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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
ポクラン市脱出、そして移動
165/345

164.

 とりあえず新しい水鉄砲のテストも済んだ。

 ついでに自分のパチンコ用の弾のテストも済ませた。

 って事で、これから大都市アリアナに向かう事にするか、って話になった時、スミレが口を挟んできた。

 「ここから1日ほど北に移動したところにとても珍しくて、更に高値で売れる魔物がいるんです。ついでですから狩りにいきませんか?」

 「・・はぁっっ?」

 「狩り? 行く」

 「それってどんな魔物なんだ?」

 何言ってんだよスミレ、と思った俺の耳には狩る気満々のミリーの声と期待に膨らんだジャックの声が届く。

 おまえら・・・・

 「鳥型の魔物で“グランバザード”と呼ばれています」

 「どんな鳥なんだ?」

 「体長8メッチ(8メートル)から10メッチ、翼を広げると15メッチから20メッチになると言われています。上空からの攻撃が得意で武器は自身の羽です。羽は長さが80セッチ(80センチ)から1.5メッチで固くとても鋭利なので、それを使って相手を切り裂くようですね」

 そう言いながらスミレはスクリーンを展開して、データバンクにあった写真をみんなに見せる。

 パッと見た感じ、ハゲワシみたいだけど大きさが問題だよ。

 「いやいやいやいや、ちょっと待てよ、スミレ。それはさすがに無理じゃないのか?」

 体長が8メートル以上のハゲワシってなんだよ、それ。おまけに翼を広げると15メートル以上? それってもう鳥じゃないよな?

 いや、まあ、魔物なんだけどさ。

 ナイフのような羽を飛ばしてくるような魔物相手にどうやって戦えと言うんだ?

 「空を飛ぶ鳥型魔物ではありますが、飛び立つのが下手ですので一度地上におろしてしまえば、あとはみなさんの武器で狙い撃ちすれば仕留められると思いますよ」

 「じゃあ、とにかく地面に下ろすんだな」

 「どうやる、の、スミレ?」

 「その辺もきちんと対策は考えてますので、コータ様たちであれば大丈夫でしょう」

 「なられるな」

 「みゃかせ、る」

 簡単に説明しているけどさ、スミレの説明は概要だけで中身を言わないからどうやって地上に下ろすつもりなのかさっぱり判らないぞ。

 それなのにミリーとジャックの2人はあっさりと仕留めに行こうと賛同している。

 「おまえら、軽いぞ。スミレもその程度の説明じゃあ俺には判らないぞ」

 「でもコータ。デカい獲物だ、って」

 「俺の新しい武器を試す良い機会だぜ」

 「いやいや、ジャック、水鉄砲の試しは既に済ませたよな? ミリーもだ、デカいから良い獲物とは限らないぞ?」

 「大きな獲物、楽しみだ、よ?」

 「おうさっ、珍しい獲物だぞ、見逃せないだろっっ」

 大きくて珍しいから仕留めたいんだな、おまえら。

 「スミレ、無傷で仕留められる確率は?」

 「100パーセントと言いたいところですが、何があるか判りませんからね・・・99パーセントにしておきます」

 「マジか・・・」

 「コータ様はお忘れのようですが、コータ様たちは私の結界の中からの攻撃ですよ? 結界の外にでさえしなければ怪我をする可能性はゼロです」

 おぅぅ・・・そう言われるとその通りなんだけどさぁ。

 「コータ様の新しい弾を試すのにもちょうど良いですよ?」

 「俺の?」

 「はい、捕獲弾とか粘着弾とか。もし捕獲できれば更に良し、ですよ」

 「捕獲って・・・」

 「大都市アリアナで高値で売れますよ」

 どうやら仕留めた状態よりも捕獲した方が良いって事みたいだな。

 「捕獲する事に意味があるのか?」

 「珍しいという事もあるんですけど、羽がとても貴重なんです」

 「羽?」

 「はい。普通の鳥であればそれほどでもありませんが、グランバザードの羽は魔物だからなのか特殊金属のようなものなんです」

 「・・・・はっ?」

 生物なまものなのに、羽は金属製ってか?!?

 「スミレ、羽が羽で、できてない、の?」

 「そうですよ、ミリーちゃん」

 「羽ぶとん、作れない、の?」

 「ちょっと無理ですね。とても鋭利なので危ないですからね」

 「そっかぁ・・・残念だ、ね」

 おいミリー、羽根布団は既に持ってるだろ?

 ってか、そういう問題なのか、そこ。

 「厚みも薄く、それでも耐久性はある。という事で、武器として仕立て上げる人も多いようですね。それに羽そのものがとても美しく、加工してから装飾品に仕立て上げても価値があるそうです。ただ先ほども言いましたが珍しい魔物なので、その数は少ないんですよねぇ。それにナイフよりも鋭利な羽が飛んでくるので、仕留めるのがとても大変なんだそうです」

 「スミレ・・・おまえ、そんなヤバいヤツを俺たちに狩れ、というのか? しかも止めを刺さずに生け捕りにしろ、と」

 「どうしても無理なら死んでも仕方ないですね。それでも羽は手に入りますから」

 「羽が金になるのか・・・」

 「生け捕りにすれば、飼育できますからね。無理に羽を毟らなくても、落ちた羽を拾えばある程度の供給が見込めます。それに運が良ければ卵を産んでくれるかもしれない。そうなれば人に慣れた個体として育てる事もできますので、更に簡単に羽を手に入れる事ができるようになる。つまり金を生むグランバザードになる、という事です」

 「卵って・・いくら卵を産んでも1羽だけじゃ卵は孵らないだろ?」

 受精卵じゃなかったらヒヨコは生まれないと思うぞ。

 「いえ、グランバザードは魔物ですから、産み落とされた卵はほぼ確実に孵りますよ」

 「そ、そうなのか・・・魔物、すげえな」

 マジかよ。魔物は雌雄いなくても繁殖するってか?

 それはそれでヤバい気がしないでもないんだけど、今はその事はおいといて。

 「でもさ、そんな高値で売れるような魔物、なんで誰も狩らないんだ?」

 いくら危険でも、金になると判れば仕留めようとするヤツはいると思うだけどな。

 「普段はこの辺りにいないから、誰も知らないんでしょうね。どうやら繁殖期のようで、移動してきたようです」

 「えっ? って事は・・・」

 「はい。運が良ければ卵を手に入れる事もできるかもしれないですね」

 「マジか・・でもよく知ってるな」

 「先ほど広範囲探索をした時に、大型魔物として探索網にかかりました。グランバザードの生態については、私のデータバンクにありました」

 「スミレ、よく知ってる。すごい、ね」

 ミリーが嬉しそうにスミレを褒め称えるので、スミレも当然ですと言わんばかりに頷く。

 「以前よりも探索できる範囲ははるかに広くなっていますので、おかげでこのような大物の魔物の事も判りました」

 「じゃ、じゃあ、すぐに行くのか?」

 「まかせる。どっちに行、く?」

 「ジャック、ミリー。ちょっと落ち着け」

 手綱を握りしめたミリーは行く気満々で、すぐにでも進路変更しそうだ。

 それにジャックもやる気満々で、屋根の上に立ち上がって水鉄砲が収まっている腰のホルスターに手をかけている。

 「ほんっとうに安全なんだな?」

 「もちろんです。私の結界は鉄壁です」

 「うん。スミレの結界が頑丈だっていうのは知ってる。でもさ、万が一、って事は?」

 「もしどうしても心配だ、というのであれば結界の条件を変更しますよ」

 「変更? できんのか?」

 「はい。いつもの結界の条件は中から外に出れるけれど外から中には入れない、というものですが、今回に限って中からも外に出られない、という条件に変更すれば間違って外に出てしまうという状況は回避できますから」

 ああ、なるほど。

 「でも、難しいんじゃなかったっけ?」

 「それほどでもないですよ。ただ、コータ様の魔力をかなり消耗するのでその点はご了承くださいね」

 スミレの話では一方通行にするのが一番セッティングがしやすいって事だったから、その分結界を展開する時に魔力を消耗するって事なんだろうな。

 「うん。まぁそれは仕方ないか。安全のためだからな。俺の魔力をかなり消耗するって言ってたけど、枯渇するほどじゃないんだろ?」

 「はい、そこまでは消費する事はないですけど・・・でも長時間持続するとなると話は別なので、実際の攻撃が始まるまでは普段の結界を展開しておく事にすれば大丈夫だと思います」

 ああ、そういや結界は一度展開すればそれで終わり、じゃなかったんだったっけ。

 「じゃあさ、どのくらいの時間展開できる?」

 「そうですね、計算します・・・・いつものように二重結界にして、それから出入りできない結界に変更して展開する事にすると、約2時間でしょうか?」

 「えっ? それでも2時間は展開できるんだ?」

 「はい。でもそれは外側の結界を移動させないという条件です。ですが、今回のグランバザードは特殊な結界で行動阻害するつもりですので、約1時間程度と思っていただいた方がいいと思いますね」

 1時間あれば、捕獲できるのか?

 でもさ俺の捕獲弾だと一体何発あればそんなデカい鳥を捕獲できるんだ? 多分10発なんかじゃあ無理だと思うぞ。

 それなら捕獲できるサイズの弾を用意した方が楽なのかもしれないな。

 「ここからそこに行くのに1日の移動だって言ったっけ?」

 「はい、今日はこのまま少し進んでから北に方向を変えます。パンジーちゃんのスピードなら明日の昼前には到着するのではないでしょうか?」

 「結構かかるな」

 「はい、今日は草原を移動する事になりますが、明日の移動は岩がむき出しになった荒野になると思いますからどうしても移動距離が稼げなくなりますからね」

 でもうちのパンジーは普通のヒッポリアよりは早いからその程度なのだとスミレが付け足した。

 確かにうちのパンジー、足が早いタイプだっていうヒッポリア並み、もしかしたらそれ以上の移動速度が出るからな。

 俺は隣に座っているミリーと屋根の上のジャックから期待に満ちた視線を向けられながら、スミレの話を聞いている。

 全く、この2人はすっかり仕留めに行く気になってるよ。

 「荒野に住み着いているのか?」

 「転がっている岩の隙間に卵を生むようですね」

 「隙間? 温めないのか?」

 「北の荒野は地熱が高いので自然に任せて孵化させるようです。その代わり親は卵が狙われないように見張っているのだとデータにありました」

 ふぅん・・・地熱であっためるのか。

 ま、そう言うのも有りって事なんだろうな。

 「ふぅ・・判ったよ。行くか」

 「うん」

 「まかせとけってんだ」

 嬉しそうに尻尾を振る2人を見て、まあいいか、と思ったのだった。






 読んでくださって、ありがとうございました。


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