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高度に発達した異世界では転生しても無双できないか  作者: イ尹口欠


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14/60

14.宴の後の帰路

 腕力に自信がないなら銃と魔術を覚えるといい。

 受付嬢(アスカリ)に話しかけられずに戻ってきた鬼の侍(ハマー)を交えた酒の席で、僕はパノスにそうアドバイスを貰った。


「筋力でどうしても男性に劣る女性が、それでも戦士をやっていられるのは身体強化魔法〈フィジカルブースト〉があるからだよ。これ一種類だけでも極めれば、女性だろうと子供だろうとドラゴンを素手で殴り殺せるようになる」


 酒の入ったパノスは饒舌だ。


「もちろん元から腕力があるに越したことはない。同じくらい〈フィジカルブースト〉を使える鬼人族(オーガ)の男性とヒューマンの女性を比べるなら、やはり鬼人族(オーガ)の男性の方が強い力が出せるからね」

「おうよ! 鬼人族(オーガ)の男は戦士だからな!」


 パノスの言葉に乗っかってハマーが力こぶを作ってみせる。意中の女性に対しては小心者だが、基本的にお調子者だ。

 このときばかりは僕も楽しすぎて時間を忘れた。聞き込みは十分だろう。あれ以上、僕が突っ込んでもなにか得られるとは思えない。


     ◇


 とはいえ少し羽目を外しすぎたかもしれない。楽しい時間はあっという間に過ぎ、とっくに日が暮れていた。

 パノスたちは早くから飲んでいたので、午後7時を過ぎたところでお開きになる。奢ってもらった礼を言って、僕は一足先にフロアに降りてきていた。


 ふと彼らのランクを知らないことを思い出した。受け付けにはまだアスカリがいる。これ幸いとネコミミ受付嬢に話しかけた。


「アスカリさん。ちょっと聞きたいことがあるんですが」

「あら。ユウくんじゃない。まだいたの?」

「はい。バーで先輩冒険者たちに奢ってもらっちゃいました」

「あら……ユウくん。お酒は飲めるの?」

「いえ、ジュースですよ。まだ飲める歳じゃないんで」


 この国で飲酒が可能になる年齢は知らない。酒を好む異種族も普通に存在しているから、もしかしたら元の世界より緩い可能性が高かった。

 しかしここで「何歳から飲めるんですか」なんて聞こうものなら、「なんでそんなことも知らないの」と返される気がするので聞かない。


「それで。奢ってくれたのはパノスさんなんですが」

「ああパノスさんね」

「はい。話した感じではベテランだと思うんですが。ランクとか聞いてなかったなと思い出して。アスカリさん、知ってますか」

「ええ。パノスさんのパーティは『Rank C(中堅)』よ」


 僕には『Rank C』が具体的にどのくらい凄いのか分からないが、5段階の真ん中ならかなり強いのではないだろうか。


「『Rank C』ってどのくらい強いんですか」

「そうねえ……」


 アスカリが言うには、パーティを組んでワイバーンに勝てるくらい、とのことだった。


 ワイバーンは亜竜の一種で、ドラゴンに似ているがドラゴンに数えない亜竜の中ではポピュラーな魔物だ。

 人間並みの知能をもつ竜と違い、亜竜の知能は動物並みしかない。しかし戦闘力が劣るというわけではなく、空を飛び火を吐くワイバーンは人類にとって充分に強敵だ。

 魔法があり銃がある現代においては多少は楽になったものの、それでも素人や実践経験不足の冒険者ではまず勝てないのだ。

 以上、脳内百科事典より。


 水を自在に操る人魚族(マーメイド)の魔法使いが撃ち落とし、鬼人族(オーガ)の侍が切り込み、槍を振るう戦士が的確に守る。なるほどあの三人が完璧に連携していれば、ワイバーンも倒せそうな気がする。


 まだ仕事が終わらないのだというアスカリに僕は別れを告げ、ビルを出たところでハマーに締め上げられた。

 どうやら会計が終わってロビーに来たら僕がアスカリと仲良く喋っていたので、待ち伏せしていたらしい。パノスとマーキュリーは待つのが面倒で帰ってしまったそうだ。そんな。

 だがハマーも酒が入って疲れているのか、僕を下ろすと「覚えてろチクショー」と投げやりな捨て台詞を残して走り去っていった。なんなんだよ。


 そして僕はうっかりどうやってネカフェに帰ればいいのか、と途方に暮れることになったのである。


     ◇


 受付に戻ってアスカリに冒険者ギルドの目の前にバス停があることを聞いた僕は、バスに乗った。

 バスで駅まで行き、そこから別のバスに乗り換えればネカフェのある雑居ビルのすぐ近くまで行けるようだ。

 駅とは何の駅か。僕はバスの座席でケータイを開いた。行き先の駅名でウェブ検索すればすぐに分かる。便利な異世界だ。


 どうやら電車が通っているらしい。自動車もあるしケータイもウェブも整備された世界だ。電車があるくらいじゃ驚かない。

 だが路線図を見て首を傾げた。僕の知っている前世の路線図とは大きく雰囲気が異なる。

 陸地があるにも関わらず大きく迂回していたり、市街地があるにも関わらず全く路線がない場所もある。半ばで途切れているような、中途半端な路線図だった。もどかしい。


 疑問に思って『路線図 通っていない』で検索してみる。するとこの国の、というかこの世界の電車の路線は、魔物による破損を警戒して確実に守れる部分にしか敷設されていないことが分かった。

 つまり市街地にほど近い場所でも、魔物から線路を守り続けることが困難であるような場所が、多数存在するのだ。


 そもそも魔物とは何なのか。脳内百科事典によると、魔力を持った人類以外の生物をすべてひっくるめて魔物と呼ぶそうだ。

 知能の高い竜も魔物なら、知能の低い亜竜も魔物。人間並みの知能があって、人間のように文化を持っていても人類でなければ魔物なのである。随分と乱暴な括りだ。

 このような横暴な分類に反対している社会団体などもあるらしいが、魔物は基本的に人類と敵対関係にあり、高い文化文明を持っていようが分かり合うことができないと考える人の方が圧倒的に多いらしい。


 ……いやそれはどうなんだ。


 僕はまだ魔物を見ていないから、なんとも言えない。バスが駅についたので、乗り換えのためにケータイを閉じた。

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