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名もなき村の領地開発  作者: スズヨシ
第一章 やっぱり準備は大事(1年目8歳)
8/25

第一章 04.5話

04話後半戦となります。

よろしくお願いします。

 ――昼食後。


 ん~、おかしい……。

 無意識だと感性が幼くなっているのか、最近どうにも子供っぽい態度が多いような気がする。

 この身体になる前までは年齢相応の自制もできていた。

 何か影響が出ているのだろうか?

 

 ユキさんからの“ハーレムつくっちゃいなよ”の衝撃から一時間、落ち着いた俺は考えていた。

 獣人の件然り、大人の時よりも感受性が鋭くなっているんではないかと思ったからだ。

 行動が完全に子供で、いい大人じゃなくても白い目で見られた。

 ……ユキさんは楽しんでいたが。




 時間なのかアキが呼びに来たので、考えは頭の片隅に追いやり移動することにする。

 先ほどの一件もあり友達に引き合わせるのが心配なのか、アキはチラチラとこちらを気にしていた。

 もう大丈夫だよ。と微笑んだら安心したのか、いつもの笑顔に戻り胸をなでおろしていた。

 ――悪いことしたな。

 獣耳や尻尾について思うところはあったが、今日は自重し、長期計画に切り替えることにした。


 場所は併設されている集会場だったので一分もかからなかった。

 部屋に入ると、女の子四人と男の子一人が待っていた。

 女の子は円になって話をしていたらしく、俺の姿を見ると一斉にこちらを向いた。

 ただ一人、男の子だけが一瞥をくれただけだったが。


(俺、何かしたっけ?)


 紹介はアキが主導する形で進んだ。

 この場で全員に面識があるのがアキだけだったからだ。

 女の子達が一列に並び直すと、アキは俺の名前だけを伝え、先に五人から挨拶するように促した。

 男子以外の四人は顔を見合わせるとすでに決めていたのか、紹介は、ドワーフ、狐人、兎人、猫人、人族の順で行うようだ。


「まずは僕だね。僕は【リリー】。九歳でドワーフ。リリーって呼んで。鍛冶を手伝ってます。ヒロくんって呼んでいいかな? 親父から鍛冶屋う ちの前で起きたことは聞いたよ。よろくね!」


 リリーさんは、百二十センチ位で青髪のショートカットの九歳。ドワーフなので人族とはあまり変わらない。小柄でちょっとふっくら(太っているわけではない)している僕っ子だ。

 それと、鍛冶屋の親父さんというとダグザさんしか知らない。笑っていたのであの醜態を聞いてるみたいだ。

 最初からキツイ……黙っててくれるといいなぁ。

 

「わたしは【フェネック】七歳です。今、料理を勉強してます。えっと、…………うん! わたしの方が年下なのでおにいさんと呼んでいいですか? よろしくお願いします!」


 次は、フェネックちゃん七歳だ。百二十センチに届かない位で茶髪でツインテールの狐人だ。狐の耳にふわふわの尻尾。

 発言に詰まっていたらアキが近づいて何かを囁いて返事までしてたから、あの「おにいさん」発言はアキのアドバイスだろう。

 妹タイプで料理を作るのが好きらしいし、可愛いので悪い気はしない。

 ……さっきは自重すると決めたが、尻尾……抱き枕にすると気持ちよさそう。


 フェネックが終わると次に兎耳の子だが、五人の中では一番小さかった。

 アキが一言二言囁き「頑張ってね」との言葉が聞こえてきたので、何かを伝えたのだろう。

 しかしアキはしっかりしてるな。今日も年下の子を引っ張っていってるしお姉さんタイプなんだな~。


「わ、わたしは【サテン】と言います。六歳になります。わ、わたしも……おにいちゃんと呼んでいいですか? ま、まだ何もできませんが……よろしくお願いします……」


 サテンちゃんは六歳。百十センチをちょっと超えた白髪でショート、ウサ耳の兎人だ。前からは分からないけど、あの丸っこい尻尾もあるんだろうな~。

 緊張してるのか最後の方は消え入るような声になってたな。アキも後ろから肩に手を置いて励ましてるし。

 うん、まだまだ小さいし、何もできなくても大丈夫だよ。

 周りの子達(俺に一瞥くれた男子も)も心配そうにしてるから、みんなのアイドルって感じだろうか。

 まぁ、この容姿でモジモジしている姿を見ると気持ちは分かる。


「え~、私~、【シャム】十一歳。ヒロ~って呼ぶんでよろしくじゃん。私~、気紛れなんで適当に付き合ってほしいじゃん」


 次に、シャムさんだ。百四十センチ中ほどで銀髪でロングの十一歳。ネコ耳の猫人だ。もちろん尻尾もある。

 ただ、紹介内容が気紛れって、どう反応すればいいんだろう?

 尻尾を見れば左右にゆっくり大きく振ってるんで興味は持ってくれてるのかな?

 でも、さっきより少し目つきが鋭くない? もしかして、観察されている? ……うん、ちょっと怖い。

 身体もしなやかそうだし猫人は伊達じゃない。

 次が最後か……。


「俺は【カシム】十二(歳)だ……」


 ……。

 それだけ? 振り向きもしないけど、俺、本当に知らない間に怒らせるようなことしてたのかな?


 このカシムと挨拶してきたのは、百六十センチほどの十二歳。人族でイケメン顔だ。緑色の髪を後ろで束ねている。

 身長も現代の子供の平均よりも高く、引き締まった体をしている。

 後で知ったのだが、ランドさんに師事していて剣技もそれなりに強いらしい。


「ちょっと! カシム!! ちゃんと挨拶しなよ!」

「別にいいだろ! 仲良くなる気はないし。今日はアキの頼みだから来たんだ」

「えー、何それー。ヒロは今日から仲間になるんだよ! なんでそんなこと言うの?」

「べ、別にいいだろ。俺の勝手だろ」

「もう、じゃあいいよ。そんなこというカシムなんて知らない!」

「えっ? あっ…………」

「こんなカシムはほっといて、ヒロ、最後に挨拶よろしくねー!」


 カシムの行動にリリーとシャムは首をかしげ、二人の剣幕が怖かったのかフェネックとサテンはリリーとシャムに隠れるようにしていた。

 やっぱり、初めて会うよね?

 腑に落ちなかったが、いくら考えても思い当たる節がなかったので、挨拶をすることにする。

 その横でカシムは、しまったーという表情をしていたが。


 挨拶を始めると、俺は記憶を忘れていてヒロという名前をアキが付けてくれたこと。

 八歳で私生活には問題ないということ。

 そして、今は村長の家で暮らしているが、数日すればアキと一緒に暮らすことを伝えた。


 ――! 俺は、『アキと一緒に暮らす』のくだりで視線を感じた。

 視線をたどると、苦々しい表情をして厳しい視線で俺を睨んでいるカシムがいた。


(ああ、アキに惚れてるのか)


 すでに一緒に住むのを知っていたのだろう。それならばこの態度にも納得がいく。

 好きな人が見も知らない男と一緒に暮らすのは、俺でも嫉妬に駆られる。

 答えが分かれば、俺に対する行動も可愛く見える。

 ただ、シャムだけはカシムを横目で見てニヤニヤしていた。


(シャムは気づいているのか、察しがいいな)


 見渡せる位置にいた俺だけが気づいた。


 自己紹介が終わり、カシムと話してくるとアキに残し近づく。


「カシムさん、少しいい?」

「……何か用か? さっきも言った通り仲良くなる気はないぞ」


 呼び止めると、ぶっきら棒に答える。


「いや、それは追々でいいんだ。それよりも、もしかしてアキが好きなのか?」

「――! お、お前には関係ないだろ!」


 顔を赤くして声を上げると、逃げるように出て行った。

 アキとは何でもないと伝えたかったが、伝え終わる前に出て行ってしまった。


(仕方がない、そのうち伝えればいいか)


 こちらを心配するアキには大丈夫と伝えた。

 

 カシムは帰ってしまったが、夕方まではおしゃべりをする。

 俺の方では、遺跡で拾われてアキの家で目覚めたことや記憶がないのでこの世界の事がわからないこと。

 皆からは、村の内外のこと、普段は家の手伝いをしていること、文字を書ける人や計算ができる人が少ないこと。

 最後に、今日は会えなかったが、他に狼人、熊人、エルフの友達がいることを教えてもらった。

 この時間で少しは四人との距離を縮められただろう。


(――学べる場所がないのか)


 文字を書いたり計算ができることの重要性は良く知っている。

 そして、この村では子供も働き手になっていて学ぶ機会がないことも知った。


(学校、それに近い制度……今の状態を維持……無理だ考えつかない)


 今はあきらめるしかなかった。




 日も落ちてきたので今日は解散となった。

 集会場からリビングに戻るとランドさんは帰ってきており、ユキさんは夕食の準備をしていた。

 その光景を見たアキは手伝うためにユキさんに合流した。


 席に着き、ランドさんから今日のことを聞かれカシムのことを話すと、気づいていたのか笑っていた。


「ほれ、おまちかねの物だ。ダグザさんに会ったらお礼を言っとけよ」


 笑いが止まると、経木きょうぎ[紙]の束を置いた。

 経木は五十枚位ありペンも用意されていた。

 本来は依頼してから一週間以上掛かるのだが「坊主からもお願いされたからな今回は特別だ」と言って、鍛冶屋でストックされていた分を別けてくれたらしい。

 ストック分を出すことについてはランドさんも承諾してくれていたのでお礼を伝えた。


(今度お礼を言いに行かないと)


 ダグザさんの対応に感謝した。


 この後は夕食となり、食事が終わるとアキは帰って行く。

 俺は経木を前にどうするか考えていたが、今日のところは眠ることにする。

 

「さあ、まずは気づいたことをまとめないと」


 明日は考えることが多そうだと眠りについた……。

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