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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー パーティーに行こう
143/345

142.

 翌日、眼が覚めると既に太陽は高く上っていて、どうやら寝過ごしたみたいだなぁ。

 でもま、別に急いで帰らないといけないって訳でもないしな。

 予定では今日もここにお泊りなんだからさ。

 なんせこれからゴンドランドを狩らなきゃいけない。

 それもこれも鉛筆の材料のためだ。

 あとは個人的に透明な羽が欲しいっていうのもある。

 スミレの話では、もう暫くしたら雨が降る季節に入るらしい。

 とはいってもそれはほんの2週間ほどで、それも1日に1−3時間程度しか降らないらしい。

 それでも移動中に雨が降ると大変だろ?

 特に御者大好きなミリーが手綱を握っている時に降ると濡れねずみになって可哀そうだからさ。

 という事で、俺は御者台に屋根をつけて前面にゴンドランドの羽を使ったウィンドウ・シールドを作る事にしたんだ。

 既に御者台は前の部分も板張りになっているから、その板の左右にポールをつけて御者台の背後の屋根の部分に取り付けてあるシェードをポールまで伸ばして、シェードと板の間にウィンドウ・シールドを張る予定だ。

 もちろん取り外しがきくように作るつもりだから、雨が降ってない時は取り外せばいいし、そのうちやってくるだろう寒い季節は常備しておけばいい。

 それに、今日ゴンドランドを狩るのはもう1つ理由があるしな。

 『おはようございます、コータ様』

 「ん? おはよう、スミレ」

 いつものように俺の顔の前を飛びながら挨拶をしてくれるスミレに挨拶を返してから、俺はベッド脇に用意していた着替えに手を伸ばす。

 「ミリーとジャックは?」

 『2人とも外で朝食を作ってますよ』

 「えっ、マジ?」

 ちゃんと食えるもん作ってんだろうな?

 『大丈夫ですよ。作っていると言っても魔石コンロでベーコンを焼いてパンを温めているだけですから。スープは昨日の残りがありますから、それを温めているようですね』

 「そっか、じゃあ、大丈夫だな」

 『コータ様、何気に酷いですね』

 「えっ? いや、だってさ、ミリーは時々手伝ってるから大丈夫だろうけど、ジャックは手伝った事ないだろ? だから食えるもんができるかな〜って、さ」

 うん、言いながらちょっと酷い感想だな、って思ったよ。

 でもさ、事実だ。

 俺は着替え終わるとベッドを簡単に整えてから外に出る。

 「おはよ、コータ」

 「おはよう、ミリー」

 「お、おう」

 「おはような、ジャック」

 「・・・おはよう」

 おう、としか挨拶しなかったジャックは、言いにくそうだったけど素直におはようと言ってくれた。

 うんうん、これも進歩って事だな。

 「朝飯、作ってくれてるんだって?」

 「スミレ、しゃべった?」

 「うん、すごいな〜って2人で言ってたんだ」

 嘘です、本当は疑ってました。

 でもさ、ベーコンの焼ける良い匂いが漂っているし、昨日の残りのスープがくつくつと音を立てているのを見た今では、本当に凄いなって思ってるんだぞ。

 で、そんなミリーの横を見ると、ジャックがパンをフライパンで温めているところだった。

 「ジャック、パンはフライパンよりもオーブンの方が温めやすいぞ?」

 「し、知ってる。でも、オーブンの使い方が判らなかったんだよっっ」

 「スミレに聞いたのか?」

 「うっっ」

 素直じゃないからな、聞けなかったんだろうなぁ。

 俺はちらり、と横を飛んでいるスミレに視線を向けると苦笑いを返してくる。

 「自分でなんとかしようっていうのはいいけどさ、たまに周囲に聞いてもいいと思うな。誰かに教えてもらうのも経験になるだろ」

 「・・・判った」

 あれ、珍しく素直じゃん?

 「コータ、あさごはん、できた、よ?」

 「その、パンもあったまったと思う」

 「そうか? じゃあ、2人が作ってくれた朝ごはん、もらおうかな?」

 「うん」

 尻尾がビュンっと揺れて、ミリーはテーブルの上に用意されていたスープ用のカップを取りに行き、そのままスープをカップに注いでいく。

 その横でジャックがテーブルの上のお皿に温めたパンを1つずつ載せてから、ミリーが焼いていたベーコンを3枚ずつ並べる。

 2人ともなかなか手際よく朝食の準備をしていく。

 これならこれからも2人に手伝ってもらってもいいかな。

 「いただきます」

 「いただきみゃ、す」

 「お、おう・・その、いただきます」

 どこかぎこちないジャックだけど、それでもちゃんと一緒に食事の前にいただきますと言えるようになった。

 ま、言えるようになったというよりも、ミリーの冷たい視線が無理矢理言えるようにした、という方が正しいんだけどさ。

 そして俺は喉を潤す事を兼ねてスープを飲み、ミリーがとんでもない事を口にした。

 「コータ、スミレの体、好きにした?」

 ぶふふっっぅううううっ

 スープが吹き飛んだ、鼻に入った、気管にも入った。

 げほげほっ、と咳き込みながらミリーを見ると、俺がいきなり吹き出した事に驚いて目をまん丸にしている。

 「コータ、だいじょぶ?」

 「お、おう、ゴホッ、まあな、ゲホッッ」

 「ちっとも、だいじょぶじゃ、ない、よ?」

 いや、誰のせいだよ。

 まぁ本人はちっとも判ってないからいいんだけどさ。

 全くスミレといい、ミリーといい。

 とりあえず咳が落ち着いたところで、ポーチから水筒を出して水を飲む。

 「スミレ、コータ、スミレの体、好きにした、の?」

 『いいえ、コータ様は私の好みも入れた方がいい、と言われたので、2人でいろいろと試しながら体を作りました。私としてはコータ様には好きにしてもらいたかったんですけどね』

 「スッ、スミレッッ」

 それはちょ〜〜っっと、語弊があるぞっ。

 「コータ、どうした、の?」

 「べ、別に。俺はスミレの意思も尊重したんだよ。ミリーたちだって、スミレがいきなり大きくなったり、今までと見た目が変わったら嫌だろ?」

 「うん、そだね。大きくなったら、スミレじゃない、ね」

 ミリーはスミレが大きくなったところを想像して、頭をフルフルと振った。

 「そっか。でも、できてない、ね?」

 『はい、おそらく今夜中にできると思います』

 「まだ足りない材料とかがあったからさ。今日ゴンドランドを狩ってから、少しだけ素材集めをしようと思ってるんだ」

 「わかった、がんばる」

 ぐっと握りこぶしを作って決意のほどを見せてくれるミリー。

 そんな彼女を見て、スミレがとても嬉しそうな笑みを浮かべた。

 『ミリーちゃん、ありがとうございますね』

 「スミレ、いっつも、わたし助けてくれる、よ? だから、今日はミリー、の番」

 「偉いな、ミリーは」

 ミリーの言葉に俺は思わず立ち上がり、そのまま手を伸ばして彼女の頭を撫でてやった。

 「ほかの、ざいりょう、なに?」

 「実はゴンドランドの羽もいるんだ。1枚だけ分けてくれるかな?」

 「いいよ」

 「それから、ちょっと林に入って、できれば赤い木の実を集めたいんだ。それに青い木の実もあっただろ? それも欲しいかな」

 「たくさん、いるね」

 「うん、そうだな。でも余ったら木の実はオヤツにしてもいいし、ゴンドランドの羽はパンジーの引き車にいるからさ、そっちの余った分でも多分なんとかなるからさ」

 あとは、雑草を集める時にタンポポもどきの羽毛付き種が欲しいな。

 ほかにも幾つか欲しい材料はいくつかあるけど、その辺はゴンドランドを狩ってからミリーたちに説明すればいいだろう。

 「そうだ、余分に雑草は集めてくれるか? ミリーやジャックも予備の服があった方がいいだろ?」

 「えっ? ミリー、5枚持ってる、よ?」

 「お、俺も3着あるぞ」

 「うん。でもさ、ミリーは出会った時よりちょっとだけ身長も伸びただろ? だから今の背丈の合わせたものを作りたいんだ。それにジャックだってさすがに3枚じゃあ駄目だ。せめて5着分くらいの服は持ってないとな」

 すっかり忘れたけど、ジャックの服なんて出会った時に用意した分だけだったよ。

 さすがに3枚をローテーションで着回すのはなぁ。せめて5着は欲しい。

 それに雨の間のカッパもどきをみんなの分作りたいしな。

 「って事で、雑草や枝を余分に集めてくれると嬉しいな」

 「うん、がんばる」

 「わ、判った」

 ミリーはもちろんだけど、どもりながらでもジャックも真面目な顔で頷いていたから、きっと頑張ってくれるだろう。

 「ついでに、なんでも拾ってくれたらいいから。石ころだって落ちている木の実だって、ほかにもなんでも手に取れるものは拾っといてくれ」

 「なんで、も?」

 「うん、今すぐは要らないかもしれないけど、そのうち使う事だってあるかもしれないだろ?」

 「一応確認、した方がいいのか?」

 「んな事する事ないさ。ただなんでもいいから拾ってくれ。2人ともリュックサックに入れておいてくれたらいいからさ。戻った時にスミレに渡してくれたら、彼女が確認してくれるよ。どうしても使えないようなものだったら、スミレが捨ててくれるさ」

 なんせ、鑑定をもっているんだから。それに俺のスキルのサポートシステムだから、鑑定をしている時に使えるかどうかも調べられるだろう。

 「おっと、ただし、フンは止めろよ」

 「なんで?」

 「あれは使えんぞ、な〜んにもできないからな」

 嫌な事を思い出しちゃったよ。

 以前ミリーが直径3センチほどのまん丸の少しツヤツヤしたものを拾ってきた事があるんだ。

 俺は見た事もないものだったから、手にとって手触りを確認したりふんふんと匂いを嗅いだりしたんだけどさ、そんな事をしている俺に『それ、ゴーターのフンですよ』と教えてくれた。

 ゴーターっていうのは豚とヤギをかけたようなずんぐりした体型の草食獣なんだよ。

 俺は思わず手に持っていたそれを放り投げたよ、うん。

 それからすぐに手を洗った事は言うまでもないだろう。

 あれはさ、ちょっとしたトラウマになったんだよ。

 だってさ、俺、フンから1−2センチまで顔を近づけて、フンフンって匂いを嗅いだんだぜ。

 ああ、嫌な思い出だ。

 『でもフンでも使えるものもありますよ?』

 「スミレ、余計な事は言わんでいいっっ」

 もしミリーが違う動物のフンを拾ってきたらどうすんだ?」

 「スミレ、使えるの、あるの?」

 『はい、燃料にしたり、粘着剤の材料として使えるものもありますね』

 「そっか、じゃあ、変わったもの、見つけたら持ってくる、ね」

 「ミリー、その時は俺に持ってくるなよ? まっすぐスミレに持って行って鑑定してもらえ、いいな?」

 「えっと・・うん、わかった」

 よく判ってない顔をしたミリーと、呆れたような視線を向けてくるスミレ。

 うん、大人気ないって判ってる。

 でもだ、男には譲れないものもあるんだ。

 そして、これは絶対に譲れないものなんだよっっっ!






 読んでくださって、ありがとうございました。


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