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アバンギャルドの悪夢

 戦闘描写、毒描写があります。


 苦手な方はご遠慮ください。


 突然口を塞がれ右腕を背中で捻られた神楽は軋む骨の痛みに顔を歪める、そして────。


「う゛っ………ぐはっ!?」





 神楽の口を塞いでいた男がくぐもった悲鳴を上げた。






「痛っ……右腕の筋痛めたかな?骨には異常は無いみたいだけど───はぁ、クロードに湿布薬貰うしかないか」


 捻られた右腕の状態を確認しながら神楽はガクッと肩を落とした。クロードの薬は良く効くけど、時々怪しい薬の実験体にされることがあるからあまり頼りたくないんだよねー。


「う゛、き……貴様!!」

「ん?私が反撃したことに、そんなにビックリしたの?………いくら女でも私は流れの舞師だよ。防衛するすべの一つや二つは持ってるよ」


 冷めた目で男を見つめる。伊達に4年間、フレイ楽団と旅をしていない。神楽が楽団に入り一番最初に覚えたことは人攫いや人買い達からどうやって逃げるかだった。


 そして、私や楽団の皆に危害を加えてくる敵に対して容赦しないことだ。


 神楽は男に口を抑えられ右腕を締め上げられた次の瞬間には、彼女は男の足のつま先を思いっ切り踏みつけ、捕らえられていない左腕で男の鳩尾に肘鉄を食らわしていた。


「誰に依頼されたのかはまでは知らないけど、後悔してもらうよ。私に手を出したこと」

「ぐっ……だ、黙れ!!」


 男が神楽に向かって拳を振り上げたが、その拳を神楽は軽々避ける。


 そして避けたときの捻りを利用して男の胴体に回し蹴りをいれた。男は後ろに跳び去り蹴りの威力を殺した。そして間合いを気にしつつ距離を取った。その隙に神楽は近くの引き出しに仕舞っていたスイカ大の袋を取り出していた。




 袋にはミニキャラのような大鎌を持ったローブ姿のガイコツが描かれていた…………。




「…………………………………………」


 その絵柄に思わず沈黙する男。無理もないだろう。引き出しから武器を取り出しすのかと思ったら何とも可愛らしい絵柄で描かれた死神がプリントされた袋を取り出したのだから。


 これがおどろおどろしい死神の絵だったらまだ(したくはないが)納得するのだが………。


 …………神楽は袋の中に手を突っ込んで素早く何かを取り出した。そしてそれを男に向かって投げつける。


 男に投げつけたのは何とも毒々しい紫色の玉だった。男は軽々避けたが、壁に紫色の玉が当たった瞬間、パリンという音と共に割れた。玉の中から黄色い煙りが一斉に立ち上がり、男を包み込んだ。


「!? ぐっえ゛……!!!」

「うわあ………」


 黄色い煙りの効果で目から涙を流し鼻は真っ赤、身体は痺れているのか、まるで打ち上げられた魚の如くビクッビクッと痙攣し尚且つ口から泡を吹いていた。


 その様子に自分でやっときながら神楽はドン引きしていた。


「………ただの痺れ薬だって言ってたのに、クロード……これのどこが『ただの』なの───?」


 視線が遠くなる。


 クロードから渡されている神楽専用撃退武器道具『ドクロ君』。中にはちょっとした(?)薬や、折りたたみ式ナイフ、クロード特製拘束紐、ピッキング道具などなど様々な道具が入っている────────時々、クロードの新作道具(薬)が入っている時があるが………神楽自身に被害は出ていない。今のところはだが。


「とりあえず、縛っとこ」


 ドクロ君から拘束紐を取り出し、男を縛り上げていた時だった。


「大丈夫か、我が愛しき舞姫よ!!」


 バァンとドアを壊す勢いで開け放ち、まるで演劇の王子のようなポーズを取りながら金髪金眼男が現れた。……………神楽には刺客を差し向けた犯人がわかった、その目的も。


「まさかアバンギャルド国の使者が貴方だったなんて、とんだ災難ですよ…………マテウス殿下」


 神楽は据わった瞳で金髪男────マテウス・アバンギャルド第三王子を睨みつけた。


 4年前、神楽を無理やり召し上げようとしてフレイ楽団の皆を危険にさらし、滞在していた街の住民を不当に虐げ領主を脅し────彼女の目の前で旅商人の幼い娘を無惨にも斬り殺した


─────────

──────

──……外道だ。



 神楽の前に現れた4年前の悪夢。


 次回、悪夢と対峙


 お楽しみに。

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