100.
ついに100話になりました。
ここまで毎日投稿できたのは、読んでくださっているみなさまのおかげです。感想や評価、それにレビューと、本当に嬉しいですね〜〜♫ 本当にありがとうございます。
ここでお礼に〜〜・・・って言えるといいのですが、なんせ今でも毎日1話であっぷあっぷしています。
これからも毎日頑張る、という事でご了承ください。m(_ _)m
「コータッッッ!」
『コータ様っっ!』
その場に倒れかけた俺は、それでもなんとかバランスを取り戻して転倒する事もなく、左足を引き摺りながら2人が待っている方に向かった。
ズゥゥッン
結界からスミレたちのところに向かう半分くらいのところで背後から大きな爆発音が聞こえた。
どうやらダイナマイトに点火した火は消えなかったみたいだ。
その音で気が抜けたのか、俺はその場にへたり込んでしまう。
早くスミレやミリーのところに戻らないといけないって判ってるのに足が動かないんだよ。
激痛が走った左ふくらはぎは今もまるで焼きごてを当てられたかのように熱くて痛みが酷い。
一体何が起こったんだろう?
「コータッッ!」
『コータ様っっ!』
へたり込んで足を前に投げ出した俺の肩をミリーが掴んだ。
顔をあげると俺の真ん前で泣きそうな顔のスミレが飛んでいる。
それを見て安心させるように笑みを浮かべた後、それ以上目を開けていられなくて閉じてしまう。
「よぉ・・・」
「だいじょぶ?」
「ん〜・・・足が、な。でも何が起きたかさっぱり判んねえよ」
重い腕をあげて左ふくらはぎを指差した。
ハッと息を飲むミリー。
俺は閉じていた目を開けて左ふくらはぎを見ると、そこはズボンがあるから中の足は見えないけど、そのズボンは俺の血で赤黒く濡れている。
「あれ・・結構血が出てんなぁ・・・」
『ミリーちゃん、ナイフでコータ様のズボンを切ってくださいっ』
「わかったっっ」
解体用のナイフを手にミリーは俺の足にナイフの刃が触れないように気をつけながら膝から下のズボンを切り取る。
『このタオルに水をかけて血を拭いてください、できますか?』
「うん、できる」
ミリーは腰にぶら下げていた小さな水筒の水をスミレから受け取ったタオルにかけ、それを絞る事もなく俺のふくらはぎに当てて擦った。
「ぅうっ・・・」
一瞬激痛が走って小さく呻いてしまったものの、必死になっているミリーには聞こえなかったみたいで彼女はただひたすら血を拭き取る作業をしている。
「スミレ・・・結界は大、丈夫か?」
『はい、大丈夫です』
「アレ、まだいるかも、しれないからさ・・・ちゃんと見ててくれ、よ?」
『もちろんです』
俺だけなら仕方ないって思えるけど、スミレとミリーがいると思うとそんな事思っていられない。
「スミレ、できた」
『ありがとう、ミリーちゃん。では傷口のスキャンと状態チェックをします』
俺はスミレのそんな声を聞きながら、その場に寝転んだ。
もう上体を起こしている事も苦痛だったんだよ。
閉じている瞼が少しだけ光を感じた。って事は、スミレが陣を展開してスキャンを始めたんだな。
『スキャン終了しました。これから傷口の成分解析に取り掛かります』
「スミレ・・・」
『そんなに心配しなくてもコータ様は大丈夫ですよ』
不安そうなミリーの声。
ああ、そんなに心配かけるつもりはなかったんだけどなぁ・・・
手を上げて頭を撫でてやりたいが、今の俺にはそれだけの気力も残ってない。
『解析終了しました。どうやら毒が含まれていたようですね』
「どく・・・コータ、だいじょぶ?」
今もまだ俺の左ふくらはぎのそばにいるのか、彼女の声はその辺りから聞こえてくる。
「コータ…おと、さん、みたいに、なる?」
『ミリーちゃん・・』
泣きそうなミリーの声に、スミレはどう返事をしていいのか判らないようだ。
「だめ、コータ・・・おと、さん、みたいに、なったら・・わたし・・」
スミレが何も言わないって事は、俺の足の毒はどうしようもないって事なんだろうか。
それとも目を閉じて見えていないだけで、何かしているんだろうか?
「コータッ」
「うぐぐぐぁああっっ!」
ぎゅっと傷口を握られた。
多分、ミリーだろう。
デカい呻き声が俺の口から出たけど、身体を動かして逃げる事もできない。
『ミリーちゃん?』
「コータ、わたし、助ける、の」
更に強く握りしめてくるミリーとスミレが話している声が聞こえる気がする。
もともと熱く熱を持っているようだった俺の左ふくらはぎが、ふと熱いのではなく温かく感じるようになってきた。
あれ、おかしいな?
なんであったかいんだろう?
それが俺が気を失う前に思った事だった。
バシャッッ
そんな水音と同時に顔に水がかけられて、俺は意識を取り戻した。
『ミリーちゃん、コータ様がずぶ濡れですよ』
「ごめんね、スミレ。転けちゃった、の」
『もう少し明るくした方がいいですか?』
「ううん、だいじょぶ。ちゃんと足元見てなかっただけ」
どうやらわざと俺の顔に水をかけた訳じゃないらしい。
てっきり寝ている俺を起こすために水をかけたのかと思ったよ。
水を拭こうと腕を上げかけたものの、重くて持ち上げられない。
いったいどうなっているんだ、俺?
仕方ないからせめて目を開けようと思ったものの、瞼も重いぞ?
『このタオルで拭いてあげてくださいね』
「わかった」
ふわっとタオルが顔にかけられてビックリしたが、すぐにミリーがタオルを動かしてゆっくりと俺の顔や首元を拭いてくれる。
「スミレ、服、どうしよう・・濡れてる、よ?」
『大丈夫でしょう。熱があったんですから、冷えて丁度いいかもしれませんよ』
「そ、かな?」
『そうですよ』
おい、おまえら。熱があったんだったら濡れたままだと風邪引くかもしれないだろ。
あれ、でもなんで熱があったんだ?
ペチャっと音を立てて今度は濡れたタオルが額に乗せられた。
キチンと絞ってないみたいで、額からこめかみを伝って絞りきれていない水が流れるのを感じる。
俺は気力でなんとか重たい瞼を持ち上げた。
薄暗いそこは旧坑道の中だという事を教えてくれる。
なんで旧坑道なんかで俺は寝てるんだ?
何があった? 考えろ、俺。
ここには闇纏苔を取りに来たんだったよな。確か10株取れたからその晩にポーションを作ってみたんだっけ。
それからどうした?
ああ、そうだ。次の日、どうするかって話になって、スミレが特級ポーションの材料になるルミネリアムとかっていうのを探しに行く事にしたんだった。
でも途中にゴキが出まくって俺は泣きそうになってたんだよ。
じゃあ、俺はゴキにやられたのか? 情けねエェ。
あれ? ゴキは仕留めたぞ?
じゃあ、なんだ?
俺はそのあとの事を思い出そうと記憶を辿るために、眠りそうになる脳みそを蹴っ飛ばす事を想像した時、左ふくらはぎに痛みが走った。
「あぅっ」
思わず小さな呻き声が口から漏れた。
と同時に、その痛みの原因となったアレの事が頭に蘇る。
途端にガバッと起き上がろうとして・・・少ししか動けなかった。
「コータ?」
『コータ様?』
上半身がほんの数センチ起き上がっただけで、俺はまた地面に背中を押し付けた。
「よぉ・・・」
「コータッッ!」
「ミっぐえぇっっ!」
痛いっっっ!
痛いぞっっっ!
おまけに苦しいぞっっっ!
ミリーに声をかけようとした俺の上に飛び込んできたミリーがそのまま俺の首にしがみつく。
いつもであればやんわりと彼女の腕を緩める事ができる俺だが、今はあまりにも力がなくてミリーにしがみつかれるままだ。
「ミリーっ、息っ、息っ」
息ができんっっ!
『ミリーちゃんっ、コータ様を絞め殺しちゃいますよっ』
「えっ?」
『コータ様、苦しそうです』
「あれ? えっと・・・ごめん、なさい」
慌てた声で制止の言葉をかけるスミレを見上げたミリーは、そのまま俺を見下ろして自分が俺を苦しめてた事に気づいて離れると小さな声で謝る。
でも、俺の上から降りようとしない。
「大丈夫・・・心配、したんだな」
「うんっ・・・コータ、ずっと起きなかった、よ」
「そっか、悪かった」
どうやら俺はダイナマイトをしかけた後、何かに攻撃されて左ふくらはぎに怪我をしたあとで気を失ったようだ。
俺は目線でスミレにどうなったのか尋ねる。
『コータ様は、ダイナマイトを仕掛けて導火線に火を付けるタイミングを測るため、アレが近づくのを待っていたんです。ただアレからの距離が近すぎたため、導火線に火をつけた時にアレの繊毛からの攻撃を受けました。あの繊毛は長さを変えるだけでなく、武器になるようですね。コータ様は左ふくらはぎを毒を持つ繊毛に貫かれたんです』
「毒・・? だからあれだけの痛みがあったのか?」
『はい、それと意識を失ったのもその毒のせいです。すぐにスキャン解析をしましたが、毒についてのデータが一切見つからず、私には手の打ちようがありませんでした』
なんとか名前だけは判ったけど、さすがにそれだけじゃあ大した情報にはならなかったのか。
「じゃあ、毒はどうしたんだ? 解毒したんだろ?」
確か解毒ポーションを作ったよな?
「わたしが、かけたの」
「ミリーが?」
『はい、コータ様がミリーちゃんにあげた解毒ポーションをミリーちゃんは繊毛に貫かれた穴に振りかけました』
「そっか…ミリーが助けてくれたのか」
『解毒についてはミリーちゃんの持っていたポーションでなんとかなりました。タイミング良く作っておいてよかったですね』
そう言われて、俺はピンク色のポーションを思い出す。
あれってたまたま手に入った闇纏苔の花があるかどうかを試すのと、ついでに作ってみただけってやつだったよな。
確かにラッキーだったよ。
「でも、あれは解毒ポーションだから、足の怪我はそのままだよなぁ・・・いつまでもこんなところにいられないし、どうするかなぁ・・・」
『左ふくらはぎ、ですか?』
「うん。むっちゃ痛かったんだよ。俺、歩ける気がしないぞ」
『もう治ってますよ』
『へっ・・?』
治ってる?
でもどうやって?
「わたし、なおした」
「ミリー・・・?」
『はい、ミリーちゃんが治しました』
治した、と言われて俺は上半身を起こして怪我の様子を見ようとしたけど、やっぱりうまく動かせない。
『コータ様、まずは体力回復ポーションを飲んでください。それから魔力回復ポーションも飲んでください』
「魔力回復ポーション?」
『はい、体力回復ポーションの方は、失血とミリーちゃんが無理やり傷を治したせいで必要です。魔力回復ポーションは、パラリウムの毒のせいですね。あの毒には麻痺毒の成分もありますが、どうやら急速に魔力を奪ってしまうもののようですね。つまり体を麻痺させて動けなくすると同時に魔力枯渇症状を起こし、それによって抵抗できなくなった獲物を仕留めるためのようです』
俺はミリーの手を借りてなんとか座る格好になると、そのまま手渡された体力回復ポーションと魔力回復ポーションをゆっくりと嚥下する。
少し渋い味のするポーションは後味が不味いが、それはミリーが渡してくれた水筒の水でなんとかする。
「ああ、ホントだ。ちょっとだけど気分が良くなった気がする」
そう言いながら俺は視線を左ふくらはぎに落とす。
そこは少し泥がついたりして汚れているものの、2センチくらいのピンク色の丸がついた肌だけが見える。
さっきの出血量を考えると変な話だ。
「本当に傷がない・・・」
「だから、わたしが、なおしたもん」
『その話はもう少し落ち着いて話ができる場所に移動してからでいいでしょう。ここはまだ坑道内ですから』
「あっ、そういや、アレ、どうなった?」
『なんとか無事に仕留める事ができたようです』
「ホントか?」
『はい、落石から染み出したアレの一部を保存してありますので、信じられないのであればお見せしますよ?』
「えっ・・・・染み出したアレ?」
なんか描写がグロいぞ。
「い、いや、いいよ。スミレが仕留めたって言うんだったら信じる」
『コータ様、ただ見たくないだけでは?』
「あ〜・・・ははは」
俺は視線を逸らして笑ってごまかすが。きっとスミレはごまかせてないだろうなぁ・・・ちぇっ。
でもまぁ、確かにいつまでもここにいたってしょうがない。
移動だ、移動。
読んでくださって、ありがとうございました。
お気に入り登録、ストーリー評価、文章評価、ありがとうございます。とても励みになってます。




