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作品としての幅を広げたいと考え何時もと少し雰囲気の異なるエピソードを制作しました。

何時もならリビングを拠点に1日を過ごすモカとモモだが、今日のふたりの姿は脱衣場に在った。

洗面台に飛び乗り、左右に並ぶと鏡の前に自分達の姿を映していた。

緊張しているのか、心成しか落ち着かない様子を伺わせる。

一呼吸置き、互いの顔を見合わせ少し頷いた後、改めて鏡に自分達を映す様に正面を向く。


「いくよ、モモ。」

「うん。」


そう声を掛け合うと目を閉じ、『せーの』という合図の後ふたりは声を揃えておとぎ話の登場人物よろしく、呪文の様な言葉を唱える。


「「鏡よ、鏡よ、鏡さん。どうかあたし達を人間の女の子にしてください。」」


しばらくしてから目を開けて鏡の前に居る自分達の姿を確認する。

当然と言ってしまえばそれまでなのだが、そこには残念そうな表情を浮かべる三毛とアメリカンショートヘアの仔ネコの姿が映っていた。


「やっぱり、ダメだったね・・・。」

「そうだね・・・。」

ふたりは互いの顔を見合わせる事無く、溜め息交じりに言葉を交した。


「あたし達、ネコなんだから人間の女の子になれる訳ないよね・・・?」

モモは鏡に映る自分の姿から目を背けると自嘲気味に言った。


「そうかもしれない・・・。」

少し間を置いて俯きながらモモの言葉に同調する様に応えるモカ。


「(そうだよね。)」

心の中でそう呟くモモは落ち込んでいるかにも見えるモカの横顔を見ると再び正面を向き、改めでネコである自分の姿を確認する。

ふたりを包む重たい空気が沈黙と絶望を誘うがそれを切り裂く様にモカが口を開く。


「でも、なれない訳でもないよね?」

「え・・・?」

その言葉の真意を理解出来ずにいるにいるモモは少々吃驚しながら再びモカを見る。

そんな様子に触れる事も無くモカはモモの方に視線を向けると少し言葉を詰まらせながらも話し始める。


「あたしも上手く言えないんだけど、『出来ない』、『叶わない』って初めから諦めちゃうより、ちょっとでも良いから『なれるかも』って信じてみるのも悪くないよね?」

「モカ・・・。」

そう語るモカを見詰めながらモモは握りしめた両手をそっと胸に置いた。


「あ、ゴメン。何かあたし、変な事言ったみたいだね?」

思いがけないモモの反応を察知したモカはそう言いながら、お道化た様に笑う。

しかし、モモにはモカの言おうとした事が伝わっているらしく、首を横に振る。


「ううん、そんな事無い。今のモカの言葉を聞いたら、何だかあたしもそう思えて来た。」

その思いに感化されたモモは穏やかな笑顔を浮かべながら胸に置いていた手を降ろすとそっとモカの手を握る。


「モモ・・・。」

手の平に伝わる温もりからモモの優しさに触れた様に思えたモカはその想いに応えるべく手を握り返すと一言呟く。


「モモ。ありがとう・・・。」

「やだ、モカったら。何に対してのお礼なの・・・?」


それに対しモモは少しからかう様に笑いながら言うとモカは何時もの調子で返す。

「ううん、別に。」


先程までの重たい空気が嘘の様に無くなり、ふたりの間には優しい空気が流れる。

そして、鏡には仲睦まじい様子の三毛とアメリカンショートヘアの仔ネコの姿が映っていた。

読んで頂きありがとうございます。

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