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名もなき村の領地開発  作者: スズヨシ
第二章 古い考えと新しい風
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第二章 07話

今回も期間空いてしまいました。

まだペースが戻せそうにありません。

もうしばらくの間、ゆっくりペースにお付き合いいただけたら幸いです。

「カシム、シンリン、ルナ。俺の話を聞いた後じゃ断りにくいだろうから先に聞いておくよ。……嫌なら断ってくれてもいいけど、どうする?」


 期待感を上げて落したこの状況だが、無下に断られることはないだろうと、そこは信頼することで伝えた。

 聞いた一番の理由は、気持の切り替えができるのかを知りたいから。

 試すようで申し訳ないが、不慣れの者が増えるだろうし作業に詰まる場面も多くなるのは想像に難くない。

 経験から問題解決に向かうその気持の切り替えは、人の上に立つ者ほど必要だと知っている。元の世界の上司が切り替えの上手い人だったからだ。

 この段階で断られたらそれまでだが、本当に嫌ならば外すしかない。


 それぞれに目を向ければ、カシムは腕を組み、シンリンは人差し指を頬に当てていたりと何かを考えているかのようだが、ルナはというと……いつもの表情に戻ってただ立っていた。切り替え早すぎ!

 ルナには最初に説明した時点で承諾をもらえてるし、カシムもシンリンも考えてくれているということは、この時点で断るという選択はないだろう。


(俺が失敗しなければ大丈夫そうだ)


 ちなみに、隣で推移を見守っているアキだが、今回の件だけではなく俺が思い描いていることを既に話しており、主に意見出しだが協力してくれている。

 話を聞いた直後は呆れてたけど、聞いているうちにどんどん期待が膨らんでいったのだろう。途中からは解らない内容があれば質問してくるようにもなった。

 既にランドさんやユキさんよりも事細かに知ってるし、今は俺よりもやる気に満ち溢れている。

 アキは話を聞いてからの数日間、俺の後を付いて回るようにもなり、寝る時以外はほとんど一緒に居る状態だった。

 そんな状態だったので様々な意見交換ができ、おかげで色々と知ることもできた。

 今回だけじゃない。今後予定している開発の方向性や後々考えてる事業的な内容にも反映できたのは僥倖だ。

 そして改めて身に染みたことは、情報が大事だということ。

 まだまだこの世界は知らないことばかり。

 今までの常識が非常識になり、非常識が常識になる世界。

 営業時代に痛感した経験を思い出す。


 ・独りで出来るのには限界があること。

 ・迷惑だろうと遠慮せず周囲を頼ること。

 ・意地を張らないこと。


 最後のは俺が現在の生活で感じているちょっとした劣等感からだけど、つくづくそう感じた。




「ヒロ、まずはお前の説明を聞いてからだ」

「そうですね~、さっきは手伝うつもりでいましたし、答えを出すのはそれからの方がいいでしょう。今までの話だと具体的なことが解りませんから」


 カシムとシンリンは、俺の説明を聞いてから答えを出すようにしたようだ。佇まいも聞く態勢になっている。

 二人の意志が分かりルナに顔を向けてみると、


「さっきも言った通り。ボクは手伝うよ」

「ありがとう。でも、話を聞いて嫌だったら断ってもいいからね?」

「……それはないだろうけど、わかった」


 何がそう断言させるのか気になっていると、ルナの瞳がアキへと向いたように見えた。

 気になった俺はルナの視線を追おうとしたのだが、すぐに視線が交わり、瞳は俺を捉えていた。

 気のせいだったのかな?

 ルナの真意ことを考えるのは後にして、説明を始めることにする。


「まず伝えておきたいのは、どの程度の参加人数を集められるか不明ということ」


 本来この時点で計画は破たんしてる。

 改めて口にすると、無謀なことをしようとしてるのを実感してしまう。計画はこれだけじゃないし……。


「だけど大人も含め、多少の人手は集まるだろうと考えているんだ。少なからずこの農耕地に関わっている人がいる。それもランドさんやユキさんと親しい人ばかり。二人から説明してもらえれば、手が空いた時に協力してくれる人はいるはずだ。ただ懸念してるのは、獣害の後処理もあるし冬に備える必要もあるから、今の時点で多くはないと予想できることかな」


 この農耕地は、ランドさんがアキのことを考えて作った場所だ。

 そこで一緒に作業する人達は考えられてるし、俺という当時の異物が関わることになって人選はより慎重に行われている。

 無知で失敗ばかりして迷惑をかけた俺が雑用だけとはいえ、未だに関われているのは良い証拠だろう。

 このことはランドさんから説明を受けてたし、当時既に俺と付き合いのあったサテン、シャム、フェネックの両親が関わっているのもランドさんが配慮したからだ。


「だから、もしカシムやシンリンにお願いした人集めが不発に終わっても、作業が全くできないなんてことはないと思う。でもその場合、どうしても作業の遅れや人数の制限という問題は付きまとうから、だからこそ、二人には一人でも多く協力してくれる人を集めてもらえると助かるんだ」


 この時期は刈りだけではなく冬仕度もある。

 父親なら家族を養うのに必要な作業は山ほどあるが、子供なら空く時間もある。

 その空き時間を狙ってになるだろうけど、二人には頑張ってほしい。


「で、肝心な作業内容だけど、まずは測量。これにはダグザさんに頼んで誰でも同じように測れる道具を作ったのでそれを使う。それを使えば、予定している大きさの水田が今までより時間をかけず、小さい子でも測ることの出来る作業になる。さっきの人集めの材料にして。それに測量だけは俺が指示を出すので、道具の使い方は当日に説明するし、本当に簡単だから心配しないでいいよ。後は、この作業が終わらないと次に移れないからみんなにも手伝ってもらうことかな。……あっ! シンリンは手伝えたら、で構わないから」


 道具といっても、布を強化して作った巻尺メジャーもどき。手動で巻き取れる学校やスポーツ場で使ってるような形状を真似たものだ。ちなみに布を使ったのは、材料の関係で直ぐに量産できるのが布だったのもあるけど、小さい子に使わせても指を切る心配が少ないため。

 村にはメジャーのようなのは無く、今までの測量は紐を使うか魔法を使える者が行っていた。

 等間隔に印をつけ折り曲げて三角形を作る。これで直角三角形を作っていけば、紐があれば測量はできるけど、同じサイズを何個も測るには手間がかかる。

 それなら、巻尺みたいなのがあれば短い時間で誰でもできるんじゃないかと思って、ダグザさんに作ってもらった。

 測れる長さは最大五十メートルほど。四人一組で四方を測りもう一人が線引く。

 これなら小さい子であっても、指定の大きさを測れるだろう。


「次にカシムなんだけど、先に謝っておくね、ごめん。ちょっと? 作業もだけどまとめ上げるのが大変かもしれない」

「――!?」


 カシムは俺の言葉に器用にも、戸惑いながら気を引き締めいているみたいだ。

 多分、“作業”の言葉に気を引き締め“まとめ上げる”の言葉に戸惑ったんだろうな。

 手を抜けないのだろうけど、こういうところはほんと、真面目だよなあ。


「まず測量が終わったら、新旧水田の境目、真ん中に通す大きめの用水路を掘ってほしい。新しい水田はここの水田の対面に作るんで、用水路……面倒なのでこの後は水路で、の後には今ここに立っている柵と繋げて全体を囲むように新しい柵を立ててもらうんだけど、囲み終わったらちょうど中央に立つ部分を取り外してもらうんで、その柵に沿うように新しい水路を掘ってほしいんだ。ただ新しいといっても、今外から引いている水路の一部を伸ばす形になるので、新しく川から引いてくるということではないので、そこは間違えないようにね」


 おや? まだ話半分のこの時点で、カシムから発せられる気配が淀んでないか?


「それで水路が終わったら柵の設置。設置場所はさっき伝えた場所でお願い。水路上に設置する時には言ってね。ダグザさんに獣対策を施した開閉式の格子を作ってもらったので、それを設置する柵に取り付けてもらうので。柵の設置が終われば、次に中央の柵の取り外しと作った用水路から新旧水田へと続く水路を掘る作業。今と違って外から何本も水路を引くのではなく、今後は中央に通した水路一本からそれぞれの水田へと水を引くので、全ての水田へ水路を繋げて。繋ぎ終われば次は不要になる水路の埋め戻し作業。これは使わなくなる水路の埋め戻しだね。埋め戻しの際の土は水路を掘る時に出た物を使って。足りない時は、土壌開発の時にも出るだろうからそれを」


 あれれ? 益々淀んできてる……?

 周囲のカシムを見る瞳が憐れんでいるようにも見えるし。


「そんな訳で細かな作業についてはこんな感じ。ただ人出についてはさっきの通りどうなるか分からないし入れ替わりが増えるかもしれないので作業分担を調整しつつ、抜けたり加わったりする人をまとめてほしい。俺が何か言うよりカシムに任せた方がスムーズに進むと思うんでよろしく!」

「……よろしくって、柵には木材の調達……水路……相当な作業量の上に人の問題……――」


 カシムが顔に手を当てながら唸ってる。

 人員問題を外せば、作業量も多く時間が必要なのは木材の調達になると思う。

 獣人は人族に比べ力もあり、四キロほど東にある森林から木を伐採して持ってくるのに苦労はしないが、獣人でも大人の獣人が集まらなければスムーズにとはいかないだろう。

 一部の例外を除き、獣人が数人集まれば五メートル程度のサイズならそう苦労もなく運んでこれる。稀に一人でこなす強者がいるけど、本当に稀だ。

 獣人の参加が少ないのなら何か手を打つ必要があるだろうが、そうなった時はその時考えよう。

 水路関係にルナは使いたくない。ただでさえ貴重な魔力をここで消費するのは愚の骨頂だ。

 トロッコ的なのがあればもっと楽なんだが、線路の問題もあるし、動力源の問題でまだ試行錯誤を繰り返している段階だし、で今は頼れない。

 人力でどうにかできるのなら、そこは根性で頑張ってほしい。と、目の前のカシムを見てると手伝えない俺が声に出して言うことではないので、心の中にしまっておく。

 ――根性の部分は、前にアキに漏らしちゃってるんだけどね。


「そしてルナ。ルナには測量が終わった水田の細かな整備と土壌の調整。調整はシンリンと協力して進めてほしい。シンリンの作業はこの後に説明するけど……この作業は替えがいないだけではなく、ルナの作業進行の具合で来年耕せるかが決まるから責任がのしかかる。順調に進んで水田が終われば畑の土壌の調整もしてほしいし……。俺は魔法が使えないから手伝うこともできない。ごめんね」

「責任も大変なのも知ってる。……ボクはまだ魔力は多くない。それに、実践も少ない。一人だとどこまで出来るかも分からないけど頑張る! でも、……ボクの魔力量では間に合わなかったり、もし魔力枯渇で動けないとなった時は大丈夫なのかい?」

「一応、考えはある。その時は、ランドさんに協力してもらってセレネさんにお願いはしてみるつもりなんだけど……」

「……」


 あっ、やっぱり嫌そう。

 眉まで下げて、滅多に見れない貴重な表情だ。

 セレネさんはルナの母親。

 ルナとは性格が間逆で、一言で言って子供っぽい人。

 “楽しければいいじゃない”を地で行く人でアキ曰く、ルナはよく“振り回されて”いるらしい。

 いざという時の能力は桁外れに高いらしいのだけど、いかんせん気まぐれ。


「――頑張るから、やめて……」


 俯き加減になり表情が見難い。

 こんなルナを見るのは初めてかもしれない。本当に振り回されてるんだろうなぁ。


「頼むのは不測の事態が起きた時だけだから! 心配しないでいいから!!」


(あれ? カシムにもルナにもやる気を削いでるだけのような気がしてきたぞ)


 初めてみる姿に焦りフォローしてみるが効果はなし。

 ルナから嫌嫌オーラが出てきたのを感じ、


「……んと、次にいくね」


 俺は場の雰囲気を変えるためにも話を進めることにした。

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