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第五十六話:進軍:多方面作戦の火蓋

 古王討伐から約半年。


 玉座の間は、ヒカルが下した人類社会への介入という重大な決断を前に、静かな熱気に満ちていた。ヒカルは壇上から六龍姫と新官僚たちを見渡す。六龍姫の愛の音色は、半年間の軍務と王妃の座争奪戦を通じて、複雑ながらも安定した協奏曲を奏でている。


「古王討伐から半年が経過した。この間、我々はただ休んでいたわけではない。人類の憎悪と腐敗に打ち勝つための『優しさによる新秩序創造計画』の堀を、入念に埋めてきた」


 ヒカルは、アクアと顧問団を前に、半年間の成果を宣言する。


「ギルティアが財務基盤を確立し、カインの仕掛ける経済制裁の穴は、セフィラとゼファーが築いた通商ルートによって完全に無効化された。テラとガイアは辺境連合との同盟を盤石とし、ルーナとアウラは教団のプロパガンダを覆す広報戦の準備を整えた。そして、ヴァルキリアとシェイドは闇の裏工作で敵の動きを封じた」


 ヒカルの言葉は、単なる報告ではない。六龍姫と六天将の愛の献身が、すべて戦略的な成果に結実したことの証明だった。


 紅蓮の激情竜姫レヴィアは、半年間の忍耐が報われたことに、激情の炎を揺らめかせた。


「ふふふっ! 夫よ! 私の愛の炎は、半年間待ちに待ったぞ! 我は、貴方の開戦への決意を焦がし続けていた! 貴方の復讐心と私の激情こそ、世界を焼き尽くす最高のユニゾンだ!」


 しかし、蒼玉の理性竜姫アクアの冷静な声が、その激情を受け止める。


「レヴィア、感情的にならないこと。半年間の準備を経て、戦争は論理的に見て最も合理的かつ効率的な選択肢となった。私の理性的な愛と戦略が、貴方の開戦の決断を正当化する」


 二龍の王妃の座を賭けた愛の衝突は、依然として続いている。セフィラは軽やかに二人の間に割って入り、茶化す。


「重い愛も、半年間じっくり煮込むと、美味しいスープになるんだね! ボクの自由な愛は、団長の心を軽やかにする最高のデザートだよ!」


 ルーナは光を放ち、テラは母性の安寧で、ヴァルキリアは孤高の忠誠心で、それぞれの愛の独占を主張した。


 ヒカルは、この愛の奔流を正面から受け止め、王の義務を果たした。


「静粛に、妻たちよ。この愛の衝突こそが、軍の士気という無限の資産を生み出す。開戦の決定は、俺の優しさが弱さではないことを証明する、王の義務だ」


 ◇◆◇◆◇


 ヒカルは、各方面で任務を遂行してきた六天将からの最終報告を求めた。ギルティア、エルダー・ソフスといった顧問団の助言が、ヒカルの知的な愛を裏打ちする。


「ガイア、辺境連合との同盟状況を報告せよ」


 不動の防衛将ガイアは、胸を叩き重厚な声で応じた。


「王よ。テラ様と共に辺境連合軍に我が軍の防御技術を指導。総帥リヒターは王の理念ではなく、武力と実力主義で王の統率力を認めました。背後の憂いは消え去り、同盟は盤石です。テラ様の献身的な愛が、軍事指導の基盤となりました」


「ゼファー、通商ルートと情報網の準備は?」


 空虚の斥候王ゼファーは、飄々とした態度で報告する。


「団長。セフィラ様と共に、カインの経済制裁を回避する秘密の通商ルートを確保。ウィンド・ランナー殿の協力で、帝国領内の物流網と情報網の混乱はいつでも引き起こせます。自由な情報こそ、俺たちの勝利の鍵です」


「アウラ、ルーナの広報戦の状況は?」


 無垢なる浄化使アウラは、機械的な冷静さで報告する。


「王よ。ルーナ様と共に、人類社会への福祉と治癒を最優先で開始する準備は完了しています。教団の憎悪のプロパガンダは、ルーナ様の光の力による真の優しさで上書きされます。この世論戦の費用対効果は、論理的に見て極めて高いと算定されます」


 ヒカルは、顧問団を見渡した。


「ギルティア、エルダー・ソフス。この開戦は、経済と歴史的観点から見て、合理的であるか?」


 財務官僚長官のギルティアが冷徹な論理を突きつける。


「王よ。カインのDSW開発は、技術の独占による経済成長の停滞を招きます。優しさは最も利益を生む投資であると、私が証明いたします。開戦は、財政的存続のための義務です」


 学術顧問の知識の守護者(エルダー・ソフス)が、知恵の重みを込めてヒカルの理想を補強した。


「王よ。歴史は、独善的な支配の上に共存の土台が築かれないことを知っています。この戦いは、歴史の必然です。我々の知識が、王の平和を支持します」


 ヒカルは、六龍姫と顧問団を前に、最終的な宣戦布告の決定を下す。


「カインが仕掛けるであろう対竜特化兵器(Dragon Specialized Weapons :DSW)の開発は、もはや待てない段階に達した。我々の準備は整った。これより、全軍に最終指令を出す」


 最高戦略官のアクアが、戦略盤に最終的な布陣図を表示する。


「王の御意。カインが実権を握る帝国へと攻め込むには、辺境連合と通商連合との確固たる連携が論理的に不可欠です」


「ヴァルキリア、シェイド! 闇の特務機関は、引き続き宣戦布告と同時に古王残党の最後の掃討と、カインの個人情報と魔族との密約の証拠を確保せよ。闇の裏の汚れ役を担い、王国の正当性を裏から確立せよ」


 深淵の孤高竜姫ヴァルキリアは、一言「契約者、承知」とだけ答える。


 ヒカルは、玉座から立ち上がり、全軍に最後の決意を告げた。


「お前たちの愛と戦略は、全て整った。これより、全軍は帝国首都へと進軍を開始する」


 ヒカルは、玉座の間を見渡し、その瞳に王の孤独な覚悟を宿したまま、最後の言葉を宣言した。


「優しさが、憎悪と裏切りに打ち勝つことを世界に証明する。宣戦布告を行う。」


【第57話へ続く】



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