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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー パーティーに行こう
154/345

153.

 明日4月1日から日本に戻るので、不定期更新となりそうです。4月1&2日はすでに予約してありますがそこから以降は大変申し訳ありませんが不定期とさせてください。

 5月の頭にはまたこちらに戻るので、それからは頑張って毎日更新したいと思っています。


Edited 05/07/2017 @18:05CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

俺と問いかけるような視線を向けると → 俺に問いかけるような視線を向けると

 にっこにっこ


 ビュンッッビュンッッ


 にっこにっこ


 ビュンッッビュンッッ


 俺やミリーよりも数歩前を歩く満面に笑みを湛えたジャックの足取りは軽く、それに合わせて尻尾も軽やかに左右だけじゃなくて上下にも揺れている。

 俺はそんなジャックをミリーと並んで見ながらも、苦笑を禁じ得ない。

 「尻尾すごい、ね」

 「うん、そうだな。でもま、嬉しい気持ちは判るからさ」

 ミリーとコソコソと言葉を交わしながら、俺たちは買い物を済ませるために雑貨屋が並んでいる通りを歩いている。

 明日は泊まりがけでマーキーナを狩りに行くので、野営のための買い物だ。

 ついでに余分に色々と買い込んでおこうという話もしている。

 「マーキーナ狩りの依頼が済んだらここを出るからさ、いるものがあればちゃんと買っておけよ」

 「わかった。でも食べるものもたくさんある、よ?」

 「そうだよなぁ」

 なんせ俺のポーチかスミレのストレージにいれておけば、なんでも入れた時の状態で保てるのだ。

 おかげで旅の間も新鮮な野菜や肉が食べられるので大助かりなのだが、おかげで旅の時に何を買えばいいのか、という初歩的な事が身につかないのだ。

 ま、贅沢な悩み、ってやつだな、うん。

 「コータは? どこか行くとこ、ある?」

 「俺かぁ・・・俺はもう用事は済ませたからなぁ。ディラーズさんのところももう行ったしな。あとは一応ケートンを出る前に生産ギルドにその旨を伝えに来るようにとは言われてるけど、今日は特にないかな」

 生産ギルドからはとんでもない量の依頼が入っていたけど、その辺の納品はスミレが全部俺たちが寝ている間にやってくれたのでそれも終わってる。

 ただまぁ、大都市アリアナに着いたら生産ギルドに寄ってくれ、と言われてるんだよな。

 もしかしたら注文をしているかもしれないって言われるとだ、めんどくさいとは言えなかったんだよ。

 まぁ、その時に多少の設計図使用料が入っているかもしれないから、そのためには行くけどさ。

 「じゃあ、明日しゅっぱ、つ?」

 「うん。ここでの最後の依頼だな」

 「そだね」

 今日ポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんと話した時に、俺たちのランクが予定に達したんだけど、ミリーとジャックの強い要望により、マーキーナの依頼は受ける事にしたんだ。

 依頼に必要なマーキーナの数は10匹。

 おそらく俺たちで捕まえられる数は最低でも20匹だから、10匹は俺たち用にとっておける事になる。

 それがとても楽しみのようだ。

 「明日はやえいだよ、ね?」

 「うん、それで明後日ここに戻ってきてギルドによってすぐに出発か一晩泊まってから出発か、だけど、多分泊まる事になるだろうな」

 「おかいもの?」

 「それもあるけど、生産ギルドに行ったり、ディラーズさんのところにも顔を出さないといけないから、そんな事をしてたらあっという間に夕方になりそうな気がするな」

 特に生産ギルドでは時間がかかるだろう、と思っている。

 スミレには生産ギルドで頼まれるブラックボックス化したものに重点を置いて余分に作ってもらうように頼んであるから、その場で何か頼まれても大丈夫だろう。

 「それにしても、嬉しそうだなぁ」

 「うん、でもズルい」

 「ズルいか? まぁ、そうなんだけどさ、でもこれでジャックもランクアップを目指せるんだし、今まで仲間なのにハンターに登録できなかったんだから、少しは大目に見てやれよ」

 「むぅぅ」

 ミリーはまだ納得できていないようだ。

 実はポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんが俺たちに何かして欲しい事はないか、と聞いてきたので、ケットシーという事で使役獣としか登録できなかったジャックにハンターとして認めてやってくれ、と頼んだんだ。

 




 「ハンター登録かね?」

 「はい、ジャックはケットシーって事でハンターとして認められなくて可哀そうだなってずっと思っていたんです。でも俺たちのチームには欠かせない戦力なんです。だから、もしパッサンさんにできるのであればジャックにもハンター登録をしてもらいたいな、と」

 「なるほど・・・」

 顎に手を当てて少し考えている感じのポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんを見ていると、ジャックが俺の腕をツンツンとつついてきた。

 俺に問いかけるような視線を向けると、小さな声で話しかけてきた。

 「おい、いいのか?」

 「何が?」

 「俺、ケットシーだからダメなんだろ?」

 ジャックはケットシーだからというだけの理由で、ここに来てから使役獣扱いとなっている。

 それはこのハンターズ・ギルドでも同様だ。

 でもさ、俺は知ってるんだ。

 ミリーがカードを胸元から取り出す度に羨ましそうに見ていたって事。

 「ジャックくんはパラリウム討伐に貢献したのかね?」

 「えっ?」

 「もちろんです」

 「コー」

 ニッコリと大きく頷く俺の両隣で余計な事を言いかけた2人の膝をぎゅっと両手で掴んで黙らせる。

 「俺1人では絶対に無理でした。俺とミリーの2人だけでも難しかったでしょう。そこにジャックが加わったから、俺が怪我をしてもなんとかアレをやっつける事ができたんです」

 「なるほど・・・という事は彼もこの件の英雄の1人という事になるね」

 「はい、ですので、ケットシーだからという理由でハンターになれないというのは可哀そうです。彼も立派なハンターだと俺は思います」

 「ふむ、それは一理あるな」

 なんとなく雰囲気であと一息、って気がする。

 「今までケットシーがハンターになれなかったのは、人前にあまり姿を表さないからその習性が判らなかった、というところにあるのではないでしょうか? そして彼らケットシーはとても誇り高き種族です。もしかしたら使役獣としてしか認識されていないと知っているから、我々の前に姿を現さないようにしていたのかもしれません」

 「それもあるかもしれないね・・私も1度だけ見た事があるんだが、そのケットシーは首輪をつけられていた。まるでペットのような扱いだったと記憶しているよ」

 「そうでしょう。そのような扱いを誇り高きケットシーが甘受できるとは思えませんからね。むしろこのジャックがハンターになる事で、今まで隠れていたケットシーが出てきてハンターズ・ギルドに加わるかもしれませんよ? 彼らの索敵能力はとても素晴らしいですから。猫系獣人たちとなんら遜色ありません」

 営業のセールストークのように一気にガンガンと攻めていく。

 隣に座っているミリーの視線が痛いけどなっっ。

 なんせ俺が言っているのはぜ〜んぶ嘘はったりだからさ。

 俺たちがパラリウムをやっつけた時、ジャックはいなかった。

 あいつを掘り出したのは討伐したあとだ。

 「つまりコータくんの話は、今回パラリウム討伐はチーム・コッパーによるものであるが、それはコータくんとミリーくんの2名だけではなく、その陰でハンターに登録できなかったケットシーであるジャックくんも活躍していた、という事だね」

 「はい、その通りです」

 なるほど、と頷いたポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんはそのまま黙って目を閉じている。

 きっと頭の中では最良の答えを弾きだすために、いろいろな事を計算しているんだろう。

 俺たちは沈黙の中、ただじっとその場でポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんが目を開けて俺たちを見るのを待つ事しかできなかった。






 「コータ、雑貨屋さんついた、よ」

 「おっ? ジャック、行き過ぎてるぞ」

 「お、おうっ」

 ついさっきの事を考えているうちに明日の準備のための雑貨屋に到着したようだ。

 「ジャック、浮かれるのもいいけど、ちゃんと周囲を見てろよ」

 「判ってるっっ」

 からかうようにいうと、尻尾をピンっと立てて抗議する。

 相変わらずおもしれえやつだぜ。

 「浮かれてる、ね」

 「そうだな。でもまぁ、特例としてハンターとして認められたんだ。嬉しいのも仕方ない」

 そう、ポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんは、ジャックを特例としてハンター登録する事を認めてくれたのだ。

 今後ケットシーをハンターに認めるかどうかは、これからホルトマン市長と相談してから決めるそうだ。

 だけど、ジャックは今回の討伐の英雄だから、ポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんの独断でも問題はないだろう、との事だ。

 慌てて雑貨屋の前に立つ俺たちのところに戻ってくるジャックの胸元にはハンター・カードが下がっている。

 まだ黄色の星1つだけど、それはまぁ仕方ない。

 特例としてのハンターは黄色の星1つから始める事が決まっているそうだ。

 なので今回のパラリウム討伐のランクアップはジャックには適用できないのだ、とポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんは済まなそうな顔でジャックにカードを渡してくれた。

 でもジャックはミリーと同じハンター・カードをもらえただけで大満足だったようで、ポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんの話など全く耳に入らずただカードを握りしめていた。

 「スミレに良い土産話ができたな」

 「うん。スミレに、コータが嘘つき、って言う、よ」

 「ミリー」

 「だって、コータ、嘘ばっかりだった、よ」

 それは、まぁ、その通りなんだけどさ。

 「ミリー、それはジャックがカードをもらえるようにするための方便で」

 「嘘は嘘。スミレに言う、ね」

 「ミリーぃぃ」

 なんてこった。

 スミレがこの話を聞いてどんな反応をするかなんて、さっぱり見当もつかないぞ。

 俺、大ピンチなのか?

 俺はがっくりと肩を落として、さっさと店に入っていくミリーの後を追いかけたのだった。





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @18:07CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

俺と問いかけるような視線を向けると → 俺に問いかけるような視線を向けると

今度ケットシーをハンターに認めるかどうかは → 今後ケットシーをハンターに認めるかどうかは

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