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【交響詩】竜の姫と絆のユニゾン ~裏切られた天才軍師は愛の和音で成り上がる  作者: ざつ
本編 第一部 竜の内戦 編

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第三十七話:偽光の宣教師の罠と、爆炎龍将軍の裏切り

 シエルの重傷から数日、盟約軍の司令部は、知的な中枢を失ったことで、重い静寂に包まれていた。ヒカルは、アクア、ゼファーと共に戦略を練る日々を送っていたが、その心は、爆炎龍将軍フレアの冷たい殺意と潜伏の決意という不協和音に絶えず苛まれていた。


 その時、古王軍からの新たな揺さぶりが始まった。残る六征竜の一人、「偽光の宣教師フォールス・プリーチャー」が、盟約軍の支配地域、特に人間からの合流組が多い中立地帯に向けて、広大な精神魔術を込めたプロパガンダを流し始めたのだ。


「王よ、敵の目的は、兵の士気低下ではありません」


 空虚の斥候王ゼファーが、神妙な顔つきで報告した。


「このプロパガンダは、特定の層…………特にヒカル様が過去に人間社会から裏切られた経緯を知る者たちを狙っています」


 ゼファーは、精神魔術で増幅された偽光の宣教師の声を再生した。


『聞け、騙された竜族たちよ! 貴様たちの王、ヒカルは、かつて人間どもから裏切りと処刑を受けた人類の残滓に過ぎぬ!』


 このプロパガンダは、ヒカルの過去の真実を歪め、「ヒカルは結局、人間側に通じている裏切り者ではないか?」という根深い不信感を軍団内部、特にレヴィア軍団の古参兵の中に植え付ける狙いがあった。ヒカルの「絆の共感者」の異能は、このプロパガンダによって引き起こされた、兵士たちの心の奥底の「不信」というノイズを、激しい頭痛として感知していた。


 紅蓮の激情竜姫レヴィアは、即座に激怒し、炎の魔力を解放した。


「何たる侮辱か! 我の夫の愛は、人間への憎悪などではない! あの宣教師め、我の愛の炎で焼き尽くしてくれる!」

「待て、レヴィア」


 ヒカルは静かに制止した。


「奴の狙いは、お前の激情だ。お前が怒れば、プロパガンダの真実味が増す」


 蒼玉の理性竜姫アクアが、論理的な観点から分析した。


「王。古王軍の狙いは、シエルの不在を突いて、軍団の核(ヒカルとレヴィアの絆)を内部から破壊することです。このプロパガンダが最も深く突き刺さるのは…………フレアです」


 ヒカルの瞳が、フレアの潜伏する殺意を捉える。プロパガンダは、フレアの心の中の憎悪と裏切りの決意に、「論理的な根拠」という名の燃料を投下したのだ。


(シエルを犠牲にし、王の義務で愛を独占し、そして自らは人間側の裏切り者だと……! この人間の王は、レヴィア様の王座を汚す存在だ!)


 フレアの魔力が、冷たい憎悪で一層強く脈打った。彼は、このプロパガンダを「古王が与えてくれた、裏切りを決行する最高の機会」だと解釈した。


 ◇◆◇◆◇


 フレアは、プロパガンダが盟約軍内に混乱を生み出している隙を突き、極秘裏に闇の王女ヴァルキリアへの接触を試みた。場所は、調和のハーモニー・スローン(ヒカルの城)の外郭にある、闇の魔力が濃く淀んだ廃墟だった。


 彼は、ヴァルキリアを「王の愛の核を破壊する唯一の道具」と見なしていた。


「ヴァルキリア。貴様が望む『ヒカルの王座からの解放』と、我の望む『レヴィア様の正しき王権の回復』は、目的を共有する」


 フレアは、レヴィアへの忠誠心という名の偽りの論理で、ヴァルキリアを誘惑する。


「貴様が古王を憎むのなら、我はヒカルという人間を憎む。我の協力なしに、貴様はヒカルの軍団の絆の力を打ち破れない。我の知る、ユニゾンの脆弱性を貴様に提供しよう」


 闇のベールを纏ったヴァルキリアは、影からその声だけを響かせた。


『なるほど。愛の炎の竜姫の矛が、その愛する王を討つ側に回るか。貴様のその憎悪と愛の歪みは、我らが古王の闇の力にとって、最高の燃料になるだろう』


 二人の間に、裏切りの盟約が静かに結ばれた。フレアは、爆炎龍将軍としての魔力を、今や王の暗殺という最大の不協和音を奏でるために、解放しようとしていた。


 一方、司令部では、純白の調和聖女ルーナが、プロパガンダによる兵士たちの動揺を抑えるため、ヒカルと共に全軍の士気回復に専念していた。


「ヒカル様。あの宣教師の言葉は、嘘ではありません。ヒカル様は確かに、人間から裏切られました」


 ルーナは、純粋な瞳でヒカルを見つめる。


「ですが、貴方の心の中にある光は、人間への憎悪などではない。それは、私たち竜族の命を守るという、最も純粋な義務です。私は、貴方のその真の光を、全軍に調和のユニゾンで証明します」


 ルーナの純粋な献身的な愛は、ヒカルの心に巣食う「裏切り者」としての孤独を癒やし、再び立ち上がる力を与えた。


「ありがとう、ルーナ。お前の光こそが、奴らの偽光を打ち砕く真実の愛の盾だ」


 ヒカルは、ルーナの部隊を主軸に、「偽光の宣教師フォールス・プリーチャー」が流す精神的な揺さぶりと、裏切り者フレアの潜伏する殺意という、二つの脅威に立ち向かうための最終準備を開始した。


 ◇◆◇◆◇


 盟約軍は、宣教師が陣取る王都近郊の廃墟へと出撃した。ヒカルは、純白の調和聖女ルーナの調律の光に、全軍の精神的な安定を託した。


「ルーナ。お前の光の力は、憎悪ではなく、調和の愛を証明するために使え!」


 ルーナは、その光の治癒力を全軍へ解き放ち、宣教師の偽りの信仰を上書きする。彼女の献身的な愛から生まれた光は、兵士たちの動揺を沈静化させた。


「ヒカル様。貴方の心は、私が独占します。貴方の魂の楽譜は、私が調和させます」


 宣教師のプロパガンダが打ち破られ、戦場に安堵が広がるその瞬間。


 爆炎龍将軍フレアは、ヒカルがルーナの光に意識を集中している一瞬の隙を突いた。


 彼は、レヴィアの隣で、爆炎龍将軍としての魔力を解放する。フレアは、自身の憎悪の念を、ヴァルキリアから受け取った闇の精神攻撃と融合させ、ヒカルの「絆の共感者」の核を狙い、レヴィアの炎と闇を融合させた、憎悪の炎を放った。


「すまない、レヴィア様…………! そして、シエル…………!  王の死こそが、我々の愛の正当性を証明する!」


 フレアの裏切りは、紅蓮の激情竜姫レヴィアの感情を限界まで暴走させた。愛する夫を裏切った部下への激しい憎悪と、ヒカルへの裏切られた愛の絶望に苛まれ、ユニゾンは破滅的な不協和音を奏で始めた。


 盟約軍の司令部が、内部からの闇と炎の暴発という最大の危機に陥った瞬間、ヒカルの脳裏にまだ見ぬヴァルキリアの嘲笑が響き渡る。


 この危機を、ヒカルは愛の指揮棒で乗り越えられるのか?!


【第38話へ続く】



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