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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
大都市アリアナ 到着
176/345

175.

 昨日はのんびりと過ごさせてもらった。

 あの宿の風呂は良かったよ〜。部屋にないのは残念だけど、あれだけのでっかい風呂だったら、部屋に設置できないのも仕方ない。しかもそれが各階の部屋の数だけ並んでいるっていうんだからすごいよな。

 昨日泊まったリランの花びら亭の部屋には風呂がなかったんだけど、廊下の突き当たりに並んで作られていた風呂場はそれぞれが広さ8畳くらいで、そこに3畳くらいの広さの風呂が設置されていた。

 広さも凄いけど、何と言ってもそのその天井部分と横の部分が水晶っぽいものでできていて、そこに描かれた風景ががキラキラと七色に色を変えながら輝いていたんだ。

 シャンティさんに夕飯の時に聞いたらそれは特殊な水晶らしくて、1日中の光を集める事で明かり代わりに光るんだとか。

 う〜ん、すごいよなぁ。

 でもあれだったら確かに日当たりのいい場所に風呂をまとめたっていうのも頷けるよ、うん。

 そして今日朝食を食べ終えた俺たちは、昨日立ち寄った倉庫でグランバザードの様子を見てから、今は生産ギルドに向かって歩いているところだ。

 いつものように俺の左右にミリーとジャックがくっついて歩いている。

 スミレは体を宿に残して、俺以外には見えないけどふわふわと俺たちの周りを楽しそうに飛び回っている。

 「コータ、遠いの?」

 「ん? スミレの話だとリランの花びら亭からさっきグランバザードの様子を見た倉庫に行くのと同じくらいの距離らしいぞ?」

 シャンティさんは倉庫まで馬車を出そうかと言ってくれたんだけど、距離が徒歩20分くらいだと聞いたから散歩がてら歩く事にしたんだ。

 「でもつまんなかったら先に宿に戻ってもいいよ?」

 「えぇ・・やだ」

 「帰れねえよ。おれ、もう道、判んねえ」

 あ〜、うん、そうだな。ジャックは道なんて覚えてないだろうな。

 不安げについていくというミリーと、ただ道が判らないだけのジャック。

 俺は相変わらずの2人を見てつい笑ってしまう。

 「じゃあ、諦めてついてきてくれな。時間があったらあとでハンターズ・ギルドにも寄ってみるからさ」

 「依頼を受けるのか?」

 「受けるかどうかは今夜オークションの事が判ってからだよ。オークションの日程が判らないと予定が立てられないだろ?」

 「ちぇっ」

 露骨にがっかりするジャックと、口にはしないけどがっかりしているミリー。

 どっちも尻尾がへにゃっとしているからよく判るよ。

 『2人とも、がっかりしすぎですね』

 「だな。でもまあ、らしいっちゃらしいんだけどな」

 『この先を左に曲がってしばらく行けば生産ギルドの看板が出てきますよ』

 「ありがと、スミレ」

 『どういたしまして』

 俺たちが寝ている間に大都市アリアナ全体を探索し終えているスミレは、ナビ代わりに俺たちが道に迷わないように教えてくれる。

 うん、スミレがいなかったら道に迷っていたかもしれない。

 なんせむっちゃ広いんだもんな。

 





 石のブロック壁仕立ての建物に生産ギルドの看板がかかっているのが見えた。

 俺たちがそのまま中に入ると、カウンターに3人ほどの職員が立っており、壁側の展示物や新しく登録申請を通った商品について書かれた紙が何枚も貼られている掲示板の辺りに数人の人がいる程度で閑散とした空間が広がっている。

 「いらっしゃいませ。何かご用でしょうか?」

 カウンターの入り口に一番近い場所に立っていた俺と同じくらいの年代の男が声をかけてきた。

 「あ〜、用事というか、来るようにと言われたので来たんですけど」

 「そうですか。失礼ですがお名前は?」

 「コータです」

 「コータ・・・ああ、もしかして、あのコータさんでしょうか?」

 あの、が何を指しているのは俺には判らないけど、多分そうなんだろうなぁ・・・

 「あのかどうか判りませんが、昨日アリアナに入場した時シュナッツさんに生産ギルドに顔を出すようにと言われました」

 「ああ、シュナッツさんですか。じゃあ間違いないですね。ギルド・マスターに知らせてきますので少々お待ちください」

 「バラント、俺が知らせてくるから3人を奥の部屋に通しておいてくれ」

 「あ、クラインさん、じゃあお願いします」

 バラントと呼ばれた男は、声をかけてきたクラインに頭を下げてからカウンターの向こうから出てきた。

 「じゃあ、クラインさんがギルド・マスターを呼んできますので、先に奥の部屋にご案内しますね。申し遅れましたが僕はバラントと申します。」

 「えっと、その、いいんですか?」

 「何がでしょう?」

 「奥の部屋って登録申請をするための部屋ですよね?」

 「はい、そうですね。ですがそれ以外でもよく使われる事があるんですよ。表立ってできない話などがあるでしょう? そういう時も使うんです」

 俺は登録申請をする気は全くないぞ、と言いたかったんだけど、どうやらそれは伝わったようで、バラントさんは苦笑いを浮かべて説明してくれた。

 表立ってできない話、って事はミルトンさんの事なんだろうな。

 それなら確かにカウンター越しでしていい話じゃないだろう。

 「それでしたら仕方ないですね。判りました」

 「それではこちらにどうぞ」

 先に立って歩くバラントさんについて歩きながらも、気になる事を尋ねていた。

 「その・・・大事おおごとにはなりませんよね?」

 「僕としてはなんとも言えません。その、コータという人物が来たら知らせるように、としか言われてないので」

 「ああ、そうですか」

 あまり公にしたくないって事なのかもしれない。

 「申し訳ありません」

 「いえいえいえ、気にしないでください。ただちょっと気になっただけですから」

 「ギルド・マスターならコータさんの疑問に答えてくれると思います」

 まあ、そりゃそうだろう。

 ただギルド・マスターに会う前にちょっと情報が欲しかっただけだからさ。

 「この部屋です。どうぞ中に入ってください。そちら側の席に座っていただけますか? 僕はお茶を持ってきます」

 俺の返事を待つ事もなく、バラントさんはそのまま奥に向かった。

 案内された部屋は8畳くらいの真四角の部屋で、ドアを開けると長細いテーブルが置かれていて、椅子が左右に4つずつ並んでいる。

 バラントさんが勧めたのは左側の列だったので一番奥にミリーを座らせ、それから俺が座って最後にジャックが座る。

 一番手前の席は空いたままだ。

 知らない人がその席に座るとジャックが居心地が悪いだろうと、俺は背中に担いでいたバックパックを空いていた席に置く。

 それを見てジャックがホッとした顔をした。

 「なんの話、かな?」

 「多分この前のポクラン市で俺が腹を立てただろ? あの事だと思う」

 「あれ、コータ、だいじょぶ?」

 「ん? ああ、俺はね。でもあんまり楽しい話じゃないからさ、聞きたくないんだったら違う部屋を用意してもらうからミリーとジャックはそっちで待機していてもいいぞ?」

 「だいじょぶ。わたしも一緒にいる、ね」

 「お、俺も平気だぞ。その、昨日の話なんだろ?」

 なんだかんだ言って2人とも俺の事を心配してくれているんだろうな。

 それにミリーにはよく判らなかったみたいだけど、ジャックは昨日シュナッツさんと俺が話していた内容はそれなりに理解していたようだから、それならこのままここにいてもいいかと思う。

 「まあ話に飽きたら言ってくれたらいいよ。何か遊ぶものを出すからさ」

 「あそぶ?」

 「うん、って言っても大したものはないからさ、紙と色鉛筆を出すから絵でも描いてるか?」

 「いろえんぴつ、楽しいねえ」

 ミリーはいろいろなものを描くのが好きだから、嬉しそうに尻尾を左右に振る。

 「今日は無理だけど、みんなで遊べるゲームとか作るのもいいかもな」

 「げえむ?」

 「うん、ほら、前にボールを作っただろ? あれでドッヂボールしただろう? ああいうみんなで一緒に遊ぶ事をゲームっていうんだ」

 「げえむ、楽しいね」

 厳密にはちょっと違うんだけど、こう言えばミリーやジャックに判りやすいだろう。

 「でもここ、狭いよ?」

 「うん、だからボールで遊ぶんじゃなくってさ、机の上でみんなで遊べるようなものを作るつもりだよ」

 「楽しい?」

 「うん、みんなで遊べば楽しいよな?」

 「そっか」

 ミリーはニコニコと笑みを浮かべて、どんなゲームなのか想像しているようだ。

 でもきっとミリーが想像するようなゲームじゃないと思うぞ。

 なんせ俺が考えているのは、ボードゲームやサイコロを使って遊べるゲームだからさ。

 「スミレ、今夜にでもゲームを作ろう」

 『ゲームですか?』

 「うん、適当に俺の記憶データバンクを検索しておいて。ミリーたちでも簡単に遊べるようなゲームを探しておいてくれるといいな」

 『判りました』

 小声で俺の肩に座るスミレに頼むと、楽しそうに頷いた。

 「ミリー、紙と色鉛筆を出そうか?」

 「えっ? で、でもこれから真面目なはなし、だよね?」

 「あ〜、まあな、でもそれは俺がする事だからさ。ジャック、場所変わろう」

 俺が真ん中にいるよりはジャックとミリーが並んでいた方が、2人で絵を描いて遊べるだろうし、深刻な話になった時にやりやすいだろう。

 俺はポーチから2セットの色鉛筆とボードに挟んだ紙をボードごと2人の前に置いた。

 「ほら、これで時間が潰せるだろ?」

 「うん、ありがと」

 それからジャックと場所を替わるために立ち上がろうとしたところで、コンコンとドアがノックされバラントさんが入ってきた。

 「お待たせしました。お茶を持ってきました。それからギルド・マスターはすぐに来るそうです」

 俺たちの前にお茶を並べてくれるバラントさんを見て、俺は席を替わるのはお茶の後でもいいか、とジャックと席を替わるのを待つ事にした。

 「ありがとうございます」

 「すぐに来ますから、それほどお待たせしないと思いますよ」

 「大丈夫ですよ」

 済まなさそうなバラントさんに気にするなと軽く手を振ってからお礼を言ったところで、またドアがノックされた。

 どうやらギルド・マスターがやってきたようだ。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/13/2017 @ 15:26CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

だからボールで遊んじゃなくってさ → だからボールで遊ぶんじゃなくってさ

でもそれは俺何する事だからさ。 → でもそれは俺がする事だからさ。

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