歓声は災難の前触れ
カムロに手を引かれ一歩一歩、中央に向かって進む。そして玉座に座る王と王妃の前で膝を折り、拝礼の構えを取った。
「よくぞ来た、『天上の舞姫』よ。そなたの噂は我が耳にまで届いている。その名に恥じぬよう務めよ」
「兄のクルトから話は聞きました。貴女の舞を楽しみにしていましたよ。存分に励みなさい」
「ご随意に」
若き国王夫妻の激励に神楽とカムロは深く頭を下げた。
カムロはおもむろに神楽の薄衣を取った。瞬間、広間のあちこちで息を飲む気配がした。
神楽は静かに面を上げる。
神楽の薄衣を取ったカムロはすでに離れ、ハープを構えて神楽からの合図を待っていた。
視線を合わせ、軽く頷く。
ポロン ポロロン────。
カムロが弦を弾くと共に神楽は重さを感じさせない跳躍を見せ、舞い始める───。
●○●○●○
男は茫然とした様子で舞姫を魅入っていた。男の頭によぎるのは、各国での舞姫の噂だった。
絹のような艶やかなに流れる黒髪
夜空を閉じ込めたかのような瞳は黒曜石
誰もが魅せられる気品あるその姿
麗しき華の顔 強き眼差し
蝶のように軽やかに優雅に踊るその様は
天よりもたらされる祝福なり
─────尾ひれのついた噂だと思っていた。だが実際の舞姫はどうだ、噂以上どころの話ではない。そこら辺にいる貴族令嬢よりも洗練された所作。畏怖を感じる程の神々しさ。息を飲むほどの眼差しの強さ。見たこともない華やかな衣装。幼ささえ感じる顔。小さな身体─────。
ガタッと音を立てて動く黒い人影が目端をよぎった。
ハープの音色の中に混じった不調和音に不快気に男は眉を寄せる。他の観客は舞姫の姿に魅入っていて人影を気にしていなかった。
「………」
急いで去る人影の姿に男は更に不愉快になったが無視する訳にもいかず、人影の後を追うように男も広間を去るのだった。
●○●○●○
まるで意思が有るかのごとく領布が神楽の周りにヒラヒラとたなびいている。
最後に領布を大きくたなびかせながら身体をそらす。カムロの奏でる音色が途絶えると一斉に歓声と拍手が四方八方から飛び交った。
神楽は構えを解き、カムロと共に再び玉座に座る王と王妃に跪く。その瞬間、広間は一気に静まり返った。
「見事であった。噂に違わぬその技量、誉めて遣わす」
「「ありがとうございます」」
王のお褒めの言葉に礼を返す神楽とカムロ。
後で褒美を遣わすという王の言葉を最後に2人は広間から退出していく。その時、再び拍手の嵐が吹き荒れた。2人が広間から見えなくなっても広間の興奮は冷めることはなかった。
………2人はそれぞれ用意された部屋に戻るため通路を歩いていた。
背後の宴の喧噪に神楽は満足気に笑い、カムロは相変わらずの無表情だったが神楽にはいつもより穏やかに見えた。
カムロと別れ用意された部屋に入った瞬間、神楽は何者かに襲われた。
部屋に戻った神楽は襲われてしまいました。
実は護衛役の意味もあったカムロ。彼は神楽の危機に気付くのか!?
次回、アバンギャルドの悪夢
馬鹿の上に屑でご都合頭の差別主義者は救いようがありません。




