167.
ようやく少し落ち着いてきました。
今話から、また頑張って毎日更新したいと思います。
今までに誤字訂正の指摘をいただいておりましたので、それもこれから頑張って直していきたいと思います。
アホウドリのように助走をつけて飛び上がったグランバザードは、見た目に反してそのままかなりの高度まで一気に上昇した。
あんなにでかい図体の鳥がかなり小さく見えるんだ、高さは半端ないと思う。
「スミレ、グランバザードまでどのくらいの距離がある?」
「200メッチは超えてますね。おそらく250メッチほどの距離はあるでしょう」
「やっぱりかぁ・・・」
そんな気がしたんだよ、うん。
確かスミレの結界は200メッチまでは大丈夫かもしれないって言ってた。
でも確実に捕獲するためには100メッチくらいまで近づいてもらえないと駄目だろう、とも言ってたな。
俺は小さく見えるデッカいグランバザードを見上げながらも、ポーチからスミレが作ってくれた粘着液弾を取り出す。
それからちょっと考えて、出したばかりの粘着液弾をまたポーチに仕舞ってから、今度はミリーたちに見せるために作った花火玉を取り出した。
「コータ様?」
「ちょっと試し撃ちしてみようかな、ってね」
ニヤっと笑う俺を呆れたような顔で見上げると、スミレはそのままミリーとジャックの所に飛んでいくと、小さいスクリーンを展開した。
代わりにミリーが興味津々といった感じで俺をジッと見る。
「コータ、何してる、の?」
「試し撃ち」
「ためし? なんで?」
「本番の時に失敗すると駄目だろ?」
「うん、失敗はダメ。じゃあコータ、がんばる」
なぜか判ったように頷いてから、俺に指示を出すミリー。
いや、判ってないよね?
でも期待でキラキラした目を向けられちゃうとなぁ、頑張りますかって気がしてくるよ。
俺はとりあえず打ち上げ筒に花火玉を放り込んでから、バズーガ砲を撃つ兵士みたいに肩に担いだ。
って、テレビや映画でしか見た事ないんだけどさ。
とりあえず直接グランバザードを狙うんじゃなくって、そのすぐ傍に照準を合わせる。
相手は飛んでいる鳥、照準を合わせたってすぐに移動されて合わなくなっちゃうだろうから、それなら最初からやってきそうな方向に向けておく方が合わせやすい気がする。
はっきり言って見た目は打ち上げ花火の筒みたいなんだけど、機能そのものはバズーガ砲と同じなんだよな。
こんな事なら最初からバズーガにすれば良かった、と思ったのは今朝の事だった。
「スミレ、上空100メートルくらいになったら教えてくれ」
「判りました」
そのくらいまで近づけば俺でもそれなりによく見えるようになるだろうけど、それでもちゃんと見極める事ができるかどうか自信がないからさ。
肩に担いだ筒から出てきた照準装置に目を合わせて、それから肝心の照準を空を旋回しているグランバザードに向ける。
「照準セット・・・ロック」
「こちらも確認しました」
俺が見ている照準装置とスミレが展開しているスクリーンはシンクロしていて、スミレが後方サポートとして修正してくれる事になっているんだ。
「ロック完了・・・じゃ、発射」
「発射します」
丸い花火玉がシュポンという音とともに飛んでいく。
飛び出していく時の音はショボいけど、スピードは俺の想像以上であっという間にグランバザードに向かって飛んでいく。
ただまぁいくら大きな花火玉と言ってもせいぜい直径が15センチ程度のものだからさ、すぐに肉眼じゃあ見えなくなっちゃうんだよな。
なので俺は目標であるグランバザードをじっと見る。
「点火」
スミレの声が聞こえたと思ったのと同時に、花火が破裂した。
途端に、昼間だからはっきりとした色や形は見えないものの、花火玉から小さな火の玉が周囲に散開するのが判った。
「おおっ、た〜まや〜」
「コータ?」
「ギェエエエッッッ」
思わず口から出た俺の言葉にミリーが反応したけど、 それに返すヒマもないまま俺はポーチから本番用の弾を筒に詰め込みながら目だけは空を見上げている 。
グランバザードはいきなり飛んできた花火玉を警戒していたものの、まさかそれが割れて中から無数の小さな火の玉が弾けるように飛び出してくるとは思っていなかったようだ。
変な声を上げて慌てて逃げようとする。
でもすぐに威力が全くない事にも気づいたグランバザードはそのまま地上に睨みつけるような視線を下ろした・・・ような気がした。
いや、だってさ、距離がありすぎて見えないんだよ。
ただ最初に見つかった時と同じような鋭い視線を感じたんだ。
でも俺が感じたと思った視線は本物だったようで、グランバザードは空中で方向転換をしたかと思うとこっちに向かうためか頭を下げる。
「コータ様っ!」
「判ってる。照準セット・・・ロック」
「ロックしました」
「スミレ、そのままサポート頼む。発射っ!」
「 照準サポート開始・・追跡ロック・・・」
静かなスミレの声にミリーとジャックは黙ったまま。
いつもであればそれなりに騒がしいんだけど、今はそれどころじゃないとそれなりに空気を読んでいるのかもしれないな。
俺は飛んで行った弾の行方を見る。
いくらパチンコ弾よりも大きな弾だからといっても、やっぱり小さいからすぐに見えなくなってしまう。
それでもすぐに破裂音が響いてきた。
と同時に何かがグランバザードの眼前に広がるのが肉眼でも判った。
「コータ?」
「落ちてくるぞっっ。ミリー、ジャック、結界があるんだっ、動くなよっっ!」
「わ、わかった」
「お、おうっ」
落ちてくるグランバザードに驚いてスミレの結界から出ないようにと2人に声をかける。
確かスミレが出入りできない結界を張るみたいな事を言っていたけど、既にそっちの結界になっているかどうか俺には判らないからな。
「グランバザード、結界展開範囲内突入しました。外側の結界を展開します」
「スミレ、あの高さから落ちてきて、大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
ホントかな? と、まあ心配したところで俺に何かできる訳じゃあないから、俺は落ちてくるグランバザードを見上げるだけだ。
ま、もし死んだとしても羽は回収できるから、それだけでも十分実入りが見込める筈。
そうして地上に近づいてきたグランバザードは俺たちからもよく見えるようになり、粘着液まみれになっているもののなんとか逃れようともがいているのが見える。
それと同時に翼を無理やり動かして落ちてくる速度を落とそうとしているから、スミレの言う通りそれほどのダメージにはならないかもしれない。
ただ、顔周辺に粘着液を被ったみたいで、よく見えていないようだ。
だからこそ余計にがむしゃらにもがいているのかもしれない。
「コ、コータ・・・」
「大丈夫だよ、ミリー。こっちには落ちてこないから」
多分、だけどさ。
「ほら、俺たちから結構な距離があるからさ、落ちるのはあっちだと思う」
「ホント?」
「うん。それにスミレの結界があるんだから、あれが真上に落ちてきても大丈夫だよ」
と、スミレが言ってたな、うん。
それでも不安そうな声のミリーを目だけで振り返ってみると、ジャックと2人で膝立ちの格好で抱き合っているのが見えた。
おそらく迫力に驚いて座り込んで、そのまま2人で支えるように抱き合っているんだろう。
ふっと口元に笑みが浮かぶ。
可愛いじゃないかよっっ、おまえらっっ。
「あと5秒で墜落」
スミレがカウントをしてくれるが、そんなものされるまでもなくデッカいグランバザードが落ちてくるのは見える。
距離にして俺たちから30メートルほど離れた辺りが墜落地点になるだろう。
ずぅううんんん
大きな墜落音に続いて、土煙が上がる。
俺たちはスミレの結界に守られているから周囲を土煙が舞う事はあっても中には入ってこない。
そしてグランバザードも結界の中だからか、その周囲には土煙は舞っていても結界が展開されている辺りまでしか舞わないので、どこに結界があるのかが目で判る。
「土煙が酷いですね」
「そうだな」
「換気します」
「えっ、そんな事もできんのか?」
「はい」
にっこりと笑みを浮かべたスミレが軽く手をあげて左右に振ると、それに合わせて土煙が結界から出て行くのが見えた。
やっぱスミレ、すごいわ。
「コータ様たちの入っている結界を移動させますので、注意してください」
「判った。おいミリー、ジャック。立ち上がってついてこないと結界からはみ出ちゃうぞ」
「だめ」
「待ってくれよっ」
慌てた2人は抱き合ったまま立ち上がると、そのまま慌てて俺のところにやってくる。
「スミレ、例の結界に変更してあるか?」
「まだです。もう少し近づいてから変更の予定です」
「オッケー、じゃあ悪いけどもし2人が結界の外に出そうになったら、すぐに例の結界に変えてくれるかな?」
「判りました」
ミリーとジャックは不思議そうな顔で俺たちを交互に見ているが、俺はそんな2人の背中を押して歩き出す。
さあ〜って、っと。
これからもう一仕事だな。
読んでくださって、ありがとうございました。
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