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はじまり
「おい、お前」
真っ暗な世界。
遠くから脳に直接語り掛けるような声に、沈みかけていた意識が少しずつ浮く。
「死んでいるのか」
「・・・・・・ぅ」
髪を引っ張り上げられ、顔を持ち上げられる。
向けられる魔力はびりびりと肌を刺激し、今にも消えてしまいそうだ。
けれど、強すぎるそれに意識が沈むことを許してもらえない。
「生きてるのか。なら、返事をしないか」
「・・・・・・・・・」
「太陽を模した金色の髪に海と森を混ぜた碧の瞳か。こんなところで珍しい」
「・・・・・・・・・」
唐突に手が離され、顔が地面にぶつかる。
鈍い衝撃に、まだ残っている痛覚が頭が切れたと私に囁いた。
温い温度が頬を伝う。
「退屈凌ぎにはちょうどいいかもしれないな」
──────あの方にとって、私の命は気まぐれに過ぎなかった。
けれど、私には彼に拾われた事実だけが全て。