

 う〜ん、なんていうのかな、レーザー・カッター、ってやつ?

 岩を通り過ぎて縦長の光が岩のこちら側に全て出てきたところで、そのまま光が消える。

 それからまた岩の背後に光が現れてゆっくりと岩を切っていく。

 それを十数回繰り返したところで縦長の光と下の陣が消える。

 「コータ様、岩を一切れこちらに持ってきてください」

 「お、おっけ」

 一切れ、というにはでかい輪切りだけど、なぜか問題なくそれを移動できる俺、すごくね?

 まぁそう思ってるのは俺だけのようで、誰も褒めてくれないけどさ。

 「では今度は素材の分離を始めますね」

 「このままでいいのか?」

 「大丈夫ですよ。ただ1切れずつになるので、申し訳ありませんが運ぶのを手伝ってくださいね」

 「そりゃそれくらいはするけどさ」

 てか、それくらいしか役に立たない俺?

 「素材の分離さえ終えれば、あとは私の方で済ませてしまいますから、コータ様はミリーちゃんたちとお昼でも食べていてください」

 「いいのか?」

 「はい、大丈夫ですよ」

 「何個くらい作るんだ?」

 「とりあえず15個作っておこうと思っています。もしそれ以上仕留める事ができれば、コータ様たちが解体をしている間に作る事もできますから」

 うっっ、忘れてた。

 解体かぁ・・・そっか〜、俺が解体、すんのかぁ・・・・はぁ。

 「スミレ、解体できたんじゃなかったっけ?」

 「できますよ? でも、解体も試験のうち、なんじゃないんですか? 持って帰ってから、どうやって解体したんだ、と聞かれても大丈夫なように解体の練習もした方がいいですよ」

 「・・・・はい」

 ちっくしょう、正論すぎて反論できないっ!

 確かにローガンさんだったら、どうやって解体したんだ、くらいは聞きそうだもんな。

 その時に、スキルで解体しました、なんていう訳にもいかないよ。

 「もちろん、解体するのはコータ様だけでなく、ミリーちゃんやジャックにもさせてくださいね」

 「スミレ、鬼だな」

 「そうですか? でしたら期待に添えるように解体を全部してもらっても構いませんよ?」

 「えっ、もしかして手伝ってくれるつもりだった?」

 「当たり前です。コータ様たちに全部任せていたら、いつ解体が終わるか判りませんから」

 なんだよ〜、早くそれを言ってくれよ〜。

 途端に輪切りの岩を運ぶ手が早くなる。

 我ながら現金だと思うけど、だ。10匹以上の蜘蛛の解体なんて考えるだけでゾッとする。

 「ついでにこの入れ物をどうやって作ったかの、言い訳も考えてくれよな」

 「言い訳ですか?」

 「うん、絶対に聞かれる。ガラスがなくって、ゴンドランドの羽を窓ガラス代わりに使うんだぞ、この世界って。そんな文化レベルの人たちに透明な箱を持っていくとどうなると思う?」

 「ああ、確かにそうですね。では見た目を変えてしまいましょうか」

 「そんな事もできるんだ?」

 「できますよ。ただ最適なのが水分を逃がさない素材での入れ物、というだけですから」

 そっか、じゃあ、その辺はスミレに任せればいっか。

 でもこうして考えると、だ。板状にしか錬金できないサーシャさんって意外と役に立つんじゃないのか? 

 この入れ物の事もサーシャさんと口裏を合わせれば疑われないかも、と一瞬思ってしまったけどだ。関わりたくないからやっぱりその案は却下だ、却下。

 俺は頭をぶるっと震わせて、サーシャさんを頭から追い出した。

 とにかく、今はスミレの手伝いだ、うん。






 ランチはミリーとジャックが作ったサンドイッチ。

 多少パンの厚みが不揃いだとか挟んでいる野菜が妙に多いとか、そういう事を抜きにしてもなかなか頑張って作られたと思う。

 パンに塗られた俺特製のマヨネーズに、どっちのアイデアか判らないけど塗られていたケチャップ、見た瞬間躊躇ったけど思ったよりも美味かったよ、うん。

 「上手にできたな」

 「そ? ありがと」

 「当たり前だろ、俺たちだってやればできるんだって」

 俺の褒め言葉に嬉しそうに頬を緩めていたミリーは、ジャックの言葉を聞いてじろり、と彼を睨んだ。

 「ジャック、くちばっかり。パンだって切れなかった、よ」

 「いやっ、そのっ、それはっっ」

 「野菜切ったのも、わたし。挟むお肉切ったのもわたし、だったよ。ジャックがした、の、マヨネーズ塗るだけ、だった」

 「なんだ、おまえあんまりミリーの手助けしてないんじゃないのか?」

 「そっ、それは・・でもっ、俺だって、その・・」

 「マヨネーズも塗りすぎて、パンがぐちゃぐちゃになった、よ」

 マジか。

 マヨネーズすら塗れないのか、おまえ。

 俺はそんな気持ちを込めた視線を彼に向けると、目に見えてしょぼくれたジャックの尻尾はそのまま地面に垂れ下がる。

 きっとぐちゃぐちゃになったパンは処分したんだろう。

 と、このまま士気を下げたままじゃあ駄目だな。

 「でも、これだけちゃんとしたサンドイッチができたって事は、ミリーがちゃんと監督してくれたからだな、すごいな」

 手を伸ばして撫でてやると、憮然とした表情が照れ臭いものに変わる。

 「お、俺だって・・・」

 「うん、ジャックもできる事はしたもんな」

 「うぅぅぅ・・・」

 「まぁ料理はあんまり得意じゃないみたいだからさ、その分ボンガラを仕留める時に頑張ればいいよ」

 「お、おうっっ」

 単純なジャックはそれだけでやる気を出した。

 「そうそう、スミレがボンガラの解体を俺たちに任せる、って言ってるから、みんなで頑張ろうな」

 「おうっ、俺が頑張るっっ」

 「そうか? じゃあ、解体を始めたらスミレがやり方を教えてくれるっていうから、しっかり習おうな」

 「まかせとけってんだっ」

 俺がニンマリとした口元をサンドイッチで隠していると、斜め前のテーブルの上に置かれた小箱に腰を下ろしていたスミレが呆れたような視線を向ける。

 べ、別に解体を全部ジャックに押し付けるつもりはないぞ?

 俺は一口サンドイッチを頬張って食べる事で表情をごまかしてから、隣で同じようにモキュモキュと食べているミリーに声をかける。

 「ミリーも一緒に解体しような。スミレの話だと解体もランク・アップの試験の一環らしいからさ」

 「頑張る。でも、スミレ、助けてね」

 「もちろんですよ、ミリーちゃん」

 「俺もスミレに教えてもらわないとな。ボンガラなんて初めてだから、解体のやり方もよく判らないだろうからなぁ」

 「お、俺も、教えてもらいたい・・その、教えて下さい」

 おずおずとスミレに顔を向けて頼むジャック。

 あれ? 珍しいじゃん、ジャックが頭を下げて頼むなんてなぁ。

 きっとここに来るまでの道中でスミレの方が上だって認めた、って事か?

 まぁあれだけとっちめられたら、確かに下手にでるよな、うんうん。

 「スミレ、今日から狩りを始めるのか? それとも明日に繰り越し?」

 「そうですね・・・とりあえずパンジーちゃんはここに残しましょう。今夜はここで寝ればいいでしょうからね。ただ解体をするとなるとある程度の水は必要になりますよ。どこで確保しますか?」

 「えっ、今俺たちが持ってるだけじゃあ足りないかな?」

 「足りませんね。というか私たちが持っている分は飲み水ですよ。さすがに飲み水を解体に使うのはもったいないです」

 「そっか・・じゃあ、どこで補給する?」

 ここに来る道中はずっと赤い大地が広がっていたぞ?

 「井戸でも掘るのか?」

 「そうですねぇ・・・1つ提案があるのですが、聞きますか?」

 「提案? うん、まあ聞くだけなら、な」

 スミレは何を言い出すか判らないからな。

 なんせ今までだっていろいろと突拍子もない提案をしてきたっていう実績がある。

 それを思うとすぐに同意はできないよ、うん。

 「ここの中央付近を見ていただけますか?」

 中央? それって細長い岩が突き出しているところ、だよな?

 「あの岩が突き出しているところ、だろ?」

 「はい、そうです。あそこには地下に降りる事ができる洞窟の入り口が開いています」

 「洞窟? じゃあそこで水を確保するのか?」

 「その中には地下水流があるので、水の確保は簡単です。ただし、その道中に大きな魔物が獲物を狙って待ち構えていますけどね」

 大きな獲物、と聞いてすぐにピンときたよ。

 「あ〜、なんとなく判った。その魔物って、例の、だろ?」

 「ご名答です。もちろん、地下に入ってしまって水を確保するだけではなく、そこには最後の1つの依頼である鉱物、シルバライトも採取する事ができます」

 「じゃあ、どっちにしても行くしかない、って事か」

 「そうですね。そのつもりでここを選びましたから」

 しれっとした顔で今更のように教えてくれるスミレ。

 あのなあ。もっと早く教えてくれてもいいと思うんだぞ、俺としては。

「それって、さ。もしかして最初からこういう場所がある事が判ってて3つの依頼になってた、って事か?」

 「そうですね。ただ3つ全てが1箇所に集まっているのはここだけです。ですから、これも試験のうち、なんだと思います。1つ1つ安全を確保しながら3箇所で集めるか、ここに来て大物の魔物と対峙しながら3つの依頼品を集めるか、その辺りもみ極めているんだと思います」

 なるほどなぁ、素材を集める場所の選出までもがランク・アップの試験の一環、って事なのか。

 「今からボンガラとシルバライトを別のところに探しに行くとして、残り時間は足りるかな?」

 「ギリギリ、でしょうね」

 やっぱりか、ここに来ただけで既に時間はいっぱいいっぱい、って事か。

 「まあ、どうせアレも仕留めるつもりだったんだ。順序が変わるだけ、って事だな」

 「コータ?」

 「なんだよ、2人で判ったような話しやがって」

 「ああ、ちゃんと説明するよ。とりあえず今日は狩りは無し、だ」

 「ええぇぇ」

 「なんでだよっっ」

 俺が狩りは無し、と言った途端、不満げな声が飛んできた。

 でもな、準備をする事の方が大事だと思うぞ。

 「だから、その説明をするって言ってるだろ。ちゃんと人の話は聞け」

 「うぅ・・わかった」

 「判ったよ」

 しぶしぶと俺に返事をする2人に、さてどこから説明するかな。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


06/11/2017 @ 18:39CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

そうやって解体したんだ → どうやって解体したんだ

我ながら厳禁だと思うけど、だ。 → 我ながら現金だと思うけど、だ。

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