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異世界で、のんびり趣味に走りたい  作者: チカ.G
都市ケートン ー 鉱山に行こう
103/345

102.

 そのまま寝てしまったミリーを俺の布団に寝かせてやってから、俺はその隣にもう1組の布団を並べた。

 なかなか目を覚まさなかった俺の事が心配でずっと気が張っていたんだろう、とスミレが言っていた。

 時間にしてみればほんの数時間だけど、ミリーにとっては丸1日かそれ以上に感じたんじゃないかな。

 そんな俺が目を覚ましたのは午後の1時ごろで、ここに落ち着いたのはまだ午後の2時、元の世界で言えば午後2時半くらいだ。

 それから少し話はしたものの、それでも午後3時くらいには俺も布団に横になっていたと思う。

 俺もミリーもいろいろありすぎて疲れていたせいか、その日はそのまま寝てしまった。

 結局目を覚ましたのは翌日の午前4時だった。

 





 目を覚ました俺がまず見たのは石壁とその天井だった。

 ぼんやりとした灯りがあるのはランタンだろう。

 ゆっくりと上体を起こしてから周囲を見回すと、隣の布団でミリーが丸くなって寝ているのが見える。

 『起きられましたか?』

 「スミレ? 俺、どのくらい寝てた?」

 『10時間ちょっとでしょうか? まだ早いですよ、今は朝の4時前ですね』

 「まるまる半日かよ・・・まぁ、いろいろあったからな」

 ホント、いろいろありすぎたよ。

 『そうですね。身体の調子はどうですか?』

 「ん〜・・・まだ疲れた感じはするけど、ふくらはぎに痛みはないかな?」

 『体力回復ポーションを飲まれますか?』

 「えぇ・・・あれ、不味いんだよなぁ」

 『でも今日移動ですから、もう少し体力を回復しておいた方がいいと思いますよ?』

 もっともなスミレのセリフに、俺は思わず顔をしかめる。

 「朝飯食ったら、な」

 『その前の方がいいんじゃないんですか? 朝ごはんで口直しできますよ』

 「・・・・はい」

 どう考えてもスミレに口で勝てる訳がない。

 俺はしぶしぶポーチから体力回復ポーションを取り出す。

 「でもさ、その前にお茶もあると嬉しいな、なんて思うんだけどさ」

 『そうですね、魔石コンロでお湯を沸かしますか?』

 「うん、お茶の準備ができてからポーションを飲むよ。じゃないと朝飯まで待てない」

 痺れる感じがするんだよ。渋いっていうのかな、その渋さが舌に残るんだ。

 俺はよいしょ、っと言いながら立ち上がり昨日出していた魔石コンロの前に立つと、ポーチから取り出したヤカンに水筒の水を入れて火をつけた。

 と言っても火は出ないんだよ、これ。電気コンロをイメージして作ったんで、つるっとした表面に大きめの丸と小さめの丸が全部で4個付いている。そこに鍋やヤカンをおけば熱を発するようになってて、その熱で調理ができるって訳だ。

 しかも、丸以外の部分は熱くならないから子供でも安全だよ、って当たり前なんだけどさ。

 でもこの世界じゃあ大小さまざまだったけどかまどくらいしか見た事ない。ボン爺のところなんか囲炉裏で飯を作ってたもんなぁ。

 だからきっと売れるんじゃないか、と俺は狙ってる訳だ。

 この設計図は提出してあるけど熱を発生する部分の魔方陣はブラックボックス化する予定で、その部品だけは俺が作るって事で話を進める予定なんだよな。

 だから丸々収入になるって事じゃないけど、ブラックボックス化した魔方陣と作成して売る時の特許料みたいなものは入るみたいだから、それでウハウハになる予定だ。

 「あっ・・・」

 そんな事を考えて、思い出した。

 『コータ様、どうかしましたか?』

 「忘れてた・・・」

 『何を?』

 「生産ギルドの人に製品を見せるって話をしてたのに、見せる事を忘れてここに来ちまった・・・」

 そういやお互いの都合のいい日に実物である魔石コンロと魔石洗濯機を見せるつもりだったのに、すっかり頭から抜け落ちてたよ。

 『帰ってから改めて見せればいいんじゃないんですか?』

 「ん〜・・・まぁ、それしかないよな」

 っと、お湯が湧いてきたぞ。

 俺はポーチからお茶っ葉の入った小袋と木製のマグカップを取り出した。

 それから茶漉しだな。この茶漉しはこだわって作らせてもらったよ。この世界のレベルだと茶漉しは大きな葉っぱくらいしか漉してくれないようなものしかなかったんだ。それにこのお茶用の茶漉しは深めに作ってあって、カップの半分くらいまでの深さがある。これはお茶のためだけの逸品だ。

 カップに茶漉しをセットして、その中にお茶っ葉を入れる。

 このお茶っ葉はジャンダ村にいた頃に作ったものだ。

 コポコポと音を立ててお湯を注ぐ。

 残ったお湯はそのまま魔石コンロに戻してからノブを回して保温にする。

 これならミリーが起きたら彼女もお茶を飲めるだろう。

 『それで、ミリーちゃんが起きたらどうしますか?』

 「帰るんだろ? 依頼に必要な闇纏苔やみまといごけの採取も終わらせてるから、これ以上ここにいる必要はないしな。ただまぁ、ダッドさんにアレの事は報告しておいた方がいいだろうな。そういや、アレ、見つけたのか?」

 『いいえ、コータ様とミリーちゃんが眠られてからこの鉱山内にある坑道をできる範囲で全て探索しましたが見つかりませんでした』

 「魔力探索じゃないんだろ?」

 『もちろんです。魔力を除外して動くもの、と設定してから探索しました』

 なるほど、それでも見つけられなかったのか。

 って事は、アレは1体しかいない突然変異なのか?

 『ただし、私の探索範囲は限られていますから、その範囲外に関しては探索はできていません』

 「それって、どのくらいの範囲が残ってる?」

 『それほどでは・・・そうですね、恐らくは20パーセントくらいでしょうか?』

 う〜ん、2割かぁ・・・結構残ってるもんだなぁ。

 「それ、どの辺になる? 鉱夫が入っている地域になるんだろ?」

 『はい、ですが、そうですね・・・ここから2時間ほど深部に降りていけば、残りの20パーセントの部分も探索をする事ができると思います』

 「それってさ、邪魔になると思うか?」

 『多分大丈夫ではないか、と。深部にはなりますが、私たちが通る坑道は比較的古いものを選ぶようにしますので、そうすれば鉱夫達の作業の邪魔にはならないと思います』

 「う〜〜ん・・・帰りたいなぁ。でもこのままほったらかして帰るっていうのもなぁ・・・」

 探索できるのにしないで帰るっていうの後味が悪いんだよなぁ。

 「まぁ、ミリーが起きたら朝飯食いながら話してみるか」

 『そうですね、ミリーちゃんがどうしたいかを聞いてみるのもいいと思いますね』

 とりあえず俺は入れたお茶を1口飲んだ。

 うん、うまい。

 『コータ様、ポーション、忘れないでくださいね』

 「わ、判ってるって。これから飲むんだよ」

 ホントはすっかり忘れてたんだけどさ。

 でもお茶の味見くらいはさせて欲しいよ。






 朝食は平べったいナンみたいなパンに簡単スープ。それに肉が大好きなミリーのためにチンパラの肉を2切れほど彼女の分だけ炙っておいた。

 「おいしい、ね」

 「そうか、ちゃんと食えよ。昨日はご飯どころじゃなかったもんな」

 「うん」

 ニコニコと炙った肉を齧っているミリーを見て、肉を用意しておいて良かったな、うん。

 「んじゃあ、もう少し坑道をうろつくって事でいいんだな?」

 「いいよ。スミレのお仕事、なんでしょ?」

 「うん、まぁ、そうだな」

 今朝ミリーが起きる前にスミレと話しあった事をそのままミリーに伝えたんだが、どこをどう捻ったのかスミレの仕事という事になってしまっている。

 まぁ、ミリーに文句がないんなら、今日1日くらいは頑張れる・・・・多分な。

 「でも最低でも2時間は奥に潜るんだぞ?」

 「だいじょぶ、だよ? 歩ける、もん。わたしより、コータ、歩ける?」

 「なんだと」

 俺の方が体力がないって言いたいのかな、ミリーは。

 「コータ、昨日、けがした、でしょ? 足、だいじょぶ?」

 「お? ああ、足か。うん、もう痛くないぞ。ミリーが治してくれたおかげだな」

 「えへへへ」

 思わず穿って考えてしまった自分を反省してミリーの頭を撫でて褒めてやると、照れ臭そうにしながらも頭を撫でられて嬉しそうだ。

 「んじゃついでに少し鉱石も集めたいな」

 『これから行く坑道はまだ発掘量もそれなりにある坑道ですから集められますよ』

 「そっか、んじゃ、その辺もついでに探索してくれるかな?」

 『はい、お任せください』

 自力で少し集めて手元に置いておけばまた何か作る時に使えるからな。

 それを使ってものを作ればスキルのレベルアップにも繋がる、筈だ。

 「コータ、何か作る?」

 「ん? まぁ一応な、いろいろと作ってみたいもんはあるんだよ。だから、帰り道で野営している時に何か作ってもいいな」

 「わたしも、作れる?」

 「ミリーも作りたいのか?」

 「うん」

 「何を作りたいんだ?」

 「えっとね・・・・えっと・・・わかんない」

 キラキラさせていた目は作りたいものを考えつけなくて、そのまましょぼんとした輝きになってしまう。

 特にこれといった作りたいものはないんだろう。

 多分、俺とスミレがものを作っているから、同じような事をしたいだけなんだろうな。

 「んじゃ、俺やスミレが作る時に手伝ってくれるかな?」

 「おてつだい?」

 「ほら、この前も手伝ってくれただろ? 材料を動かしたり、集めたり、出来上がったものを移動させたり、とかさ」

 「うん、それなら、わたしでも、できるかな?」

 「もちろんさ、すごく助かったんだぞ。そうだよな、スミレ」

 『はい、ミリーちゃんが手伝ってくれたおかげで、すごく楽でしたよ』

 「そか・・・じゃ、おてつだい、するね」

 俺とスミレに褒められて嬉しそうに頷くミリーを見て、俺とスミレは思わず笑みを浮かべる。

 「ミリーも何か作りたいものがあればいつでも言えよ。一緒に作ろうな」

 「うん」

 『ミリーちゃんの新しい服も作りましょうか』

 「・・いいの?」

 『もちろんですよ。じゃあ、最初の野営の夜にでもどんな服にするか決めましょうね。材料があればすぐに作れるし、なくても次の野営地に行くまでに集めればその時に作れますからね』

 新しい服、と言われてすこしだけそわそわしてスミレを見上げる。

 やっぱり女の子だ、新しい服は嬉しいんだな。

 そんなところに気が利かなかったのが申し訳なく感じてしまう。

 スミレがいてくれて良かったよ。

 俺はそんな事を思いながら、朝飯を食べつつ2人の話を聞いていた。






 読んでくださって、ありがとうございました。


 お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。


Edited 05/07/2017 @ 13:59  誤字のご指摘をいただいたので訂正しました。ありがとうございました。

コポコピと音を立ててお湯を注ぐ → コポコポと音を立ててお湯を注ぐ

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