165.
楽しい日本の時間はあっという間・・・・
という事で無事に戻ってきましたが、今週は何かとバタバタしているので少しだけ隔日更新とさせていただきます。
5月5日の週末からまた以前のように毎日頑張って投稿していきたいと思います。
これからもお付き合いいただけると嬉しいです。
それからいただいていた誤字脱字のご指摘についてですが、これから頑張って訂正させていただきます。
ご指摘のおかげで訂正できる事、本当にありがたく思っています。
元気のいいパンジーのおかげで、予定通りの場所まで移動した俺たちはそのまま野営をする。
もちろんいつものように引き車を寝られるようにセットして、外に竃を出して晩御飯を作る。
そして晩飯が終わったら引き車の裏に風呂を作ってみんなで順番に入る。
いつも通りの手順をこなして、お子ちゃま組が寝静まった頃、俺とスミレはのんびりと外の焚き火の傍でのんびりとスクリーンを展開した。
「捕獲弾を改良するんでしたよね?」
「うん、さすがにあんな小さな弾じゃあでっかい鳥は捕まえられないよ」
「鳥じゃなくて魔物なんですけどね」
「知ってる。でも魔物って考えると怖いじゃん。だからデッカい鳥だな、って思うようにしてるんだって。でもさ、スミレ。おまえ俺の新しい弾の試し撃ちができるって言ってたけど、どう考えても無理だって判ってたよな?」
「え? 100パーセント無理だとは思ってませんよ? ただコータさまの言う通り、もう少し強力な弾の方が確実ではないか、と思いますけどね」
あ〜はいはい。なんか上手い具合に乗せられた気がするよ・・・はぁ。
「それで、どうするんですか?」
「ん〜、まだ考え中。完全に捕獲しきれなくってもさ、とにかく動けなくなるようにしたいなって思ってる。動きさえ止められたらまだいろいろと手はあるからさ」
「つまり、足止めですね」
「そうそう」
ジャックの電撃弾も考えたけど、あれって距離があるんだよなぁ。
確かに剣に比べれば長距離の獲物も狙えるようになったけど、それでも水を飛ばさないといけないだけに距離は30メートルくらいだから、50メートル先は狙えるミリーの矢や俺の弾に比べると短い。
でも、だ。
だからと言って、魔法陣を使って水も生み出さないといけない俺の弾やミリーの矢では威力が弱すぎて、足止めにならない気がするんだよなぁ。
「ジャックだと距離が足りない。俺やミリーだと威力が足りない。う〜ん・・・どうするかなぁ」
「今回のような大型の相手用の武器を考えますか?」
「う〜ん、それでもいいんだけどなぁ・・・」
でもそんなのを作ったら、これからも大物を狙わせられそうなんだよなぁ。
怖い事に関わりたくない俺としては、できればこれを最後にしたいんだよ。
でも、狩りが大好きなうちの2人の事を考えると、これっきりって事はないような気もする。
はぁ、と思わず漏れた溜め息にスミレは俺を振り返る。
「どうしましたか?」
「ん? ああ、なんでもないって」
「何か問題でも?」
「いや、別に」
「そうですか?」
どこか疑うようなスミレだけど、それ以上は突っ込んでこない。
俺は諦めて、大型の武器を作る事にした。
でもさ武器として使うだけっていうのは嫌だから、少しだけ遊び心を加えたっていい筈だ。
「しゃあないか・・・スミレ、打ち上げ花火を作ろう」
「はい?」
「打ち上げ花火、俺の記憶データバンクにないかな?」
「はい。その・・・ありますけど?」
打ち上げ花火がどうすれば武器になるのか、スミレには良く判っていないみたいだ。
「とにかくデータを出してくれるかな?」
「はい」
頭を傾げながらも、スミレはスクリーンに手を触れながら打ち上げ花火に関するデータを呼び出した。
俺が知っている打ち上げ花火はテレビで見る花火大会程度の知識だと思っていたから、空に向かって打ち上げられる花火をスミレに見せればなんとかなるんじゃないかなってさ。
だけど俺が思っていた以上のデータが出てきた。
「俺、打ち上げ花火の花火玉を作るところなんて見た記憶がないんだけどなぁ」
「そうですか? でもこれはそうですよね?」
「うん、まあな。じゃあ、これだけのデータがあればなんとかなるかな?」
「あの・・・花火を作るんですか?」
躊躇いがちに聞いてくるスミレに俺は苦笑いを向けた。
「違う違う。打ち上げ花火の原理を使って電撃爆弾を飛ばせないかなって思ったんだよ」
「電撃爆弾、って電撃弾の強力版ですか?」
「うん、そう。ほら、俺の弾って直径が2センチくらいだろ? でもさ、打ち上げ花火の花火玉と同じ大きさの電撃弾を作れば、それだけ威力がデカいものが作れるからさ」
それに打ち上げ花火と同じものを作れば空高く飛んでいくからさ、それなら確実にグランバザードに余裕で届くだろうし、花火玉と同じ大きさの電撃弾だったら威力は抜群に違いない。
いや、電撃弾よりは粘着弾の方がいいのか?
それとも捕獲弾?
「なあ、スミレ。この花火玉と同じ大きさの電撃弾だと、威力が強すぎるかな?」
「そうですね・・グランバザードの大きさをきちんと確認してみなければなんとも言えませんが、もしかしたら強すぎるという事もあるかもしれないですね」
そっか、大きければそれだけの威力がないと気絶させるなんてできないもんな。
反対に小さかったら強すぎて心臓発作を起こして死んじゃうか。
「それはマズいなぁ。実際に見てみないとはっきりと確信できないよな。でも実物を見てから作るっていうのもなぁ」
「そうですね。すみません。私の探索ではそこまでは判らないので」
「いや、スミレは気にしなくてもいいよ。いるって事が判るだけで凄いからさ」
うん、本当にそう思ってる。
ただまぁ、俺としてはそんな大物は探索で見つけないで欲しかったけどさ。
「じゃあ、捕獲網が出る弾が良いかなぁ。それとも粘着弾の方が良いかなぁ」
その2択しか思いつかないよ。
「捕獲網は羽根で切り裂かれるんじゃあないでしょうか?」
「そうだよなぁ・・・俺も言ってから思った」
相手はナイフより鋭利な羽根を持つグランバザード。絶対に網なんか切られるじゃん。
「んじゃあ・・・粘着弾?」
「そうですね・・でも、粘着弾だと粘液が付いたままになりますよね?」
「うん、まあそりゃそうだけどさ、他に思いつかないんだよなぁ」
捕獲網弾だとスパスパって切られちゃうから足止めにもならない。
だからと言って粘着弾だと切られる事はないだろうけど、ネバネバが取り除けないかもしれない。
う〜ん、どうする?
「あっ、アメーバ使おう」
「アメーバ、ですか?」
「うん。あれならすぐに取れる、筈?」
確か前にアメーバを使っていろいろ実験していた時に俺があんまり散らかすんで、スミレが簡単に片付けるために溶解液を作ってくれたんだよな。
「ああ、あのアメーバ溶解液ですか?」
「そうそう、それを使えば付着したネバネバを綺麗にできるよな?」
「確かにできますけど。強度は足りますか?」
「だいじょぶじゃね? ってか、あれって強度を変えれた筈だよな?」
「まあ、できない事はないと思いますけど。でもアメーバはもうそれほど残ってませんよ」
「あれ、そうだったっけ?」
この前余分に集めたんじゃなかったっけ?
俺はいつ集めたかな、と考えてから思い出した。
この前と思ったけどさ、都市ケートンにいた時だったから大分前だな。
そりゃ残ってないのも仕方ないか。
「あ〜・・んじゃ、他に何か使えそうなものあるかな?」
「ないですね」
「スミレぇ・・・」
ばっさりと切り捨てるスミレ。
うん、知ってたよ。はっきり言うもんな。
俺はがっくりと肩を落とした。
「でもですね」
「なんだよ」
「ないならコータ様の魔力を使って作り出せば良いんじゃないんですか?」
「えっ・・・?」
がっくりと落とした肩のまま、目だけをスミレに向ける。
「コータ様の魔力を使えば、消す事ができる粘着液が作れると思いますよ」
「ホント?」
「はい」
なんだよ、今まで悩んでいたのに全く意味なかったじゃん。
「マジで俺の魔力で粘着弾、作れんの?」
「はい、多分その方が後始末も簡単で良いと思いますよ?」
「そうなんだ?」
「捕獲するのであれば、コータ様のアイデアである粘着液を使うのはとても良いと思います。粘着液ならグランバザードを傷つける事なく生け捕りできそうですし、そのまま大都市アリアナに持っていけば良いんじゃないんでしょうか」
おいスミレ、なんか軽くないか?
俺がジトッとした視線を向けるけど、スミレは華麗にスルーしてスクリーンを触りだす。
ごまかす気だな、スミレのやつ。
なんかさ、こういう時のスミレってサポートシステムというより、本当に生きてる人みたいな行動をする。
でも俺としてはそんなスミレがいいんだよなぁ。
最初の頃よりも人臭くなっててさ、ちっともただのスキルのサポートシステムじゃないところが良いんだ。
「打ち上げ花火の原理を使うっていうのは大丈夫かな?」
「良いと思いますよ。確かに今の私たちの攻撃手段では無理があったと思いますから」
なんだよ、スミレもそう思ってたんじゃん。
「じゃあさ、弾の大きさは?」
「そうですね・・・電撃を流す訳じゃないですから、少し大き目の弾でもいいんじゃないですか?」
「そうだよな。小さかったら逃げられるかもしれないもんな」
「逃すつもりはないですけどね」
スクリーンを使って忙しくプログラムを始めたスミレは頼りになるけど、そのさ、ニッコリと笑みを浮かべべながらそう言うのはどうだろう。
セリフと笑みが噛み合ってない気がするのは俺だけか?
「結界はどのくらいの範囲で展開できる?」
「そうですね・・・はっきりと確認した訳ではないので言い切れませんが、地上から200メートルくらいの高さまでなら張れると思います」
「マジ?」
「はい。おそらくですけどね。ですので、確実に捉えるために100メートルくらいまで近づいてから展開しようと思っています」
高さ200メートルでも大丈夫って、スミレの結界はマジ規格外すぎるぞ。
確実性を考えて100メートルなんて言うスミレは少し不満そうだけど、俺からすれば100メートルなんてホントに凄いと思う。
それでも相手はデッカい鳥だもんな、念には念を入れて計画を立てないと。
グランバザード捕獲の失敗はしてもいいけど、誰も怪我をしないように気をつけたい。
「よし、じゃあまずは規格を決めてしまおうか」
「はい」
「ついでに花火玉も作っちゃおうか。夜にあげればミリーとジャックが喜びそうだ」
「そうですね。あの辺りであれば大都市アリアナからかなり離れていますから大丈夫でしょう」
「ああ、そっか。そう言う事も考えなくっちゃいけないのか」
いきなり花火なんかが上がったら、確かに知らない人はビックリするだろう。
知らない人を驚かすつもりはないもんな。
「この世界には花火はないんだったっけ?」
「ないですね」
「そっか・・・じゃあ、その時の状況を見てから2人に見せるかどうか考えるか」
「そうですね、それがいいでしょうね」
「でもいろいろな花火を作りたいな」
きっとミリーたちはビックリするぞ。
そんな2人の顔を見るのも楽しみだよ。
打ち上げ花火玉サイズの粘着液弾をプログラムしているスミレのスクリーンの横に、自分のスクリーンを展開して俺はいろいろな花火玉を考えるのだった。
読んでくださって、ありがとうございました。
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Edited 05/05/2017 @ 12:15CT 誤字訂正のご指摘をいただきました。ありがとうございます。
それとも粘着弾? → それとも捕獲弾?




