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つむぎのりんごのコンポート

作者: WAIai
掲載日:2026/03/10

「ー今回はお父さんと料理しようか、つむぎ?」

「お父さんと? するする!!」

宿題が終わったつぐみは、喜んで椅子から立ち上がる。難しい算数を解いたばかりで目がくらむが、父親の涼に甘えようと腕に手を絡める。

「行こ!! 行こ!!」

「おいおい。そんなに押すなって」

ははっと涼が笑い、キッチンへ向かって行く。

「あら、どうしたの、お父さん、つむぎ?」

「今日は俺とつむぎで昼食を作ろうと思って。お母さんはお休み。ゆっくりしていて」

「いいの?」

「うん!! あたし、頑張る!!」

つむぎのはしゃぎように、翔子は微笑む。

「それじゃあ、お願いね。私はお買い物に行ってきてもいい?」

「いいよ。な、つむぎ?」

「うん!! 行ってらっしゃい」

エプロンを着用しながら、翔子を見送る。涼もエプロンをし、手を洗い始める。

「つむぎ、手はこうやって洗うんだぞ」

手に泡を作りながら、爪を洗ったり、指の間を磨きながら、涼はつむぎを見つめる。つむぎも真似して手を洗うのだが、少し手がおぼつかない。

「…これでいい、お父さん?」

「どれどれ。…いいぞ、つむぎ」

涼にOKサインをもらい、水で手の泡を流す。ピカピカになった気がして、裏表を嬉しそうに眺める。

「…で、お父さん、何を作るの?」

「それはな…じゃじゃーん!!」

ふりかけと海苔を出され、つむぎは目を瞬かせる。

「何? 何? えっと…」

「さあ、答えてごらん」

「うーんと…その、おにぎりかな?」

「そう!! 正解!! おにぎりだ」

「やったあ!! 具は何するの?」

「実はな、えっと…」

ふりかけと海苔をテーブルの上に置き、涼は冷蔵庫を覗き込む。

「えっと…鮭ほぐしと、梅干しと、昆布に、明太子か。つむぎ、どれがいい?」

「鮭ほぐし!! あと明太子!!」

「よし、決まったな。…と、その前に」

涼は箱に入ったりんごを手に取ると、つむぎに投げてよこす。

「お父さん、りんごをどうするの?」

「まずはコンポートを作ろうと思って」

「コンポートって…何?」

りんごを顔に近づけると、甘い香りがした。蜜が入っているのだろうかと、ちょっとワクワクしていると、涼は質問に答えてくれる。

「コンポートとは、りんごを甘く煮たものだ。先にそっちから作ろう」

「うん!!」

まずは涼がまな板に向かい、りんごを4等分にしていく。

「大きいと8等分とかなんだけど、今年は小さいから、これでよし」

「そうなの? つむぎもやりたい!!」

「ちょっと待て。まだ終わりじゃない」

そう言うと、涼はりんごの皮をむいていき、芯の部分を切り落とす。それを鍋に入れ、ようやくつむぎと顔を合わせる。

「つむぎもやってみるか?」

「うん!! やる!!」

つむぎは元気よく答えると、りんごをまな板の上に置く。手を切らないように気をつけながら、涼がしたように4等分にしていく。そこまでは上手にできたのだが、問題は皮をむけるかどうかである。

ーやってみなければ分からない!!

包丁を皮にあてると、慎重に切っていく。ちょっと皮が厚くなったか、涼は何も言わなかった。温かい眼差しに見守られながら、何とか皮をむき終わる。

ー次は芯ね。えっと刃をこうやってあてて…。

包丁を進めていくと、不格好だが、りんごがむき終わった。

「できた!! できたよ、お父さん!!」

「よし、上出来だ。お父さん、嬉しいぞ!!」

「うん!! それで次は?」

「まあ、待て。あと1個ずつ、むこうな」

りんごを手渡され、つむぎは先程と同じように手順をふんでいく。慣れもあるのか、先程よりは上手に切れた気がする。

「じゃありんごを入れた鍋に、水を入れて…」

涼が鍋を持ち、蛇口をひねる。りんごがひたるまでくらいまで入れると、水を止め、ガスコンロに置く。

「あとは砂糖と…」

「どれくらい入れるの?」

「うーん、そうだな。お父さんの場合、目分量かな」

苦笑しつつ、砂糖を入れていく。水の中で崩れていく様は氷が溶けるようだった。

「あとはレモン汁。つむぎ、冷蔵庫から出して」

「うん。えっと、レモン汁、レモン汁…。あった!!」

はい、と涼に手渡すと、彼は鍋にレモン汁を入れる。

「お父さん、あとは?」

「本当はラム酒かブランデーをたらすと、美味しいんだが、つむぎの口に合うように、やめておこう。ーそれで、あとは落とし蓋をして…」

アルミホイルで作った落とし蓋を鍋に広げ、涼は更に蓋を閉める。

「ぐつぐつと煮えたら、冷やして完成だ。簡単だろう?」

「そうだね。できるのが楽しみ!!」

「つむぎは可愛いなあ。ーじゃありんごが沸騰する前に、おにぎりを作ってしまおう」

「うん!! お母さんが帰ってくる前に、仕上げよう!!」

「おー!!」

涼が手を上げると、つむぎはくすりと笑う。お父さん大好きっ子だった。

「じゃあ、つむぎのリクエストに答えて、鮭ほぐしと明太子を取り出して…。つむぎ、明太子は生か? それとも電子レンジで温めるか?」

「あたしは生がいい!!」

「じゃあ、まずはボウルにご飯を入れて…。このくらいかな」

涼はボウルにご飯を入れると、つむぎに差し出す。

「好きなだけ、ふりかけをふっていいぞ」

「わー!! たくさんふろっと!!」

嬉しそうにふりかけをふると、涼がご飯をかき混ぜる。

つむぎは涼が止めるまで、ふりかけをかけ続ける。

「おーっと、それくらいでいいぞ」

「一口、食べていい?」

「OK。どうぞ」

ぱく、っと一口入れると、ふりかけの食感と甘みや塩味がして、美味しかった。

「お母さん、喜びそう!!」

「そうだな。それで次はラップを使って…」

「ラップ!! えっと…あ、あった!!」

つむぎがラップを見つけると、涼がそれを受け取り、おにぎりの握り方を教える。

「ラップはこれくらいで…ご飯を中央に置いて。あ、多めに置いちゃ駄目だぞ?」

そう言いながら、ラップに置いたご飯の真ん中に、鮭ほぐしを入れる。

「これで、上にご飯をかけて…ラップを丸める」

涼は器用にラップを持つと、ご飯を握っていく。涼の大きな手は魔法を見せてくれるようなワクワク感があり、楽しみだった。

「ーよし。三角になった。これに海苔をつけて…完成!!」

「うわ!! 美味しそう!! つむぎもやる」

「やってみなさい。ほら」

ラップを手渡され、それをテーブルの上に広げると、ご飯をこぼさないように置く。

「お父さん、明太子を入れたいんだけど」

「ちょっと待て。りんごが沸騰してきたから…」

一旦、ガスを止め、涼が明太子を手にする。

「りんご、止めて大丈夫なの?」

「冷やさないといけないんだよ。砂糖がなじむようにしないと」

「そうなんだ。…で、明太子は?」

「そうだ。ほら、これ」

「ありがとう」

明太子を受け取ると、中央に置き、ご飯を重ねる。涼の手つきを思い出しながら、握っていく。

「あ!! 固く握ったら駄目だぞ!! ご飯が美味しくなくなるから。そうじゃなくて、軽くふわっと握るんだ」

「軽く、ふわっと…。こんな感じ?」

つむぎの手ではどうしても三角ではなく、丸型になってしまうのだが、涼は「よくできました」と褒めてくれる。それが嬉しくて、つむぎは涼におにぎりを差し出す。

「ーできたよ、お父さん!!」

「お!! 美味しそうだな。あとは海苔を巻いて…」

ラップをはずし、海苔を巻きつけると、つむぎは満足そうに笑う。

「すごい楽しい!! まだ作っていい?」

「もちろん。お父さんも作るし」

2人は暖かな日差しが差し込中、調理に熱中していく。ボウルの中のご飯が終わると、2人は腰に手を当てる。

「ーできた!! 完成だ」

「やったあ!! つむぎも頑張ったよ!!」

「よし、よし。よくできました」

頭を撫でられ、つむぎは「えへへ」と笑う。涼はいつも忙しそうにしているので、2人の時間は楽しいし、心地よかった。

「さて、あとはコンポートは…」

「どうなった?」

鍋の蓋を取り、中を覗き込んでみる。りんごは黄金色に輝いており、蜂が蜂蜜に誘われるように、つむぎも顔を近づけていく。

「こらつむぎ。まだだぞ。もうちょっと置かないと」

「そうなの? じゃあ蓋をしないと…」

2人は鍋から離れると、玄関から声が聞こえてくる。

「ただいま。…あ、何かいい匂いがする!!」

「お母さんだ!! びっくりするかな?」

「そうだな。楽しみだ」

2人は互いの顔を見、意味深に笑う。翔子が何と言うか楽しみだった。

「じゃあ、テーブルの上を綺麗にして並べようか」

「うん!! そうする!!」

つむぎは返事すると、ウキウキしながら、ランチョンマットを敷いたのだった。

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