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其は天上の舞姫 2


 アーリア曰わくこの宴に招かれたさる貴族の方が賢君と名高いシシル国王と王妃に創国蔡の献上品として私の舞を献上したいとのこと。


 おかしいと思ったのは私だけかな?私はあくまでフレイ楽団の一団員であって貴族お抱えの舞師ではない。というよりその貴族の言いぐさだと舞どころか私ごと献上しようとしているように聞こえるんだけど……。


「そうだね。アタシも最初聞かされたときゃあ同じことを思ったよ………ついでにそのバ──貴族の正気も疑ったけどね」

「口に出してましたか」


 そして同じことを思ってくれたんですねアーリア団長。ありがとうございます。私も話を持ってきた方を馬鹿だと思います。


「そのこと指摘したらカグラ、アンタを身請けするて言いだしやがったんだ。もちろん文句を言ってやったさ!」


 瞳に怒気を宿らせてバァンとテーブルを叩く。


『うちの舞姫は娼婦じゃないんだよ!アタシは大事な仲間を金で売る気は一切無い!!』

『何を………たかだか流れの楽士無勢が貴族である私に逆らう気か!?』

『貴族であることを誇る前に人としての道理を考えな!!あくまでも宴に招かれた客が、雇われ中の楽団にそんな話持ってくる方が間違ってるよ!!!』


 話を聞いていて冷や汗が出てきた。アーリア団長……怒ってくれるのは嬉しいですけど貴族相手にその言い方はマズいですよ……!?


「………その後、どうなったんですか?」

「……騒ぎを聞きつけてきたクルト様がいらして場を取りなしてくださったよ」


 クルト様とは宴を開いている公爵様だ。フレイ楽団の雇い主でもある。


『デューイ殿。いくら貴族身分だからといって貴殿の振る舞いは些か目に余りますぞ。なにより彼等は、今は私が雇っているのです。雇い主である私を無視されるのは流石に気分が悪くなる』

『そ、それは………』

『お引き取りを。デューイ殿』


 デューイと呼ばれた貴殿はアーリアを憎々しげに睨みつけた後、クルト様に頭を下げて帰っていったらしい。


「ちょっと待って、団長。今の話を聞いている限りそのデューイて貴族からの申し出は流れたんだよね?なら何故、私が創国蔡に出ることになるの??」

「……今度はクルト様が仰られたんだよ。『舞姫を創国蔡の余興として祝典に参加させないか』てね」


 クルト様曰わく。


『デューイ殿は貴族であることを笠に着て下の者を虐げることがある。フレイ楽団の舞姫はシシル国だけでなく他国にも有名だ。大方、彼女を陛下に献上すれば覚えが目出度くなるとでも思ったのだろう』

『それで?どうしてうちの舞姫が祝典に出ることになるのさね』

『考えてみたまえ……ここで彼が退いたとしてもそれは今だけだ。後から何かしら仕掛けてくるだろう……ならいっそ本当に祝典に参加させればいい。ただし、献上品としてではなく、あくまでも余興として出席させるんだ』


 最後まで話を聞いた神楽はなるほど、と納得したが新たに疑問も浮かんだ。


「どうしてクルト様はそこまで親身に考えてくれるの?クルト様には関係ないよね?」

「今の王妃様はクルト様の年の離れた妹君なんだよ。しかも国王夫妻にはまだ御子がお生まれになっていない。そんな中、国王にカグラを献上するなんて王妃様を傷つけるようなもんさね」


 私達のためではなく妹のためでしたか。それなら分かるけど………デューイとやら、王妃の実家で何考えてるんだろ。このことが王の耳に入ったら心情が悪くなるだけなのに……。


「国王夫妻の仲は良好だが、王妃が王に嫁いで早7年。御子が生まれないことに痺れを切らしてる貴族が多いみたいなんだよ。関係ないアンタにはいい迷惑だろう?」

「それでも意味が分からないよ………なんで私なの?普通はやんごとない身分のご令嬢が側室として上がるものでしょ?」


 何故わざわざ庶民の、それも異国人に見える神楽を選ぶのか。


「そりゃあ、アンタが『天上の舞姫』だからだろうね」


 アーリアはなんて事はないように言った『天上の舞姫』という言葉に、神楽はもの凄く嫌な顔するのだった。





 次の話では新キャラが出てきます。


 神楽は出ませんので悪しからず。

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