第1話
才色兼備。大富豪のお嬢様。花も恥らう16歳の美少女(胸はない)。
ただいま、絶賛ひきこもり中です。
ひきこもりお嬢様、吶喊します!
そもそも、学校という組織は私には向いていないのです。
あの、野蛮で下賎な輩の集う場所など、私には必要のないものなのです。
そうなのです。だから、私が高校デビューに失敗して、お友達がひとりもできなくって、お手洗いで昼食を食べることになったのは、どれもこれも他人のせいであって、私のせいではないのです。私がちょっと美少女で、大企業の会長の娘だからって。
「……うわ~ん! 学校行きたかったよ~!」
もだもだ。
ふわふわの天蓋つきベッドの上で転がりながら、私は薔薇色の高校生活を謳歌する自分を想像します。
少女コミック、恋愛小説、そんな物を読みながら。
『ある日、普通の女子高生に突如現れる、謎の美少年……』
私は、普通の女の子ではないので、これは感情移入できません。無理です。そもそも、学校に通っていることが前提となっています。
「却下。次」
『普通の女子高生の前に現れる、化物達……』
何度も言いますが、私は普通の女子高生ではありません。
「却下~! なんでこの手の物は、『普通の女子高生』じゃなきゃ駄目なんですか~!」
中には、『才色兼備のお嬢様』が主人公の漫画などもありましたが、やはり女子高生という点は一致しています。
「女子高生じゃなきゃ、駄目なんですか……。ひきこもりは駄目ですか……」
駄目でしょう。
それは、自分でも分かっております。なにせ、出会いがありません。
そんな私は、それでも毎日、ひとり漫画と小説に没頭しました。
ひきこもりの少女が、主人公になれる。そんな毎日を夢見て。