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テレビ

子供の頃、家で飼っていたネコがテレビを凝視していた出来事を基に制作したエピソードです。

それでは、どうぞ・・・。

リビングに有るデジタル時計が午前9時を表示する頃。

主はレコーディングスタジオへ向かう為、家を後にする。

玄関のドアが閉まりしばらくすると、何か企んでいる様子のモカが動き出す。


「ご主人様、やっぱり此処に置きっぱなしにしてる・・・。」


つま先立ちになりテレビのリモコンの位置を確認すると、そのままテーブルの上に飛び乗る。

結論から言ってしまえば、主の留守の間にテレビを見ようという訳だ。

逸る気持ちを抑えながら、リモコンの電源ボタンを押そうとすると何処からともなく声が聞こえる。


「モカったら、いけないのよ。ご主人様が居ないのにそんな事しちゃ・・・。」


声がした方を向くと、隣にはすました顔をしたモモが座っていた。

一体、何時の間に。

モカは少し驚くも不敵な笑みを浮かべならモモに尋ねる。


「モモってば、嫌なら別に一緒に居なくても良いんだよ?」

「あら?別に嫌とは言ってないけど?」


ウィンクをしながら返答するモモにモカは「そう来なくっちゃ」と言わんばかりの顔をするとテーブルに置かれているテレビの電源を入れた。


まず、画面に映し出されたのは朝のワイドショー。

司会のアナウンサーがフリップを使って今起きているニュースを解説しながら、時折長テーブルに並んで座るコメンテーター数名に話を振っていた。

だが、本来ネコであるふたりに時事ネタが分かる筈も無く、つまらなそうにしかめ面をしていた。


「う~ん。何言ってるか、よく分かんない・・・。」

「そうね。違うのを見ましょう?」


モカがチャンネルを変えると、テレビショッピングが放送されていた。

過去に大病を患ったという老夫婦がサプリメントを飲んだ事により再び健康を取り戻したという内容の映像が流れていた。


「「すご~い!」」


有りがちな演出ではあるが、純粋な心の持ち主である彼女達は素直に感動し目をキラキラと輝かせた。


「ねぇモモ、凄いね! このおじいさんとおばあさん、あのお菓子を食べたらたちまち元気になったんだね!」

「やだ、モカったら。あれはお菓子じゃなくて『サプリメント』っていうお薬。」

「な~んだ、そうなんだ・・・。」

「お菓子で元気になるのは、モカぐらいよ・・・。」

「もう、モモったら・・・。」

モモに揶揄われ、口をとがらせながら不貞腐れる素振りをするモカ。

程無くして可笑しくのなったのか、ふたりはクスクスと笑い合った。


他にも何か面白そうな番組は無いかとリモコンを操作するとCSチャンネルへ辿り着き、ふたりが興味を引くアニメ作品が放送されていた。

作中では、ウエットスーツの様なコスチュームを着た少女が自身の舌を伸ばしながら、大活躍する場面が描かれていた。

それを見るなりモカは喰い付いた。


「わぁ。モモ、この子カッコ良いね! 自分の舌を自由自在に伸ばしてるよ!」

「そうね。まるでカエルみたいね。」

「あたしも、真似したいなぁ・・・。あ、そうだ。舌が無理でも尻尾を伸ばす事だったら出来るかも!」

「尻尾を伸ばす・・・? どうやって・・・?」

「例えば、誰かに引っ張ってもらって、伸ばしていくの! それで、背中にボタンを付けてもらってそれを押したら元に戻るっていう風にしてもらえれば・・・。」

「もう。それじゃあ、掃除機じゃない・・・。」

モモは顔を緩ませながらそう言うと、ふたりは先程同様に無邪気に笑い合った。


そうしている内に本編が終了し、そのタイミングで1つ先のチャンネルへ移動する為リモコンを操作する。

そこでは、先程とは時代背景が異なる内容のアニメ作品が放送されており胸部を大胆に露出した出で立ちの少女が鞘から刀を抜くとまるで新体操のリボンの様に扱いながら華麗な身のこなしで敵を倒していくシーンが展開されていた。

それを受け今度はモモが喰い付く。


「ねぇ、モカ見た? あの子あんなに可愛いのにとっても強いのよ!」

「そうだね。ジャンプしながら一回転してたもんね。」

「あたし思ったんだけど、あの女の子の持っている刀って何だかネコじゃらしみたいだと思わない?」

「そう言えば、そんな風にも見えるかも。」

「だよね! あ、でもあれは刀だから実際にやったら危ないわよ。だから、モカも怪我しない為にもやらない方が良いよ。」

「え? あ、うん。ありがとう、気を付けるよ・・・。」

別にやるつもり等、全く無いのだが。

モカはそう思いながらも苦笑いをしつつ、モモの忠告を聞き入れた。


今度はアニメ以外も見ようという事になりリモコンを操作すると、ドラマを放送しているチャンネルを見付けそこで手を止める。

だが、このドラマが不倫を題材に扱った作品だという事に気付くのにそう時間はかからなかった。


「《何故です?奥さん。僕はこんなに貴女を愛しているというのに・・・?》」

「《あぁ、いけませんわ。私には夫も子供も居るというのに・・・。》」

宅配業者役の俳優が主婦役の女優の肩を抱きながら熱い台詞を投げかけている。

刺激の強い内容にふたりはテレビの前で硬直し、目を丸くしながら徐々に顔を赤くさせる。


「《構いません。どんな事があろうと僕は貴女を幸せにして見せます。》」

「《でも、ダメよ。こんな所で。あ~れ~。》」

俳優が女優を押し倒しながら、フレームアウトする。

それと同時にふたりのキャパシティーは限界を超え、完全にのぼせ上ってしまった。


「ふにゃぁ~・・・。」

「はにゃぁ~・・・。」


そして、そのまま気を失う様にしてテーブル上で倒れ込んでしまうのであった。

いかがでしたでしょうか?

コメント等が有りましたらお気軽にどうぞ。

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