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名もなき村の領地開発  作者: スズヨシ
第二章 古い考えと新しい風
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閑話 02-2

ここから『閑話 02』後半パート開始です。

 歩き続けること十五分、目的の場所に辿り着いたのだが、ヒロの様子はおかしいかった。

 平静を保とうとしているのだろうが、目が泳いでいた。

 その答えは直ぐに判明する、何も考えていなかったんだ。

 ばつの悪そうな表情を浮かべるヒロを目の前にし、この時の俺は顔を覆う他なかった。

 しかし、ランドさんには話が通っているはずなのにこの体たらく。


(まさか……ランドさんの許可というのも嘘ではないだろうな?)

 

 呪詛を吐きたい衝動を堪え、戻り次第ランドさんに確認することを誓った。


 それでもここまで来てしまったのだから、状態は見ておきたい。

 俺が被害現場、ヒロが外周りと、ひとまず別れて回ることとなった。

 顔を合わせていたくないのは双方同じ思いだったのだろう。このままだと文句しか出ないだろうから、落ち着く時間が取れたのは俺自身も助かった。


 ――距離にすればほんのわずか。

 門を潜りすぐに目に入ったのは、踏み倒された稲や浮かぶ籾。稲や籾は水田の外にも散乱し、大半は食用にすることはできないであろう惨状だった。

 まだ温かいこの時期、日のあたる場所の大半の地面は乾き始め、水を張る水田だけが事の終わりの状態をそのまま残していた。 

 ただ見ていても無駄な時間だけが過ぎて行くだけ、これも経験の一つだと気持ちを切り替え、足跡で乱れる地面から対象動物の選定ができないかと調べることにした。

 足跡から対象動物が判断できれば旅路にも役立つ。身を守るのには、こういった地味な作業も必要になるのだから、俺だけでどれだけ判別できるのか、真剣にもなる。


 判別できたのは二種類、猪と狐の足跡だけ。

 他にもあるのかもしれないが、人の足跡も混じり踏み荒らされると、俺では判別不可能だった。


 時間にしては一時間ほどだろうか、一通り見て回りヒロと合流すると情報交換をする。

 先にこちらの惨状を説明し、次いでヒロの説明。

 ヒロからは、今回の侵入経路だろう場所の情報があり、急いでその場所へと向うと、門からさほど離れていない水路だった。

 少し先を見れば、水路は柵の下を通り中へと繋がっている。


(この水路周りが足跡の数が一番多いだろうか?)


 重なるように踏まれ判別し難いが、膝を曲げ腰を落とすと、周囲に広がる足跡と対峙した。

 結果としては、新しい発見があった

 ヤギや熊や狼らしき爪痕を新たに判別したのだが見比べていると、ヤギや熊は別としても狼だけは違うのではないのかと見て取れた。

 食物連鎖。

 熊は判断し難いが、狼は猪や狐やヤギなどが集まるのを察知し餌を求めて走り回った跡だと、あくまで直感だがそう思えた。

 そこには肉食系の動物の足跡が極端に少なかったことと、何かを追うがごとく狼は歩幅が広く、逃げ惑うがごとく力強く踏ん張り四散する足跡も多数あったのが要因だ。


 しばし膝を落とし移動を繰り返していると、後方からヒロの声が届いた。

 内容は開墾に関すること。

 ヒロの声からは真剣さが伝わってきたので、ここでは茶化さず、答えられる範囲で回答するが、残念ながら俺には簡単な手伝いしか経験がなく記憶もあやふやだった。

 一呼吸置き後方からは僅かに動く気配と、お礼の一言。

 この時ばかりは含むもののない素直な言葉に、明確な答えができず、不明瞭な内容になってしまったのをすまないと感じていた。


 どの程度の時間見続けていたのだろうか、これ以上の判別は無理だと立ち上がれば、ヒロは目の前に広がる草原を眺めていた。

 その眼は、何かを考えているように俺には写ったのだが、先ほどの問いに関係はしていたのだろうか?


 ヒロが俺に呼応するかのように視線をこちらへと向けたので、この後の予定を聞きいたのだが、案の定考えはなかった。

 となれば、空腹を感じていたので村に戻ることになる。

 だが空腹は一度認識してしまうと自己主張を始める。

 道中では、ただでさえ空腹でイライラし始めているのに、ヒロは何を考えているのか今一度協力を求めてきた。

 あれからそう時間も経っていない、俺は一蹴したのだが。


「好きな娘のためなることだよ?」


 こんなことを言ってきやがった。

 この言葉はすまないと感じていた気持ちを瞬時に霧散させ。


(――後でみてろよ) 


 歩きながら搦め手がないかと、考えをめぐらす方向へと変えていた。




 村に到着すれば、ランドさんへ報告に向かうことになった。

 俺はヒロから少し遅れて到着したのだが、ランドさんはまだ同じ部屋におり、周りを見渡しても誰もいなかった。

 アキだけでなくユキさんもいないのはどうしたことだろうか? それに、先に到着していたヒロが詫びているようだが、この短時間で何かあったのだろうか?

 気にはなったが、ヒロはすでに持ち直し話し始めていたので、黙って行方を見守ることにする。


 ヒロの口からは、あの場では語られなかったより詳しい開墾案が話されていた。

 あの時のヒロの質問は、今の内容に関係していたのだろう。

 話が進むにつれ、なんでこうも話が進むのか不思議でならなかった。

 ランドさんも話を聞くにつれ、表情を綻ばせていく。


 戸惑い、混乱、嫉妬……渦を巻いて俺を飲み込んでいくようだった……。


 ヒロの話が終わればランドさんからは全面的な支援の約束。次いで気分も良くなったのか、集会で言明した内容の意味をも教えてもらえた。最後には、悔やみの言葉までも……。

 俺は目の前の光景に、何もできない不甲斐なさと、ランドさんの本音をも引き出したヒロへの嫉妬に燃えていた。 

 雰囲気を察したのかもしれないが、ランドさんは俺の肩を軽く叩くと、俺とヒロの食事を用意するから待つようにと言葉を残し、別室へと歩みだそうとしている。

 俺は肩を叩れ我に返ると、ふと思い出した、この部屋からヒロに連れ出された当時の状況をランドさんに聞いてみた。

 すると、食事を断り、逃げるように背を向けるヒロの肩をランドさんの力強い手が『逃がさん!』とばかりに素早く掴んでいる。

 ゆっくりと振り返るヒロの表情からは、先ほどまでの生気が失われつつあった。

 俺は止めとばかりに、アキを餌に協力を強制されたことも付け加えると。


「――ヒロ、嘘はいけねえなぁー。それに、悪りいことしたら何が待ってるか、解ってるんだよな?」


 悪戯をした時には散々受けてきた、愛の鞭という名の教育しつけ


 バシィッ!!!!!


 鮮やかに吹っ飛ぶヒロが、モヤモヤしていた気分をスカッと晴らしてくれた。


 間もなくノロノロとヒロは起き上がり、ランドさんと俺に頭を下げると、綺麗な紅葉を頬に残し、トボトボと部屋を出て行った。

 その姿を見届けると二人だとこの状況は気まずく、食事を遠慮し帰宅することにした。

 

 ランドさんに挨拶をし外に出ると、そこでルナと出会うことになる。

 なぜこんな場所にいるのだろうか?

 ルナと向かい合い数瞬の沈黙。……いつもとは違い目を細める動作。……そして、ルナの口から淡々と言葉が紡ぎだされた。


「君はあの時、あの姿を見て、何を感じたのかな? 彼は動いた。さぁ、君はどうするのかな? ……ボクは、君にも期待をしているよ。――ヒロも戻ってきたし、ボクもアキの家に戻るね」


 ルナは言いたいことだけを言い、背を向けると、さっさと行ってしまった。

 あの場、あの状況で俺がアキを見ていたのを知っているかの言葉。ルナはこちらを向いていなかったはずだ。

 それにこの場に居たということは、先ほどの会話を聞いていたのだろうか? 彼女は風魔法も使え不可能ではないのだろうが……。

 急な出来事に俺は混乱していた。


 ルナは俺なんかよりも数段思慮深く、賢い。年齢からは考えられないくらいに……。

 そのルナの言葉は深く胸に突き刺さり、今も抜けないでいる。


 確かにヒロはランドさんでも喜ぶ意見を出していた。

 それは俺では考えられない内容だった。

 それに比べ俺は現場を見ただけで何もしていない。それどころか、将来のためだと学ぶ場として行動していた。


 ――身体を動かしてばかりいる俺にはあんな思考はできない。……俺がヒロなら、何ができたというのだろうか……?


 突然の問いかけに、答えはまだ見つからないでいる。

次話からは、雰囲気がらっと変わります。

キャラ同士の掛け合いも増えるので個人的にも楽しみなのですが、相変わらず時間が取れない日々。

次話まで少しだけお待ちください。


あ、あと、ブクマ100オーバーありがとうございます。

先程確認したら113件ありました。感謝感謝です。

少し投稿ペースが落ちてますが、今後もお付き合いいただけたら幸いです。

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