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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー パーティーに行こう
151/345

150.

 結局パーティーから宿に戻ったのはかなり遅くなってからだった。

 あの後会場に戻った俺は、マスコットと化していた2人を見て目を丸くした。

 困ったような表情を浮かべながらも、おとなしく構われるままになっていた2人だが、俺が会場に戻ったのを見つけた途端にご婦人の膝の上から飛び降りて飛んできた。

 思ったよりも長々と話していたようで、2人は不安だったようだ。

 それから2人が落ち着いてから、少しだけ一緒に食事を食べておいとまを告げた。

 そして今、2人ともベッドで寝ている。

 「疲れたんだな」

 「かなり気を使ってましたからねぇ」

 苦笑を浮かべて2人の寝顔を見ているスミレからは、どれだけ2人が頑張っていたのかを聞いている。

 「悪い事をしたな」

 「仕方ないですよ。コータ様もわざと2人を放ったらかしていた訳じゃなかったんですから」

 「そうなんだけどさ・・・まぁ、ミリーとは明日の朝話をすればいっか」

 「話ですか?」

 「うん、ちょっとミリーに関する重要な話があってね、それで呼び出されたんだよ」

 「あら、私はてっきりコータ様にお礼を言うためだとばかり思ってました」

 「お礼も言われたよ。でもそれだけじゃなかったんだ」

 俺はベッドの端に座ったまま、スミレにホルトマン市長とポッサン(信楽焼き)パッサン(タヌキ)さんとの間で交わした会話をかい摘んで話す。

 「そうですか・・・じゃあ、ミリーちゃんがいた村の人が探している訳じゃあないんですね」

 「らしいな。でもさ、どうすればいいんだろう? スミレは何か知ってるか?」

 「そうですね。パーティーでは会話に聞き耳を立ててましたが特に何も。ですので判りませんね」

 「そっか、まぁ仕方ないな」

 もともとスミレが何か知っていたらとっくに教えてくれてるだろうって思ってたんだ。

 「明日も依頼を受けるんですか?」

 「うん? うん、まぁな」

 なんといってもミリーとジャックが依頼を受けたがるからなぁ。

 俺としては2、3日のんびりと何もしないでゴロゴロしていたいんだけどさ。

 「それを明後日に変更できませんか?」

 「俺としては1日でものんびりできるんだったら嬉しいから大丈夫だけど?」

 「それでしたら、私は明日1人で図書館と街に点在している本屋に行って、手に入る全てのデータをスキャンしてきます」

 「スミレ?」

 「ここの図書館の蔵書は既にスキャン済みですが、もしかしたら見落としがあったかもしれません。それに街中にある本屋にはまた違った類の本があるかもしれませんから」

 「それなら一緒に行くよ?」

 「コータ様はミリーちゃんとジャックの相手をしてください。明日は依頼のための買い物をして、ついでに観光を楽しんではいかがですか?」

 「観光?」

 「そうです、3人でのんびりと観光地を回ってください。ああでもそのまえにディラーズさんのところにデザイン画を持っていかなくちゃいけないですけどね」

 忘れてた。

 パーティーの時に『パウワウ』の大人バージョンと、ジャックの服のデザイン画を届ける話になってたんだっけ。

 「すっかり忘れてたよ」

 「仕方ないですよ。色々な意味で衝撃的な話ですからね」

 ミリーの話を衝撃的と言っていいのかどうか疑問ではあるが、その通りなので頷いておく。

 「ジャックの服のスタイル名はどうしますか?」

 「スタイル名ねぇ・・・いくらなんでも『長靴をはいた猫』なんて名前はつけられないからなぁ」

 長靴をはいた猫? と頭を傾げるスミレに、俺はイメージだよ、と付け足す。

 「んじゃ『レンジャー』でどうかな?」

 「『レンジャー』ですか?」

 「うん、格好いいだろ?」

 「格好いいかどうかは・・・レンジャーって言葉、ないですよね、この世界。私はコータ様のデータを持っているので判りますけど、この世界の人には判らないと思いますよ」

 「うっ・・そうだけどさ、いいんだよっ」

 他に思いつかないんだから仕方ないだろ。

 「判りました。じゃあ、『レンジャー』ですね」

 「うん、他にいい名前があればスミレが考えてくれてもいいんだけどな」

 「いいえ、それでいいですよ」

 「んじゃ、デザイン画、よろしく」

 俺も疲れたんだよ。

 もう寝たい。

 俺はそのままベッドに倒れこんで掛け布団の中に潜り込んだ。

 あ〜、疲れた。






 朝起きて朝食を食べた。

 ここまではいつも通りだ。

 この宿は高いだけあって、ご飯も美味しいんだよ。

 「今日、いらいうけ、る?」

 「ん? いいや、今日はスミレがいろいろ用事があるからさ、もう一晩ここに泊まってから見つけた依頼に出発しようかって思ってる」

 「スミレいそがし、い?」

 「調べ物があるらしいぞ」

 スミレは俺たちが朝飯を食べに行ってる間に出かけて行った。

 彼女の体は今ベッドの横にある木箱の中に横たわっている。

 なんかスミレの話だと、最初の身体にスミレ自身を馴染ませるのに数時間かかるだけで、そのあとは出入り自由自在なんだそうだ。

 なので図書館といった人の目があるような場所だと姿を消せる状態がいいんだろうな。

 「それで、だ。ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

 「はなし?」

 「うん、ミリーの事なんだけど」

 わたし? と言いながら頭を傾げるミリーは、俺が促すままに部屋に備え付けられているテーブルについている椅子に座った。

 俺は手でジャックにも座るように合図を送ると、少し考えてから俺の隣に座った。

 「あのな、ミリーを探している人がいるんだ」

 「えっ・・・・?」

 昨夜からどうやってミリーに伝えるかいろいろ考えた。

 結局単刀直入に告げる事にしたんだけど、目の前のミリーは俺の言葉が飲み込めないようで目をまん丸にして俺をじっと見ている。

 「昨日、俺だけ呼ばれただろう?」

 「うん・・・」

 「あの時に、ミリーらしい女の子を探している人がいるって教えられたんだ」

 ミリーは困惑したような顔をしている。

 そりゃそうだろうな。

 「それでさ、ミリーはどうしたい? 探しているという人に会いたいか?」

 「わたし・・・・」

 「無理に会う必要はないぞ。たださ、探している人がいるって教えておこうと思ったんだ。ミリーが会いたいというまでほっといてもいいんだからさ」

 「・・いみゃは、こわい、よ」

 「そっか」

 小さな声で怖いというミリーに胸が締め付けられる気がした。

 生まれ育った村を父親ともども追い出され、彼女を守るためにその父も亡くなった。

 もし俺たちが見つけなかったら、今頃ミリーは野たれ死んでいてもおかしくはない。

 そんなミリーにとって、信じられるのは俺たちだけなんだろう。

 だからいきなり探している人がいると言われても戸惑うだけなんだろう。

 「それからさ、もう1つ。俺たちがこれから向かう大都市アリアナに、ミリーの叔母さんがいるらしい」

 「わたしの、おばさ、ん?」

 自分に叔母がいる事も知らなかったんだろう、更に困惑したような顔になる。

 「うん、お父さんの方の姉妹かお母さんの方の姉妹かまでは判らないけどミリーの身内だよ」

 「わたしの・・・」

 「ミリーは会いたいと思う?」

 「・・・・」

 両親がいない今、もしかしたらこの叔母という存在だけがミリーにとっての身内になるかもしれない。

 だから会いたいというだろうと思ったんだけど、ミリーはそのまま顔を俯かせてしまう。

 「ミリー?」

 不安そうなミリーの様子に今度は俺が頭を傾げた。

 ここはむしろ喜ぶところなんじゃないのか?

 ジャックも同じように思ったようで、心配そうにミリーを見ている。

 「・・コータは・・」

 「うん?」

 「コータは、わたしが、いらない、の?」

 「ミリー?」

 「わたしがいらない、から、おばさ、んのところへ行けって、言う?」

 「ミリーッ!」

 俺は思わず大きな声でミリーの名前を呼んで、そのまま立ち上がった。

 そして前に座っているジャックもびっくりして立ち上がり俺を睨みつけた。

 おいおい、俺がミリーにそんな事する訳ないだろ。

 「ミリーがいらないなんて事、ある訳ないだろ」

 「でも・・わたしをおばさ、んのところに行かせ、る」

 「違うって。俺はミリーが叔母さんに会いたいかなって聞いただけだよ。ミリーとはずっと一緒に旅をしただろ? それに俺たちはチーム・メンバーだ。一緒に旅をするんだろ?」

 「コータ・・・うん、旅したい、よ」

 半泣きの顔をあげて、ミリーが頷いた。

 「お母さんはミリーが小さい頃に亡くなったんだろ? それでさ、お父さんも亡くした訳で。だから、もしかしたらその叔母さんがミリーの唯一の身内かもしれないって思ったんだよ。だから、もしミリーが会いたいって思うんだったら、大都市アリアナにいる間に会いに行けばいいかなって思ったんだよ」

 どうやらミリーは俺の話をちゃんと聞かないで、頭の中で俺がミリーを叔母のところに置き去りにすると思ったらしい。

 そのせいで不安になったようだ。

 ま、今の説明で納得したような顔つきになったので安心だ。

 ホント、誤解で良かったよ。

 「どう思う?」

 話を説明し直してから、もう一度ミリーに聞いてみる。

 彼女は難しい顔をしながら一生懸命考えているようで、眉間に皺が寄っている。

 うんうんと腕を組んで考えているミリーは可愛い。

 「あのね、コータ」

 「うん」

 「わたし、を探してる知らない、人は会いたく、ない」

 「そっか、いいよ、それで」

 知らない人の事はまだまだ怖いんだろう。

 「それで、ね。おばさん、はわかんない」

 「判った。まぁ叔母さんの事は今すぐ考える必要はないからさ、大都市アリアナに行くまでにじっくり考えればいいよ」

 「いいの?」

 「いいよ。嫌な事はしなくてもいいし、考える時間がいるっていうんだったら、じっくり考えてから答えを出せばいい。慌てる必要はないよ」

 今はギルドのランクを上げるためにもう暫くはここにいる予定だ。

 それにここから大都市アリアナまでは数週間かかる筈だ。それだけあればミリーもじっくりとどうしたいか考えられるだろう。

 「よし、じゃあ、この話はこれで終わり。俺はこれからディラーズさんのところに届けるものがあるけど、そのあとでギルドに行って依頼を探そうか。それでお昼ご飯を食べたら3人で観光に行くか?」

 「かんこう、って?」

 「あちこち街中を見て回る事を観光っていうんだよ。ほらさ、もう明日からはまた依頼でのんびりできなくなるだろ。だからその前に観光に出かけるのはどうかな?」

 ついでにお昼も外で食べようか、そう付け加えると途端に2人とも観光にいきたいと言い出した。

 全くこの2人は食べ物に弱いよな。

 俺は手を伸ばしてミリーの頭をくしゃっとしてから、隣のジャックの頭も同じようにくしゃっとする。

 「よっし、行くぞ」

 「うんっ」

 「わかった」

 元気よく返事をする2人を促して、俺は立ち上がった。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @18:02CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

今頃ミリーは野たれ死んでいてもおかしくはない → 今頃ミリーは野たれ死んでいたもおかしくはない

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