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高度に発達した異世界では転生しても無双できないか  作者: イ尹口欠


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38/60

38.テロリストを追え

 電車に乗ってみっつほど離れた駅で降りた。整然とビルが立ち並ぶオフィス街で、スーツ姿のサラリーマンが行き交っている。とはいえ午後の微妙な時間帯。そう人通りも多くなく、駅から十五分も歩いて僕らはスムーズに目的地にやって来た。


「ジネッタ、ここで合ってるか?」

「うーんと、そうだね。一階のカフェじゃないかな」


 ビルはいくつかの企業が入っており、その一階部分にカフェが入っていた。付近のサラリーマンたちの憩いの場なのだろうか、携帯端末を机に置きコーヒー片手に仕事をしている人が多い。その中で、僕らにひらひらと手を振る女性がいた。またお前か第六席。

 情報を送ってきたということは当然、向こうも同じような捜査をしてきたのだろう。フェルが呑気にお茶しているのを見て、僕らは脱力した。


「ユウ。なんか手え振ってるよ……」

「ジネッタ、見なかったことにして帰らないか?」


 僕らがそっと踵を返すと、足元のアスファルトに短剣が突き刺さった。


「物理かよ!」


 周囲のサラリーマンが何事かと振り返った。街中で武器を抜くと冒険者ギルドの資格、剥奪されるんだぞこっちは。おのれ国家権力。

 しぶしぶ僕とジネッタはナイフを抜いてフェルのテーブルに置いた。


「なあ、街中でナイフ投げるのはダメだと思うぞ?」

「……ええ、少し反省しているわ」


 フェルはさっと刃を指で撫でて状態を確かめた後、短剣を腕の中に収めた。ジネッタは疑わしいものを見る目でフェルを見ている。いや腕の機構が珍しくて凝視しているだけかもしれない。


「それでフェル。なんでここに? やっぱり声明文の出処を辿っているのか?」

「ええ。情報を流せば、貴方たちがここに来るだろうと思って待っていたのよ」


 遠回しかつ不確実な待ち合わせ方法というわけだ。


「何か新しい情報はあったか? いやそれとも、もう捕まえたとか?」

「まさか。ここで行き止まりだったわ」


 ジネッタが「まあそう都合よくはいかないよね」と肩をすくめた。


「店の防犯カメラにテロリストと思しき人物はなかったの。それで周囲のカメラも調べさせたけど、そちらもヒットなしだったわね」

「かなり慎重に行動してたってことか」


 そうなると、本当にどうしようもない。しかし自分たちでそこまでやるなら、僕らに情報を流す必要はなかったのではなかろうか。

 僕がそう言うと、フェルはしたり顔で頷いた。


「それはそうでしょう。貴方たちと情報交換するために呼び出したんだから」

「はあ?」


 聞けばフェルは僕らの調査が多少は進展しているのではないか、と期待していたらしい。残念だったな、ジネッタは徹夜明けで昼まで寝てたんだよ。

 ……などと正直に言えるはずもなく。僕とジネッタはチラリと視線を交わしたあと、調子を合わせて言った。


「ジネッタは徹夜で調べてたんだけどなー」

「ね。わたし頑張ったんだけどさー」

「…………ねえ。ちゃんと捜査、してたのよね?」


 呆れ混じりのフェルの視線が、僕らに突き刺さる。なんというか迫力がない。こいつも疲れているのだろうか。


「割りとこっちは行き詰まっているのよ。『ボーイ』のスペックや『フェアリーサークル』の情報収集能力には期待していたのだけど」


 フェルがぼやき始めた。とはいえこっちにも取っ掛かりになるような情報がない以上、調べようがない。

 停滞感の漂う空気の中、ジネッタが端末を取り出して言った。


「あ、昨日から調べさせてた結果が出たみたいだね」

「……え?」


 思わず「本当に調べてたのか」とこぼした僕に、フェルが眉を寄せた。それを無視してジネッタの端末を横から覗きこむ。


「うん。わたしが普段から入り込んで遊んでる街頭カメラの過去データを洗ってたんだよね。ブラバスの顔写真で探させてたんだけど」

「……貴方、本当に情報部に来る気ない?」


 ジネッタはフェルを無視して結果を指でなぞる。


「んー文京区の銃撃事件のあったとこから、外に出てるね。街の外」

「魔物の生息域? それなら確かに私たちも追いづらいけれど……」


 そういえば魔物が住む危険地帯を避けるようにして都市部が広がっているため、意外と近い距離に深い森などがあったりする。だがこれだけ発展した文明をしても放置せざるをえない危険地帯だ。命の危険があるような場所に潜伏するのは得策とはいえない。


「あれ。急に街中に出るなあ。どこ通ったんだろ」


 指で地図をなぞりながら、ジネッタは首を傾げた。やがて()れったくなったのか、フェルが「私にも地図を見せなさい」と言ってふたりして仮想ディスプレイを覗き始めた。土地勘のない僕が見ても邪魔になるだろう、しばらく横で待つ。

 そういえばコーヒー注文してないのに店に居続けるのも悪いかな。などと思っていたら、フェルが「そういうことね」と呟いて顔を上げた。お、何か分かったのか?


「シンジュク区の地下迷宮。恐らくそこに潜伏しているのよ」

「ああ、なるほどねー。そっかそっか、出口がここと、ここと……」


 ジネッタは納得して地図を弄り始めた。

 そういえば冒険者ギルドで、この辺りの地下にはダンジョンがあるとか聞いたような気がする。


「でもダンジョンって、危険じゃないのか?」


 僕の疑問に、フェルが答えてくれた。

 地上にも地下にも、未だ人類の支配が及ばない土地が多くある。それらの土地からは魔物が定期的に湧き続けるため、常に危険をはらんでいるのだ。

 しかしシンジュク区のダンジョンは確かに魔物が湧くが、逆に絶対に魔物が入り込まない清浄な土地も少数だが存在しているという。そのような魔物が入れない場所を拠点と化し、更に地下深くに続くダンジョンに潜るのが冒険者の仕事のひとつなのだそうだ。


「恐らくブラバスは地下迷宮の安全地帯のどこかを拠点にしているはずよ。浅い階層だとは思うけど、冒険者らしい格好をしていればそこで休憩中なのだと、他の冒険者たちは勝手に思うでしょうし」


 なるほど。兜でもかぶっていれば顔も隠せるしな。


「ダンジョンに潜れる冒険者を雇った方がいいわね。迷宮探索を専門にしているランクの高い連中がいいかしら」


 ブラバスを追い詰める思案を始めたフェルを見ながら、僕が「よし、じゃあ仕事はこれで完了だな」と言ったら、「貴方も行くのよ」などと当たり前のように返された。


「いや、待て。僕はダンジョンになんか潜ったことないぞ?」

「貴方の活躍が交渉の前提条件だってこと、忘れたの? ここまでの成果はそこの妖精さんのお陰でしょうに」


 ……なん、だと?


 僕は驚愕に目を見開きロイヤルスイート連泊妖精を見た。いや確かにそうだ。僕、なんにもしてないな。

 妙な納得感とともに、僕はダンジョンに放り込まれることになってしまった。

 私用につき数日ほど更新できません。遅くとも来週末までには再開します。

 →再開しました。

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