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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 鉱山で、変なの見つけた
116/345

115.

 俺は引き車の裏で気持ちよく風呂に入った。

 ケットシー、もとい、ジャックにも入るかと聞いたんだけどさ、水になんか浸かれるかっ! と噛みつかれた。

 ま、いいんだよ、風呂の良さを知らないからそんな事をいうんだしな。

 そのうちミリーに命令させて入らせてもいいしな、ふはははは。

 さて、今夜の寝場所は、俺とミリーは引き車の中、ジャックはシェードの下に広げたシートの上の寝袋、と決まった。

 理由は言わずもがな、ミリーだ。

 まぁジャックも判っていたんだろう、文句も言わずに素直に頷いていた。

 いろいろあって疲れていたミリーは俺が風呂に入っている間に寝た、とスミレから聞いている。

 ケットシーも俺が風呂に入っている間に寝袋に入って寝たようだ。

 『コータ様は寝ないんですか?』

 「ん? まだ眠くないからな。なんかちょいちょいっと作りながら眠くなるのを待つよ」

 『そんな事を言って熱中すると寝損ねますよ』

 「うっ」

 痛いところを付いてくるスミレ。

 「まぁ、そうなりそうだったら止めてくれよ」

 「それより、探索範囲に何も引っかからないのか?」

 『あ〜・・・それが3つほど・・・』

 「なんだよ。早く言ってくれればいいのに」

 目を逸らしながら答えるスミレ。

 『ここまで近づくのにもう少しかかりそうなので、それまではのんびりしていただこうかと思ってました』

 「ふぅ〜ん」

 まあ、そういう事にしておこうか。

 「そういやさ、スミレ。錬金術って知ってるか?」

 『錬金術ですか? 知ってますよ』

 「さっきジャックと話していたんだけど、俺のこのスキルって錬金術みたいなんだってさ」

 「ああ・・・・そうですね、錬金術と全く同じ事ができるとは言いませんが、魔法陣を使うところや材料を投入して物を作るという点では、似通っていると言えますね」

 それがどうした、という目を向けてくるスミレ。

 「じゃあさ、錬金術師のギルド、なんていうのもあるのか?」

 『どうでしょう? ちょっと検索します・・・・検索終了しました。はい、ありますね。でもとてもマイナーなギルドみたいですよ』

 「えっ、なんで?」

 物を作り出す錬金術がなんでマイナーなんだ?

 『それはですね、錬金術は作れるのではないか、という理論はたくさん立てられているのですが、実際に作られている物は少ないんです。それに錬金術をスキルとして持っている人の数が少ない事も理由ですね』

 「錬金術って、スキルなんだ?」

 『当たり前ですよ。何もないところから材料だけで物を作り出すなんてスキルを使わない限り無理です』

 ああ、そう言われたらそうだよな。

 生産ギルドでも物を作るけど、それってちゃんとした作成のための設計図みたいなのを使うもんな。

 「じゃあ、錬金術師ってどうやって物を作っているんだ?」

 『スキルを使って魔法陣を書き上げて、その上に材料となる物を載せるんです。それからそこに魔力を通せば魔法陣に描いた物が作れる、という事になってますけど、実際はその魔法陣が難しいようですね。それに材料を全て揃えるにしてもすでに既存の物であればまだしも、そうでない物はその材料を確定する事が難しいようです』

 「あれ? でもさ、魔法陣って生産ギルドに出した物にも使ってるじゃん?」

 『それは魔法陣違いというか・・そうですね、コータ様の元の世界の知識で説明するとすれば、生産ギルドに提出した魔法陣は電気回路だと思ってくださると判りやすいかと。魔力の進む方向を定めてやる事で作り上げた物が動く、という感じです。ですが錬金術で使う魔法陣は、与えられた材料を分解してそれを1から組み立てて元の物とは全く違う物を作り上げるための物です。ですから、少しでも魔法陣に書かれている術式の方向性が違っていたら成功はしません』

 ああ、そういう事か。

 「じゃあさ、俺のスキルで作る物って、ある意味錬金術と言える、って事か」

 『そうですね。特に最初の頃に作った物はそう言えるでしょうね』

 だよなぁ〜。なんせ最初の頃は俺の魔力を足りない材料代わりに使う事が多かったもんな。

 「それじゃあさ、錬金術でポーションとか作れる?」

 『作れますよ。初級ポーションであれば、錬金術で作って売っている錬金術師もいますから』

 なるほど。

 「じゃあさ、薬師ギルドに登録しないで錬金術師ギルドに登録してポーションを作って売るって事もできるって事かな?」

 『そうですね・・・可能です。ただ、現段階ではポーションの魔法陣は初級までしか解明されていませんので、中級以上を作って売れば目をつけられる事もありますね』

 「ああ、そっか」

 これから先、錬金術じゃないと説明できないような物を作る事もあるかもしれないから、薬師ギルドと錬金術師ギルドの両方に登録するよりはまとめて錬金術師ギルドだけって思ったんだけどな。

 『コータ様が生産ギルドに提出する特許申請するような物は、どのみちブラックボックス化する予定なんですから、無理に錬金術師ギルドに入る事はないですよ?』

 「それもそっか・・・そう言われたらそうだよな」

 そっか、ブラックボックスの中身だといえばいいのか。

 確かにそう言われると気にする必要はない気がしてきた。

 『それより、きましたよ』

 「えっ?」

 『男が3人ですね』

 「ああ、どうせ魔輝石を狙ってんだろ?」

 『おそらく』

 「結界は?」

 『パンジーの引き車を中心に直径20メートルにしてあります』

 あまり広げるな、って言ったからな。

 って事は10メートルくらいまでは近づけるって事か。

 「ん〜、あんまり騒ぎたくないから、まだ間に合うなら30メートルにできるかな?」

 『はい、すぐに変更します・・・変更終了しました』

 「ありがと」

 俺はポーチからパチンコを取り出した。

 『仕留めますか?』

 「いやいやいやいや、さすがにそれはマズいだろ? 脅すだけだよ」

 そのためにさっきおニューの弾を作ったんだからさ。

 「それよりも新しい俺のパチンコ弾、試させてくれよ」

 『そういえばさっき作ってましたね?』

 「うん、ちょっと面白いのを作ってみたんだよね〜」

 へっへっへ、ちょ〜っと楽しみだよ、スミレが作ってくれた魔法陣付きの鏃やパチンコ弾からヒントを得たんだよな。

 ここから15メートルなら、俺でも十分狙える。

 とりあえず焚き火は残しておく。ってか元々来るんじゃないかなって事で、焚き火は少し離れた場所にある。   

 丁度結界と引き車の間くらい?

 『結界から10メートルまで近づきました。1人は左に移動しています』

 「正面からは2人って事か」

 『いいえ、正面の2人のうち1人はその場に止まりましたから、正面から1人、左から1人、もう1人は後衛から2人をサポートするつもりなんでしょうね』

 「近づいてくる2人の武器は?」

 『正面は双剣、左は片手剣ですね』

 な〜んかベタだなぁ。

 「飛び道具とかって持ってないのかな?」

 『後衛が弓を持ってますけど、この暗さですからね。よほど腕が良くなければ脅威にはなりません』

 「んじゃ、結界にぶち当たったところを狙うかな」

 まずは、っと、これにするか。

 俺は黄色っぽい色の弾を選ぶと、それをパチンコにセットしてグッと引く。

 隠れているつもりだけど、草の高さが低い辺りを選んだからあんまりうまく隠れてない。

 それでも頭を下げて前に進んでいる正面の男が結界にぶつかったみたいで、その拍子に頭をあげた。

 そのタイミングで俺は弾を射出する。

 「うがががががっ」

 変な声が聞こえたけど、気にしない。

 『コータ様、あれ、電気ですか?』

 「ん? 雷をイメージして作った。電気ショックだな、うん」

 一応弾が当たったら5秒間電気ショックを与える術式を刻んどいた。

 「んじゃあ、次は左の男、って事で・・・こいつにしよう」

 俺は茶色っぽい色の弾を選んでセットする。

 左からやってきていた男は、正面の男の変な声が聞こえたようでかなり警戒しているけど、それでもあきらめるつもりはないらしい。

 ゆっくりと近づいて、結界に気づいたようだ。手を伸ばして結界の位置を確認している。

 俺はそんな男めがけてパチンコ弾を飛ばした。

 「うげっ」

 パチンコ弾は頭に当たらずに肩の辺りに当たったみたいだけど、それでも十分だ。

 弾が当たった瞬間に男は茶色いものに包まれた。

 『コータ様、あれは?』

 「あれ? 粘着性のある泥だね。ほら、この前沼でアメーバを集めただろ? あの時のアメーバってネバネバした感じだったじゃん。あれをイメージしてみた」

 肩に当たってラッキーだったんだよ。だって顔だったら、ネバネバが取れなくて窒息していたかもしれないもんな。

 なんていうの? ねば〜っと糸を引く茶色を必死になって取り除こうとして手を振り回している。

 もう俺に見つかるかも、なんていう事は頭にないんだろうな。

 電気ショックを受けたヤツは、四つん這いになって後ろに下がっていくのが見える。

 そのケツの部分が濡れているのは、きっとあれだな、電気ショックの衝撃で漏らしたんだな。

 「じゃあ、次は後ろに残ってたヤツだな。どれにしようかなぁ?」

 『コータ様』

 「ん?」

 『お楽しみのところ申し訳ありませんが、彼はとっくに逃げて行きましたよ』

 「えっ? マジ?」

 仲間を置いて逃げ出したのかよ。

 「つまんねえなぁ・・・でも、あとで合流したらきっと仲間割れだな」

 『そうでしょうね。他の2人の窮地を助ける事もなく逃げたんですから』

 「じゃあ、もう今夜は来ないかな?」

 『来ないでしょうね』

 「ちぇっ、試し撃ち、したかったのに」

 スミレの返事を聞いて、俺はせっかく選んだ黒い弾を弾用の袋に戻した。

 『それは?』

 「ん〜・・・内緒」

 使って見せてからのお楽しみに決まってんじゃん。

 俺はにっこりと笑ってから、弾の入った袋をポーチにしまったのだった。







 読んでくださって、ありがとうございました。


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