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異世界からやって来た女

 中国古典舞踏とは中国に古来から伝わる武術・打ち技・バク転などの動きを舞で表現する舞踏です。


 小道具に剣や扇、領布ひれを使うことがあります。


 ヨーロッパ風の異世界にトリップしてきた神楽は幼い頃から嗜んでいた舞を使って暴力と理不尽に溢れる世界を仲間たちと共に生き抜く、これはそんな物語です。

*途中から神楽曰わく疫病神が出てきます。


 不定期更新ですが、是非お付き合いください。


                 風光

 

 綺羅きらと輝く眩しい広間の中央で私は膝を折り構えをとる。


 周りは異国情緒溢れる民族衣装を纏った女に好奇の視線を寄越す。

 中には侮蔑やら蔑んだ視線を寄越す輩がいるが、いつものことなので無視した。


 いや、むしろ内心ほくそ笑んだ。


(こういった輩は実力で黙らせる)


 私は視線で仲間に合図を送った、気付いた仲間たちが頷いた。


 仲間の1人が楽器を奏でる。


 私は最初の音が鳴るのと同時に大きく袖を振るうのだった。



●○●○●○●○


 広間を去る私の背後で歓声と拍手が沸き起こる。


 裏に戻って来た私は大きく息をついた。どうやら今宵も無事に終わることが出来た。


 私が所属している楽団はシシルという国のとある高官の館に雇われていた。流れの楽団である私達は広場といった場所だけではなく、王族や貴族に招かれて技を披露することがある。


 私は向こう側が用意した団員がいる部屋に入ると仲間たちが一斉に笑顔で迎えてくれた。


「おかえりカグラ、今日もいい舞だったよ!」


 最初に神楽に声を掛けたのはフレイ楽団の団長アーリアだった。


「カムロもいい演奏だった!よくやったよ2人共」


 アーリアが次に話し掛けたのは神楽の舞の伴奏をしていたハープ奏者のカムロだ。

 彼は少々無口なところがあるがはハープの腕は一流だ。


 団長のアーリアを輪切りに次々と仲間たちが2人を労いの言葉を掛ける。


 私は胸が温かくなっていくのを確かに感じた。


 私はこの世界とは別の異世界からやって来た。

 あれは今から4年前の事だ、私は日本という国で学校というところに通う女子高生をやっていた。


 当時の私は中国古典舞踏というものを約12年間、嗜んでいた。


 それというのも母の友人が国際文化保護団体というものに所属しており、その団体では各国の古い文化や伝統を守る活動をしていた。

 私は6歳の時に母と共にその団体が行っていた国々での文化の違いを知る祭りに参加したことがあった。そこで私は中国古典舞踏に出会ったのだ。


 幼かった私は中国古典舞踏の美しさと力強さに心を奪われた。


 まるで天女の羽衣のような装いをした女性たちが重さを感じさせないなのような足捌きで空を跳ぶ。

 一つ一つの動きは時に激しく、時に緩やかに曲に合わせて刻まれていく。


 この後の私の行動は早かった。

 

 母の友人に頭を下げて中国古典舞踏を舞っていた人たちに逢わせてもらい、その場で弟子入りを志願したのだ。


 母も母の友人もそして当時中国古典舞踏の講師をしていた青蘭チンラン先生も呆気にとられていた。


 でも私の本気を感じ取ったのか青蘭先生は私の弟子入りを許可してくれた、もともと先生の母親は日本人の人で日本にも中国古典舞踏を広めようと活動しようとしていたらしい。


 母も反対はしなかった、父は賛成してくれた。


 どうやら両親は特に強い興味や関心を持たない、子どもらしく無い私を心配していたらしいのだ。(面目ない)


 私が初めて強い興味を持った中国古典舞踏をやらしてみようと両親は思ってくれたのだ。


 最も母は厳しい訓練と鍛錬に私が付いていけるか不安がっていたが………。


 …………私が異世界こちらに来る前は、秋に開催される国際文化保護団体の祭りで先生から主役をやってくれないかと誘われた。


 先生の下で12年間、脇役で舞台に立たせてもらったことはあったが初めてもらった主役の座に私は浮かれていた。


 学校からの方が先生が講師をしている楽屋に近かったため家から衣装の入っているカバンを持って学校に登校した。


 その日は衣装を着てのリハーサルをする予定だった。


 学校が終わって、重いカバンを手に私は先生のいる楽屋に向かっていたときだった………私が十字路に差し掛かり、渡っていた時、右側からトラックが突っ込んできたのだ。


 ぶつかる!?………そう思って目をつぶったがいくら待っても衝撃はやって来なかった。


 おそるおそる目を見開くと────────────────私はすでに、この世界に来ていた。




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