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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 腕試し?
123/345

122.

 ジャックと手分けして依頼である10ガンス、俺風に言うと50キロのラッタッタの肉を無事に肉屋に届けた。

 結局今日も午前中はジャックの新しい剣の具合を確認するという口実で、ラッタッタを狩りに行ったところ、ジャックとミリーはそれぞれが7匹ずつ仕留める事ができた。

 ジャックの新しい剣はなかなかの切れ味のようで、昨日の剣に比べると断然簡単にラッタッタを仕留める事ができたみたいだ。

 俺?

 俺はジャックとミリーが仕留めたラッタッタの回収係だったよ。

 なので功績はゼロだ、ゼロ。

 いいんだよ。俺が自分を犠牲にして回収係に回った事で、ラッタッタに仕留めた肉を持って逃げられる事がなかったんだからさ。

 昨日そうしてたら、今日ラッタッタを狩りに行かなくても済んだのに、なんて事は言わないさ。

 今更だもんな。

 って事で、ついでに狩ってきたラッタッタの肉も買ってもらえた。

 全部で22ガンス、110キロの肉だ。そんなに買ってどうするだろうとつい聞いたら、冷凍庫にしまっておいて、注文分ずつ捌いていくらしい。

 とはいえ1ガンスたったの100ドラン、つまり2200ドランにしかならない。

 でもギルドでラッタッタの尻尾と毛皮は買い取ってもらえるみたいだから、それを合わせればもう少しマシな金額になりそうだ。

 「お待たせしました」

 「依頼達成の報告に来ました」

 ようやく俺たちの番になり、俺は肉屋でサインをもらった依頼書をカウンターに置いた。

 そういえばハリソン村では依頼達成したら依頼人からサインをもらってお金を貰ってたよなぁ。それにゴンドランドの依頼の時も依頼人から報酬を貰っていたのに、薬師ギルドの依頼と肉屋の依頼はサインだけで報酬はギルドで貰ってくれ、って言われた。

 なんでなんだろう?

 ま、どっちにしてもちゃんと依頼金がもらえるんだったらそれでいいんだけどさ。

 「はい、ラッタッタの依頼ですね。既に引き渡し済み、と。サインもありますね」

 「はい、それからここでラッタッタの毛皮と尻尾を買ってもらえるって聞いたんですけど?」

 「ええ大丈夫ですよ。どのくらいありますか?」

 「全部で24匹分です。あっ、でも毛皮は3枚ほど状態がよくないのがあるんですけど、それも買ってもらえるんですか?」

 「毛皮ですか? 状態が良くなければ使い道がないのであまりにも酷いと買取は拒否させていただきます」

 やっぱりかぁ。

 俺はチラリと視線を落とすと、その先にいるジャックは耳をペタンと頭につけている。

 ジャックのレイピアの分はあんまり状態が良くないんだよな。

 「じゃあ、見てもらえますか?」

 「ああ、はい。出していただけますか?」

 俺がジャックの肩をポンと叩くと、彼は慌てて背負っていたバックパックから尻尾の束を取り出した。

 俺はその横で同じくバックパックから毛皮の束を取り出す。

 「では奥に持って行って確認してもらいますね。それから今回のラッタッタの肉の代金、22ガンス分も持ってきますので暫くお待ちください」

 職員はよいしょ、と掛け声とともに尻尾と毛皮を抱えるとそのまま奥へ入っていく。

 「気にすんなよ」

 「べ、別に俺は・・・でも、売れなかったら俺のせいだよな」

 「まぁな。でもあれは武器が悪かったから、だろ? 現に今朝はちゃんと仕留めてたじゃん」

 「でもさ、その分報酬が減っちゃうだろ」

 「じゃあその分この次働けばいいさ」

 俺はポンポンとジャックの頭を叩く。

 ミリーとスミレは一足先に蒼のダリア亭にパンジーと一緒に行って宿を取っている筈だ。

 前回の事で教訓を得た俺は、ギルドには2人まとめて連れてくる事はやめる事にしたんだよ。

 2人一緒にいるから揉めるんだ。

 だったら別々に行動させればいい、って事だ。

 この後宿に戻ったらこいつは留守番で、今度はミリーを連れて生産ギルドに行く事になっている。

 どっちも文句を言ってたけど、それなら仲良くできるところを見せろ、って言ってある。

 「ヒマなら向こうの依頼掲示板に行って、何か見つけてきてもいいぞ?」

 「えっ? いや、いい。ここで一緒に待つ」

 「そうか? ならいいんだけどな。次にここに来る時はミリーを連れてくるからお前は留守番だぞ? 判ってるだろうな」

 「判ってるよ。レベルアップしたかどうか確認するんだろ?」

 「そうそう。まぁまだだろうけどさ」

 なんせあれから2つしか依頼はこなしていないもんな。

 そんな事を話していると、奥から職員が戻ってくるのが見えた。

 「お待たせしました。残念ながらこの3枚の毛皮は使い物にならないそうですので、買い取りはできません。ですが残りの21枚は買い取りできます。それから尻尾は24本とも買い取りできます。ですので、毛皮は1枚につ180ドラン、尻尾も1本180ドランで買い取りしますので、毛皮3780ドランと尻尾4320ドランの合計8100ドランになります。それから肉屋さんの依頼であったラッタッタの肉については22ガンスで、1ガンス100ドランとなりますので2200ドランとなります。8100ドランと2200ドランで合計10300ドランですので、こちらになります。ご確認ください」

 そう言って職員さんは小金貨1枚と小銀貨3枚をカウンターに置いた。

 確か小金貨は10000ドランで、小銀貨は100ドランだったよな。

 「はい、ありがとうございました」

 俺は受け取った金を無造作にポーチに突っ込むと、頭を下げてからカウンターから離れる。

 さて、宿に行くか。





 生産ギルドに行ったものの、よく考えたらギルドの職員に来てもらった方が現物を見て貰えるんじゃないか? と気づいてそう言うと、ミルトンさんは快く頷くとそのまま俺と一緒に蒼のダリア亭まで来てくれた。

 「これがコータさんの言っていた引き車ですか?」

 「はい、えっとですね、これは移動時の大きさです」

 俺は引き車の広がる部分に何もない事を確かめてから、中に入るドアのすぐ横に取り付けてあるボタンを指差す。

 「そこのボタンを押してみてください」

 「これ、ですか? はい・・うわっ、動いてるっ」

 足元は動いてないけど、向こう側の壁が動く時の振動を感じるのでこちら側も動いているような気がするんだろう。

 「広くなるんですねぇ・・・」

 「そうですね、中は2倍くらいまで広げる事ができます。えっとですね、そこの本棚の大きさの出っ張り2つはベッドです。そちらにあるボタンを押せばゆっくりとベッドが降りてきます」

 「折り畳みベッドですか? 面白い発想ですねぇ」

 「そうですか? でもこれなら邪魔になりませんよね?」

 面白いか? 俺としては普通のアイデアな気がするけどさ。

 物珍しそうに引き車の中を一通り眺めて触って、ついでにベッドを1つだけ降ろして大きさを確認してから、ミルトンさんは納得したように引き車から出てきた。

 彼女が出てくるのを確認してから、俺はまた元の大きさに戻す。じゃないと他に宿泊客の邪魔になるからな。

 「なかなか画期的な馬車ですね。これなら欲しがる人はいるかもしれません。でも魔石を使ったボタンの部分はコータさんが作るんですよね?」

 「はい、引き車自体は大工さんに頼んで作っていただいて、ベッドと拡張に関しての動力部分は俺が作ります。申し訳ありませんが、その点に関しての情報は公開したくないんです」

 「それは仕方ないですね。登録しても真似されたら特許の意味もないですからね。生産ギルドでの登録はその商品単位になりますから、それを応用して作ったものに関しては特許は適用されないですからねぇ」

 「その通りです。ですので申し訳ありませんが、ブラックボックス化させていただきます」

 ミルトンさんはこういった事に慣れているのかとても柔軟にこちらの言い分を聞いてくれる。

 「それで、こちらが魔石コンロです」

 「おお、これが。この前設計図を見せていただいた時から気になっていたんですよ。ただ設計図だけだとどんなものかイマイチよく判らなくって」

 「試しに使ってみますか? お湯くらいならすぐに沸きますよ」

 俺はヤカンを取り出すと、水筒の水を入れ、それを魔石コンロの上に置く。

 「この手前にあるノブはコントロールのためのもので、こうやって押すと回ります。ノブの周囲に赤の丸が付いてますが、丸が大きくなる方が熱いです。この一番小さな赤丸は保温程度の温度ですけど、こちらの一番大きな赤丸だと温度が高いのであっという間にお湯は沸きますよ」

 と俺が説明しているうちに、ヤカンが小さな音を立て始める。

 「ほんとだ・・早いですね」

 「それでもこのヤカンが載っている部分しか熱くならないので、それ以外の場所に触れても火傷をするような事はないです。それにその部分しか熱さないからこそ魔石の魔力をあまり使いません」

 俺は魔石コンロの上に書かれている4つの丸を指差す。大きい丸が2つと小さい丸が2つ。これは鍋の大きさに対応するためだ。

 「ヤカンみたいに底の部分が小さいものは、この小さい丸の部分を使うんです。それで大きな鍋なんかの場合はこっちの大きい丸の上においてください。そうする事で消費する魔力を無駄にしません」

 「なるほど。てっきりこの石の台そのものがが全部熱されるのかと思っていましたが、部分的に熱する事で魔石の使用量を節約できるんですね」

 これは凄い、と目をキラキラさせているミルトンさんを見ていると、それだけで本当に凄いものを発明した気になる。

 ま、発明したのは元の世界の人で、俺はそのアイデアを流用しているだけなんだけどさ。

 「それから、こちらが洗濯機、というものです」

 ついでに洗濯機も見せてみる。

 「こうやってですね、この中に洗濯物を入れて蓋をします。それから洗剤を入れてこちらのノブを回すと勝手に洗ってくれます。それで、洗い終わると水気を切ってくれるので、そのまま干す事ができます」

 「これも魔石、ですよね?」

 「はい、でもそれほど使いませんよ。液体洗剤は俺が作ったものですが、こちらもこの小さなカップ1杯分が1回分になります」

 ドラム缶半分くらいの大きさだから、結構たくさんの洗濯物を1度に洗う事ができる。

 「毎日洗濯しないで、2−3日分溜めてからでも十分です。その方が魔石も節約できますから」

 「でも魔石も安くはないですよね。こちらの魔石コンロであればレストランなどに売り込む事はできますけど、洗濯機はねぇ・・・」

 う〜ん、と顎に手を当てて考えているミルトンさん。

 「洗濯ってどうしても時間がかかるじゃないですか? 一家4人家族だとその分の洗濯をするために2時間から3時間はかかると教えてもらいました。でもこれがあればその分の時間を節約できるんです。その時間を内職に当てる事もできるし、パートの仕事を見つける事もできるかもしれないですよ」

 「でも、魔石を使うんでしたら、結局はパートや内職でお金を稼いでも魔石で収入が飛んじゃうんじゃないんですか?」

 一家4人家族の1ヶ月の生活費は、20000ドランくらいあればやっていけるらしい。

 でも、だ。魔石の値段は1個が大体2000ドラン。パートや内職で手に入れる事ができる収入は2500から3000ドランっていう話だから、確かに魔石でぶっ飛んでしまう事になる。

 とはいえ、俺にはそれを解消するための秘密兵器があるんだよ、ふっふっふ。

 





 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @17:25CT 誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

熱さないからそ魔石の魔力を → 熱さないからこそ魔石の魔力を

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