126.
気がつくと総合が1000を超えてました。
ここでかっこよくオマケ投稿なんて言いたいところですが、相変わらずのあっぷあっぷ状態です。
ですので頑張って毎日投稿します、としか言えません・・・申し訳ありません。
とはいえ、4月は丸々休みをもらって日本に戻るので、その間は更新が・・・できるだけ頑張ります!
ベッチャアアアッッ
なんかすごい音がしたので振り返ると、そこにはスライムジュース滴るいい男、じゃない、ジャックが立っている。
「おまえ、なんでそんな事になってんだ?」
「しっ、知るかよっっ!」
「スミレ?」
ぬっちゃあっとしか表現のしようがない液体を滴らせたジャックはおそらく顔を真っ赤にして憤慨している。
ここでおそらくっていうのは、毛が顔の表面を覆っているから判らないんだよ。
大体スミレが俺たちの周囲に結界を張っているんだから、スライムによる『スライムジュース攻撃』は結界に阻まれる筈、だよな?
なので一番この状況を把握しているであろうスミレに聞いてみる事にした。
『泥濘んだ地面に足を取られて結界から一時的にはみ出たようですね』
「あ〜・・そういや結界の範囲を狭くしてもらってるんだったな」
この沼にやってくる道は狭いので、結界を広げなくてもいいだろうって事でいつもより狭くしてるんだったな、そういや。
「あ〜、汚ねえなぁ。洗うか?」
「うううぅぅぅぅぅっっ」
「スミレ、タライ出すか?」
『もう少し進めば沼に着きますので、そこまで待ってからの方が安全面も含めていいと思いますよ?』
「ん、そうか? じゃあ、そういう事で、ジャックももう少し我慢しろよ。着いたらタライとタオルを出してやるから」
出そうと思えば風呂も出せるけど、めんどくさいからさ。
ジャックは仕方ないと頷いたものの、耳が頭にぺたーっとくっついて、尻尾も力なく垂れてしまってるから不本意なんだろう。
でもま、結界からはみ出たお前が悪いんだぞ?
「スミレ、またジャックが結界からはみ出ると困るから、結界から出られないようにしてくれるかな?」
『仕方ないですね。判りました』
全く、と言いたげな溜め息を吐いてからスミレは軽く手を振る。
よし、これでオッケーだ。
「でもよかったな、ジャック。それをお前に吐いたスライム、無害のヤツだぞ」
「どこがよかったんだよっっっ」
「いや、だってさ、酸性のヤツだと、お前今頃溶けてるぞ?」
「うぬぬぬっっ」
ま、俺が知ってるっていうんじゃなくって、スミレに教えてもらったんだけどさ。
「それに粘着度の高いスライムジュースだと今頃粘って歩けないぞ?」
「うぬぬぬぅぅぅっっ」
ニヤニヤしながら告げる俺を、キッと睨みつけてくるジャック。
だけどさ、スライムジュースが滴っているその姿だとちっとも怖くないんだよな、けけけっ。
そんなこんなでジャックがスライムジュースを浴びてから20分ほど過ぎた頃、俺たちは目的の場所に到着した。
「よ〜し、スミレ、悪いけど少し結界を広げてくれるかな? ジャックが洗えるようにタライを出すからさ」
『判りました』
俺はポーチから直径1メートルほどのタライを出す。
それから小さなシートを取り出してその上にタオルと体を洗うためのハンドタオルに石鹸も取り出した。
「んじゃお前はそこで綺麗にしてな。俺とミリーは一足先にアメーバを集めるよ」
「すっ、すぐに終わらせるっ」
「いいからいいから、時間をかけてきっちりと綺麗にしてくれ」
「うぐぐぐっっ」
ジャックとしてはここで遅れをとりたくないようだけどさ、俺としてはスライムジュースが滴るような格好でそばに入られたくないわけだ。
だってもしかしたらぶつかった拍子に俺に付くかもしれないじゃん。
それは嫌だもんな。
多分ミリーも同じだと思うから、ジャックにはきっちりと綺麗にしてから参加してもらいたい訳だ。
俺は早速アメーバを集めるべくゴンドランドの足を取り出した。
これはスミレの命令で俺のポーチに入れさせられたもので、前回同様にズブっと沼地に突き刺して行く。
「うぇえええ」
この感触、気持ち悪い。
なんかさ、でっかいゴキの足を握ってる気がするっていうのかな?
そりゃちゃんと手袋して、直接触らないんだけど、それでも気持ち悪い事は変わりない訳だ。
それでも10本ほど突き刺し終えると、今度はポーチから槍を3本取り出した。
「ほい、ミリー。準備しとけよ」
「わかった」
『コータ様、タライの蓋はどうしますか?』
「蓋? ああ、あれかぁ。前のってどうしたっけ?」
捨てたのか取ってあるのか覚えてないなぁ。
という事で、俺はタライの蓋、タライの蓋、とつぶやきながらポーチに手を突っ込む。
「あ、あった」
『取ってたんですね』
「うん、みたいだな」
すっかり忘れてたよ。
「んじゃ、これで準備オッケーだな」
『でもジャックがタライを使ってますよ?』
「あ〜・・そういやそうだ」
俺はチラリ、とジャックの方を振り返ると、丁度終わったところなのかシートの上に座り込んでズボンを履いているところだった。
「ジャック、ちゃんと乾かしたのか?」
「ま・・まだ少しだけ濡れてるけど・・・大丈夫だ」
「スミレに乾かしてもらうか?」
「大丈夫だって言ってるだろ。それよりタライがいるんだろ?」
ま、大丈夫だっていうんだったらいっか。
俺はシートに濡れたタオルを包んでポーチにしまってから、タライの水をその場に捨てて沼の近くにタライを置き直してから水を入れた。
「よっし、これでとりあえず準備オッケーだな。ジャック、この槍を使えよ」
「や、槍?」
「やりでアメーバを突き刺して、それをタライに入れるんだよ」
「お、おう」
頷きながら槍を受け取ったジャックだけど、どう見たって槍が長すぎる。
「おまえ、槍が長すぎるんじゃないのか? 振り回せるのか?」
「ばっ、馬鹿にすんなよっ。これくらい、楽勝に決まってんだろっっ」
ジャックは槍を振って見せるけど、どう見たってジャックが槍を振ってるんじゃなくて、槍に振り回されているようにしか見えないんだよな。
でもまあそんな事を口にすれば噛み付いてくるだろうから、そういう事にしておいてやろう。
だってさ、めんどくさいんだよ。
今はジャックを揶揄って遊ぶより、早くパンジーのところに戻りたいんだよ。
「コータ、来た」
「ん? どこだ?」
「あれ、あの足、にくっついてる」
「んん? ああ、あれか。あそこはちょっと岸から遠いから俺がやるよ。ミリーは近くの足に来たヤツを捕まえてくれ」
「わかった」
「ジャックも無理すんなよ」
「わかってるっっ」
噛み付いてくるジャックだが、遠いところは自分の手に負えないと納得しているようで、無理に俺に張り合ってこようとしないのは良い事だ、うん。
ま、本人もたった今綺麗にしたばかりの身体をドロドロにしたくない、ってところなんだろうけどさ。
俺は槍を伸ばしてゴンドランドの足のすぐそばで一度止めてから、狙いをつけてぐっと突き刺した。
少しだけ暴れるような振動が伝わってきたけど、しょせんはアメーバ、それ以上の抵抗はない。
俺はアメーバの刺さった槍を持ち上げると、そのままタライのところに持っていくとタライの縁を使ってアメーバを取り外す。
それから蓋をかぶせた。
「まず1匹目だな」
「コータ、何匹、いる?」
「ん? そういや何匹いるんだろうなぁ、スミレ?」
『そうですね・・・アメーバは死んでしまうと再利用ができませんから、捕まえた分を全部使ってしまうか、ある程度加工してストレージにしまうか、ですね』
「アメーバ1匹でボールペンはいくつ作れる?」
『アメーバ1匹で500から700本は作れると思いますね』
「ん〜・・・じゃあ、500本作れるとして依頼は10000本だから・・・20匹はいるのか」
なんでそんなに必要なんだよ、全く。
俺はがっくりと力が抜けそうになるのを我慢して、タライをじっと見下ろした。
今アメーバは1匹いるだけだ。これをあと20回は繰り返さなくちゃいけないのか。
はぁ、と溜め息を吐いてから俺は頭を振る。
「よ〜し、ミリー。あと19匹だぞ〜。近くにやって来たヤツは、ミリーとジャックに任せるな」
3人いるんだから、一人6−7匹でいい筈だ、それならなんとかなる。
「コータ、みゃた来た」
「どこだ?」
「あれ、あそこならわたし、できる、よ」
「そうか? 無理はすんなよ」
「だいじょぶ」
キリッと槍を構えてグラグラと揺れているゴンドランドの足のところに行くミリーを見送ってから、俺もアメーバがやって来ていないか探す。
そんな俺の横でジャックが動いたかと思うと、そのまま彼が歩いていく方向にあるゴンドランドの足を見ると動いている。
むむむっ、このままだとまた2人が集めて俺は回収だけになってしまう。
俺は目をこらしてゴンドランドの足を見るけど、動いているのは見つけられない。
「コータ、獲った」
「おっ、そうか、じゃあ蓋を開けるな」
「ありがと」
俺が慌ててタライの蓋を少し開けると、その隙間に槍を突っ込んで縁を使ってアメーバを取り外す。
「コータ、こっちも獲れたぞ」
「お? おう」
ジャックも無事にアメーバを捕まえる事ができたようで、槍をタライに向けてくるから俺は蓋を少しだけ開けてやる。
あれ?
ミリーとジャックは俺がタライの蓋を開けるのを当たり前、と思っているみたいだぞ?
そりゃ確かにゴンドランドの時は、俺は回収係を務めたさ。
あれは適材適所っていうかさ、体格がいい俺が回収係を勤めるのが一番だろうって思ったからだ。
決して気持ち悪くて虫を仕留めたくないから、ではなかったんだ。
身体の小さな2人に無理はさせたくなかったからだ。
なのに、2人は俺がタライの蓋開閉係だと思っているのか?
いやいやいやいや、俺だってできるんだというところは見せてやるっ!
「俺も捕まえるぞっっ」
俺は慌てて2人の立っている岸に行くと、同じように槍を構えるのだった。
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