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シンデレラの浮気

作者: ロティア・エレライ

どっかのお姫様はぼろ切れをドレスに変えて、カボチャを馬車にしたんだって。




0時には消えてしまう魔法

さよならを告げたら消えてしまう魔法

今のお姫様は誰なのか知らないけれど、決まったように見送り、手を振る。

種族ゆえか誰もがそうする。

残されたのは甘いうずきと柔らかな暖かさ。

やがてそれも忘れてしまうだろう。

暑いにも関わらず寒くて鳥肌が立つ。

温もりを失った肌がくりだって、やがて何も感じなかったようになにもなかったかのように明日が来る。

背を向け、笑みの失せたあの瞬間から魔法など切れていたのに。

夢から覚めた感覚に襲われる。

もがけばなにか、何か変わるのだろうか

夢ではなかったはずが、夢だったのか、白昼夢なのか、知らないまま。

残されたのは艶やかな桃色の何か

やがてそれすらも消えてしまうだろう。

香りの記憶、甦る

それでも何事もなかったかのようにその場を離れれば、なんと呆気ないものなのだろう。

残されたのは甘い言葉、やわらかな記憶

もがけばなにか、何か、つかめるだろうか。

この、白昼夢のような記憶の縁で。


少女でいられるときはあっけないという。

女性となり老いるまで私はいくつの罪を犯すのだろう。

知るよしもなかった。

あなたの知らない言葉の重み、私の嘘。

私の言葉は真実を語り、同時に偽りを語った。

好きよ、嘘ではなかった。

でも、根本がおかしかった。

つまり、好きは嘘へと変わる。

嫌いよ、嘘だった。傷つけたくない相手の簡単な傷つけ方。知っていながらしなかった。

好きだったから。ところがある日告げられた「なんか、実態がつかめない。不満とかじゃなく」という言葉は呆気なく私を引き裂いた。

今日から私は汚くなる。私は浮気ガール。

同時に二人の異性を愛した女。

聞こえはそこまで悪くないけれど、女の子ではなく、私は浮気女と蔑まされる対象になってしまう。

それでも、手放せるはずがなかった。手放せることができるのなら、とうに嫌いだと偽りの言葉を連ねていただろう。

涙を流すことさえできない泣き虫の、笑顔の裏に隠された真実を二人はいつか知るのだろうか。

知らなくていいと願えどもこのままではきっといられないだろう。

それでも踊るしかない人形に、成り果てたのだ。

彼らといる間だけは私は私ではない、特別な女の子になれたようだった。

そう、おとぎ話のお姫様のように。

気取ってハイヒールを鳴らしてみたり、幼くかえって素っぴんのまま抱きついてみたり。

甘えて、甘えて、また現実に戻るたび自分のしたことの罪悪感を背負う。

罪に甘んじる気は毛頭なく、罪から逃れる気も毛頭ない。これが現実なのだ。お姫様も、ドレスや飾りを脱げばただの人。私も現実に戻ればただの罪人。それでも構わないと身を投じたのも私自身だった。

失うのなら派手になくなれ、なにも残らぬほど。

失わないのなら咲き誇れ罪の花。

それを背負う覚悟ならとうにしている。

駅で見送ったあと、同じく彼氏の背を見送る女の子に目がいく。

呆然と立ち尽くしていた。

私は夢から覚めて、痛いほどの鳥肌をさすって緩く夢からずり落ちた。

彼女は今何を思うのか、知るよしもなく、夢は覚めたと言わんばかりに踵をかえし、私はつかつかと早足で歩き出す。

何事もなかったかのようで、体がすべてを覚えていた。

人肌の温もりは優しく、時にあまりにも残酷だ。

なかなか浮気題材は難しいですね。爽やかにまとまってしまった気がします。

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