第二章 06話
久しぶりの投稿になってすみません。
まだ多忙続きで以前の投稿スピードに戻れそうにないのですが、
次話はこれ程待たせることはないよう頑張ります。
――クィッ、クィッ。
僅かに袖が引っ張られる感触を感じ顔を向けると、アキが先ほどよりも近く、肩に触れるくらい側にいた。
これだけ近いと目を合わせるには、伸長差からほんの僅かだが顔を上向きにする必要がある。
この世界でも年少期は女の子の方が成長が早い人が多いようで、年下ならば諦めもつくが、同い年であるならば男としては早く逆転したいと思ってしまう。
発見された当時は身分を証明できる物はなにもなく便宜上アキと同い年ということになっているが、実際の年齢は不明なので同年齢と考えればだけど……。
まぁ、年下でも身長が低ければ劣等感を感じてしまうと思うけどね、男としては。
「ヒロ、どうするの?」
二人に目を向ければ、まだ終わる気配がない。
巻き込まれたくはないが、終わらなければ話も進まない。
今日は頼んで集まってもらったし、正直、止めに入るのは面倒なのだが、どうするべきか……。
「私が止めてみようか? ヒロ、面倒くさいって顔してるよ」
「あれ? 顔に出てる?」
「う~ん、他の人じゃわからないかな? 癖なんだろうけど、見てるとわかるんだよ。他にもいっぱいあるけど、ないしょ」
態度には出していないつもりだったのだが、アキにはバレていたみたいだ。
しかし俺としては、二人を止めてくれるよりも先に、その後に続いた『いっぱいあるよ』の言葉の方が気になるのだが、……どれだけあるのだろう?
そんなことを考えながらも巻き込まれているもう一人の人物を確認すれば、ルナはどこ吹く風で我関せずを決め込んで佇んでいた。
シンリンとはよく一緒に行動しているし、トラブルには慣れているのだろう。
だからこそどうにかして欲しいのだが、無理そうだ。
ルナには期待が持てなさそうだしこのままだと一向に話が進まないのも確かなので、アキにお願いすることにした。
シンリンには最初の邂逅以来、俺の反応が楽しいからなのか、遠慮なしにからかい半分でちょっかいを出してくるので、自然と一歩引いてしまい苦手意識も生まれていた。
頼みたいことがなければ、好き好んで会いたいと思いはしないだろう。
それに、頼めば頼んだだけ見返りも求められる。
話が終わった後で何を要求されるのか……無茶な要求じゃなければいいのだけど……。
そうこうしているうちに、二人は静かになっていた。
いつも思うのだが、カシムは分かるとしても、シンリンは何か弱みでも握られているのだろうか?
目に余る行動を取るとアキに怒られているのを見ることがあるが、直ぐに大人しくなる。
俺が言ってもそんなことはないし、アキとでは対応があまりにも違いすぎるので、どうしてもそう思えてしまう。
今度アキに聞いてみようかな?
二人が収まるのを見届けアキがこちらへ振り返ったので、お礼の意味を込めて軽く頷くと笑顔で返してくれた。
しかしこのやり取りもよくするようになったけど、あの笑顔を見ると乱れてた心が落ち着くというか安らぐよねぇ~。
――さて、気持ちを切り替えよう。
説明を開始してまだ間もない、ルナとカシムには悪いが一度話を戻して情報の共有を図ることにした。
「――大体は理解できましたが、ん~、そうですね~、私の方も集めるのは難しいと思いますよ? 私自身も家の手伝いがありますし、どれだけ手伝えるかはわかりません」
シンリンも人集めは難しいらしいが、これは先ほどのカシムの返答からも予想はできた。
だが計算が違ったのは、どの程度シンリンの手伝いを得られるか不明だということだ。
当てにしてたのは、シンリンと実家で飼育している乳牛の雄だったのだが、場合によっては考え直さないといけないのかもしれない。
「そうか。ならもう一つ相談なんだけど、シンリンの実家で飼育している牛の雄でいいんで、何頭か借りることはできる? それと、牛飼いをできそうな人に心当たりがいれば、紹介してもらえると助かるんだけど。話はこちらでするから」
「そうですね~。……牛は私がどうこうできるものでもないですし、親に相談してみないことには何ともいえないですね。後は牛飼いをできる人ですか……直ぐに浮かぶのはアイシャですが、ご両親もだけどアイシャがどう思うかですかね? 今のアイシャの状況なら、ご両親は良いと言う可能性はあると思いますが、本人次第のところが強いですからね。それでもヒロが頼めば可能性はあると思いますよ~」
代案としてアイシャの名もでたが、両親もだが本人の説得ができるかが一番の問題になりそうだ。
アイシャには俺が頼めば可能性があると言ってたし、両親から承諾をもらえたら頼んでみようかな。シンリンの最後のにやつきが気になるけど……。
ルナの負担は減らしたいけど、駄目なら少し困ったことになるかもしれないな。
「わかった。それなら、牛については確認してもらっていい?」
「それぐらいならいいですよ~。た・だ・し、成功した暁には、見返りはきちんといただきますからね?」
「……成功したらね」
いつも通りの展開にはなったが、少しでもやる気をだしてもらうためには仕方がないだろう。
あのにやついた笑顔の裏で考えている内容は知りたくもないけど。
アイシャの件がどうなるかは本人に話をしてからになるが、両親の説得にはランドさんかユキさんの手を借りた方がよさそうだ。俺が伝えるよりも説得力が格段に上がるだろうしね。
ランドさんにはこの件だけでなくこれから色々迷惑をかけそうだし、ユキさんの手も借りたいので、二人には苦労をかけてしまうことになるのだろう。
でも、大人同士のことはランドさんに丸投げしてしまうのが手っ取り早いし『立っている者は親でも使え』ともいうしね。この世界でもこのことわざがあるのかは知らないけど……。
無茶なこともするし、二人には手を借りることも多くなりそうだし、先々の考えを詳しく話しておいた方がいいかもしれないな。
一通り話が終わったので、前もって準備しておいた紙をカシム、ルナ、シンリンに手渡すと、三人は一様に怪訝な表情を浮かべた。
「――本当にこの規模を春までにできるのか?」
「私もカシムと同意見ですよ」
「……無理だと思う」
「それに、予定地の図と『目標春まで!』としか載ってないのだが……」
カシム、シンリン、ルナのそれぞれの答えは至極当然だった。
紙には、水田の拡張規模と畑や水路の開発予定地を記したものだけ、簡単な区画図と『目標春まで!』としか記述はしていない。というか、参加人数すら決まっていないので書けなかった。
元の世界では営業企画なども立てたことがあるが、これは計画書ではない。ただ子供の戯言を記しただけのものなので、三人の表情は理解できた。
偉そうに話を振っといてこんなの見せられれば、俺でもそうなるだろうしね。
(さて、やる気を出してもらうためにも、ここからどう説明しようかな)




