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馬車の外には


 藍色の帳に包まれ、シンとした静寂が馬車の中を満たしていた。


 自身抱きしめていた両腕をゆっくりと外すと神楽は少し苦笑した。力を込めていたせいか両腕は僅かに硬直し、その名残で腕が小さく痙攣していた。


 震える両腕をぼんやり眺めながら神楽はこれからのことを考えた。


 彼女の持ち物は衣装の入ったカバンと学校指定のカバン、そして今着ている制服である。


 この世界の常識どころか、自分がいま入る場所さえ分からない神楽がこのさき生きていく上で必要なのは自分にこの世界の知識を与え保護してくれる人であるが、そのような人物がそうそう見つかるとは到底思えなかった。


(異世界から来たと言っても怪しまれるか、頭のおかしな女だとしか思われないだろうな)


 これからどうしようかと、つらつら考えていたら垂れ幕が勢いよくまくされた。


 垂れ幕を捲ったのは濃紺の髪をした人だった。彼は神楽が起きているのを確認すると若干目を細めたが何も言わなかった。右手で持っていた垂れ幕を左手に持ち替えてその右手を無言のまま神楽に差し出した。


「「…………」」


 目を見開いて、いきなり現れた侵入者の差し出された手と彼を交互に神楽は見た。


 男は沈黙したまま静かに右手を差し出したまま動かない。


(えっと、これは……どうしたら良いのかな?)


 目の前の人物はアーリアとクロードの仲間だろうか。敵意や悪意は感じないが………。


 僅かに躊躇いながらも神楽は差し出された手に自分の手を重ねた。自分を害するつもりなら何時でも出来たのにアーリアとクロードはそれをしなかった。この世界がどういう世界かまだ分からないが、自分が気絶している間に拘束もせず馬車の中で寝かせくれたことを考えて彼等は少なくとも敵では無いだろうと判断した。


 男は重ねられた手を少し見つめたが、そのまま神楽を馬車の外に誘導した。


 神楽が馬車から降りようとした時、足が滑り転げ落ちそうになったが。


「!?」


 フワリと身体が浮かぶ。どうやら濃紺の髪をした彼が落ちないように神楽の身体を持ち上げて支えてくれたのだ。


「あ、ありがとう」


 神楽がお礼を言ったら男は目を丸くして固まってしまった。


「あの、どうしました?」


 疑問に思い声を掛けると男はハッとした。


「いや………なんでもない」

(あっ、しゃべった)


 いままで無言だったので喋れないのかと思ったのだが、ただ単に彼は無口だったみたいだ。


「ぶはっ!もうダメだ、腹いてぇ……!!」

「あら、リム。笑ってはダメよ。カムロに失礼でしょ」


 吹き出された若い男の声とそれをどこか楽しそうに窘める女の声がする方へ神楽と男は急いで顔を向けた。


 そこには神楽を助けたアーリアとクロード。アーリアの娘らしい赤毛の少女と声の主である短髪で茶髪の男性と長い銀髪を後ろで緩く結った美しく妖艶な女性と濃い茶髪で小柄な少年が大鍋を囲うようにして座っていた。


 赤毛の少女と小柄な少年は……何故か口を大きく開けてあんぐりし、短髪の男性はなにがツボにはまったのかヒーヒー言いながらお腹を抱えて笑い転げていた。アーリアはなんだか呆れており、クロードはニタニタ気色の悪い笑みを浮かべている。


「ふふっ。カムロ、貴方いつまでその子を抱きかかえているのかしら。いい加減おろしてあげたら?」


 からかうような彼女の言葉に濃紺の彼──カムロの瞳に険が宿る。


(あっ、そういえば私。彼…カムロさん?に抱きかかえられたままだった………)


 そして馬車から降りるまでのやり取りも見られていたのだと思うと神楽は少し恥ずかしくなった。


 カムロはすぐに神楽を降ろすと、そのままスタスタと笑い転げている男性の下に向かい強烈な蹴りをその背中に食らわせるのだった………。


「いってぇな!何するんだよ、カムロ!!」

「お前が笑うからだ」


 短く言い捨てるやいなや、カムロは少年の隣りに腰を下ろしてしまった。


(待って、私はどうすればいいの!?)


 1人置き去りにされて焦っていた私を見かねたのか、アーリアがトントンと自分の隣りを叩いた。そこに座れという意味だろうか、神楽は恐る恐るアーリアの隣りに腰を下ろすのだった。



 次回、フレイ楽団との出逢い


 乞うご期待ヾ(≧∇≦)



             風光

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