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155.

 4月は日本に戻るので、不定期更新となりそうです。今日まではすでに予約してありますがそこから以降は大変申し訳ありませんが不定期とさせてください。

 5月の頭にはまたこちらに戻るので、それからは頑張って毎日更新したいと思っています。

 さすがは大都市アリアナの手前にある市だけあって、そこを訪れる人の数はすごいものだ。

 なんと言っても門の前の列の長さが半端じゃないよ。

 そしてようやく俺たちの番になってから、問題が勃発。

 「だから、これは本物だって言ってんだろっっ」

 「馬鹿言うなっ。ケットシーなんかがハンターの登録できる訳ねえだろうがっっ」

 俺とミリーの目の前で言い合っているのは、門番をしている男とジャックだ。

 俺とミリーはカードを見せるとすぐに通してもらえた。

 ジャックの事はただの使役獣だと思っていたみたいで、片手でしっしと追い払われたジャックがまず切れた。

 首にかけていた紐を手に、俺のカードは調べなくていいのか、と馬鹿にしたように言ったんだよ、あいつ。

 そしたらさ、門番の男はおもちゃのカードを作ってもらったのか、良かったな、と馬鹿にして返した。

 それからずっとこの調子だ。

 「コータ、後ろの人にめいわ、く」

 「あ〜、うん、そうだよなぁ」

 俺たちの後ろに並んでいた人たちがジリジリしてきているのが俺にも判るよ、うん。

 あの2人の口喧嘩に参加したくないんだけど、仕方ない。

 「すみません」

 「なんだっっ!」

 「そのケットシーの仲間なんですけど」

 「ぁああ、仲間ってか」

 「はい」

 俺は片方の眉をあげて威嚇してくる門番とジャックの間に体を入れる。

 「そっちのケットシー、ジャックと言いますが、彼のカードは本物です。都市ケートンのハンターズ・ギルドで発行してもらいました」

 「阿保()かせやっっ。ケットシーなんかがハンター登録できっかよっ」

 「特例として発行していただきました」

 「特例ぃぃぃ?」

 馬鹿にしきった顔の門番に、俺は笑顔を保ったまま頷く。

 「もしどうしても信用できないというのであれば、ハンターズ・ギルドの方に問い合わせていただければはっきりすると思います」

 「おまえ・・本気か?」

 「はい、ジャックの特例措置については既に連絡が行っている筈ですので」

 「ふんっっ」

 鼻を鳴らしてから門番は俺をじろじろと見て、ずいっと手を差し出した。

 「判った、見せろ」

 「はい、ほらジャック、カードを出せ」

 「むむむっっ」

 「出さなかったら、おまえだけいつまでもここにいるんだぞ。俺たちは先に入る」

 「ちょっ、判ったよ。ほら、これが俺のカード(・・・・・)だ」

 まだ納得しきれていないようだけど、ジャックが納得するまでここに並んでいる気はないんだよ。

 門番はジャックからカードを引ったくるようにして目の前に持ち上げて、ジロジロと偽物の証拠を探しているようだ。

 ま、本物だからなんにも見つからないよ、ご苦労様ってやつだな。

 「ほら、行っていいぞ」

 「ありがとうございます」

 「おいっ、カード投げんなよっっ」

 ポイッとカードを投げ渡した門番に礼を言って通り過ぎようとしているのに、ジャックが両手を振り回して文句を言う。

 この馬鹿。

 「いいからジャック、とっとと来い」

 俺はジャックの首根っこを猫のように掴むと、そのまま彼を引き車の上に放り上げた。

 「おいっコータッッ」

 「ミリー、パンジーを出してくれ」

 「わかった」

 「コータッッ」

 「では失礼します」

 俺は動き始めたパンジーを見てから、後ろを振り返って頭を下げた。

 俺たちのせいで足止めされたんだからな、これくらいは当然だ。

 憮然とした顔で俺をジロリと見るヤツもいたけど、気にするなと手を振ってくれる人もいた。

 それを見てから俺は早足でミリーたちを追いかけたのだった。






 なんとか宿が決まった。

 ポクラン市を取り囲む石塀に隣接した宿だ。

 できればもう少し小綺麗な宿が良かったんだが、ポクランの中心に行くと狭いか無いか、だったんだよ。

 それに引き車の事もあるんで、勧められた宿がここだったんだ。

 宿自体は古いし風呂も無いんだけど、石塀に隣接しているだけあって厩舎も広々としているし、引き車の屋根付きの物置に入れてもらえる事ができたので良しとしよう。

 おまけに部屋は6人部屋を3人で使えるようにしてくれた。

 「いいのよ〜、今の時期は暇だから〜、満室になる事なんてないのよね〜」

 と、語尾を伸ばしながら話すこの宿の女将さんであるシェリーさんがニコニコ顔で言ってくれた。

 「厩舎の裏のドアを開ければ〜柵で囲んだ放牧場があるから〜、日中はヒッポリアをそこに放してあげてもいいわよ〜」

 「そうですか、それはいいですね」

 今日は大丈夫だろうけど、数日ここに泊まる事になればパンジーを放してやってもいいだろうな。

 「じゃ〜あ〜、1人一泊2食付きで〜500ドラン、それが3人で〜1500ドラン。それに厩舎の使用料が〜1泊100ドランだから〜合計で1600ドランになりますね〜」

 えっ、そんなもんでいいのか?

 確か蒼のダリア亭は1人が一泊1000ドランだったぞ?

 「ちょっと〜高いかもしれないけど〜大都市アリアナに〜近いから〜仕方ないんですよね〜」

 「えっ、いえいえ、そんな事ないですよ。じゃあとりあえず1泊でお願いできますか? 今日これからギルドに行くので、まだ明日からの予定が立ってないんです」

 俺がすぐに返事をしなかったからか、シェリーさんは値段が高いから黙ったと思ったようだ。

 いやいや、安くてビックリしたんだよ。

 俺はポーチから財布代わりの皮袋を取り出すと、中から大銀貨《1000ドラン》1枚と小銀貨《100ドラン》6枚取り出してシェリーさんに渡した。

 「ありがとうございます〜。じゃあ〜、2階の部屋に案内しますね〜」

 先を進むシェリーさんの後ろをミリー、ミリーに人形のように抱かれているスミレ、ジャック、それに俺の順番で続く。

 通された部屋は階段を上がってすぐ左の部屋で、縦に細長い部屋の中は2段ベッドが右に2つ、左に1つある部屋だった。左に1つしかないのはドアがあるからで、そのドアとベッドの間に木箱で作られた棚が置いてある。

 「こちらでいいですか〜?」

 「はい、ありがとうございます」

 「何かあれば言ってくださいね〜、夕飯は〜午後の4時から〜7時の間なら〜いつでも下の食堂に来てください〜。朝食も〜午前の4時から〜7時の間であれば〜いつでもいいです〜」

 シェリーさんは鍵を1つ手渡してから階段を降りて行った。

 俺たちはそれを見送ってから部屋の中に入る。

 部屋の広さは畳10畳くらいだろうか?

 でも縦に長い部屋だからあまり広くは思えないんだよな。

 「んじゃ、ベッドを選べよ」

 「俺っっ、ここっっ、ここにするっ」

 ジャックが指差したのはドア側にある2段ベッドの上だった。

 「ミリーはどうする?」

 「わたし、窓のそばのベッド、いい?」

 「いいぞ。じゃあ、俺は残りのベッドの下にするか」

 ミリーもジャックも2段ベッドの上段にするするっと登ると、嬉しそうにベッドの上で跳ねている。

 そういやここに来るまで2段ベッドってなかったな。

 「スミレはミリーの下のベッドでいいかな?」

 「私はどこでもいいですよ。別にベッドでなくても大丈夫です」

 「うん、知ってる。でもさ、これだけ空いているベッドがあるんだから、スミレも1つ貰えばいいんだよ」

 金は払ってないけどさ。

 いや、一応ちょっとは考えたんだぞ。

 でもさ、スミレを指差してその分もベッドの数になんて言ったらどうなると思う?

 絶対に変態だと思われるぞ。

 ミリーが駄々をこねる形でスミレのベッドを要求すれば、子供に甘い大人って体裁は保てるんだけど、さすがにミリーにそんな演技力はないし、スミレのベッドのための演技だって頼んでも覚えてないだろうしな。

 「おまえら、ベッドの上で暴れるなよ。迷惑になるだろ、それに壊したら弁償だぞ」

 「わかった」

 「お、おうっ」

 迷惑という言葉には反応しなかった2人は、弁償という言葉には即反応してベッド脇に座って足をブラブラさせる。

 「これからどうするか、話をするぞ」

 「うん」

 「わかった」

 「その前に、ジャック」

 「な、なんだよっ」

 今日の予定を話す前に、ジャックには話をしなくちゃな。

 「おまえ、なんで門のところであんな騒ぎを起こしたんだ?」

 「さ、騒ぎってなんだよ。あの頑固頭がんこあたまの門番が俺の事を信用しないから」

 「当たり前だ、おまえは特例措置でハンターのカードを貰ったんだ。ハンター登録できたケットシーがいるなんて、知ってるやつ探す方が大変だ」

 「でっ、でも」

 「でも、じゃない。ああいう時は喧嘩腰で話をするんじゃなくって俺に任せろ。おまえのような態度を取れば向こうだって頑なになる、当たり前だろ」

 むむっと口を尖らせるジャック。俺の言ってる事は理解しているけど納得できないんだろう。

 「あのな。おまえが喧嘩腰で門番に絡んでいる間、な〜んの関係もない人たちがじっと待たされていたんだ。おまえが待たされる側だったら、きっと文句言ってただろうな」

 「そ、それは・・・」

 「頭ごなしにケットシーだからハンターじゃない、と言われて腹が立ったのは判るけど、そんなおまえのせいで迷惑を被った人たちだっているんだ。それにな、俺が説明したらあっさりと話はついただろ?」

 「あっ、あいつっ、俺のカード投げやがった」

 「あ〜、まぁそれは門番も良くなかった。でもな、その前におまえの門番に対する態度の悪さのせいだろうから、おまえは文句は言えないぞ」

 「ぐぬぬぬっっ」

 「これからは俺に任せろ。すぐに喧嘩腰になるな。判ったな」

 「・・・・わかった」

 渋々ながらも承諾したジャック。

 よし、言質はとったぞ。

 んじゃ、これからの予定を決めますか。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @18:14CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

まだ明日からの予定が経ってないんです → まだ明日からの予定が立ってないんです

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