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名もなき村の領地開発  作者: スズヨシ
第一章 やっぱり準備は大事(1年目8歳)
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第一章 02話

 今は九時位かな?

 この部屋には時計がないので正確な時間はわからない。

 集会場では見たが、どこにでも置いてある物ではないのかな?

 ちなみ、振り子タイプだ。田舎のばあちゃん家にあった、時間で「ボーン、ボーン」と音がなるようなやつだ。


「あらあら、起きてたのね。昨日は疲れてたみたいだし、気持ちよく眠っていたので朝食を用意しておいたのだけど食べてくれた?」


 遅めの朝食を片付けてリビングに戻ると、同じタイミングでユキさんは帰って来た。


「さっき食べ終わりました。今日のご飯も美味しかったです」

「良かったわ。私お料理するのが好きなの。最近は作り甲斐がもあるし、楽しいわ」


 何か食べたいものある? 嫌いなものは?などと、ユキさんは十分程度世間話をすると、仕事があるからと併設されている集会場に向かって行った。

 集会場にある倉庫の在庫を調べているらしく、今日、明日はそちらにいるとのことだった。


(メモ帳みたいなのがあるか聞けばよかったな)


 そうは思っても今は忙しそうだし、お昼の時にでも聞いてみよう。

 今は諦め窓の外を眺め休んでいた。

 

 暫くしてユキさんが戻ってくるとお昼となった。

 昼はアキはいないことが多いらしい。

 森へ木の実や果実を採りに行くことが多く、往復してしまうと時間がかかり採取する時間が少なくなってしまうので、現地で食べるそうだ。

 ちなみに、この世界にもおにぎりはあった。これは俺にとっても僥倖だ。ただ、海苔は無いようなので、あのパリパリ感を味わうのは将来の目標だ。

 もしこの世界にないのなら、自分で作ることも考えないとね。




「ランドさん、お願いがあるのですが? 何か書き留められる物ってありませんか?」

「ん? あるにはあるが、どうすんだそんなもん」

「いえ、思い出したことがあったら書き留めておこうかと思いまして」

「ああ、そうか。ただすぐに用意するのは難しいかもしれねえ。あまり使う者がいねえから、村でも家に少ししかねえんだ。……それは渡せねえしな。時間がかかっても大丈夫か?」

「大丈夫です。お願いします!」


 食事も終わりに近づき、俺はユキさんに聞けなかった件を確認してみると、ランドさんからなんとか承諾をもらうことができた。

 時間がかかるのは、この世界での紙の主流が羊皮紙と経木で、この村にいるドワーフに製造をお願いするからとも教えてもらえた。

 村にある道具はこのドワーフの家族が中心となって製造していて、とても重要な人みたいだ。

 それに、妖精族も一緒にいることが多いみたいだ。

 この世界で魔法を使える種族は限られており、妖精族はその一つで火や風の魔術を使い、鉄製品を製造する時にドワーフと一緒に作るのが多いとのことだった。その縁で夫婦になることがあることも。


 俺は紙の件もあったが、昨日の獣耳や尻尾の件に続き妖精族も存在することを聞いて心躍っていた。

 ドワーフはやっぱり小さくて筋肉隆々なのかな?

 目の前の二人がニコニコしながら見ているのを感じ、俺は表情が七変化顔していたのが分かり、頬を染め俯いてしまった。


 「……ははっ、これじゃ見も心も子供だな」


 頬をかき、二人に聞こえないように呟いて。



 逃げるように「出かけてきます」と出て行ったヒロを見て、先ほどの態度にランドとユキは安心していた。

 目が覚めまだ三日目だが、村だけではなく傭兵として活動した時代に会った子供達と比べても、態度も言葉使いも八歳の子供とは思えなかったからだ。

 ヒロの目が覚めた日に二人は相談をし、監視する意味も含め極力言動に気を配っていたし、まるで遠慮しているような態度にも悩んでいた。

 何か心に秘めていることがあるのは察していたが、子供には子供らしく過ごしてほしいと思っているのも本心だ。

 朝も今後どう接していくかを相談していたので、馴染んできた態度を見てホットしたのか、顔を合わせ微笑んでいた。



 そんなことは知らないヒロは村を歩いていた。

 昨日一回りしたことで、村の出入り口や井戸などの場所はおおよそ把握できた。

 後は時間をかけて覚えていくしかないし、見逃している建物もあるかもしれない。

 夜にはアキに村を案内してもらえないかお願いもするつもりだ。


(まぁ、今日の所は、獣人探索……もとい、人間観察だな)


 あいも変わらずキョロキョロと探索をしていると。


「あれ? 気づかなかったな?」


 ちょうど昨日、尊い出会いに目覚めた井戸の前を通ると、五十メートル程先に、太い煙突が立ち、窓が開き放たれている建物が見えた。

 好奇心から小走りで近づき、開いた窓の下から中が見えないかと百二十センチの小さな体を必死に伸ばすと。


「――なぁんだあ坊主。わしの作業場に何か用でもあるのか?」


 突然現れた丸顔の髭を生やした百四十センチ程の男性から声を掛けられた。

 俺は突然の出来事に驚き、体を支えられず、盛大に尻餅をついてしまった。


 …………。

 …………。


 尻餅を付いた俺は、何も言えず、呆れた症状をする男の顔を見上げると、次第に見知らぬ子供への訝しげな表情へと変化させるのを見た。


「……それで坊主。何をしていたのだ? それに、わしはお主を存じぬ、見ない顔だがどこの童だ?」


 男は先ほどよりも重く感じる声質で問いただしてきた。


「え、えっと……す、すみません。この建物が気になって……つい。……お、俺は、村長の家でお世話になっているヒロです……」


 ヒロは立ち上がるのも忘れ、口をパクパクさせ最低限の事だけは答えた。


「ふむ、お主がそうか。……おっとすまないな、こんなに驚くとはおもわなんだ」


 ヒロの両脇を支え立たせると、驚かしてしまったことにはにかんだような顔をし頭をかいていた。

 

 ――まだ心臓がバクバクしてる。

 俺は落ち着かない挙動を誤魔化すように、空を見上げ、一度ゆっくりと息を吐き、瞬きをしてみる。


「さっきはすみませんでした。勝手に覗こうとしてしまって……歩いていたらこの建物が気になってしまって、つい……」

「わっはっは、なんだそんなことか。別に構わんよ。子供らしくてよい! ここは鍛冶屋だ。俺はドワーフの【ダグザ】だ」


 目の前の男性はダグザさんといい、ドワーフで鍛冶職人だった。

 この村の鍛冶を行っていて大半は一人で作業を行っていた。

 二十分ほど話をし、ランドさんから聞いた妖精族のことも聞いたが、気まぐれな方で、気分が乗らないと手伝わないので、今日は不在だった。

 ちなみに、ランドさんは村人から頼まれていた道具が出来上がったので届けようと家を出たら、小走りで走ってくる見覚えのない俺を見つけ声を掛けたらしい。

 最後に紙のことも聞いてみたが、ランドさんからはまだ話は来ていなかった。

 俺が欲しがっていることを伝え、お願いし、今日の所は別れた。




 ラグザさんと別れ二時間ほど見て回ったが、疲労を感じたので、今日は帰宅することにした。

 夕食の時間、ランドさんにダグザさんと会ったことを伝えると、すでに知っており、笑いながら三日位で紙は出来上がることを教えてもらった。

 あの態度、その時のこと……聞いたんだろうな。

 紙の件のお礼をし、アキやユキさんには言わないでほしいと願って食事を取っていた。


 食事が終わり一息ついたところで、アキに村の案内をお願いすると、満面の笑顔で承諾してくれた。


「明日いつから? 朝からでいいの? すっごい楽しみー。どこ? どこに行きたい? ――!。……いったぁぁぁい!!」


 軽いげんこつを食らいアキは涙目になる。


「ちょっとは落ち着けアキ!」


 はしゃぐアキをたしなめるランドさんは大変そうだったが……。


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