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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 腕試し?
128/345

127.

 捕獲したアメーバ32匹。

 内訳は、ミリー14匹、ジャック13匹、俺5匹・・・・・なんてこった。

 「俺は〜、どうせ回収係だからな〜・・・」

 とにかく、俺が槍を構える暇がないくらい、ミリーとジャックがガンガン仕留めやがったんだよ。

 その度に俺はタライの蓋を開けて閉めて、ってそればっかりだった。

 俺が仕留めたアメーバはあの2人だと遠すぎて仕留められなかったヤツだけだった。

 「むぅぅ、なんか納得がいかんっ」

 むっきーとなりながら、俺は目の前のスクリーンをバシバシと指で突きまくる。

 いや、本当はセッティングしてるだけなんだけどさ。

 ミリーはさっきまでスミレから回復魔法の手ほどきを受けていた。

 と言ってもスミレが使える訳じゃなくて、彼女のデータバンクから情報を取り出してそれを知識として教えている、って言った方が正しいかもしれない。

 それでも何も知らない俺やミリーとしては十分役に立つ勉強な訳で、スミレ曰くミリーの回復魔法は少しずつだけど上達しているらしい。

 ジャックはそんなミリーから焚き火を挟んだ反対側で、砥石を使って剣の手入れをしていた。

 砥石は長さ15センチ、幅8センチ、厚さは2センチほどの長方形をしているんだけど、その平べったい部分に皮で作った輪っかが付いていて、ジャックは手というか前足をそこに入れて器用に剣の刃を研いでいるんだよな。

 人のような手じゃなくって猫の手なのになかなか器用で近くで検分したいんだけど、ジャックが嫌がるので今のところは我慢している。

 でもそのうち是非とも手を触らせて貰いたいものだ。

 まぁ今は2人とも疲れて寝ちゃってるんだけどさ。

 ミリーはパンジーの引き車の中のベッド、ジャックはシェードの下に敷いたシートの上に広げられた寝袋の中に入って寝ている。

 そんな2人を横目に、俺は焚き火の前でランタンの明かりを頼りに注文を受けている鉛筆とボールペンを作っているところだ。

 と言ってもボールペンを作っているのはスミレで、俺は鉛筆を作ってるんだけどさ。

 本当は色鉛筆も作りたいところだったんだけど、なにぶん材料が揃ってない。

 なので今は普通の鉛筆と黒のボールペンだけだ。

 「なあスミレ、ボールペンと鉛筆を入れるための木箱作った方がいいかな?」

 『そのままでも構わないんじゃないんですか?』

 「うん。でもさ、規格の入れ物があれば数も数えやすいし、俺にもどれだけ作ったか判りやすいからさ」

 『ああ、なるほど。確かに納品の時に数を数えやすいようにしておけば、数える時間を短縮できますね』

 「そうそう。最初は皮袋でもいっか、って思ってたんだけどさ。それじゃあ数えるのにいちいち袋から出さないといけないし、1本ずつ数えると時間がかかるだろうなって思うと、それだけ待たされるのもめんどくさいだろ?」

 ようは、だ。数を数えるために待たされたくないんだよ。

 それよりも1箱100本とか、そういう同じ大きさの箱に入れておけばいちいち数えなくったって、箱の数で計算してもらえるなら数えるのも楽じゃん。

 という事で、スミレの許可もおりたところで、俺はとりあえず鉛筆作りを横に置いて箱の規格を考える。

 1本の太さがこれだから・・・100本にするんだったら10X10で入る箱がいいのか?

 それとも10X5の50本の方が持ち運びがいいかな?

 「スミレ、100本入りの箱と50本入りの箱、どっちがいいと思う?」

 『どちらでも作りやすい方でいいんじゃないんですか?』

 「そっかあ? う〜ん」

 『何を悩まれているんですか?』

 「生産ギルドを通して売る訳だからさ、売る時の単位がどうなるのかなって思ったんだよ。100本単位で売るのか、それよりも少ない単位で売るのか。それによって箱の大きさが変わるだろ?」

 日本だったら鉛筆って12本入りの箱だったよな。ってかさ、今時鉛筆使ってるような子供っているのか?

 俺、小学校の時くらいしか鉛筆使った記憶ないぞ?

 それ以降はず〜っとシャープペンだったもんな。

 『あのですね、コータ様。それを心配するのは生産ギルドの仕事ですよ。ある程度の単位を考えていたのであれば、そのように注文の時にコータ様に言った筈です。でもそこまで指示を出さなかったのであれば、きにする必要はないと思いますよ? おそらく生産ギルドはコータ様が箱に入れて納品するなんて思っていないと思いますから』

 「あ〜・・そりゃそうか。んじゃ俺の都合で箱を作ればいっか」

 だったら10X10だな。それなら200箱作ればいいって事か。

 ダンボールとまではいかなくてもボール紙くらいはあってもいいんだけどなぁ。

 もしあればそれを使って箱を作るのが一番楽ちんなんだけどさ。

 「な〜スミレ、ボール紙とかって、やっぱりないよな?」

 『ありませんねぇ』

 「だよなぁ。あればそれで箱作るのにさ」

 仕方ないですよ、と言われてしまうとそれ以上グチを零してもいられない。

 なので俺はスクリーンをタップしながら鉛筆が100本入る箱のサイズを入力していく。

 鉛筆のサイズそのままだと入らないかもしれないから、ほんの少しだけ緩みを付け足した数値にする。

 とりあえずそこまでセッティングしてから箱に必要な材料とパーツの数、それから鉛筆に必要な材料とパーツの数を数える。

 「よし、これなら箱と中身、まとめて一緒に作れるな」

 別々に作って自分で箱詰めまでしなくちゃいけないかもしれない、って思ってたからホッとしたよ。

 だってさ2万本だぞ、それを100本ずつ200個の箱に詰めるのが全部手作業だったりしたら、それだけで俺は燃え尽きる自信があるぞ。

 って自慢にもならないけどさ。

 「え〜っと鉛筆が100本で、10X10で入るようにして、と。それから鉛筆を詰める箱は木製で使う材木はっと・・サンヤかブダイがあるのか。じゃあ、適正判断をポチッと押して・・・ブダイの方がいいってか。んじゃそれでポチッとな」

 サンヤというのは樫の木に似た木で、ブダイは松の木みたいな木。今回の箱にはブダイの方が作りやすいって事らしい。まぁ俺には文句はない。

 箱用のブダイの板の厚さは5ミリくらいで、どうやら組み木テクと接着剤を使うみたいだな。

 接着剤は以前仕留めた蜘蛛から取れた素材を使うようだ。

 「スミレも箱に詰めるようにするのか?」

 『そうですねぇ・・・鉛筆との兼ね合いを考えれば、箱詰めにした方がいいでしょうね』

 ありゃ、仕事を増やしたのか、俺?

 「もしかして俺、スミレに余計な仕事を増やしたのかな?」

 『大丈夫ですよ。コータ様のいう通り、箱詰めにしておいた方が納品の時に数を確認しやすいですし、見た目も職人の品という感じでいいと思いますからね』

 「そうか? でも仕事増やしてごめんな」

 それでも申し訳ないっていう気持ちがあるのでもう一度謝ると、スミレは俺を咎めるような目で見てから頭を横に振った。

 「スミレ?」

 『作業を続けますね』

 問いかけるように名前を呼んだけど、スミレはそれに応える事もなく作業に戻った。

 俺、何か変な事言ったっけ?







 そこからの作業はお互い無言のまま行われた。

 俺としては話しかける気満々だったんだけど、スミレがこっちを見ないから話しかけるタイミングが、な。

 いや、いつもならスミレを振り返る事なく話しかけてるんだけどさ、さっきの態度が気になっていつものように話しかけられないんだよ。

 それでも2時間ほどかけて、なんとか鉛筆100本入りが40箱できた。

 「1時間に20箱できる計算になるのか。じゃあ・・・まだあと3時間はかかるのかぁ・・・」

 まだまだだなぁ。

 もう今夜はこの辺でやめて寝ようかなぁ。

 いや、でもそんな事したら蒼のダリア亭で作業をしなくちゃいけなくなるなぁ。

 それはそれでヤダよな。

 「う〜む」

 『どうしましたか?』

 腕を組んで、寝るか作業を続けるかを悩んでいるとスミレが声をかけてきた。

 おや? 少し機嫌が直ったってことかな?

 「あ〜、うん。もう遅いから寝ようかな何て思ってるんだけど、でもあと3時間くらいは作業を続けないと鉛筆はできないからさ、どうしようかなって悩んでたんだ」

 『私がしますよ?』

 「いやいや、大丈夫だよ。スミレだってボールペン作るのに忙しいだろ?」

 『あのですね、コータさ--』


 ててれてってれ〜〜〜


 スミレがいいかけたところで、俺のレベルアップの音がした。

 「おぉぉぉっ、レベルアップしたぞっ」

 これって、ついにレベルが5になったって事だよな?

 「うっわあ〜、これってレベル5になったって事だよな? って事は、限界突破だよな? なんでも作れるんだよな? 限定解除だよな? 制限無しって事だよな?」

 思わず立ち上がって小躍りを始めた俺は、そのままのはしゃいだノリでスミレに喋り続けた。

 自分でもはしゃぎすぎている自覚はあるが、待ちに待ったレベル5なんだ。

 これくらいは許してくれよ。

 「うっほほ〜〜いっっ」

 ツイストしながらムーンウォークもどきをして、ついでに頭も左右に振って。

 さっきまでの眠気も吹っ飛んじまったよ。

 焚き火の周りを2周してからようやく落ち着いた俺は、さっきまで座って作業をしていた場所に戻ると浮かれた気分のまま座った。

 「なあ、レベルが上がったって事は作業スピードも短縮されるって事だよな? じゃあさ、残りの鉛筆を作る時間も短縮されるのか?」

 『もちろんです。ですが無理にコータ様がしなくても、私が仕上げてもいいんですよ?』

 「大丈夫だよ。あと3時間くらいで終わるところだったんだからさ。今夜できなくても明日の夜に仕上げてもいいんだしさ」

 ああ、でも頑張って今夜中に仕上げてしまえば、明日の夜はレベル5まで上がったスキルを使って、色々と実験をしてもいいんだよなぁ。

 『でももう遅いですよ? コータ様も寝ないと明日は都市ケートンまで移動ですよ?』

 「ミリーがいればパンジーの操作は任せられるから、睡眠不足だったら帰るまでの道中に寝てもいいんだしさ」

 『それでは何かあった時に対処ができなくて困ります。ですから残りの作業は私に任せて、コータ様は寝てください』

 「駄目だよ。スミレだって疲れちゃうだろ? スミレに全部押し付けて寝るなんて、できないよ」

 『私はスキルのサポートシステムですよ? 休む必要はないんです』

 スミレに言われて、彼女が俺やミリーと違って生きていないという事を思い出した。

 いつだってこんな風に一緒に過ごしているから、スミレが俺のスキルのサポートだって事忘れてたよ。

 「でもなぁ・・俺が寝たあともスミレを働かせるっていうのはさ、フェアじゃないだろ?」

 『ですから、私はコータ様のスキルのサポートですから、寝る必要はないんです』

 「知ってるよ。でもさ、俺たちが寝ている間も結界を展開して守ってくれてるじゃん」

 『それは当たり前ですよ。というか、他にする事がないですからね』

 「そりゃそうだけどさぁ・・・う〜ん、でもなぁやっぱり申し訳ないから俺が自分で--」

 『コータ様っ!』

 自分でやる、と言いかけた俺を怒鳴りつけてきたスミレに驚いていると、彼女はものすごい勢いで俺の目の前まで飛んでくるところだった。

 





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @17:31CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

ミリーがいれパンジーの操作は任せられるから → ミリーがいればパンジーの操作は任せられるから

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