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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー パーティーに行こう
144/345

143.

 なんか、むっちゃ疲れた。

 いつものように俺の仕事はミリーとジャックのための回収係だもんな。

 そりゃ疲れるよ。

 ゴンドランドの時はまだ活躍の場があった。

 なんせパチンコは飛んでいるゴンドランドに当てる事ができるから、攻撃という面では有効なんだ。

 でも、その後頭を切り落とすのはジャックの仕事だけど、回収、収納は俺の仕事なんだよなぁ。

 まぁスミレもレベルが5になったおかげで回収は無理でも材料収納という事で、ストレージにしまう事ができるようになったのは嬉しい。

 でもスミレが収納を手伝うようになった分、ミリーとジャックが討伐に力を入れるようになったから、討伐よりも回収の仕事の方が増えたって訳だ。

 ま、その分ゴンドランドは4匹仕留める事ができたし、そのうちの1匹の羽が透明だったから良しとしよう。

 たださ、林に入ったらチンパラの群れがいてさ、肉大好きなうちの子たちは目の色を変えてチンパラ討伐を始めたんだ。

 おまえら危ないから結界の中にいろよ、って言ったのに全く聞きゃしない。

 俺は結界なんて何? 状態の2人のあとをハラハラドキドキしながら付いて回って攻撃のサポートをし、仕留めたチンパラを必死になって回収して、ともうボロボロです。

 『大丈夫ですか?』

 「ん〜〜? うん、多分」

 『ポーチからチンパラを出してくだされば、私の方で解体しますよ?』

 「うん、まかせた」

 俺はテーブルに突っ伏したままポーチの蓋を開けて、ポイポイっとシェードの前に放り投げていく。

 『夕食はミリーちゃんとジャックにさせますから、コータ様はそのまま休んでいてくださいね』

 「あの2人で大丈夫か?」

 『大丈夫ですよ。今夜はチンパラの肉と野菜で鉄板焼きにしますから』

 「そっか・・・んじゃ任せたよ」

 鉄板は前にスミレに作ってもらった。

 んでもって、元の世界にあった卓上コンロみたいな簡易魔石コンロを作ったので、その上に鉄板を置いてみんなで肉や野菜を焼きながら食べるんだよ。

 ただまぁ調味料がなぁ・・・

 基本の塩コショウ、それにチリペッパーもどき、その程度しかないんだよ。

 なんとなく匂いがカレーっぽいのも見つけたけど、味は全然カレーじゃなかった。

 なので焼き上げた野菜や肉にそれらを振りかけて食べるだけなので、俺としてはあんまりどうでもいい料理なんだけど、ミリーやジャックはすごく楽しそうに焼いて食べるから野営の時にたまに作る。

 もちろん、2人にしてみれば準備から調理まで自分たちでもできる食事だって事もあるんだろうな。

 現にスミレの言葉に2人は嬉しそうに頷いた。

 『じゃあ、私がチンパラの解体をしますから、2人は野菜を切ってくださいね』

 「がんばる」

 「判った」

 すぐに立ち上がって調理準備を始める2人を見てから、俺もよっこいしょと言いながら立ち上がる。

 『コータ様?』

 「2人が晩飯作ってる間にパンジーにご飯をやってくるよ」

 「コータ、わたしがする、よ?」

 「いいよいいよ、ミリーはご飯を作ってくれたらいい。パンジーに水と餌だけやるから、あとでブラッシングしてやってくれ、な?」

 「うん」

 たまには俺もパンジーと触れ合いたいからさ。

 って事で、俺は既に引き車の軛から解放されているパンジーのところに行く。

 餌用の桶を覗くと少し残っている。

 どうやら餌はもらったみたいだな。

 「ミリー、ポーションはあげたのか?」

 「みゃだ」

 「おっけ、じゃあ俺がやっとく」

 ポーチから取り出すのは体力回復ポーションだ。

 これを水桶に入れてパンジーの前に差し出すと、フンフンと匂ってから飲み始める。

 俺は桶を右手に持って左手でパンジーの眉間を撫でてやる。

 クリーム色の毛皮はとても手触りが良い。多分買った時よりも毛並みは良くなっている筈だ。

 ポーションを飲み終えたパンジーが頭を俺の胸に擦り付けてくるので、桶を足元に置いて今度は両手で撫で回してやる。

 「パンジーは可愛いなあ。それに毛並みも良くなって美人さんになったよなぁ」

 そのうちパンジーの番も買うべきか?

 いや、でもなぁ。引き車1台に2頭のヒッポリアは要らないしなぁ。

 ってか、うちのパンジーだけでも十分力が余ってる感じなんだよな。

 まぁそのうち考えるか。

 






 夕飯の焼肉を好評にうちに終え、風呂にも入ったお子ちゃま組はとっとと寝ている。

 そういや昔は外で寝袋で寝ていたジャックだが、さすがにいつまでも外っていうわけにはいかないだろうって事で、俺のベッドの足元の床に1メートルくらいの丸いクッションを置いてそこで寝るようになった。

 ケットシーだからかどうかは知らないけど、ジャックはスミレが作ったパジャマを着て猫のように丸くなって寝る。

 その姿はアニメに出てきてもおかしくないって感じで可愛いんだが、可愛いというと本人が怒るので思うだけにしている。

 なんでも騎士たるもの可愛いのではなく凛々しくなければいけない、のだそうだ。

 なんかよく判らないけど、ジャックなりに拘りがあるらしい。

 俺は焚き火のそばの地面に座椅子を置いてそこに座り込んで、スクリーンを展開している。

 「これで全部の材料が揃ったんだよな?」

 『はい、でもいいんですか?』

 「何が?」

 『ゴンドランドの羽はいい金額で売れますよね?』

 「そんな事気にしなくったっていいさ。ミリーがゴンドランドのおびき寄せ方を知ってたから、その方法でやればいくらでも討伐できるからな。それにアメーバもまだ残ってるし、ほかのものだって簡単に採取できるからさ、スミレは気にせず好きな材料を使えばいいんだよ」

 どこかまだ遠慮しがちなスミレに、俺は手を振って気にするなと伝える。

 「それにしても考えたな。アメーバを体に使うなんてさ」

 『気味が悪くないですか?』

 「なんで? アメーバを直接触れって言われるとちょっと気持ち悪いけど、表面は人工皮膚で覆われてるんだろ? その中に弾力性を持たせるためにアメーバを使うだけなんだからさ、むしろ本当の肉体っぽくていいんじゃないのか?」

 『コータ様が薄気味悪いと思われないのであれば、私はいいんです』

 まぁな、確かにアメーバそのものであれば、俺は愛でたいなんてこれっぽっちも思わない。

 でもさ、スミレがいろいろな材料、例えばゴンドランドの羽とか雑草とか、とにかくそういったもので作り上げた人工皮膚の内側の俺で言う所の肉体というか脂肪というか、とにかくそういった部分をアメーバの弾力性のある体で代用するって言うんなら、目に見える訳でもないから気にならない。

 ってか、アメーバを使おうなんて思いつくなんてすごい、って思ってるぞ。

 髪の毛はウサギやチンパラ、それに今までに狩った事のある動物の毛皮から毛だけを選り分けて、それを脱色染色して作り上げたものだ。

 だから手触りは本当に俺やミリーの髪と区別がつかないくらいだよ。

 そしてスミレの羽はもちろんゴンドランド製だ。これは引き車のウィンドウ・シールドに使う部分の残りで十分大きさがあるから、って言われたので、透明な羽を使っている。

 でもそのままだと面白くないから赤と青の木の実を使って薄いラベンダー色に仕上げる事にしている。

 濃いめの紫の髪に薄いラベンダー色の羽、なかなかセンスがいいと、我ながら自画自賛している。

 「スミレ、服は白のままでいいのか?」

 『はい、今の服も白ですからそれで大丈夫ですよ?』

 「でもさ、服だって交換できるんだろ? だったらついでに数着作っておこうか。そうすりゃスミレも毎朝着替える事ができるだろ?」

 『大丈夫ですよ?』

 頭をこてん、と傾けて不思議そうに俺を見るスミレ。

 「スミレが気にしなくても、ミリーが気にするかもしれないぞ? それにスミレがミリーに毎日着替えないと駄目だって教えたんだろ?」

 『それはそうですけど、私は着替える事が出来ないから、とミリーちゃんも納得してくれてますよ?』

 「うん、それは今までの話だよな? これからはちゃんと着替える事ができるんだから、それなのに着たきりスズメだったらミリーが着替えない時に叱れないぞ?」

 うん、わざとらしい言い訳だな、って自分でも思う。

 でもさ、スミレは女の子なんだからさ、いろいろな衣装を楽しんでもらいたいんだ。

 「そうだ。無理に着替えを作らないで、また野営する時にミリーにどんな服が似合うか聞いてみよう。ミリーやジャック、それに俺の意見を取り入れた服を作ってみたいな」

 『コータ様・・・』

 「そんな困ったような顔しないの。俺はさ、スミレの事ただの俺のスキルのサポートシステムだとは思ってないんだよ。スミレは大切な俺の仲間だって、思ってる。それにさ、多分ミリーやジャックだって同じだと思うぞ?」

 困ったような顔のまま、それでも嬉しいのか口元がピクピクしている。

 それを見ると俺たちがスミレをサポートシステムじゃなくて仲間だと思っている事を喜んでいるんだって丸わかりだよ。

 「ま、服の話はまた時間がある時にしようか。できれば今夜中にスミレの体を仕上げてしまいたいからさ」

 『コータ様に全てお任せしますね』

 「任せとけ、と言いたいところだけど、ちゃんと俺のサポートしてくれよ?」

 『もちろんです』

 結局はさ、俺が1人で設計するよりは、サポートシステムであるスミレが手伝ってくれる方が、仕上がりが段違いにいいものができるんだよな。

 この辺は普段からスミレに頼りっきりな俺の代償って事だ。

 でもできるだけ一緒に考えたんだ。

 きっとうまくいく。

 俺はそう思いながら、スクリーンをタッチして設計を進めていったのだった。






 読んでくださって、ありがとうございました。


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