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9.

 気がつくと、あっという間に1週間は過ぎてしまった。

 初日はスミレに言われるまま、いろいろなものを作らされた。

 といってもまずはスキルに慣れるために、という事で何を作れるかを知るためにもナイフを数種類作らされた。

 おまけにその、初日の夕方、日が暮れかけてかなりバテてきた頃になって、夜過ごす場所がない事に気づいた俺がパニクると、スミレはにっこりと笑って俺に本日最後の作成といってテントとその中に入れるものたちを作らせた。

 テント、といっても日本で見た事があるような撥水性の生地のものじゃなくて、革製の1.5メートル四方のもので、外側はロウを塗って水を弾くようにしてあった。

 そしてテントで眠るための寝袋やカンテラも作らされた。 

 全てが出来上がった時には、俺はもうへろへろだった。

 あの夜は本当に良く眠れたなぁ。

 2日目は森に入ってキノコや木の実を摂ってきたものの、やっぱり肉が食いたいといった。

 とはいえさすがにナイフだけでは獲物は獲れないから、と罠を作った。

 そしてその獲物を入れるための袋を作った。

 おまけに獲物を料理するための鍋や焼き串も作った。

 七輪はその日の昼にキノコを焼くために作ってあったから、それで使えると思ってたからな。

 ま、結局は罠を仕掛けるだけの時間しかなくって、その日の夜も神様(カー⚪︎ルおじさん)が用意してくれた非常食が俺の食事だったんだけどな。

 2日目になんとかレベルが上がったって事で、スミレが張り切ってまたまた俺にいろいろなものを作らせた。

 それはもう本当にスパルタとしか言いようのない、鬼気迫るスミレ教官の指導のもと、頑張ったよ俺。

 それでも結局はレベル3にまで上がる事がなくって、スミレは俺がスクリーンを閉じた時に消えたんだけどさ、こればっかりは仕方ないと諦めてもらうしかない。

 俺はそんな感じでこの1週間の事を思い出しながら少し遠い目をしながらも、いらないものをウェストポーチに仕舞っていく。

 手元に残したのは腰のベルトに挿してあるナイフ、それに武器であるパチンコだった。

 パチンコ用の鉄の弾は多次元プリンターで100個ほど作ってあり、俺のポーチに入っている。他に練習用の小石も100個ほど拾ってポーチに入れてある。

 それなりに上達したと思うが、それでもまだまだ練習はした方がいいだろう。

 近距離にこられる前になんとかしなければいけないが、今の所これでなんとかなっているのだ。

 少ししょぼい武器だが、これが俺の装備なのだ。

 そしてどうして俺の武器がパチンコなのか、説明しよう。







 あれは、この世界にやってきて5日目の事だった。

 俺は意気揚々とナイフを手に持って、背後に広がる森に入っていった。

 神様(カー⚪︎ルおじさん)が結界の中には俺に敵意を持つものは入る事はできないと言っていたので、この辺りには俺が捕まえる事ができるウサギ程度しかいない。

 そう聞いていたから、俺は今夜の夕食のメインディッシュとして、ウサギの丸焼きを食べる予定なのだ。

 しかし、ウロウロ探し回って見つけたウサギはすばしっこくて、とてもじゃないが俺には捕まえる事はできなかった。

 仕方なく俺は森の中で見つけた木の実やベリーを集めて、それらをデザート代わりに食べながら、多次元プリンターを起動させたのだ。

 『今日は何を作成しましょうか?』

 スクリーンから出てきてにっこりと微笑みながら訪ねてくるスミレは、俺が憔悴している事には触れなかった。賢いヤツだ。

 「武器を作りたい」

 『武器、ですか? どのような武器を作られますか?』

 「なんでもいいよ。ウサギを捕まえる事ができる武器が欲しい」

 『ウサギ、ですか・・・そうですねぇ』

 ウサギかどうかは判らない。なんせ額に小鬼のような小さな角が生えている白いウサギなんて日本にはいなかった。

 アメリカに行けばジャックラビットなんていう鹿の角を生やしたウサギがいるそうだが、あれだって合成ウサギだから厳密には居るとは言えないのだ。

 『弓はどうでしょうか?』

 「弓? 当たると思うか?」

 『そうですね・・・ある程度練習をすれば、おそらく』

 「そんな時間ないだろ? ここにいるのは結界がある間の1週間だけだ。それが過ぎたらおれはとっとと近くの村に移動するよ」

 所詮俺にはサバイバル精神は無い。

 やっぱり少しは人がいないとな〜。

 今はこうしてここにスミレがいるけど、彼女だって俺がスキルを閉じたら姿を消してしまうんだよな。

 そうなるとやっぱり1人になってしまう。

 「拳銃なんかどうだ? 作れるか?」

 『無理ですね』

 「えっ、なんで?」

 『コータ様のレベルが足りません。今はまだ複雑な構造のものは作れません。特に内部構造が複雑なものはコータ様のレベルが3以上に上がるまでは無理です』

 つまり、ナイフみたいな見た目だけで判断できるものは作れるけれど、拳銃みたいな内部構造を加味して作らなければいけないものは、俺のレベルが低すぎて作れないって事か。

 ああ、だから弓なのか。

 あれも内部構造はないからな。

 ふ〜む、となると、俺には武器は持てない、という事か?

 「だったらさ、一体どんなものだったら俺のスキルで作れるんだ?」

 『そうですね、ちょっとライブラリーを検索してみます』

 スミレは俺に背中を向けて目の前に展開されているスクリーンに向き合うと、そのまま小さな手でスクリーンに触れながら何やら検索をしているようだ。

 と言っても、スクリーンの文字や写真は点滅するほどのスピードで変わっていくから、俺には彼女が何を見ているのかサッパリ判らない。

 そんな彼女を見ながら、俺はポーチから水の入った水筒を取り出して一口飲むと、そのまま背中から地面に寝転がった。

 てっきりなんでも作る事ができるんだと思っていたけど、現実はやっぱりそこまで甘くないって事か。

 「ちぇ〜、っかしいなぁ」

 俺は空を流れる雲を見上げながら小さくぼやく。

 神様(カー⚪︎ルおじさん)からスキルをもらったからにはなんでもできるんだって思ってたのに、実際はレベルとか制限があって思うようにいかない。

 おまけに身体能力も元の俺よりあげてくれている筈なのに、ウサギ1匹狩る事ができない。

 そりゃあ、元々の俺の身体能力を考えれば遥かにマシなんだけどさ。なんせ就職してからはデスクワークばっかりで、たいした運動なんてしてなかったからな。

 それでもちょっとは期待したわけだ。

 それにしてもレベル2、って言うのは上がってもまだまだ大した事ないんだな。

 内部構造があるものは作れないなんて、つまんないよ。

 と、そこまで考えて、ふと思い出した。既に内部構造があるものを作ってるんじゃね?

 俺は寝転んだままスミレの方に体を向けた

 「でもさ、スミレ。俺、カンテラ作ったよな。あれって簡素なものでも内部構造があるんじゃないのか?」

 『いいえ、あれは内部構造とは言いません。コータ様が作られたのはカンテラの形状をしたもの、です。その中に入れる光の玉は別にコータ様の魔力を使って作り上げ、それをカンテラ内に固定しただけですから』

 「そっか・・・そういや別々に作らされたよな、あれ」

 『光の玉も一晩使えばそれっきりです』

 「うん、確かにそうだった」

 あの光の玉って、ロウソクみたいなもんだもんな。

 『けれど、レベルが上がっていけば、オンオフ・スイッチのついたカンテラを作れるようになりますよ』

 「そうか? ふぅん・・・じゃあさ、どうやったらスキルのレベルを上げる事ができるんだ?」

 『それは簡単です。とにかく物を作って作って作りまくるんです』

 「そ・・そっか・・・」

 まだまだものを作らなくちゃレベルが上がらないのか。

 俺ががっくりとその場に力なく寝転がる。

 あ〜・・・一体いつになったら俺はものを作って楽しめるようになるんだろう。







 『こちらがコータ様が作る事ができる武器のリストです』

 しばらくゴロゴロをしている俺に、スミレが声をかけてきた。

 俺が上半身だけを起こして、這いずるようにしてスミレのところに行く。

 『コータ様のレベルで作れるものはそれほど種類はありませんでした』

 申し訳ありません、と頭を下げるスミレに気にするなと軽く手を振ってから、俺はスクリーンを覗き込んだ。

 「なになに・・・槍に短剣、日本刀・・・これはヌンチャクか? こっちは・・ナタ? これは、包丁か? それに手裏剣もあるのかよ。どうしろって言うんだよ、手裏剣なんて使えないよ。それになんだよ、このでっかい剣は」

 スミレが済まなさそうに種類がないと言っていたが、それでもそれなりに種類はあった。

 まぁ使えるかどうか、は別の話だ。

 「槍とかが無難なんだろうけど、俺に使えるかなぁ・・・直接手をかけるっていうのは、なぁ・・・俺にできるのか?」

 現代日本で生まれ育った俺にとって、肉は肉屋で買うものだ。それを自力でなんとかしようと考えているわけだが、槍や剣で突き刺して殺せるのだろうか?

 「死んだ獲物だったらなんとか捌く事はできるだろうけどなぁ・・・」

 今朝は嬉々としてウサギを狩るんだ、と張り切って出かけたが、おそらくウサギを殺す機会はあっても殺せなかった気がしてくる。

 きっと俺のそんなヘタレな気持ちがウサギをかる事ができなかった一番の理由かもしれない。

 「う〜ん・・・そうだなぁ・・・おっ、スミレ、それ」

 腕を組んで悩みながらもスクリーンを見ていると、俺の視界に引っかかるものがあった。

 『こちら、ですか? これはスリング・ショット・・・もしくはパチンコとも呼ばれるものですね』

 「パチンコ、かぁ・・・懐かしいなぁ」

 そういや小さい頃じいちゃん家に行った時によく遊んだっけ。

 じいちゃんが無用な殺生はするな、というので的に使ったのはおもちゃ箱の中にあった5センチくらいの高さの兵隊さんのフィギュアだった。

 じいちゃんと2人で縁側から庭に置かれている植木用のベンチに並べられた兵隊を倒し合う競争をしていたものだ。

 「あれ、作れるか?」

 『スリング・ショット、ですか?』

 「うん、でもパチンコって言って。じいちゃんがそう言ってたからさ。スリングって言われると違和感があるんだ。で、あれってちっちゃい頃、じいちゃんに手ほどきを受けた事があるんだ。だから多分、使える」

 『判りました・・・では早速プランニングを始めましょう』

 俺はスクリーンの前に胡座をかいて座ると、ワクワクしながらスミレにどんなパチンコが欲しいのかを伝えたのだった。










 そうして作られたパチンコは、俺が思っていた以上の威力を発揮した。

 試しに狙ったウサギは一撃だった。

 俺は自分の腕が鈍ってなかった事にホッとするよりも、その威力にドン引いていたのだった。

 だってさ、ウサギがドゴンって吹っ飛んで行ったんだよ。後ろの木に当たって止まったけど、弾がウサギの皮と一緒にめり込んでいたから、木からウサギを取り外すにもちょっと大変だった。

 そのあとの解体は、まぁ・・・慣れるしかない、と思ったと言っておこう。

 今の俺のレベルではただの鉄の弾しか作れないが、スミレの話ではレベルが上がればさらに強力で大きな弾や破裂する弾も作れるようになるそうだ。

 破裂ってなんだよ、むっちゃ怖いじゃん。

 それを聞いた時はちょっと引いてしまったが、いざという時に身を守るための手段が増えたと思う事にした。

 それでもパチンコで初めてウサギを狩る事ができた時、俺は思わず雄叫びをあげたのだった。






読んでくださって、ありがとうございました。


Edited 01/27/2017 @ 19:12 レベル2をレベル1と書いていると指摘をいただいたので訂正しました。

              教えてくださった読者様、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
実際にはこの時点で銃は作れるはず。 ただ話との整合性を取るなら、本人が構造を知っている訳では無いのと実際に3Dプリントの経験が無い事、神様も3Dプリントに精通している訳では無いから、スミレも発想出来な…
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